忍者ブログ
日記と小説の合わせ技、ツンデレはあまり関係ない。 あと当ブログの作品の無断使用はお止めください
Admin / Write / Res
<< 04   2017/05   1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30  31     06 >>
[1]  [2]  [3
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

エヴァリーフォースは元々自己満足小説なのでわかる人にしかわからないのが普通です

寧ろ全部わかられても困るわ・・・・引くわ・・・・(´-ω-`)

人見せるために書いたつもりはないので2007年の私の心理状況によって変なこと書いてたりするけど2010年の私は全く持って責任を負いません!!

一応メイおまみたいにカテゴリーで分けているので左のバーのエヴァリーフォースのタグをぽっちっとなすれば

探さなくてもいいようにはなっているよ、更新順だから逆だけどな!

デトノベ&メイド服とおまじないで少しは鍛えられた私ならなんとか完結に持っていける・・・はず!というのと


ブログにアップしておけば万が一金田一PC吹っ飛んでも大丈夫じゃね?という甘い推測より載せちゃった!


頑張れ私!!負けるな私!!


主人公の楓がさ、なにか持たせようと思って持たせたIPOD・・・・今じゃ古臭いなぁ(´-ω-`)

ちなみに絵は某コルクトーンのTTK様が当時描いてくれたものがたくさんあるけどとりあえず載せない


だから唯一自分で描いた第二章の楓さんで我慢しなさい、第二章だけポニーテールだから困る他の章ストレートなのに・・・・

IPODが古いわー






















あとM氏のキャラを私が書いてますがかなり元キャラとの性格が違っているキャラが多々います

特に酷いのが氷上姫奈、彼女だけはもう私のバージョンとM氏のバージョンで全然キャラが違うので同姓同名の別人みたいな感じになってるよ・・・といってもM氏が全然書かないので設定だけで書いた私に罪はない!!
そして比べようもない!!
PR
                            2
 
リスティア=リースリング
 
遙か昔、東の大陸ウイングガルドにセドナという女神がいた。彼女は世界の行く末を決める運命の女神であり、その頃の世界は一つの運命しかなかったという
世界記憶<アカシックレコード>に“接続”して世界の、そしてそこにある全ての存在の運命を描き連ねる。無論感情には左右されない、いや正しくは興味が無かった。
ある人間の男が現れるまでは・・・
その男はごく普通の羊飼い、特になにか優れているわけでもなく、これといった名誉も地位もない外見もたいした特徴の無い男。
しかし男は他の人間、いや他の全ての存在とは明らかに違うものがあった
その羊飼いの男はセドナの決める運命に逆らい時には全く違う運命にしてしまう力があったのだ。
いや初めからセドナの決めた運命など無視しているのかもしれない
ともかくセドナが主神より運命を操る力を分け与えられてから今までそんなことができる存在はいなかった。それゆえそんな力を持つ羊飼いの男にセドナは興味を抱いた
セドナがどんな運命を与えても男には関係ない・・・・・・はじめこそ運命に従わないことに憤りを感じていたが次第にこの男がどんな人生を歩むのかそれをセドナは知りたくてたまらなくなっていった
しかしそんな興味を抱いてすぐに男は不治の病にかかってしまう
セドナは男ならばそんな運命でも変えてしまうのだろうと心なしか期待をしていた
が、男の病状は一向に回復する気配をみせない、この男はまさかこんなところで死んでしまうのだろうか?不安と焦りがセドナの心をゆるがす
人の苦しみ、死など彼女にとって今まで気にもとめていなかったことだ。だというのに男が日々症状が悪化し苦しむのを見ていることはできなかったし、なにより死なせたくなかった
そしてセドナはこのとき初めて自らの感情で運命を操る
男の運命は変えられない、だから彼を蝕む病の運命を変え男の命を救ったのだ・・・
それから逸脱した行為に対してセドナは力を封じられ天より追放される。このことによって運命を調律するものがいなくなり様々な可能性を持つ平行世界が生まれたという。
そして多次元に世界が広がった今、世界記憶<アカシックレコード>は過ぎ去った時間だけを記憶しつづけているという
 
「・・・・・・そうゆう話、知ってる?」
小さく呟くとリスティアは振り返る。
「・・・・・・と、いうかちょっとは休ませてくれない?」
「時間、ないから」
冷静沈着な様子とは違いリスティアの後ろを歩く妖花はというと足取りもおぼつかず今にも倒れそうだ
「あんたねぇ・・・自分だけ流砂に乗ってずるいんじゃないの」
「・・・・・・。」
答えることなく妖花の方を向いたままリスティアは流砂に乗って進んでいく。実際ハームステインからグバルディン闘技場までの距離をほぼ走破(途中船に乗ったが)したんだから途中休んでもよかったんだが、これだけ文句が言えるのなら休む必要はないと判断していた
「・・・・・・痩せるかも」
「余計なお世話よ」
「・・・・・・それで、さっきの話知ってる?」
「さっきっていうとあれ?運命の女神セドナがどうとかという話だっけ」
妖花の言葉にリスティアは小さく頷く
「リスティの言う“知ってる?”ってのはあれだね、あたいの世界に似た話がないかって事でしょ?まぁあたいが知らないだけかもしれないけど聞いたことないかな」
「・・・・・・そう」
それだけ言うとリスティアは体を向き直し進んでいく。そのあっさりとした様子におもわず妖花は肩を落とした
「も、もうちょっとコミュニケーションの仕方覚えたら?」
「・・・・・・・・・。」
「はぁ・・・まぁいいわ。あ、そういえばそのセドナってその後どうなったのよ?もしかして羊飼いの男とくっついたりする?」
足取りふらついている割に妖花の口はよく動く
「・・・・・・妖花の言うとおり、セドナは羊飼いの男と結ばれる。そして女神であるセドナはやがて人々に崇められそれが今のセドナ教・・・。人伝えの話は時代が変わるごとに脚色されてるけど表向きはそう」
「なによ表向きって?」
「・・・・・・そのうちわかる」
リスティアは小さく呟く
この戦いは幾度も繰り返されたあの姉妹風に言えば流転に続く血塗られた戦い・・・・・・
その悲運な戦いにはある目的がある、そしてその目的が果たされるのが今回であるのはおおよそ間違いではないだろう。彼女達の力は戦いを繰り返すごとに膨れ上がり後少しで“あの場所”に届く。
そうすればあの姉妹の戦いはとりあえず終わる。
しかしそれがもう一つの悲劇を生み出すのも見えている。
姉妹の戦いを裏で操る真の敵・・・・・・それを彼らは知らない
今それを知り、行動できるのはこの幼き砂の魔女リスティア=リースリングただ一人
「・・・・・・。」
視界の先にグバルディン闘技場が見えてくる。一方的ではあるがリスティアが彼ら・・・幻=クレイドとティア=マローネ・・・と待ち合わせをする事にした場所。
今回彼らは夜風楓と接触していないのでかなり情報に乏しい。なのでリスティアが出した手紙には必ず反応しここにやってくるはずだ、それがどんなに怪しくても唯一の手がかりなのだから
 
「あーもう、疲れた・・・。」
着いた途端に妖花は地面にどさりと倒れ込んだ。
「・・・・・・。」
妖花を一瞥してリスティアは流砂から降りると軽く砂を払いじっと闘技場を見上げる。
グバルディン闘技場
西の大陸グラディアルステーションにある闘技場でハームステインほどではないがそれでもかなりの大きさを誇り月一で大会が行われている。
「それでリスティ、ここに何があるわけ?」
「・・・・・なにも」
さらりというと無表情のまま少し右にずれた眼鏡を直す
「なにもって、なんていうかいままでちゃんと聞かなかったあたいも悪いけど一体全体なにをしようとしてるのよ」
「・・・その話は後」
リスティアは荷物から砂の入った小瓶をとりだすとそれを辺りに振り撒き軽く念じる。
「今度はなにが始まるのよ」
「砂の結界」
撒いた砂は淡い光を放ち、闘技場を覆うように風に流され広がっていく
「・・・・・・。」
しばらくして術式の完成を確認するとリスティアは闘技場の奥へ進んでいく。
「ちょ、ちょっとまちなさいよ・・・・・・ってぇ!?」
結界の内側に足を踏み入れた途端先程聞こえていた街の喧噪がぱったりと消えていた。そしてさっきまでの体の火照りが一気になくなるような寒気が妖花を襲う。
「なによ、これ」
思わず不安の声が妖花の口から漏れる。いままでに感じたことのない不安、なにも起きていないのに今にも何かが起きそうな恐怖、それらがこの結界には渦巻いていた
「この中では音は外に漏れない、そして入ってきた人に精神的な不安を抱かせる。」
「ここにいると危険だっておもわせるわけ」
「・・・・・・妖花にしては上出来。しばらくすればこの不安感は慣れるから」
涼しい顔で言うとリスティアはそのまま選手入場のゲートをくぐっていく。
「はぁ、あんまりこんなの慣れたかないけどね。」
あきらめたように嘆息すると妖花もリスティアの後を追った
 
