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日記と小説の合わせ技、ツンデレはあまり関係ない。 あと当ブログの作品の無断使用はお止めください
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新しいブログはこちら

Icy cherry
http://maid3a.blog.fc2.com/


(`・ω・´)じゃあの
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僕と東雲さんが屋上に着いたとき、屋上には冷たい風が吹き抜けていた。日はもうすぐ落ちそうで校舎を真っ赤に照らしている。僕が気絶している間にかなり時間がすぎていたみたいだ。
「もぉ~離しなさいよ~ばかぁ~!」
「なんで妾まで縛られているのだ!おかしいのだ!」
そんな中、政子となぜか信長が屋上の柱時計に縛られ喚いている。すぐ行ってやりたいが今のこの状況ではどうすることもできない。
「東雲さん~待ってましたぁ~遅かったですぅ~」
僕たちの姿を確認した家康が肩に秀吉を乗せて近づいてくる。
「もうぅ~さっきから騒ぎすぎて誰か来そうで怖かったですぅ」
「大丈夫、もうすぐ終わるから」
東雲さんは静かにそう言うとこちらへと向き直す。
「平野頼友、今から私は『扉形成プログラム』で北条政子を隔離室へ送ります」
「隔離室って、『イクサカーニバル』の隔離室?」
僕の問いに東雲さんは小さく頷く。隔離室、ネットゲーム全てにあるかまでは知らないけどゲーム中で不正行為をしたプレイヤーがGMによって全く何もない空間に放り込まれることがある。先程GMがアカウント凍結できるって言ったけど不正行為をしたプレイヤーは大抵いきなりアカウント凍結されることはなくまずは一旦隔離室に送られることがほとんどだ。
そこではプレイヤーはなにもできずGMによる尋問や注意が行われそこで更正の様子が見られない場合アカウント凍結されることになる。
「頼友~助けて~助けて~」
「政子を隔離室に?一体どうして?」
古いゲームのヒロインのように助けを求める政子をひとまず放っておいて僕は東雲さんに問いかける。
「簡単な話です、本来『扉形成プログラム』は秘密裏に開発されていたものです。伊達政宗が盗み出さなければ表に出ることはなかったシステムです」
伊達政宗、あいつは僕が『イクサカーニバル』でトップランカーだったころ使っていたキャラクターだ。伊達政宗は『扉形成プログラム』を使って現実世界に侵攻しようとしていた、でもそこで先にこちらの世界へやって来てしまったのが北条政子だ。
「そして現実世界へとやってき来た北条政子、彼女の存在は私達としてもイレギュラーな出来事だったためにしばらく動向を監視していましたが彼女の『傀儡政権』の力は危険だと判断し、織田信長達に速やかに捕獲するように頼んだというのが今回の経緯です。しかし・・・・」
そこまで言って東雲さんは信長の方を振り向く。
「よもや信長が教室の破壊や多くの人を巻き込むような方法を取るとは思いませんでした。なので彼女にも一時的に隔離室へ入ってもらいます」
「えぇ~いやなのだぁ!やだやだやだぁ!」
完全に駄々っ子になって足をバタつかせる信長に東雲さんは一言も声をかけることなくこちらを向き直す。
「私から話すことは以上です。平野頼友、なにか聞きたいことありますか?」
「聞きたいことって言われると沢山あるんだけど、君達は『扉形成プログラム』なんて作ってなにをしようとしているんだ?」
ゲームのキャラクターを現実世界へと移動させる、そんな今聞いても実際に政子や信長の姿を見ても俄には信じられないトンデモ技術を一ゲーム会社が作ってなにをしようと言うんだ。
「そのことについて話すには・・・・」
「話すには?」
僕の言葉に東雲さんがぐっと近づく、そもそもなんでそんなに近づかないといけないのかはよくわからないけど。
「好感度が足りない」
「は?」
「だから好感度が足りないので教えることはできません」
ぽつりとそう漏らすと東雲さんは僕から一歩後ずさる。
まぁ教えてくれるなんて期待してはいなかったけどこの状況でまさかそんな返しが来るなんて思っていなかったから思わず面食らってしまった。
「ですがもう貴方が『扉形成プログラム』について触れる必要はありません。ご迷惑をお掛けしました、これからは『イクサカーニバル』のプレイヤーの一人としてゲームをお楽しみください」
事務的に東雲さんは言うと制服のポケットからUSBメモリを取り出す。
「ここに入っている『隔離プログラム』で北条政子を隔離室へと飛ばします、貴方と二度と会うことはないでしょう」
「頼友~!私嫌だよぉ!!帰りたくないよぉ!」
二度と会えない、東雲さんのその言葉に急にぎゅっと胸を締め付ける。なんなんだよ、このやりきれない気持ちは・・・・
「頼友・・・・助けてよぉ、私の征夷大将軍でしょ・・・・」
さっきまでとは違う、政子の悲痛な叫び。ここからじゃ表情がわからないが項垂れている、声からして泣いているのか?
それを見ると更にやるせなくなってくる。それは目の前で女の子が泣いているのになにもできない僕自身への苛立ち、なんだろうか?
「平野頼友、貴方も少なからず彼女に迷惑をかけられていたのでしょう?これからは平穏な生活を送ってください」
東雲さんはそう言いながらノートパソコンにUSBメモリを差し込みキーボードを叩き始める。
そうだ、そうだよ・・・・僕は政子がやって来てからというもの迷惑かけられまくりだ。毎日ポテチとコーラを奢らされベッドだって政子が使うから毎晩床に雑魚寝だ、今日だって好き勝手に財布を使われて全財産五十六円だよ。政子に振り回されっぱなし、そんな生活から解放されるいいことじゃないか。
「で、でも・・・・」
僕の意識とは無関係に気持ちが口に出る。でもじゃない、元より僕と政子の関係なんてイレギュラーな状況だったんだ。元の生活に戻らないと、平穏な生活に・・・・。
「でもちょっと楽しかったんだよなぁ」
誰にも聞こえないほどの小さな声で呟く。そう楽しかった、ゲームの楽しみとは違う理不尽なことや怒りたくなることも沢山あったけど政子と一緒にいた生活は楽しかった。
「え、なにか言いましたか平野頼友?」
東雲さんがキーボードを弾く指を止め振り向く。きっと東雲さんになにを言っても政子を助けることはできないだろう、でも政子が帰るのを黙ってみているなんてできない!
「東雲さん!ちょっと待っ・・・・」
「今がチャンスですぅ!!」
「えっ!?」
僕の言葉を遮ったのはなぜかさっきまで黙っていた家康だった。しかもチャンスって、え?
「秀吉、いくのですぅ!」
「ウキキッ!!」
家康の肩に乗っていた秀吉が鳴き声をあげると素早い動きで東雲さんの顔に飛び掛かる。
「な、なにをするの秀吉!?家康も止めなさい!」
「お断りですぅ~。鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス、私はこのチャンスを待っていたのですぅ!」
目の前でなにが起こっているか理解する前に家康は東雲さんからノートパソコンを取り上げ足蹴りで突き飛ばす。
「くっ、家康・・・・どうゆうつもり!?」
「えぇ~?簡単な話ですよぉ東雲さんがこれを取り出す機会を待っていたんですぅ」
家康はノートパソコンからUSBメモリを引き抜くと高々と掲げる。
「『隔離プログラム』、これさえあれば私が天下統一することができるんですぅ」
「天下統一?オヒキの家康が妾を差し置いて天下統一なんて無理なのだ!」
信長の言葉に家康は静かに頷く。
「普通ならその通りですぅ。私や秀吉は信長様をサポートするために作られたサブキャラクターでアイテムの倉庫代わりやイベントのためだけに使われるだけの存在。信長様みたいにレベルをあげてもらえたり冒険に出してもらえるキャラクターではないですぅ、なのでぇ!」
家康がキーボードを叩くとノートパソコンの画面から白い光が溢れ出す。僕のパソコンに『扉形成プログラム』がダウンロードされたときと一緒だ。
家康の体がぼんやりと光りだし勝ち誇ったように叫ぶ。
「邪魔物を全てを隔離室に送ってしまえば私が天下を取れると言うことですぅ。行きますよぉ秀吉!」
「ウキッ!」
秀吉が素早く家康の肩に登るとあっという間に家康達の姿は光の中へ消えてしまい、ノートパソコンだけが地面にガタリと落ちる。
「くっ、まさか徳川家康と豊臣秀吉が裏切るとは」
東雲さんは吐き捨てるように言うとノートパソコンを拾い上げキーボードを素早く操作する。
「まずいですね、もう既にランキングから数名隔離室へ送られているようです」
「えっ!?」
僕が駆け寄ると東雲さんは苦悶の表情で『イクサカーニバル』の公式ランキングのページを確認している。
「平野頼友、貴方の今朝のランキングは87位でしたね」
「あ、うん・・・・そうだけど」
「今は83位まで上がってます、恐らく上位の何名かが家康によって隔離室へ送られたのでしょう。隔離室に送られるとランキングからは除外されますから」