                           3
ティア=マローネ
 
・・・・・・現状報告
ジークの突然の失踪、そして再び姿を現した夜風紅葉。何故別次元の記憶が私にあるのか?それはわからないがともかくジークと紅葉をそのままにしておけば世界を根底から覆すようなことが起こるという。
この状況に先手を打つべく私は幻=クレイドとともに中立都市ルラフィンで予知能力を持つセトラ=カートスルに接触するも結局はっきりとした情報は得られなかった。
しかし手がかりがなかったわけではないセトラから渡された差出人不明の手紙
『翌朝、グバルディン闘技場で待つ。来るも来ないも貴方達のご自由に』
言ってしまえばまだ私達は本当の意味でこの物語にかかわっていない・・・しかしこの手紙が私達に道を示してくれるかもしれないのだ、たとえそれが罠であったとしても
「ったく、翌朝って指定しておいてもうすぐ昼じゃねぇか」
観客席の一番前に足をかけ気だるそうに幻がぼやく。闘技場に着いてから何度と無く繰り返された問答、隣で聞くのもあきてきた頃だ
「まだ昼までには一時間はある。向こうにもなにか事情があるんだろう」
「そうかねぇ?やっぱりガセネタなんじゃねぇのかこれ」
確かにグバルディン闘技場に着いたとき手紙の差出人と思われる人物の姿は見あたらなかった、しかしここに着いてみて初めて気がついたことが一つある。
「それはない、ガセでここの場所を指定してくるとは考えにくい」
「どうゆうことだ?」
「あくまで推そ・・・・・・っ!!」
言いかけて思わず息がつまった。
突如として街のざわめきがなくなり冷たい空間が広がっていくのを感じる・・・・・・これはいったい?
「やれやれ、ようやくおでましのようだな」
幻もその気配に気が付いたのか腰を上げ臨戦態勢を整える
「おそらく人払いの結界だろうよ、こりゃただ事じゃすみそうにないぜ」
「・・・・・・・っ!」
広がる結界の恐怖を押して私も指輪からナイフを召還する、さすがに戦いは避けれそうにない状況だ
「来るぞ!」
正面の扉がゆっくりと開かれる、そこから姿を現したのは二人の女性だった。
一人は小柄な魔術師、もう一人は軽装の剣士出で立ちからするとそんな感じだろう、しかし敵意のような者は感じない
「・・・来てくれたんですね」
魔術師の方が一歩前にでて小さな声で言う。凛としてはいるがどこか幼さが抜けていないような声、女性というより少女と言った方がいいだろう。しかしこんな少女がどうして私達のことを知っているのか?
「あの手紙は唯一の手がかりだからよ。それより貴女達は何者?少なくとも私達の自己紹介はいらなそうだけど」
とりあえず今目の前にいる二人と過去に面識はないのは確かだ。
「私はリスティア、そしてこっちが妖花。単刀直入に言えば私もティアと同じ、別次元の記憶を持っている者です」
な・・・・ッ!?
魔術師の少女 リスティアは無表情のままさらりと凄いことを言い出した。
「何故私とティアさんが別次元の記憶、といっても夜風紅葉が現れたときだけの記憶だけ・・・それを持っているかという事に関しては断言はできない、けど推測で言えば運命を操る力を内包する夜風紅葉と私やティアの力が作用し一時的無意識にだけどアカシックレコードに接続したものだと思う」
「ちょ、ちょっとリスティ!話がわかんないんだけど」
「右に同じだな」
幻と妖花が口々に言う、私もはっきりいって断片的にしか理解できていない。
「深く考えないほうがいいです。ただ私とティアは別次元の記憶がある、それだけ今は覚えて」
「それはとりあえずわかったわ、それで目的は?」
別次元の記憶を持っているというのだけではこの子が敵か味方か判断することはできない
「簡単な話・・・・・・私達が倒さなければならない敵というのは別にいます」
敵が別に・・・?いままでそんなもの姿さえ見てないけど
「今までは夜風紅葉が運命を操る能力・・・正確には世界記憶であるアカシックレコードに接続する能力まで達していなかったからアレは姿を見せなかっただけ。けど今回は違う」
「夜風紅葉が能力を操れるほどに力を蓄えてきたと?」
私の言葉にリスティアは小さく頷き、続ける
「本当の敵は夜風紅葉ではなくセドナ法王院、彼らは運命を操る能力をもつ夜風紅葉を自分らが崇拝している運命の女神セドナの生まれ変わりだと思っている」
セドナ法王院といえば運命の女神セドナを信仰しかつてフランク公国の実権を握ってたところだ。そして数年前あの男・・・・・・スリティ=クレイドによって一夜にして滅亡させられそれ以来世界の舞台から姿を消している。
なるほど、言ってしまえば法王院にとっては紅葉はセドナの生まれ変わりのようなものだ。そしてそれを阻止しようとしている私達は法王院からも敵ということになる。
「以前の力を失ったとはいえ法王院に私と妖花だけでは太刀打ちできない。それである種同じ目的のティア達の力を借りたい・・・・・・私達には情報があり、ティア達には力がある」
「・・・なるほどね、悪くはない話だわ。」
「セドナ法王院の残党はドルフィルス火山、そこの地下に潜伏しています」
「・・・・・・って、こことドルフィルス火山じゃ地図の端と端じゃないか!」
驚きを見せる幻、それもそのはずドルフィルス火山といえば東の大陸でも南東の端、そしてここグバルディン闘技場は西の大陸の北西の位置だ驚くのも無理がない。
とりあえず今は法王院が火山にいるという事実だけ確認しておく。後気になるのは紅葉の居場所だ、いくら黒幕が法王院だということがわかっても私達の当面の目的は夜風紅葉だ。現に紅葉に運命を操る力を手に入れられてしまったら法王院を押さえても意味がない
「リスティア、紅葉の居場所は掴んでいる?」
「いえ、紅葉は別次元で二回失敗しているせいか今回は前以上に姿を現していません。潜伏場所は特定することは難しい」
予想はしていたが実際聞くと落胆するな・・・
紅葉はジークが一緒とはいえほぼ単独行動、居場所を変えることは容易い。逆に法王院は団体・・・・・・群れて動けばいくら徹底していようがかならずどこかに足跡が残る。やはりわかるのは法王院の場所だけか
「・・・・・・ただ、最終的には夜風紅葉はドルフィルス火山に現れるから大丈夫」
落ち込むのはまだ早いと言わんばかりにまたしても突拍子もないことを言うリスティア
「どうゆうこと?」
「・・・・・・単純な話。ドルフィス火山でなければ夜風紅葉はその能力を使えないから」
能力を使えない?一体火山と紅葉に何の関係が?
「セドナはドルフィス火山で最期をとげた、そして今もあの地に埋葬されている。セドナの力の眠るあの地が能力を使用するのに適している、いえ・・・おそらく能力とはいえセドナの力を借りなければ人間一人で運命を操ることは不可能」
・・・・・・そして法王院はその地で紅葉が来るのを持っているという構図か、なんというか
こんな世界を揺るがすような出来事に対して計画的で且つ効率の物凄いい作戦だ
とりあえず一通りの状況は早足だが理解できた。私自身、別次元の記憶という微妙に曖昧なものを頼りにいくのは正直もどかしかったところだ
「まぁ難しいことはわからないがあんたらが敵じゃないってのはわかったぜ。しかしなんでここなんだ?ドルフィス火山が目的地とわかってればもっと近くでもいいとおもうぜ」
「そうそう、わざわざハームステインからくることもなかったとあたいは思うんだけど」
幻と妖花の意見はもっともだ。しかしリスティアがなにも考えずここを指定してくるとはおもえない
「もしティア達が夜風紅葉を見つけ倒してしまえば法王院は現れずまた別の次元で機会をうかがうでしょう・・・しかしそのとき今回のように私やティアが別次元の記憶をもっているとは限りません。だから今回ティア達には少し迷走を演じてもらいました」
迷走・・・迷走って言葉から何となくわかったような
「もしかしてそれって一回目がルラフィンで二回目がグルバディン闘技場だから?」
私の推測にリスティアは何度目かという頷きで答える。
「どうゆうことだよティア、一回目だとか二回目だとか意味不明だが」
「紅葉と戦った場所よ、つまり私達は『別次元の記憶を頼りに夜風紅葉を追っているが真実にはたどり着いていない』という役、そうゆうことねリスティア?」
「・・・迷い無くそして関係がありそうで全くない的外れな場所へ向かうことで夜風紅葉、セドナ法王院の両者の目を欺ける。でなければここまで双方の追っ手もなく来ることは難しい」
追っ手、か・・・。
確かに今回私の前に現れたのといえばスリティ=クレイドだけだ、それでもあいつが何度も襲ってくることを考えるとこの迷走は正しかったといえる
「さて目的地もわかったんだ、そろそろ出発しよう」
私は話を一旦区切り出発することを提案する。気になることはまだあるがそれは歩きながらでも思ったんだが・・・
「・・・・・・その前に」
まだなにかあるのかリスティアは手に持った杖を突き出すと小さな声で突拍子もないことをまた呟いた
「・・・私と戦ってください」
 
沈黙の流れる闘技場、その中心で幻とリスティアが向かい合う。
「やれやれ、いくら頼まれたからといっても女子供を相手にするのは好きじゃないんだけどな」
「・・・そうゆう言い方嫌い」
剣を抜き今にも突撃するような構えな幻に対して全てを迎え撃つ様子で杖を地面に突き立てるリスティア
そんな中私と水栗妖花は観客席で二人の戦いを見守る。リスティアが戦いを挑んできたのには理由がある、彼女は私達の力というのを実際見たことはない・・・それゆえ自分の力で試さなければ気がすまないらしい。ちなみに対戦相手が私じゃなくて幻なのはリスティアの指定だからだ。
「あたいは別に戦わなくてもそれなりに強そうってのはわかるけどね」
妖花が退屈そうに前の席にもたれながら呟く、確かにまぁ相手の力量を図れなければ戦士としては不向きではあると思うがあのリスティアって子がそれだけで幻に戦いを挑むだろうか?
リスティアが自分から戦闘を仕掛けるような好戦的なタイプには見えないし、いやまだあって短いがなんとなくそう思う。
「それじゃこっちからいかせてもらうぜ!!」
短い均衡状態を破り動き出したのはやはり幻だ。一気にリスティアとの距離を詰め剣を振り上げる。魔術師なんかの類と戦うとき常套手段が術者の詠唱を止めてしまうことだ、詠唱さえ止めてしまえば特に術にウェイトを置く者はそれだけで力を失う。
だがその弱点を術者がそのままにしているわけがないのも事実
「くっ、なぁろっ!」
リスティアを捉えていたはずの幻の剣が空を切る。それだけではない、気がついたときには二人の距離はずいぶんと離されている。
「なるほど、流砂か・・・・・・。」
リスティアを中心として放射状に流砂が伸びていた。その速度は目測でもかなりある、全速力で走ったとしても近づくのは困難だろう。
「ふっ、ならこっちは!」
まぁやるとは思ったが幻は体の向きを変え観客席を隔てる壁へと走り出す。
「おらぁっ!!」
気合いの入ったかけ声とともに幻は壁に足をかけそのままリスティアの方へと跳躍、走って近づけないなら跳んで近づけばいいだけ・・・・・・という発想は悪くはないと思う。
「・・・・・・“バレット”」
しかしリスティアはそれさえも見抜いていたようだ、幻が跳躍した瞬間に軽く腕を上げると聞こえないくらいに小さな声でスペルを唱える。
するとリスティアの腕に惹かれるように地面からいくつもの砂の球が幻に向かって飛び出していく
「それはこっちもお見通しだぜ!」
対する幻も先を読んでいたのかすぐさま符術を宙に散開させる。幻の使う符術というのは特殊な墨で魔力の通る回路と起爆となる印を描き、その起爆印を切ることによって回路に魔力が流れ効果を発揮する。そのため魔法が使えないものでも使える上に詠唱時間などもなく魔法的な攻撃が可能となる便利な代物だ。
その便利な代物は印を切られたことによって一気に火球へと変化しリスティアの放った砂球を撃ち抜いていく
「今度こそ、もらったぜ!!」
剣が迎撃に失敗したリスティアを捉える!ふと思ったんだけどまさか本気じゃないだろうな
「・・・・・・終わった、多重詠唱終了・・・砂竜杖から操竜杖へ移行」
だがそれも杞憂だったようだ。狙ったかのようにリスティアは三つ目の術式を展開させてくる。
あれは竜だろうか?リスティアの足元からゆっくりと竜の顎がその姿を晒し彼女の命令を待っている。
流砂、砂の弾丸、そして今度は砂の竜か・・・・・・多重詠唱もさることながらその膨大な魔力量にはおどろかされる
「・・・・・・行って」
リスティアが竜に命令を下す。ゆっくりと竜は砂に隠れた身体を天に向かって伸ばし・・・
「な、なんだとぉぉぉっ!?」
そして、それはもうあっさりと一口で幻を丸飲みにした。
・・・・・・・・・・。
流れる静寂、いや幻がやりすぎるのは予想できたがまさかリスティアのほうがやりすぎるとは思わなかった。
砂の竜は幻を飲み込んだまま微動だにしない、そしてそれを指示したリスティアも無表情のまま動く様子がない。
「妖花、幻は大丈夫なんでしょうね」
「うーん、どっちかというとあたいとしてはリスティのほうが心配かなぁ?」
・・・どうゆうことだ?どうみたってこの現状でリスティアを心配するのはおかしいような気がするんだが?
「いや砂の魔女とも言われるリスティが砂の竜を形作るのにあんなに魔力を使うの珍しいからなにかありそうだなって・・・まぁあたいの勘みたいなものだけど」
私自身はリスティアが戦うのを見るのが初めてなのでよくわからないが妖花の勘ではそうゆうことらしい。そしてその勘が正しかったことはすぐに理解することになった
「・・・・・・っ!」
リスティアの表情がほんの一瞬だが曇る、それとほぼ同時に砂の竜の口から青白い炎が噴出す・・・いや漏れ出していた
あの青白い炎には見覚えがある。
幻=クレイドが得意とし、そしてスリティ=クレイドが自分の技と言ったソリチュードストライクだ。あの青白い炎はただの炎ではない、あの炎は伝説とも言われたソリチュードドラゴンの炎と同じ魔力喪失の輝きを持っていて近くにいるだけで魔力は霧散する、つまり・・・
「リスティアはあの砂の竜を維持するためにかなりの魔力を消費していたということね」
だがリスティアの魔力を持ってしても維持できたのはあの一瞬の静寂の間だけ、今となっては竜の体は次々と崩壊し飲まれた幻の姿も確認できる。
「手加減しないぜ!いくぜソリチュード・・・・・・ストライクッ!!」
そして魔力喪失の輝きを持つ竜の炎は一気にリスティアへと向かっていったのだ
 