「ええっ!?」
『イクサカーニバル』のランキングは常時更新されているけどトップランカー付近になれば当然ランクを一つ上げるのだって相当な時間を要する。それだってのに僕のランキングは4つも上がっている、これは普段なら嬉しい出来事だけど今回ばかりは異常な事態だ。
「このままでは『イクサカーニバル』はゲームとして成り立たなくなってしまう・・・・そうなるとアレも」
意味ありげな言葉を呟き考え込む東雲さん、恐らく『扉形成プログラム』だけじゃなく『イクサカーニバル』には他にもなにか秘密があるのだろう、ゲームとして成り立たないといけないなにかが。
「なにか方法はないの!?」
「隔離室からキャラクターを復帰させるのは簡単ですが根本、徳川家康から『隔離プログラム』を奪い返さなければ意味がない」
「ってことは・・・・」
方法としては徳川家康を直接止めるしかないってこと・・・・そこまで考えて突如として僕の頭の中に稲妻が走る。
「そうか、これなら!いやこの方法しか現状を打破する方法はない!」
「現状を打破する方法?それは一体?」
「政子に徳川家康を止めさせるんだよ、あいつはテストプレイ用のキャラだから規格外に強し隔離されずにプログラムを奪い返せると思う」
「なるほど、確かにそれは名案だと言えるでしょう」
僕の言葉に東雲さんは何度か頷きながらそう答える。だけど僕が閃いた名案ってのはこれだけではない。
「この現状を打破するには政子の力を借りるしかない、そこで東雲さんに提案があるんだ」
「提案、ですか?なんでしょう」
「もし政子が家康達を捕まえたら政子を、北条政子を隔離せずにこっちの世界に居させてやってくれないかな?」
これが僕の閃いた名案って奴だ、我ながらあんだけ迷惑かけられた政子の心配をするなんてお人好しも過ぎると思うけどなんだかんだで今日でお別れなんて寂しすぎる。
「なるほど、名案というのは貴方に分の多い名案だったわけね」
「え、やっぱダメ?」
「ダメと言って協力してくれなければ困るのはこちら。人の弱味につけこんで提案するとは意外に強かなんですね」
東雲さんはハァと息を吐くとニッコリと微笑みを浮かべる。あその表情は諦めからきたものなんだろうがずっと仏頂面な東雲さんの顔ばっかり見ていたから思わずその笑顔にドキッとしてしまった。
「いいでしょう、その条件を飲みます。北条政子が徳川家康、豊臣秀吉を捕まえたならこの世界に戻ってもいいと」
「本当!?よしっ!聞いたか政子家康達を捕まえたら・・・・ってあれ?」
政子の方を見ると政子はじっと頭を下げて動かなかった。この世界に残ってもいいなんて話が出たら跳んで喜びそうなのに全くの無反応ってのはおかしすぎる。
「おーい、政子?」
僕は政子に近づくとウィッグが取れない程度の強さで肩を揺らす、すると
「んぁ~?なにぃ~頼友、おはようぅ」
なんともまぁ寝ぼけたお返事が返ってきた。
「お前まさか寝てたのか?」
「ん~そうみたい~だって疲れたもん。んじゃ用がないならもうちょっと寝るね」
そう言うや否や政子は再び頭を垂れ寝息をたてておやすみモードに入る。なんだろう政子のマイペースっぷりに僕の名案は
ものすごく不安になってきた気がした。



僕と東雲さん、そして縄を解かれた政子と信長の四人で東雲さんのノートパソコンを囲む。対徳川家康&豊臣秀吉の作戦会議は城川高校の屋上で今、始まる・・・・!
「うぅ~!ちょっと寝てたくらいで叩かなくてもいいじゃない、いいじゃないったらいいじゃない~!」
「いや始まってすぐに寝るなよ!今から大事な話するんだからさ!」
そして今作戦会議が始まってすぐに寝息を立てだした政子に僕がげんこつを食らわしたところだ。
「女の子叩くなんて最低なのだ~!」
「そうですね、最低ですね。しかも人の弱味につけこんで断れない提案を振ってくるなんて鬼畜ですね」
と信長に続いて東雲さんがジトーとした目でこちらを見てくる。あれもしかして僕、東雲さんに恨まれてる?
「こらそこ乗ってくるな!というか大事な話の途中でしょ東雲さん!」
「そうでしたね、平野頼友さんが鬼畜なのは置いといて話を進めましょう」
所々刺のある言い方をしながらも東雲さんはノートパソコンのキーボードを叩く。
「今の平野頼友さんのランキングは23位、ここから考えるに少なくとも約六十名ほどログインしている上位ランカーばかりを狙って徳川家康は隔離室へ送っているようです」
「んでんでようは私があの細目ぽっちゃりからなんちゃらプログラムってのをとってこればいいんでしょ?」
「隔離プログラムな、本当に大丈夫なのか?『イクサカーニバル』の世界の命運を握ってるんだぞこの作戦」
政子のいい加減な返答ぶりにこの作戦を言い出したのは僕だけど不安がどんどん積もっていくよ。
「大丈夫、大丈夫なんとかなるって~♪ということでちゃっちゃとなんちゃらプログラムで送って~」
「なんちゃらプログラムじゃなくて『扉形成プログラム』なのだ。しののめ、妾も行くのだ」
信長は立ち上がり拳をぎゅっと握ると力強くそう言う。
「敵は家康、秀吉の二人だけとは限らないのだ。北条政子のバックアップは任せるのだ、妾もトップランカーのキャラクターなら足手まといにはならないのだ」
「そうね、お願いします織田信長。では『扉形成プログラム』を起動!」
政子と信長がお互いの顔を見合わせると小さく頷き合うと東雲さんがキーボード叩く。画面から白い光が溢れだしそれ東雲さんが僕達の方へ向ける。
「頼むぞ二人とも」
「任せるのだ~」
「大丈夫大丈夫・・・・って、あれ?頼友も行くの?光ってるけど」
「えっ!?」
政子に言われて初めて自分の体に起こっている異変に気がつく。自分の手を見てみると確かに家康が消えたときのように
ぼんやり光を放っている。
「ちょ、ちょっとこれどうゆうことなの東雲さん!?」
慌てふためき僕は問いかけるが東雲さんは冷静に眼鏡の蔓を指で持ち上げながら呟く。
「そんなこと私が聞きたいですね。現実世界の人間が『イクサカーニバル』に行けるわけないじゃないですか」
「へ?」
東雲さんの返答に思わず間抜けな声が出る。いやいやだって僕『イクサカーニバル』の世界へ行ったことあるぞ、まぁ伊達政宗に引きずり込まれたって形だけど。
「いやでも僕、一度伊達政宗に引きずり込まれたことあるんだけど」
「伊達政宗に・・・・なるほど、それならもしかしたら・・・・」
なにかを思い付いたのか考え込む東雲さん。まさかあの出来事がイレギュラーな出来事だなんて思わなかった。もしかして僕の体ってヤバイことになっているのか?
「もしかしたら?」
「そうですね、えっと言いたいんですがどうやら時間切れみたいです」
「はぁ!?時間切れっ・・・・」
答えになってない東雲さんの言葉、それにツッコミを入れようとしたその瞬間、僕の目の前から東雲さんの姿が消える、いや消えたのは僕達の方か。
気がつけば僕は城川高校の屋上ではなく一面を青々とした草むらが広がる『イクサカーニバル』の世界が目の前に広がっていた。
「やっぱり頼友も来たんだねぇ」
「あ、ああ・・・・」
僕の近くには今日着ていたメイド服ではなくいつものゴシックパンクの格好に戻っている北条政子がいる。そしてもう一人・・・・
「さてと、妾達で家康と秀吉を捕まえようではないか」
「うおぉぉぉぉぉぉっ!!」
彼女のその姿を見て思わず僕は歓喜の叫び声をあげる。なんか東雲さんのさっきに口振りじゃ現実世界の人間が『イクサカーニバル』の世界には来れないとか言ってたけどここに来れる僕、大歓喜!
「なんじゃ頼友、気でも狂ったか?」
「いやぁ、こう近くでまじまじと生足を見ると気でも狂いそうになるよ」
スラリとしたモデル体型に足元まで伸びた金髪、肩まではだけた着物から覗く北半球の膨らみに色白の長い美脚!!全部僕のブログに書いた通りのエロ可愛さ!