「・・・っ!」
勝負は決したのだろうか?巨大な砂煙が舞い上がり未だ視界が晴れない。
あの状況で青白い炎を纏い砂塵を撒き散らしてリスティアに突っ込む幻を止めるのははっきり言って無理だった、というよりもやりすぎることを予想して私が戦わせなければ良かったか
まぁそれを考えればセドナ法王院と夜風紅葉の二つの敵に狙われるのを警戒してこんなところに呼んでおいて戦いを仕掛けるリスティアの方もどうかとは思う
まぁどっちにしてもこれで二人とも充分互いの力を理解しただろう、私としては早いところ目的地であるドルフィス火山に出発したいところだ
「やっぱこっちの世界の人は凄いわね・・・・・・」
驚いているのか嘆息しているのかわからないが妖花が言葉を漏らす。いやなんというか幻が異常なだけだ、私まで一緒にしないでもらいたい
しかし“こっちの世界“ということは妖花は姫奈と同じ世界の人間だったりするのだろうか?
まぁ今はそんなことどうだっていい、ふと現実逃避したくなっただけだ
「やるじゃねぇか、避けるなんてよ」
「・・・・・・そうでもない、これは必然の結果」
砂煙の中から幻の声が、そして次にリスティアの声が聞こえる、どうやら二人とも無事ではあるようだ
声が聞こえてすぐに砂煙は収まった、舞い上がるのが砂ならばその砂をリスティアが制御したと考えるのが妥当な線だろう
「避けられるのが必然とは聞き捨てならないな」
「・・・・・・ソリチュードストライクの直線的な攻撃、そして魔力が宿った砂が魔力喪失にかかる時間には時間差、つまりはタイムラグが存在する。それを統合すれば回避することに必要な最低限の距離はわかる」
砂煙が消えた後の状況なので確実とはいえないが幻とリスティアの距離は近い、確かにリスティアは目測で二、三歩最初の位置から横へずれただけの必要最低限の移動しかしていないようだ
「こ、こいつ・・・なぁんていうか凄くむかつく言い方しやがる!」
「・・・・・・そうゆう言い方、嫌い」
戦いが終わったと思ったら今度はなにやら二人で口論?(というよりも幻がふっかけているだけに見えるが)がはじまっている、しかもこの調子だとまだかなりの時間がかかりそうだ
はぁ・・・しかしこんなパーティで大丈夫なんだろうか?
 

夜風楓
 
 
「それじゃそこの豚さん強行隊に火スペル『マジックアロー』を使用するよ」
巨大な炎の魔神と頭からすっぽりとローブを被ったオークの兵隊達を前に私の戦乙女がカード
から小さなホログラムのように浮かび上がり弓をひく
「むむ、えーとじゃそれにレスポンスしてスルトちゃんでレーヴァティンの能力を使用して、それに更にレスポンス、強行隊の能力を使用するでするよ~これでどうでする?」
同じようにカードの上にホログラムとして現れている炎の魔神がその手に持つ魔剣レーヴァテ
ィンを振り上げるとそれに呼応するようにオークの兵隊達が魔神の前に布陣をつくる。
きたよぉ、いつもこの連携に苦い思いをしてたんだよね・・・でも今回はちょっと違う!
私は手に持ったカードから一枚を引き抜くとテーブルの上に勢いよく置く。
「残念無念・・・・・・と、思いきや~ここで残ってる風のスペルで『エンジェルブレス』を使ってひめちゃんのスルトの能力を封じてっと」
戦乙女の背後からの強い追い風が魔神の持つレーヴァティンの炎を吹き消そうとする、瞬間ひめちゃんは大きく目を見開き自分の持っているカードとテーブルを何度か視線が往復させるが
しばらくしてうなだれるように肩を落とした。
「あう、ということは通っちゃうでするね・・・それで強行隊がやられて戦乙女さんパワーアップ
するから、うー陥落でするね」
テーブルの上ではホログラムの戦乙女が魔神の剣を軽々と避けそのまま袈裟斬りを繰り出して
いたが私もひめちゃんももうそれは見ていない、ホログラムの演出を待たなくても結果はもう
わかってしまってるからだ。
「ようやく五回に一回くらいは勝てるようになったなぁ」
「今の戦い振りなら大会でもいい所いけそうですよね瑞穂っち」
テーブルのカードを片付けながら楽しそうに話す私達をよそに瑞穂さんが相変わらずの仏頂面
で答える。
「私は下等生物同士の醜い争いなんかに興味は無いですね」
私達はハームステインを出発してちょうど一週間でシェイクランドに到着した、ここから出る
魔動力の船に乗って西の大陸タート村までいきそこで記憶を操る能力者のジ-ク=ダットリー
さんに会うのが今の目的。でも船の出港まではかなり時間があるので街の一角にある喫茶店の
オープンテラスでだらだらとカードゲーム『コンフリティックタロット』に興じていた。
喫茶店に関してはハームステインで失敗したから今回はちゃんとしたところ、おかしなパンが
でるような店じゃないから安心、安心っと。
「後七時間も先でするね・・・・・・・流石にずっとここにいるのも退屈でする。まさかお祭りのせい
で船の出向数が減ってるなんてタイミングが悪かったでする」
ひめちゃんが自分のカードを整理しながら呟く。お祭りというのはシェイクランドの第一皇女
であるフレア=シェイクランドさんの生誕十周年祭のことで祭りの内容にはフレア皇女のパレ
ードも含まれていているから安全面の対策として入国に関する事にはかなり厳しい警戒がされ
ているみたい、実際私達がこの街に入るときも物凄く厳しい入国審査があったくらいだ。
「それじゃせっかくのお祭りだしどこか行きます?」
「私は結構です、ただでさえ貴方達下等生物の争いで騒がしいのにこれ以上騒がしいところに
など行きたくありませんから」
私の提案を瑞穂さんは顔も合わせず無下に断る、まぁ瑞穂さんの返答は予想してたことだから気にしない。
「ひめちゃんはどう?」
「んーそうでするね、ちょっとデックの修正もしたいでするからもう少し後でよかったら一緒
に行けるでするけどかえちゃんシェイクランドの街は初めてでするよね?だったら先に観光してきたらどうでする?今の私が一緒に行くとずっとカード屋さんに篭っちゃいそうな勢いです
るよ。」
どうもひめちゃんは先程の勝負で私に負けたのが悔しかったのかテーブルに再びカードを並べ
難しそうな顔でそれを見つめている。冗談っぽくカード屋さんに篭っちゃうとか言ってるけど
この感じだとあながち冗談じゃない気もする
「じゃ私一人で行ってこようかなぁ、ちょっとお祭りの様子も見てみたいし」
私はどちらかというと瑞穂さんとは逆でお祭りみたいな騒がしい所が好きなほうだしじっとし
ているのが苦手なタイプだと思う、だから流石に喫茶店で後七時間も過ごすなんてことはでき
そうにもない。
「よし!やっぱり私一通り街をくるよ」
私は立ち上がると椅子に掛けてあった朱天月刃を背負う
「了解でする、お祭り楽しんでくるといいでするよ~」
「余計な厄介事は起こさないでくださいね下等生物さん」
「わ、わかってますよぉ!!」
まったくもう瑞穂さんは私をトラブルメーカーだとでも思ってるみたい、どっちがトラブルを
起こす性格してると思ってるんだか・・・でもそういうことは言わないでおこう。
「ふぅ~なんか変な感じだけど新鮮だな一人って」
ウェイトレスさんに外出の意を伝えると一人店の外に出る、よくよく考えてみれば記憶を失っ
てから今までまともに一人になることなんてそう多くなかったんだよね。
「さてっと、どこから見ようかな?」
軽く背伸びをしてとりあえず歩き出す、確かシェイクランドは水晶が名産だって言ってたから
クリスタルのアクセサリーとかからでも見て回ろうかな?
流石にフレア皇女の誕生祭ということもあって町の賑わいはハームステインのときよりも多い
感じ、ただ道は石畳で整備されているしあの暑苦しいかがり火もないのでそれほどの熱気は感
じさせない、どちらかと言えば大人の街って印象だ。
私はそれからしばらく出店を物色しながら歩き渡った。やっぱりどんな店でも面白そうなアイ
テムが並び私の興味を引く、虹色の煙をだす香炉とか変な猫の灰皿とかなんだろうこう絶対に
つかないでしょーって無駄な置物ほどなにか欲しくなるんだよね。
まぁでも今は見るだけで資金的にそんなものを買っている余裕は無い。私達の資金はそれぞれ
三等分してもっているんだけど西の大陸へ行く船代でそのほとんどが消える、ここで変な物買
って「船代、足らなくなっちゃった~てへっ♪」なんて瑞穂さんの前で言えるわけないじゃない!
けどまぁ手ぶらで帰るって言うのもなんだか忍びない、私は胸ポケットに直接入れている紙幣
の束を取り出しそこから船代を引く計算をしてみる。
「んーえっと、これが千の単位で、これがえっとなんだっけ十?」
異世界のここでは普通に文字を見ただけではただの幾何学的な模様にしか見えない、まぁそれ
は当然といえば当然なんだけど実はちょっと集中してみると何故かそれが読めるようになる。
読めるだけじゃない、集中して書こうと思えば別にこの世界の文字を勉強したわけでもないの
に頭にひらめいてくるから不思議だ。なんだろう?世界が自動翻訳してでもしてくれてるのか
な?
「えっとだから結局いく──ひゃぅ!!」
そんな事を考えながらぼけっとお金を数えていると突然なにかにぶつかった、よく見ると私の
腰ぐらいの高さで金髪のツーテイルに妙に高級そうなドレスを着た女の子が鼻を擦っている
「あ・・・ごめんなさい、大丈夫?」
とりあえずぼけっとしてた私が悪いのでとにかく謝罪をする・・・って、よく考えたら私が前見て
なかったのも悪いんだけど立ち止まってたんだから向こうがぶつかってきたような気もする
「いったぁ・・・・・・ちょっとどこ見てるの!ってそれどころじゃないわ、ちょっと背中借りる
よ!」
え・・・・・・あ、なにこの子?
私の返事を待つ前に女の子は少し涙目で言うとすぐに私の後ろに隠れてしまう。
なんだろう喫茶店を出る前に瑞穂さんに厄介事を起こすなって言われたのにこれはもう巻き込
まれモード?
「白い兵装の奴らが来たら適当にごまかして!大体ただの応援スタッフなのにしつこいのよ」
「え、あ・・・はい」
よくわからないまま生返事で答えてしまった、ううっ・・・・・・完全に変な事に巻き込まれてるな
女の子の言う白い兵装の人達はすぐに現れた。辺りを見渡すように来たのは左胸にシェイクラ
ンドの紋章をつけた女の子。ちょっとシェイクランドの兵士に追われてるってなにをやったの
よこの子は!
「きー全くっ!躾がなってないですわあの娘っ子は!見つけたら一から躾け直しっ!」
スレンダーな長身に緋色の長髪の子が甲高い声を上げて息巻くと後ろからもう一人の女の子が
かなりふらふらな足取りでやってくる。
「ちょっとシャオ・・・待ってよぉ、あ、歩くの早いよぉ」
だいぶ走ってきたのか肩で息をしながら藍色のショートボブの女の子が言う。
後ろで人の服を引っ張りながら隠れている女の子が言ったように確かにこの二人応援スタッフ
みたい、即席の物を着ているのだろうか服のサイズが合ってないようでシャオって呼ばれてた
子は胸がきついのか前のホックは閉じられておらずスカートもかなり短い、後からやってきた
もう一人の子に関して言えば服が大きすぎるのか袖から手がちゃんとでていなかった。
「いいポア?とりあえず我等ビックバードの基本理念、サーチアンドデストロイでいきますわ
よ!ここでばっしっと仕事をしてビックバードの名前を東の大陸に広めるのですわっ!」
「そ、そんな理念ないよ・・・・・・それにデストロイしちゃダメだって・・・」
デコボココンビといった感じの二人がそんな話をしている隙に私は女の子と気づかれないよう
ゆっくりと後ずさる、木を隠すなら森の中人を隠すなら人ごみの中って感じでこうまぎれてし
まえばそう簡単に見つかりはしないと思う。けど冷静に考えたらこの子を匿う理由も無いんだ
よね、なんか下手に匿ってこのシェイクランドの兵士さんたちに捕まったりしたらそれこそた
だじゃすまないような・・・・・・
「ねぇ、なにをやって追われているの?兵士に終われるなんてただ事じゃないんじゃ」
何か悪い事でもしたのなら説得して自首させるのが一番だとは思うので一応聞いてみる。
「それは当然自由のためよ、祭の主役が祭を楽しめないなんておかしいでしょ?」
女の子はそう頬を膨らませて言う、祭の主役?なにか今聞いちゃまずい言葉が出たような!
「あの主役ってことは──」
「わわ、ちょっとレガツィまできてるじゃない!!」
私の質問も途中でいきなり体を振り回される、あまりに突然の事に思わずバランスを崩して倒
れそうになった
「ちょ、ちょっとなにするのっ」
「黙って!あっちからも来てるの!」
女の子が目配せする方を見ると碧髪の若い兵士がこちらに向かって歩いてきている、正規の兵士なんだろうしっかりと制服を着こなしていて手には長い槍を持っている。碧髪の兵士さんは
シャオさんとポアさんの姿を確認すると周りを確認しながら二人に近づいていく。
「シャオさん、ポアさん見つかりました?」
「見つかってないから今こうしてサーチアンドデストロイしてるのですわ」
「あのっ、だからシャオ・・・・・・デストロイしちゃだめっ・・・・・・!」
うーむこれはまずいなぁ・・・・・・。
今ちょうど三人は私達の数メートル前で立ち止まっていて私は出店と出店のちょうど間にいる状態で後ろには下がれそうにないし出るには確実に三人の前を通らないといけない。
「流石にそろそろ本隊に出動してもらわないとパレードに間に合いませんよ」
「ほ、本隊なんかに連絡する必要はありませんわ!出ないと手柄が・・・じゃなかった騒ぎを大き
くするとそれを嗅ぎつけてくる奴らが必ず現れるものですわ、それを防ぐためにもここは少数
精鋭で早急にことをしゅらしゅしゅしゅーな感じで片付けるのよ」
三人の話を聞くにどうやら私の嫌な予感は当たってるみたい、パレードに祭りの主役・・・・・・こ
れはもう今後ろで私の服をぐいぐいと引っ張ってるこの女の子がシェイクランド皇国第一皇女
フレア=シェイクランドだということの確定を意味してるようなものだ。
これはもう素直にフレア皇女を引き渡した方が絶対にいいんだろうけど、それはフレア皇女が
絶対に許してくれそうにないしなぁ、ようはフレア皇女はこの祭りを楽しみたいがために城を
飛び出したって感じなんだろうね・・・・・・ってことはフレア皇女にある程度祭りを楽しませて自
主的に帰るように仕向けるしかないか
ああまったくなにやってるんだろう私
「ちょっとどうにかしないと見つかっちゃうじゃない!えーっと」
「私は夜風楓ですよフレア皇女様」
「え、あ・・・うー」
自分の正体がばれたことにいささか動揺している様子のフレア皇女を尻目に私は思考を巡らせ
る、かなりの至近距離とはいっても私自身はシャオさん達と面識はないんだからええっと・・・ 
「ちょっとお嬢さんお嬢さん!!」
思考を遮るようにすぐ隣で声がする。それは私達のいる横の売店の体格の良い割烹着を来たおばさんだった。店頭に出ている林檎飴と手に持った林檎をみるからにそれ専門で売っている人
みたい
「えっと・・・・・・」
「なんとなく状況はわかってるからね、ほら私の後ろを通っていきなよ」
そう言って手招きをするおばさん、見ると他のの露店の店主も状況をわかっているのか促すように後ろを通るよう指示する。それを後押しするようにセトラ皇女が急かすように言う
「なにぼけっとしてるの楓!さっさと進みなさい」
「え、あ・・・なんで私まで?フレア皇女様一人で行けば・・・」
「ついてきなさい、ボディガード役よ!ほらさっさといくー♪」
そのまま私は背中を押されるがまま路地の方へ歩く事になった、いやもうどうにでもなっちゃ
え!
 