「やっぱり織田信長はこの格好じゃないと!いやぁやっぱりロリ系よりもお姉さん系だわ、うんうん!」
「ふむ、妾の姿に驚いているのか。どうやら現実世界に家康と秀吉と出たときに容量が大きすぎて、妾だけあの格好ででてしまったようだな」
「いやぁ~いいよ信長さん!やばい、頬擦りしたくな・・・・」
「こらぁ!なにやってんのよ!」
無意識に信長の美脚に手が伸びる、だがそのいけない手を政子が素早く掴み、ついでに手首を返していらんことに捻りあげる。
「いたたたたたたっ!ちょっと政子、ギブ!ギブ!!」
「全くこの童貞は!『イクサカーニバル』の世界の命運を握ってるんだからねこの作戦は!!」
なんかさっきまで僕が政子に言っていたような科白を政子に言われる。いやなんていうかなんで急にやる気出してるんだよこいつ。
「わかった、わかった。わかったから離してくれぇ!ったくなんなんだよ」
「ふぅ~んだ、鼻の下伸ばしているのがいけないのよ」
政子は僕の手を離すとプイとそっぽ向く。
鼻の下が伸びてる?んまぁ間違いなく伸びてたと思うけどなんでそれを政子に諌まなければならないんだよ。
「まぁ痴話喧嘩はその辺に、敵さんがやってくるぞ」
「え、いや痴話喧嘩なんかじゃなく・・・・ってぇ!なんだあの数!」
信長の指差す方向を見ると地平線の彼方から足軽がこちらに近づいてくる。だんだんその姿がはっきりとわかるくらいになるとその数の多さに度肝を抜かれる。
千人、いや万人いるだろうか激しい地響きと勝鬨をあげながら突っ込んでくるのを見るとゲームとはいえ恐怖に足が震え出す。だってあれだ伊達政宗が言ってたぞゲームの中で死んじゃうと植物人間みたいな状態になるんだぞ、こっちは三人・・・・というか僕は万年戦力外通告男なんで実質一万対二人。いくら
「どうやら家康、秀吉軍の全勢力といったところかの。だがこれくらいの敵、妾の敵ではないぞ」
信長がそう言って前に出ると腰のホルスターから火縄銃を取り出し足軽軍団に銃口を向ける。黒塗り銃身に血のように赤いラインが入ったそれは『イクサカーニバル』の武器の中でもSレア、高出力のエネルギービームを放出する『鬼殺し』という武器だ。えっとここでなんで火縄銃からビームが出るの?なんて疑問は持っちゃいけない、なぜならこれはゲームだから。
「チャージ完了、妾の前に立つものは打ち倒すのみ!」
信長が引き金を引くと銃口からは想像できないほどの極太レーザービームが迸り足軽達を飲み込んでいく。土煙が激しく上がり草の焼けるチリチリとした音が聞こえる。ゲームでもそれなりに派手な技だったけどこうやって見ると本当に凄い見た目と威力だ、極太レーザービームが通った後には足軽の姿どころかごっそりと地面がえぐられている。
「初手で士気は失われたわ、この隙に一気に斬り込むわよ~」
次に政子が跳躍すると一瞬姿が消え、まるで爆撃を落としたかのように足軽達が吹き飛ばされていく。
「ほほう、流石テストプレイ用のキャラなだけある。して妾達も行くかの頼友。呆けていると置いていくぞ」
「えええっ、置いていくのだけはやめてくれよ」
素早い動きで足軽達に突っ込んでいく信長の後ろを必死に走り追いかける。しかしなんていうか二人とも強すぎる、政子と信長の前には鎧袖一触、一騎当千・・・・まるで気がつかないうちに蟻を踏み潰してしまうがごとく足軽達が簡単に倒されていく。
「そして、なんていうかえげつねぇ」
政子が刀を振るう度に足軽達の首が宙を舞い、信長が銃を解放すれば頭を撃ち抜き体だけ残った足軽が地面を転がる。悲鳴をあげる隙もなく血の雨だけが辺りに降り注ぐ。
いやゲームとしてはよくある光景だけど目の前で起こるととんでもなくそれは実に残酷な光景に映る。
「さぁて見つけたわよ~徳川家康!」
「猿もね、妾に反旗を翻すとは覚悟はできておるのだろうな」
僕がちょうど信長達に追い付いた頃には足軽達は全滅、家康と秀吉を完全に追い詰めていた。この間二分と経っていないんじゃないだろうか?