「ふぅ・・・ご苦労、さすが私が見込んだ人ね」
大通りから一本離れた路地にでるとフレア皇女は小奇麗なスカートを払いながら言う、勝手に巻き込んでよく言うよ
「で、これからどうするつもりなんですかフレア皇女様」
「もちろんお祭りを楽しむのよ」
楽しむといっても大通りの方にはシャオさん達がいる、もしかしたら応援が来て大捜索な感じ
になっている可能性だって・・・・・・そう考えると今から大通りに戻ってもとても楽しめる状況な
んかじゃないと思う、かといって大通りから一本外れたこの通りは出店も出てなければ人通り
もほとんどない、あるとすれば通りに沿って流れている川くらいだ
「やっぱり戻った方がいいと思いますよ」
「やーだっ!」
私は何度目かとも思える台詞を言ったがそれを遮るようにフレア皇女は言葉を重ねすごすごと
歩き出す
「そんなことできないわ!どうせ怒られるなら楽しむだけ楽しんでからよ、だいたいあのまま
お城になんて篭っていたらパレードやらダンスパーティだけでお祭りが終わっちゃうじゃない、主役がつまんないってのが納得できないのっ」
パレードやダンスパーティ、それはもう物凄く豪華だというのは想像に耐えない。しかしなが
らそんな庶民には一度たりとも出る事が出来そうに無いイベントでもフレア皇女にとっては退屈でつまらないもののようだ、これだから世の中は難しい。
「だから私を説得して城に戻そうなんて無駄なんだからっ」
「はぁ・・・・・・」
やはり一国のお姫様ともなると我侭というかなんと言うか、とりあえず説得できそうにないってのはわかる。でもだからってこの現状どうすればいいんだろう
それからしばらく二人で歩く、静かに流れる川や遠くで聞こえる街のにぎやかな音とか人通り
の少ないこの路地を耳を澄ましながら歩くのもなんかいいなぁっとおもったんだけど
・・・・・・フレア皇女の不満は程なくして爆発した
「ちょっと楓!全然面白くないわ!なんにもないじゃない!!」
「面白くないって言われても困りますよぉ、お祭りは大通りだけなんですから」
「そこをなんとかするのが楓の役目でしょう?」
「い、いつからそんな役目になってるんですか私は」
「いいから何か面白そうな事ありませんの?」
なにがいいのかわからないけど仕方なく辺りを見渡してなにか面白そうなことをやっている所
がないかを探してみる
「あ、あそこ・・・・・・」
ちょうど向こう岸に渡るための大きな橋が掛けられているところの川原で若い男女が二人にか
なりの人数の子供達が集まっているのが見えた
「ほらなにかやっているみたいですよ」
「本当!何か面白そうなことやって・・・・・・ってちょっとまった!」
さっきまで人が居ない事をいい事に私の横を歩いていたフレア皇女があわてた様子で再び私の
背中に隠れる
「な、なんでこんなところにいるのぉ?」
皇女は思わず愕然と呟く
フレア皇女の行動を見るとなんとなく何が見えたか予想はついた。
「そりゃまぁこの国のお姫様なら知らない人のほうが珍しいんじゃ」
「そうじゃなくてこんな人通りの少ない川原になんの酔狂で貴族がいるのよってこと!!」
それはフレア皇女も同じなんじゃないかな?とも思ったがあえて言わないでおこう
「ともかくあいつに見つかったらお城に連れ戻されてしまうわ、素通りするわよ」
背中に隠れたままフレア皇女は言うがこの状態で歩くのは逆に目立ってるような気もするしか
なり滑稽な姿なんだけどどうやらわかってないみたい
「あー今度は五回も跳ねた!」
「もう少しで向こう岸だよー」
栗色の髪を短めに揃え同じ栗色のトレンチコートを着た爽やかそうな青年に子供達が集まる
「お上手ですね、御主人様」
そんな青年の様子を後ろから黒いメイド服に銀色の長髪、そして特張のある青い瞳をしたメイドさんが軽く微笑み拍手を送っている。
う~ん、まさにお金持ちの御曹司とそのメイドさんって感じだ
余計な事を考えながら私と皇女は滑稽なカニ歩きでその横を通り過ぎるのだが
「・・・・・・まさか気付いてないと思ってましたかフレア皇女」
後ちょっとという所で爽やかそうな青年が屈託ない笑顔で振り返って言う、まぁあんな歩き方して見つからない方がおかしいんだけど
「うむむむっ!やるわねデュラン=フェンバート!こうなったら仕方ないわ楓やっちゃいなさい!!」
私の背中からひょっこりと顔をだすと思いっきり指を突き出し命令するフレア皇女
「って、やりませんよ私は!!」
全く無茶を言うんだからここで私が戦ったりしたらそれこそまさに皇女誘拐犯みたいじゃない!
「楓のその背中の剣が大きすぎるから見つかったのよ!ほらその責任を取ってやっつけちゃって!」
「そ、そんな無茶を言わないでくださいよぉ」
「フレア皇女様、あまり人を困らせてはいけませんよ」
困惑顔の私に爽やかそうな青年───デュラン=フェンバートさんが助け舟を出してくれるがその様子を見てフレア皇女の機嫌は更に悪くなる
「絶対に戻らないわよデュラン、まだ全然祭りを楽しんでないんだからっ!」
そう言うとフレア皇女は離れまいとギュッと服を掴む
「困ったなぁ。エイミス、パレードまで後どれくらいだい?」
「二時間弱ですが衣装の準備の時間も含めると一時間半位ですね」
銀髪のメイドさん────エイミスさんが懐中時計を見ながら告げる。それを聞いたデュランさんは少し考えるような仕草をすると次に意外な答えを出す
「しょうがない、一時間ほど見逃がしてあげますよ。フレア皇女の気持ちもわからなくはないしね」
「えっ!本当に!?」
デュランさんの言葉に先程とうってかわってフレア皇女は笑顔を見せる、まぁ私にしてみればかなり困った答えなんですけど・・・・
「し、しかし御主人様」
「大丈夫だよ、見逃すといっても表通りには今も兵士達が探してるだろうから行けないし裏通りには出店はない、結局ここで遊ぶ他選択はないんだから」
心配そうにたずねるエイミスさんにデュランさんは表情穏やかに答える。その言葉の本当の意味にフレア皇女は気づかずにはしゃいでるが私にはなんとなくデュランさんの意図が読めた気がした
「それに僕達と一緒なら見つかってもお叱りも少ない、これはもう姫様ならおわかりですよね?」
「ん、それって遠まわしにここで 遊んでいけってことかしらデュラン」
「いえいえ“遊んでいけ”なんて命令はしていませんよ、ただ聡明なシェイクランドの皇女様ならいわずもがな最良の選択をしてくれると思い軽い助言をさせていただいたまでですよ」
デュランさんは微笑み軽く頭を下げるとそう告げる。なんていうんだろうかなデュランさんは
人心掌握が上手いというか言葉巧みに人を操る術を知っているというか・・・・・・渡世術?こうゆうのが上手だからお金持ちなんだろうなって思う。
「ま、まぁそれくらいの事言われなくてもわかってましたわ!」
・・・・・・フレア皇女ほど操られやすい人も珍しい、かな
「さて楽しませてもらうわよ貴方達」
軽い足取りでフレア皇女は川原へ降りると子供達輪に割って入る。子供達とフレア皇女は見た感じ歳は同じくらいだけどやっぱり一国のお姫様の相手ともなるとやはり先程デュランさんと遊んでいた時よりも表情固い。
「はは、ほら皆フレア皇女と遊べる機会なんてめったにないんだからこうゆうときは楽しまないと」
そう言いながらデュランさんもフレア皇女と子供達の輪に混じっていく、子供達の緊張をとるための行動なんだろうけどそれを見て私の緊張も解けた
「はぁ~っ、なんとかこれで皇女誘拐犯として捕まらなくてすみそう」
「おつかれさまです、今紅茶を淹れますので楓さんもよかったらどうぞ」
エイミスさんは妙に高そうなシートを広げると大きなバスケットからこれまた高級そうなティーセットを取り出し準備をする。
「う~ん、じゃお言葉に甘えて」
このまま帰っても良かったんだけどせっかくエイミスさんが淹れてくれるというのを無下に断る理由もないのでいただくことにした
「ちょっとまってくださいね、温度調節が難しいんですよこれ」
赤い宝玉のようなものがついたポットを眺めながらエイミスさんは言う。多分あの宝玉から熱が発生して中の水を温める仕組みなんだろう、かなり便利そうだ。
「そうだ、楓さんその間に茶葉を選びましょうか」
湯が沸くまで結構かかるのかエイミスさんはバスケットから茶葉の缶を取り出す。
「この茶葉もいいですし、あ・・・・これも結構オススメですね」
・・・・・・って、もの凄い数なんですけど
次々と並ぶ茶葉の缶の量に唖然となる。というか茶葉ってこんなにも種類があるんだ。
缶の一つを手に取ってみる、紺色の円柱状をした缶に金色のラベルが貼ってあり“ホワイトリーフ”と書かれている、これが茶葉の名前なんだろう。
ん~いつもならここいらで“接続”して変な知識が流れてくるんだけどな、こうゆう知りたい知識の時には“接続”が起きないから困る
「いつもこんなに茶葉を持っているんですか?」
「え、ええ・・・・・・御主人様はそのときの気分で紅茶をお選びになりますからできるだけそれに答えられるようにしているのですよ」
ティーカップの上にストレーナーを置きエイミスさんは答える。穏やかに輝く銀色の髪に宝石のように綺麗な青い瞳、こんな人に想われているなんてデュランさんはつくづく人格者だなぁって思う。
「茶葉の方決まりました?」
「あ、じゃこれでお願いします」
結局最初に手に取った茶葉の缶を渡した、いやだって茶葉の種類なんて知らないから選びようがないのだもの。
「ホワイトリーフですね、かしこまりました」
エイミスさんは私から缶を受け取るとバスケットから温度計や砂時計を取り出し紅茶を淹れる準備をしだした。まるでなにかの実験みたいだよ・・・・・・
「はい、それではこちらがホワイトリーフのストレートティーです」
ほどよくして目の前にティーカップが差し出される、お湯の量を測ったり気温を測定したりと素人の私にはよくわからない行動をしてから出された紅茶に以前のラナさんのときのような不安を覚えたが出されたとき香ったこう鼻がすぅっと通る感じのいい香りにその不安もすぐに取り除かれた。
「それではいただきます」
軽く香りを楽しんだ後、口をつける。口に含んだ瞬間さわやかな香りと控えめな甘味が広がる、紅茶というよりハーブティーに近い味だが結構私好みの味だ。
「凄く美味しいですこの紅茶」
「そう言ってもらえると嬉しいです、ホワイトリーフは低発酵の茶葉ですからお湯の温度の調整が難しいのですよ」
エイミスさんの難しい解説を聞きながらしばし談笑する。こんな美味しい紅茶でもまだエイミスさんの納得いったものではないみたい、それはなんとなく表情から見てとれた。
「なるほど、こう言ってしまってはあれですけど災難でしたね」
私は一通りフレア皇女につかまった経緯を大まかに話した、自分の身の潔白だけは証明しておかないとトラブルになるからね。
「そういえば楓さんは旅の途中なのですか?」
「えっ、あ・・・・・・はい西の大陸まで、でもよくわかりましたね」
ん~自分でいうのもあれだけど見なれない謎の少女風の格好のせいかな・・・・・・っと思った所でエイミスさんがティーカップをすっと上げた
「なんとなくそうかなとカマをかけてみたのです」
「ああ、なるほど」
「どちらからいらしたのですか?」
「あ、え~と・・・・・・」
本当にどこから来たのだろう私は
思わず答えに困ってしまい視線を川のほうへそらす
「ちょっとデュラン!あなたの言われたとおりにやっているのに全然跳ねないじゃない!」
「もっとこう叩きつけるんじゃなくて水平に滑らす感じで投げるんですよ」
川の方ではデュランさんとフレア皇女、そして子供達が楽しそうに石を投げ水切り遊びを楽しんでいる。そんな様子を一瞥して再び手元のティーカップに写った自分の姿を見つめなおした
「私、記憶がないんです。気がついた時にはハームステインの砂漠にいてそれ以前の記憶はまったく」
あまり人を巻き込みたくない、デュランさんやエイミスさんのような人なら助けを求めれば力を貸してくれるとおもうけど私の中にはもう一人のわたしがいる。一週間前姫奈と戦った時のような事がまた起こってしまう可能性だってないわけじゃないし、そう考えると本当は記憶の事言いたくはなかったのだけど
「あ、でも西の大陸に記憶を呼び戻せる人がいるみたいなので大丈夫みたいです」
・・・・・・だけど嘘もつきたくなかった、こんな嘘ついた所で大した事ではないけど別のわたしの意思がそうさせたのかも───
───別のわたし
「っう・・・・・・」
頭の中が揺れ強烈な嘔吐感に襲われる。私は思わず紅茶を喉へ一気に流し込む、ホワイトリーフの清涼感でかなり嫌な気分は拭われた。
「どうかなされましたか?」
「い、いえ別にちょっとむせただけです」
心配そうな顔をみせるエイミスさんに笑顔で答える。
考えてはいけない、そしてエイミスさん達を巻き込んじゃいけない!
「あ、私そろそろ行かないと」
船の出港まではまだ時間はある、名残惜しかったが至しがたない
「・・・・・・エイミスさん紅茶とっても美味しかったです。あと───」
横目にフレア皇女を見やる、どうもまだ水切り遊びに悪戦苦闘をしているみたいだ
「フレア皇女の事お願いします」
「はい、楓さんも大変でしょうがお気をつけて」
「ありがとうございます。それでは失礼します」
フレア皇女に気付かれないように控えめに言うと踵を返しまるで逃るように走り出した。
 
 

                           3
夜風 楓
 
──私は本当にお姉ちゃんが好きだったのかな?
私はあのときなにを考えていたのだろう…?私のことだ、きっと浮かれていたのだとおもう
──本当はお姉ちゃんなんて嫌いだったのかも
私はずっと大好きだったあの人と手をつないで夕刻の街を走る
その人はお姉ちゃんも好きだった人…
知識も体力も人徳もすべてが完璧で私なんかがどうやっても辿り着けない領域の人
そのお姉ちゃんから何かを奪った優越感で一杯だったのかもしれない
なんて醜い、けど私にできるささやかな抵抗
赤い、赤い、赤い……
夕焼け、あの人の顔、赤い靴──
「……でも全部そういう設定、なのよカーレア」
記憶という渦に巻きこれている自分に言い聞かせる、だがその渦は決して私を放そうとはしな
い、むしろより深いところに引きずり込むように流れが激しくなる
 
そしてその日の最後に見たのは大好きなあの人の顔でも、お姉ちゃんの顔でもなかった
目の前に広がっていく真っ赤な血と温もりが消えていく自らの体
────!!
「うぐ…っぅ……ぅ」
気持ち悪い嗚咽とともに覚醒した、悪夢の中でも最悪な目覚め。両手両足を鎖につながれてい
るせいで体のあちこちは痛いし、喉もガラガラに渇いてしまっている
カーレアは今多分転寝をしているのだろう、自分の運命も知らずに暢気なものだ
だがカーレアが転寝だったおかげであまり深いところまで見ることなく済んだのだからある意
味感謝してもいいのかもしれない
「…なにを考えているんだろうわたし」
わたしがどんな事を思おうがわたしにあるのは冷たい大理石の上で目隠しをし鎖につながれて時がくるのを待つだけの世界しかない、そこにわたしの意志、わたしという存在すらもない
大体それは私の記憶であってわたしの記憶ではない……そんなものを悪夢に見るなんてなにか
おかしい
ふとこちらに近づいてくる足音があった、足音の数からおそらく四人ほどで音の間隔からする
と三人は身長180ほどある男性で残りの一人は間隔の狭さからおそらく女性……女性はわた
しの食事係をしている紗希だとおもう、なんとなくだけど
足音がちょうど私のいる部屋の前で止まる、すぐにカチリという鍵の外れ重々しく扉が開いて
いく
……食事の時間?いやまだそんな時間じゃないはず、そもそも時間なんてわかんないんだけど
食事はいつもは紗希が一人で持ってくるはずだし今の今までそれ以外のことでこの扉が開いた
ことはない
──ただただなにか嫌な予感だけが過ぎる
静かにこちらに向かってくる足音が聞こえる。食事係の紗希ではない、男性の足音だ
「んーあの子が今回の目玉の子か~あんなに鎖で縛って大丈夫なのかねぇ?」
この声聞いたことがある、確かいつも紗希を迎えに来る危険な男だ
「いわば人であり、また神でもあるのですよ彼女は、この程度のことでは死のうにも死ぬことはできませんよ」
近づいてきている男はそう言うと私の目の前まで歩いてくる。わたしを神というこの人、間違いない私がずっと待ち焦がれていたあの人だ
「その子は死なないかもしれないけどよぉ・・・こちとらまともな情報をくれないと命が危ないんだぜぇ、そこんところわかってるのーかなぁ?」
「グレッグマン、リスティア=リースリングのことについてはこちらでも予想外のことだったのだ、致し方ないことだろう」
危険そうな男が大声を張り上げるがすぐに落ち着いた年配風の声色の男がそれを制する
「ブラックフォンのおじじには聞いてないってばぁ~雇い主のイグジットさん、あんたにきいてるんだよねぇ~」
会話からわかるのはあの紗希を迎えに来る危険な男がグレッグマン、おそらく暗殺者かなにか
だろう。そしてもう一人いるのはブラックフォンという人物、多分この人はあの人の部下だと思う。
そしてあの人の名前はイグジット…
何故私はあの人の名前をいままで忘れていたのだろう?私をここに連れてきた私の愛する人の
名前を…
「リスティア=リースリング、彼女の後ろにはサイル=イージスがいるからね。おそらくもう
僕達のことにも気がついているんじゃないかな?だからこそ凄腕の暗殺者である君にお願いし
たんだけどこれくらいの事で仕事を降りるなんて言い出さないですよね?」
男性なのに透き通ったように部屋に響くソプラノの声、あの人──イグジットの声は自然と心を落ち着かせ身をゆだねてしまうようなそんな不思議な声
「降りるとは言ってないんだねぇ~でも二度目ともなると向こうも警戒してくるだろうしねぇ」
「いいでしょう、成功報酬を二倍にします。」
軽く嘆息するようにイグジットが答える。だがその嘆息もなにか飾り気のある感じの嘆息
こうなることをとっくの昔にわかっているかのようだ
「んーやっぱり物分りのいい依頼主はいいねぇ~んじゃまぁ早速準備にはいるとしますか、行くよ紗季たん」
二つの足音がそのまま遠ざかる。前のグレッグマンの口振りから退場したのはグレッグマンと
紗希の二人だろう、そして二人がいなくなってしばらくして今度はブラックフォンの声がした
「いいのですか成功報酬二倍などと言って、ただでさえ奴の成功報酬は破格の値だというのに」
「問題ないさ、“成功報酬”としか言ってないからね。成功しなければ受け取れない金、サイルやリスティア相手にそうだな彼は五分の勝率といったところ、そして彼は本当に命を賭けることはしない、命を奪うか奪われるかの僅差の戦いになれば必ず彼は逃げを選ぶそういう人さ」
そう静かに言いながらイグジットは手でわたしの髪を梳く。
「……!」
髪を梳いた瞬間全身の力が抜け時が止まってしまったようにイグジットに身を任せてしまって
いた、猿轡だとかはされていないので喋ろうと思えば喋れるのだがなぜか声にならない
「けど別に彼が悪いわけではない、人間として当然の考えだよ。金は無くなってもまた手に入れることはできるが命はそうはいかないからね、五割の戦いに命は賭けるのはリスキーさ」
イグジットはそこまで言うとわたしの髪を梳くのを止め今度は軽く顎を引き寄せた
「…でもその五割の勝率を十割にすることも勝つ人間を変えることも君なら可能だ、覚醒
はまだ先のようだがね」
覚醒?覚醒とはなんのこと?ただそれを聞こうにも声が擦れまともに声が出ない
けど覚醒という言葉を聴いたときなぜか体の奥が熱くなっているのだけを強く感じた
「だがいつか君は運命を操れるようになる、そうセドナの女神のように」
セドナの女神?そう思った瞬間に私の唇に暖かいものが触れる
「───っ!!!」
──唇、あの人の唇だ
だがそんなずっと好きだった人の口付けもなにか無機質で無感情に思え、そして私は悟ってし
まった
ああ…イグジットは本当にわたしが待ち焦がれたあの人だったのだろうか?
多分違う、本当は私が待ち焦がれていた人なんだ
そう無理に決めつけたところで突然わたしの意識は闇に落ちた
すべてを逃げるかのように
 
私はなにかに促されるように目を開く
またあの夢、記憶を失ってから二度目の夢。今回も大理石の冷たさ、誰かよくわからない人と
キスをした感触だけはしっかりと残っていた
「ファーストキスが夢の中…っと、ファーストキスかどうかもわからないんだけど」
目の前の焚き火をぼんやりと見ながら唇を指でなぞり呟く、どうやら私は火の番をしている途
中で転寝をしちゃってたみたい
姫奈ちゃんの師匠という水栗妖花さんと別れた私達一行はそのまま大陸を東へ少し進み小さな
森の中で野宿することになったの
「はぁ…やっぱりあの火の番の決め方納得いかないなぁ」
真っ暗で静まった中夢の事なんてそうそうに忘れておもわず一人で愚痴る。
野宿をする上で火の番は重要だって瑞穂さんが言うものだからその火の番の時間を昼間に姫奈
ちゃんが大量に購入してたあのカード“コンフリテックタロット”で決めることになったんだ
けど、私ルールも大して理解してない初心者だよ、そんな状態で上級者の姫奈ちゃんや瑞穂さ
んに勝てるわけがないんだよぉ
結果もちろん最下位は私、二連敗…一応姫奈ちゃんに重複してるからってもらったレアカード
の戦乙女だかなんだかで頑張ったんだけどね
二位は瑞穂さん、「こんな下等生物がやるようなゲーム、私には似合いませんわぷんすかぷん」
とか言いそうなのにちゃっかりマイデックなんて持っていて、まぁプレイスタイルは性格が表れてるといったらいいのか嫌らしくかつ堅実な感じだった、でも意外なことに姫奈ちゃんには
手も足も出せずあっさりと負けてしまう、なんでも昼間姫奈ちゃんがでたレアカードが戦況を
大きく変えるものだったらしい
そんなわけで一位の姫奈ちゃんが一時間、二位の瑞穂さんが二時間、それで最下位の私が三時
間火の番をするという時間配分になったのだ
「もしかしてこれからずっとこんな感じなのかなぁ、だったら明日に備えてデックつくりを」
そう思ってデックケースを取り出した瞬間急に辺りが真っ暗になった。そしてすぐに焦げ臭さと煙が充満する
こ、これってまずくないですかぁ?
私がぼけっと考え事してるから焚き火はもう燃やすものもなく燻っている状態になっていた。火起こしなんてやったことないからおそらくやったとしても燻っている火を消してしまうのが
目に見えてるし。ああ、こんなところを瑞穂さんなんかに見つかったら
(全くまともに火の番もできないんですかこの下等生物は)
言われるな、確実に言われる…
そうなるともう私が助けを求められる人は一人しかいない、確か姫奈ちゃんなら火を発生させ
る魔法の道具を持っていたはず
「瑞穂さんを起こさないように姫奈ちゃんを起こす!これしかないね」
私は腹を決めて慎重に近くに立ててあるテントまで歩く。事なににつけても敏感に反応する瑞
穂さんを起こさないように鈍感な姫奈ちゃんを起こすなんて無理な話なんだけどやるしかない
「そぉっと…失礼しまぁす」
小さなテントに顔だけ覗かせる。
「あれ、姫奈ちゃん…?」
薄暗いテントのなかをじっと目を凝らして見るが中にいるのは瑞穂さんだけで姫奈ちゃんの姿
は見えない、トイレかなにかかとも思ったがきっちり寝袋が畳まれているのを見るとどこかに
出かけたって感じだけどいったいこんな夜中にどこへ行ったんだろう?
「ん~?」
頭を小突いてなにか行きそうな場所を考えるがこんな森の中これといっていくような場所もな
く、唯一あるとすれば───
「ここから南にあるとか言ってた湖くらいか」
あの姫奈ちゃんが私達を置いて先にシェイクランドへ進んだり、ハームステインに戻ったりは
しないだろう、だとするならその湖闇雲に森の中を探すよりかは圧倒的に行きそうな確率は高
い…気がする
「と、とにかく私の次の火の番は瑞穂さんなんだから急いで姫奈ちゃんを探さないと」
テントから静かに自分の刀を引っ張り出すと背中に背負った、重くてやたら長くいけどこ
んな真夜中の森の中に松明もなく進むってのはなにと遭遇するかわかったものじゃないしないよりかはましだと思う
「待ってても姫奈ちゃんの火の番はもっと先だから帰ってくるのだいぶ後かもしれないし、よ
ぉーし姫奈ちゃん捜索隊出動よ!」
私は大きく息を吸い込むと一気に森の中へと駆け出した
 
駆け出した、駆け出したのはいいんだけど…
教訓、よい子は真夜中に森の中に入らない!!
「…はぁはぁ、疲れた」
なんとかして湖までついた頃にはもう息も切れ切れしていた、湖まではさほど距離がなかった
んだけど明かりもない森の中を走ったものだから何度となく木の根に足を引っ掛けて転んだり
正面から木にぶつかったりと…ううっ、ぶつけたおでこがまだ痛いよ
こ、これで姫奈ちゃんがいなかったりしたら泣けるなぁ
おでこを擦りながら少し小高い位置から湖全体を見渡す、湖は結構広くまた夜空に浮かぶ月?
が水面に映っているため森の中よりは大分明るい
「いるかなぁ~ひーめーなーちゃん、いたっ!」
ちょうど私のいる丘から湖をはさんで反対側にかすかに赤い袴が見える、顔までははっきりわ
からないけどもうこんな異世界の森の中に巫女って言えば姫奈ちゃん以外にありえない
「よぉーし!」
丘を滑り降りると全速力で駆け出すが、勢いがつきすぎて止まれなくなる事に気がつけるほど
私って頭の回るほうじゃないみたい、姫奈ちゃんと目が合った途端にまたつんのめって転んだ
これって物凄く恥ずかしいような
「あ、楓ちゃん?どうしてこんなところへ…っというか大丈夫でする?」
「う、うん…なんとか。姫奈ちゃんにちょっと用事があって」
さっきから本当全くなにやっているんだろう私、ドジもいいところだよ。
「用事ってまだ楓ちゃんって火の番じゃないでする?もしかしてなにかあったんでするか?」
「確か姫奈ちゃんって火を発生させるアイテム持ってましたよね?あれ貸してほしいんです」
「火を発生させるって、これでする?」
姫奈ちゃんが袖口から取り出したのは手の平に入るくらい小さい真っ赤のガラス玉のようなもの、あの中に火の魔力を閉じ込めていて魔法を使えない私達でも覆っているガラスを割ること
で魔法のように火を発生させれるっていう便利なアイテムって話だ
これさえあれば瑞穂さんに怒られずにすむ!
「そう!それですっ!」
思わず手を伸ばすが何故か姫奈ちゃんは見計らったようにアイテムを持った手を引っ込める
なんだろう、姫奈ちゃんがこんなことをするなんてちょっと意外というかなんというか予想外
「あれ?姫奈ちゃん?」
「なんとなく楓ちゃんがここに来た意図が読めたでする、楓っち火を消しちゃったでするね!!」
「うっ!」
思わず後ずさる。図星なだけに言い返すこともできずに私は罰が悪そうに後ろ首を掻くしかないかった
「は、はは……まぁその、はい……消しました。それで瑞穂さんに言うとまた怒られるだろうから姫奈ちゃんを頼りにここまで来たんです」
「だったら勝負でする」
「うんうん、じゃ勝負って……勝負っ!?」
思わず耳を疑うその言葉、勝負って私と姫奈ちゃんとで?
「師匠に言われたでする、強い人と組み手をするのが上達の秘訣だって。だから私と勝負して
欲しいでする、それで楓ちゃんが勝ったらこのアイテムをあげるってのはどうでする?」
「つまり真剣勝負にするために何かを賭けて戦うってことですか、ええっと私が負けた場合は?」
「んー楓ちゃんが負けるなんてことはないとおもいまするが、じゃもし私が勝ったらわたしの
言うこと一つ聞いて欲しいでする」
しょうがないな、無下に断るわけにもいかないしこの勝負受けるしかないか
私の次の火の番は瑞穂さんだ、そう時間はかけていられない……速攻で勝負を決めないとここ
までわざわざ出向いたことが水泡になる
「わかった姫奈ちゃん、その勝負受けます!」
「それじゃ決まりでするね~」
姫奈ちゃんは軽く笑顔を見せると踵を返して私から距離をとる、夜中だってのにいつも元気だなぁ
「よぉし……!」
私は軽く息を吐くと背中の刀に手をかける。こんなことをするために刀を持ってきたつもりじゃなかったんだけどこうなってしまったからにはしょうがない
中程に更に持つ部分が存在する異形の刀。細身だけど私の身長よりも更に長いためその分ずっ
しりと重い、そして記憶を失う前の私はよくこんな刀を使ってたと感心するほどに使いづらい。
「いくでするよ楓ちゃん!!」
言うが早い、姫奈ちゃんは刀を上段に構え一気にこちらに走り出す、間合いとか読み合いとか
は完全に無視した猪突猛進
「えええぃっ!!」
「……っ!!」
勢いのまま姫奈ちゃんが振り下ろす刀を受け止める。受け止める、受け止めるの分にはこの刀
は使い勝手はいい、なんていったって刀の中程を持てることで受け止める部分には一番力を掛
けやすいんだから、だけど──
「私だって負けません!!」
刀を前へ押し出すように踏み込み一気に距離を離すがすぐに姫奈ちゃんは距離をつめて刀を振
り下ろしてくる、これでは防戦一方だ
そう私はこの刀、防御には有利だとわかってはいるが攻撃にはいまいち感覚がつかめていない
両手で持っても重い刀を振り回すって事は明らかに攻撃をはずした後体勢を戻せず、隙も大き
くなる、その隙をなんとかするにはこの刀の異様な長さを利用した遠距離からが考えられるん
だけどこの無策とも思える姫奈ちゃんの猪突猛進の近距離戦がそれを封じていた
それをなんとかして攻撃に転じないと守るだけでは勝てないよ
「せいっ!!!」
姫奈ちゃんの連続攻撃の最後の一撃が両腕に重くのしかかる
刀の重みがそのまま腕を伝わり疲労が蓄積する、おそらくこのままじゃ攻撃している姫奈ちゃんよりも先に私の方が力尽きちゃう
────姫奈の攻撃は粗いが隙というもの自体は少なく繋がっている、けど私とこの朱天月刃
を封じるには水栗流剣術では足りないわ
「…………えっ?」
また頭の中が一瞬切り替わった、この感覚砂漠で瑞穂さんと戦ったときやハームステインで買
い物をしてたときに時々あった感覚と同じ
「どうしちゃったでするか楓ちゃん!守ってばかりでは勝てないでするよっ!」
姫奈ちゃんの叫ぶ声で思考が戻るが体までは戻ってこれておらず上段の構えから放たれた強烈
な一撃に体勢が崩れる
「隙ありでするよっ!」
「っ!」
水平に放たれた斬撃をなんとか朱天──刀で受け止める。やはりなにかまたおかしくなってき
ている、姫奈ちゃんの攻撃による一撃一撃の揺れが体で受けている衝撃以上に頭の中に響く
ドクン、ドクン、ドクン
自分の耳を疑うほどに自分の鼓動が大きくなっている
──それは私の内側にいるナニカが「わたしを出せ」と扉を叩くかのように
なんなの?何が起こっているの?
私の疑問に答えてくれる人はいない、ただ見た目は変わらずとも私の内側で何かが変わってい
くのだけがはっきりと感じられる
一撃受けるごとに体の先からなにか別の者に書き換えられていくように力が抜けていく、だけ
ど体は私ではない誰かが動かし攻撃を防いでいる。
いつの間にか私はただ傍観者のように見ていることしかできなくなっていた
「そこでするっ!!」
続けざまに攻撃を繰り返していた姫奈ちゃんがこれで何度目かという強烈な一撃を放つ、受け
止めるだけでも腕に響いた一撃だがそれを今のわたしは紙一重で避け次の瞬間には一気に後方
に跳び姫奈ちゃんとの距離を離していた
(今の見切り、凄い……それに後ろにあんなにジャンプできるものなの?)
自分の体がしたことに思わず感心してしまう、なんだろう変な感覚
そしてわたしは私の意志とは反して勝手に口を開く
「カーレアには教えなければならない、朱天月刃は立ち止まって振るう刀ではないことを」
紛れもない私の声、いやまぁ私の体なんだから当然なんだけどいったい誰の意思で声がでてるのかそれは全くわからない
それにカーレアって誰?私のこと?
朱天月刃って…私の持っているあの刀のこと?
私の知らない事知ってて私の中に存在するこのもう一人のわたし……彼女は一体?
「今度はこちらからいかせてもらいます!」
一気にわたしが走り出す。けど私はただ見ているだけでなにもしてはいない
「……腕だけでは駄目、朱天月刃は遠心力をもってして真の力を生み出す」
そう言うと重心移動とかそんな感じの違いなんだろうか?とにかく物凄い速さで姫奈ちゃんに
接近する、息も切れてない……同じ体のはずなのに操っている人が違うだけでこうも変わるも
のなのかと…操っているってのもなんか変だけど
「いくわよっ!『連牙』っ!!」
軽く跳躍すると体を軸に独楽のように回転し刀を振り下ろす。
「お、重いっ!」
なんとかこの一撃を耐えた姫奈ちゃんだったが足元がふらついている、そしてわたしはすぐに
また軽く跳躍する
(これって……)
今の私は何故か見ているだけの状態で乗り物にのっているような感覚だけどなんとなく理解し
た。あの刀───朱天月刃とかいったっけ───は剣先の方が重くなっているんだ、そしてそ
れを腕の力だけでなく回転させることによる遠心力や高いところから振り下ろすことによる自
由落下の力を合わせることで本当の力が発揮されるんだ
確かにそう考えると腕だけでは駄目だ、体全体でこの武器は扱うものだというのはわかる
「まだよ!『連双牙』!」
先程の勢いのままもう一度旋回する、足で地面を蹴るステップで一気に姫奈ちゃんのすぐ前ま
で接近し刀を力一杯ぶつける
「うっ……きゃぁ!」
姫奈ちゃんの持っていた刀は簡単に弾き飛ばされ後方の闇へ消える、さっきの攻撃の勢いがそ
のまま加わった攻撃だ、最初の一撃よりも当然重い
「『朱牙』!!」
「くぅっ!!」
姫奈ちゃんは咄嗟に二本目の刀を抜くがそれさえも三回目の回転による攻撃で刀の刃が闇夜の
森の中に飛ぶ
(こ、これ以上は駄目っ!)
私はなんとか叫び全身の力をこめるが全く変化がない、なんとか力を入れて抵抗しようとするもその間にもわたしは姫奈ちゃんに近づいてく。攻撃の回転は止まったが姫奈ちゃんを追い詰めようとするのは変わっていない
(・・・・・・止まって私の体!!)
あれは………は私ではない、このまま姫奈ちゃんと戦ったら姫奈ちゃんを傷つけてしまう
──それどころか殺してしまう可能性だってある
「はぁはぁ、やっぱり楓ちゃん強いでする・・・・・・私の負けでするね」
木に凭れ掛かるようにして折れた刀を持ったまま姫奈ちゃんは座り込む、多分気がついていないんだ、今のわたしに
「勝者だけが生き残る世界、その世界で負けるものがいつまでも生きながらえる必要あるのか
しら?やり直しなさい、今度は勝者になるためにね」
そんな状況も知らない姫奈ちゃんの首元にわたしは冷たく言い放つと朱天月刃の剣先を当てる。
「あ、あれ楓ちゃん?どうしたでする?」
ようやくわたしの異変に気がついたように姫奈ちゃんが顔をあげるが次にわたしが呟いたのは
本当に短い言葉
「死になさい!」
右腕一本で軽々と朱天月刃を振り上げる、姫奈ちゃんはなんとか折れた刀を構えるがそんなも
ので朱天月刃の一撃は止められるわけがない
(止めて、止めて、止めて、止めて、止めて!!)
必死に止めようとしてもやはりどうにもならなかった、これから始まるであろう惨劇から目を逸らそうとしても目をつぶろうとしてもそれすら叶わない
──終わる、姫奈ちゃんの命が!
「ぐぁっ!!!」
瞬間、激しい腹部への痛みとともに体全身に感覚が戻ってくる、地面を激しく転がってそれが充分にわかった
「え、あ・・・・・・私」
「最後まで諦めちゃ駄目ってことでするねっ」
何故か妙に笑顔な姫奈ちゃんVサイン、そして折れた刀を持つ方とは逆の手に持った鞘が視界
に入る。なんとなくそれでなにが起こったか理解した、姫奈ちゃんは最後の最後で鞘で攻撃し
てきたんだ・・・起死回生の一撃、これがなかったら今頃私の目の前には姫奈ちゃんの崩れ落ちた
姿が写っていたのかもしれない
「はぁ~~っ」
姫奈ちゃんを傷つけずに済んだことと体の自由が利くようになった安堵感で仰向けになって目を閉じ大きな溜息を漏らす
けど一体あれはなんだったんだろう?
記憶が戻ったような感じだった、刀の名前や使い方それを知っていたわけだしでもそれだった
らもうちょっとましな戻り方とかあるじゃない、まるで別の人格が操作しそれを見せ付けられるような戻り方なんて異常だよ
それにもう一人のわたし、「教える」って言っていた、ということはなに?もう一人のわたしは
私のことを知っている前提で戦っていたということ?
・・・・・・多分もう一人のわたしと話が出来れば私の記憶に関することはわかるのかもしれない
しかし体を支配されてしまったらまた姫奈ちゃんや瑞穂さんを傷つけることになる可能性もあ
るし・・・・・・
「楓ちゃん大丈夫でするか?」
目を開けると心配そうな姫奈ちゃんの顔が見えた。ああ、動かないで目を閉じてたから何事かと心配させてしまっていたみたい
「あ、大丈夫だよ、これくらい平気平気」
上半身だけ起こすと体を捻って無事なところを見せる、でも本当は体を捻ったときに姫奈ちゃ
んに最後受けた鞘での打撃が響いてきたんだけどそこはなんとか我慢
「咄嗟にだったでするから加減もなく攻撃しちゃってごめんでする」
「気にしないでいいよ、私も本気でやったんだから」
・・・・・・まぁ本気で戦ってたのは別のわたしなんだけどね、それはまぁ言わないことにする
「でも姫奈ちゃんも強いじゃないですか、さっきの勝負も私の負けですし」
「そういえば私が勝ったら言うこと聞いてくれるって話でしたでするね」
「そ、そんな話だったね」
はは、私は結局なんのために姫奈ちゃんに会いに来たんだがわからないじゃない
火を発生させるアイテムをもらいに来たつもりがただ姫奈ちゃんの言うことを一つ聞くことに
なるなんて
「うーん、私も勝てるとは思ってなかったでするからねぇ~どんなことにしよう~?」
姫奈ちゃんは腕を組んで考える仕草を見せる、けど全然悩んでる感じじゃないと思う
それから姫奈ちゃんは演技っぽい悩み方をしばらくしてふと思い立ったように口を開いた
「それじゃこれからは楓ちゃんのことを“かえちゃん“って呼ぶことにするでする、かえちゃ
んもこれからは私のことをひめちゃんと呼んでいいでするから」
「か・・・かえちゃんって」
「ゲーム風にいうならばかえちゃんとの親密度があーっぷって感じでする?」
「あーっぷって、まぁそれくらいなら別にいいですけど」
何でも言うことを聞くなんてことを約束をしてこれならお安い御用って気分だよ、でも良く考
えたら姫奈ちゃ・・・あ、ひめちゃんとの勝負に負けたんだから火をつけるアイテムは無し?
そんな私の心の声が聞こえたのか懐の中から例のアイテムを取り出すと私に差し出す
ひめちゃんの手の中で真っ赤に光る小さな水晶、火の魔力を封じたそれは今は小さく弱弱しく
見えるのだけど一度水晶にひびを入れ空気中の魔力に触れさせるとかなりの炎を生み出す、っ
て買ったときにおじさんが話してたっけ
「はい、かえちゃんが欲しかったもの」
「でもこれって私が勝ったらって話じゃ・・・・・・」
「まぁこれは練習に付き合ってくれたお礼でするよ」
姫奈ちゃんは軽く微笑むと私の手をとり水晶を握らせる。つまり勝っても負けても目的の物は
手に入るって話に最初からなっていたのだ
「優しいですねひめちゃんは」
「そうでする?優しかったら最初から渡しているでするよ」
「あ、それもそうか~じゃあんまり優しくないね」
「むむっ!それじゃ返してくださいでするっ!」
そう言うとひめちゃんは私に飛びついてくる、っていきなりなにをするかとおもったら私の体
をくすぐりだした
「覚悟するでするよーかえちゃん」
「やーちょ、ちょっと、あはは・・・くすぐったいって!」
身をよじって抵抗しても執拗にひめちゃんは横っ腹をくすぐる
「冗談・・・きゃはは、ごめんごめんってー」
「まいったでする?」
「ま、まいったからや・・・きゃはっ、やめてぇ」
「ん、わかればいいでするよ」
ようやくひめちゃんのくすぐりから開放される
「ふぁぁ」
笑い疲れたせいか先の戦闘の疲れがどっときて眠気を誘う
あーなんかこのまま寝ちゃいたい気分だ。
しかしちょっと目をつぶったらまたひめちゃんにくすぐられ思わず身を起こした
「こんなところで寝ちゃダメ、眠りたいのならテントのほうへ戻るでするよ」
「そうだね、すっかり当初の予定を忘れてたけど瑞穂さんに見つかったらまずいですから」
立ち上がるとスカートについたほこりを払い、そばに転がってた朱天月刃に手を伸ばす
けどちょっと待って!
(これ持ったらまた別のわたしが出てきたり・・・しないよね?)
さっきだってひめちゃんが止めてくれなかったらわたしはなにを今頃何をしていたかわからない、瑞穂さんを砂漠で倒したときもこの朱天月刃を使ってたから切り替わったんだと考えるならこの刀、持ってちゃいけないような
「はぁ、物凄く向こう側に飛ばされてたでするよ私の刀」
いつの間にかひめちゃんは先の戦いでわたしが弾き飛ばした刀を探しに行って戻ってきた
(この刀のことひめちゃんに言ったほうがいいかなぁ)
「どうしたでする?早く拾って戻らないとそろそろ瑞穂っちの火の番でするよ」
「え、あ、うん・・・」
ひめちゃんの言葉に促されるまま朱天月刃を手に取る。どうやら今は大丈夫のようだった
やっぱりこの刀の事言っておこう、なにかあったときに瑞穂さんとひめちゃんで私を止めるようにしてもらえば・・・
朱天月刃を背中の鞘に横からスライドさせるように収めるとひめちゃんのほうへ向きなおす
「ひめちゃん!」
「はい、なんでするかかえちゃん」
「え、えっとね・・・・・・ええっとぉ」
私はこの秘密を伝えようと決意したって言うのに何故か今言葉にならない
ひめちゃんは呼びかけておいて何もいわない私を不思議そうな顔で見つめている。ひめちゃん
のその顔を見たらますます言いにくくなって言葉を濁すしかなかった
「あーうんん、やっぱりなんでもない」
「ん?変なかえちゃんでするね。とりあえず時間ないですしテントに戻るでするよ」
そのまま気にも留めずにひめちゃんは小走りにテントのほうへ走っていってしまう
結局言えなかった、でも決意したのになにか言えなかった事にある種の安堵感を感じてしまってもいた。よく考えたらひめちゃんや瑞穂さんに止めてもらうなんて都合のいい話・・・・・・確か
にあの別のわたしは強いけどそれを制御できないならひめちゃんや瑞穂さんと一緒に旅をする
べきじゃない、そして奇妙な縁とはいえ私の問題にそこまで付き合ってもらうのはなにか気が
引ける。ひめちゃんはそんな事気にしてそうにないけど今一緒に旅をしている状況だけでも充
分すぎるほどなんだよ・・・・・・
けど安堵感ってなんだろう、もしかしたらそれは私の中にまだ大してひめなちゃんや瑞穂さん
の事を知っているわけじゃないし旅も日数が経っているわけでもない、だからまだ旅をしてい
たいっていうのがあって、とりあえず一緒にいられなくなるかもしれない朱天月刃ともうひと
りのわたしの問題が先延ばしになった事に対する安堵感なのかも
記憶を探すたびなのに記憶が戻ることを拒否しているなんておかしな話だけど、それが今の私
本当の気持ちなんだろう
「・・・・・・はぁ、どうしたらいいんだろう」
溜息混じりに呟くと一陣の風が私の髪を今の心を表すようにざぁっと揺らしていった
                           1

幻=クレイド
 
 
「ふぁぁぁぁ~っ、あーねみぃ、眠すぎ、眠すぎて永眠しそうだぜ」
俺はこれで何度目かと言う欠伸をした。まったく今日は朝から面倒なことばかり起きるもんだ
からおちおち昼寝もできやしねぇ
「うみぃは広いなぁ~大きいふぁぁぁぁ」
外の物凄い速さで流れる景色を見ながら呟く。流石に西の大陸で造られた魔動力の船は速い
なんでもこの船一旦船内に水を取り込み水と魔力を分離、その取り出した魔力で水を吐き出し
進むらしい。ようは今までの帆船と違い風がなくても一定の速度で進むことができる画期的な
船ってことだな、まぁ最新鋭の豪華客船というだけあって乗船券だけでも相当な値打ちがする
とりあえずそこら辺でかかった費用は全部アクロポリスに請求しておくから気にしちゃいないだいたいフリーのバウンサーである俺を手紙一つで呼びつけるんだからこれくらいはしても問
題ないはずだぜ
「本日は当船ウンディーネブレス号へ乗船いただきありがとうございます、当船はまもなく中
立都市ルラフィンへ到着いたします。中立都市ルラフィンは東西大陸とは独立した都市であり
カートスル家と呼ばれる貴族がこの都市の管理をしています、カートスル家にはとても不思議
な未来予知をする巫女がおりまして……」
船内に女性の声が響く。船がゆっくり減速を始め窓の外にもルラフィンの街並みが見え始める
中立都市ルラフィン、東の大陸ウイングガルドと西の大陸グラディアルステーションのほぼ中
間に位置する小さな孤島にある都市だ
「中立都市ルラフィンに到着いたしました、当船は荷物の搬入のため約一時間ほど停泊するこ
とを何卒ご了承ください……それでは皆様良い旅を」
そういやティアと初めて会ったのもこのルラフィンだったな、あのときもまぁあいつのおかげ
でとんでもないことに巻き込まれたんだっけか
俺が変なことを考えている間に旅行客が慌しく出口のほうへ流れていく。俺も他の客に混じっ
て船外に出ると強烈な潮風が吹きぬけた
天候は俺の気分と全く逆のこれでもかってくらいの快晴だ
「ふぅ……やれやれ、相変わらずの難しい顔してんなぁあいつ」
タラップの上から街のほうを見ると俺をここまで呼びつけた張本人がちょうど俺の真下あたり
に立っているのが見えた、なにやらメモのようなものを取っているのかタラップのほうは見ず
に俯いている
なぁんかこれはもう脅かしてくれっていってるようなもんだよなぁ
「よっ!!」
俺はタラップを一番上から飛び降りる。船といっても二階建ての屋敷に相当する高さだ、飛び
降りた瞬間周りの客共が何事かと色めき立つのがわかった
まぁ俺からすればこれくらいの高さなんてなんでもないんだがな
「疾風の狩人、幻=クレイドただいま参上~!」
「ん、思ったより早かったな」
「つか、少しは驚けよ!」
やれやれ、こっちが華麗に飛び降りたってのにティアの奴は軽くこちらを見ただけですぐに手
元のメモ帳に視線を戻す
周りの客からは喝采があがったもののこっちとしては納得いかない結果だ
「とりあえず詳しい話は歩きながらする」
軽くこちらを一瞥するとメモ帳を懐にしまい足早に歩き出す
やれやれ、こいつは相変わらずの性格してやがる
「それでなんとなく来ちまったがこの『紅葉』って誰だよ?俺は知らないんだけど」
「やはり知らないか」
「やはりってなんだよ、やはりって」
慌ててティアの横に並ぶ。なんか馬鹿にされてないか俺?その言い方じゃまるで俺が忘れてて
当然みたいな言い方だよな
「夜風紅葉、少なくとも私の記憶だと二回ほど倒した人物だ。それもお前とな」
「な、まじかよ……」
まずい、どうやら俺は相当物忘れが激しくなっているのかもしれないぜ。流石に二回も倒した
人物を忘れているなんて……それに夜風紅葉という名前、それすらも覚えてないぞ
「それで今度はまたなんで復活したんだよ」
「復活したわけではない、私が戦うのは初めてだ」
は…?
あまりに変なことを言うティアに思わず足が止まる。それに気付いたティアも足を止めこちら
を振り返る
「ちょ、ちょっとまて今お前戦うのは初めてだとか言ったな」
「ああ、確かにそう言った」
「んじゃよ、もう一つ聞くが前に二度俺とお前で倒してるんだよな。その夜風紅葉って奴を」
「あ、ああ…」
俺の質問にティアは妙に煮え切らない態度で頷く、まぁ流石に自分でもわかっているんだろう
おかしなことを言ってることにな
明らかに矛盾してるんだよ、俺とティアで二回倒してるはずなのになんでティア自身が戦うの
が初めてなんだ
「一体どういうことだよ、しっかり話してもらわないとこっちだって仕事降りるぜ?」
「まぁ初めから理解してもらおうなんてこちらもおもってない」
ティアは吐き捨てるように言うと懐からメモ帳を取り出す、俺がルラフィンについたときあい
つが覗いていたメモだ。ティアはなにかが書かれているページを破ると新たなページに線を引
く、真っ白いページにかかれたのは平行に並んだ三本の線…なんだこれ
ティアはそのなかの一本をペンで指示した
「これが今いる私達の世界だとする、そしてこれが……」
そういうとティアはもう一本別の線を指示する
「また別の次元の私達の世界…」
「別の次元だぁ?」
「簡単に言うなら運命の違う私達の世界、つまり平行世界で二回私達は夜風紅葉を倒している
ということよ」
「む、ようは別の世界の俺達が倒したって事か」
俺の言葉にティアが静かに頷く
「し、しかしだな、なんでお前別次元の記憶を持っているんだ」
「何故別次元の記憶を私が持っているのかは私自身でもわからない、ただ言えることは夜風紅
葉は過去を変えようとしているということ…それもジークの能力を使って」
「ジーク?なんだよあいつが絡んでいるのかこの事件」
ジーク=ダットリーっていや、ティアのアクロポリスで契約社員してる<記憶>を操る能力者
だ。俺も何度か会ったことはあるがまぁその能力の凄さを感じさせないような軽いノリの男だったのを覚えている
「よくわからないが紅葉は必ずジークに接触して行動を起こす、その過去を変えるということ
に何らかの関係するんだと思うが」
「って、ことは今回も既にいねぇのか?」
「ああ、二日前ロリエンキュールと不審建造物の調査の途中で消息を絶っている。一応その付近をキュールとルミカで再調査しているが今のところあの馬鹿は見つかってないし、伝話によ
る応答にもでていない」
嘆息するように呟くとメモ帳をしまい再び歩き出す、俺は横に並ぶように足並みを揃えた
「過去を変える…ねぇ」
「過去を変えてしまえば今の私達の存在さえ簡単に消え去ってしまう。一個人の力でそ
んなこと許されるものではない……」
もしも過去を変えることができるのなら──
誰だって変えたい過去の一つや二つある、俺にだって…変えたい過去なんて幾らでもある
だがそれをいつまでも悔やんでたら前には進めねぇ、ましてや過去を変えるなんて今を一生懸
命生きる人間に対しての冒涜だ……
「なによりあの馬鹿をほっとくわけにはいかない」
まるで自分に言い聞かせるように言うティアの表情は険しい、普段からあまり表情を顔に出さ
ないタイプのティアをここまで険しい顔にするのとはジークのやつもよくやってくれるぜ
「まぁだいたいの話はわかったけどよ、まだ決まったわけじゃないじゃねぇか…、ジークの奴
だってどっかで油売っててそのうちひょっこり出てくるかもしれないだろ?」
ティアの奴が別次元の記憶を持っていようが夜風紅葉とかいうのが過去を変えようとしてようがあくまで今までの話では推測の域を出ていない……はずなんだが次にティアが言った言葉は
俺を完全にこの仕事に引き込む決定打となって返ってきた
「紅葉は人形を使う、それもジークによって記憶を与えられた人形だ…。あの馬鹿の能力で記
憶を与えられた人形は本物と同等の力を持つ、そして昨日現れたんだ暗黒騎士スリティがな」
「スリティ……!?」
思わず息が止まる
まさか俺のところだけじゃなくてティアのところにまで現れてやがったのか
「スリティの口から紅葉の存在の確証は得た、紅葉のほうは既にこちらの動向に気がついてい
るはず」
「ち、やれやれだぜ」
自嘲するように呟く。俺は結局最初っからこの厄介事に巻き込まれてるんじゃねぇかよ
しかしなんで、なんであいつはわざわざティアの前に現れるようなことをしたんだ?
ティアとスリティに接点なんてないはず、仮に紅葉の指示だとしてもスリティの奴が素直に従
うとは思えねぇ……。第一奴はなんで紅葉の存在をティアに明かしたんだ?
よくわからねぇがスリティの奴には夜風紅葉とは違う思惑があるに違いねぇな
「んで、ルラフィンに俺を呼びつけたって事はセトラのところで予知してもらうってわけか」
長い森を抜けるとどこぞの城並みに大きな屋敷が姿を現す
カートスル家、この中立都市ルラフィンを収めている貴族なんだがそのカートスル家の領主ダ
ーグ=カートスルの一人娘セトラ=カートスルって奴が未来予知ができる能力者なんだ
ティアの奴と初めて会ったときの仕事内容がこのセトラ=カートスルの護衛だったんだがこれ
がまたただの護衛で済むような話じゃなかったんだよなぁ
「とにかくセトラの予知能力で紅葉よりも先に行動を起こす、それしかこちらに勝機は無さそ
うだからな」
「ああ、そうだな」
なんだか今回の仕事もそれだけじゃ終わらないような気がするぜ
こういう嫌な予感だけは当たるから困るんだよなぁ
俺は今日の何度目かと言うため息をもらした
プロフィール
HN:
氷桜夕雅
性別:
非公開
職業:
昔は探偵やってました
趣味:
メイド考察
自己紹介:
ひおうゆうが と読むらしい

本名が妙に字画が悪いので字画の良い名前にしようとおもった結果がこのちょっと痛い名前だよ!!

名古屋市在住、どこにでもいるメイドスキー♪
ツクール更新メモ♪
http://xfs.jp/AStCz バージョン0.06
パスワードは[]
メイドさん
ブログパーツを無料で配布!スプレーアートに挑戦しよう
カレンダー
04 2017/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31
最新コメント
[04/02 ひおうゆうが]
[04/01 ひおうゆうが]
[04/01 水曜日]
[04/01 水曜日]
[04/01 水曜日]
ブログ内検索
Copyright ©  べ、べつに好きで書いてるわけじゃないんだからね!! All Rights Reserved.
*Material by Pearl Box  * Template by tsukika
忍者ブログ [PR]