「いやぁ流石トップランカーのメインキャラですねぇ信長様」
追い詰められたというのに家康は表情も変えず相変わらずの細目で拍手をしていた。
「諦めてね、えっと~そのなんちゃらプログラム返しなさい!」
「『隔離プログラム』ですぅ。私の天下統一のためにもこれを渡すわけにはいかないのですぅ」
「そう、なら殺してでも奪い取るしかなさそうね!」
叫ぶと共に家康に銃口を向ける信長。だがそこで奇妙なことが起こった。
「なっ、銃が撃てない!?」
「ふふふですぅ、今頃気がつきましたかぁ?」
苦悶の表情を見せる信長とは対照的に残忍な笑みを浮かべる家康、いったい何が起こったんだ?
「な、なんなのよ~なんなのよったらなんなのよ~!体が動かないじゃない」
「体が動かないだって?まさか!」
身を捩ってなんとかしようとする政子の声に僕の脳裏に『イクサカーニバル』のスキルの一つが浮かび上がる。
「しまった、家康は〈亡者の足枷〉のスキルを使ってたんだ!」
「はぁい、大正解ですぅ~」
「ウキキッ!ウキキッ!」
僕が言うと家康と頭の上に乗った秀吉が嘲笑うかのように大きく手を叩く。
〈亡者の足枷〉は『倒された味方が多ければ多いほど相手の行動を長時間封じる』というスキルだ。そして先程政子と信長は一万近くの足軽をことごとく打ち倒してきた・・・・だからしばらくは行動することができない。
「後何分で行動できるようになるんでしょうねぇ」
「くっ、妾を謀るとは」
家康が『隔離プログラム』の入ったUSBメモリを取りだしなにやら念じるとそれが一振りの刀の形を成す。
「まぁその前に隔離室に送っちゃうんですけどね、この刀に触れられるだけで簡単に隔離室に送れちゃうんですよ」
余裕の笑みを見せながらゆっくりとこちらへ近づいてくる家康達。まずい、一見圧勝の攻勢と思ってたらこんな逆転劇が待っているとは思いもしなかったよ。
と、ここでとても重要なことに僕は気がついてしまった。いやなんというかこれこちらの逆転の策というかやりたくはすごくないんだけどやらないとこっちが負けるって策だ。
〈亡者の足枷〉は倒した味方の数が多いほど動きを制限される、逆を言えばなぁんにもしてない後ろついてきただけの僕は動けるってことだ。
「さぁてまずは北条政子から消えてもらいましょうかぁ。テストプレイ用のキャラクターだからなにか抜け道持ってるかも知れませんしねぇ」
「え、え~ちょ、ちょっと!頼友~!」
「くっ!」
政子の声にいてもたってもいられず駆け寄ると政子の持つ刀を掴み取り構える。わかってたけど運動を全くしてない僕の細腕には政子の刀は重い。
「頼友~!流石私の征夷大将軍!」
「私の邪魔をするんですかぁ~?あなたが動けることは把握してましたけど私天下統一には関係ないので邪魔しなければ見逃してあげようと思ったんですけどぉ?」
刀を構えジリジリと距離を詰めてくる家康を前に僕は頭の中でいくつかの考えを巡らす。家康はトップランカーである東雲さんのアカウントのキャラだけどあくまでメインは織田信長で雑用みたいなことばかりしている。レベルでいえば以前に対峙した伊達政宗ほどは強くはないだろう、なら僕にも勝機はあるのかもしれない。いやまぁ僕が倒すのは無理かもしれないけど少しでも時間稼ぎ、政子か信長が動けるまでの時間を稼ぐことができれば・・・・
「なにを呆けておるんじゃ頼友!前を見ないか!」
「えっ!?って、うわぁ!」
信長の叫び声にハッと我に返ったときには既に家康の刀が目前に迫ってきていた。
「隙有りすぎなんですぅ~!」
「うぉぉぉっ!」
家康の横凪ぎに払った刀を咄嗟に政子の刀で受け止める。が、ただでさえ重さに刀を扱いきれてないところに受けた体勢が悪かった、力が全然入ってないところに家康のポッチャリ系体重を乗せた重い一撃が加わる。そこから導きだされる答えはただ一つ。
「いってぇぇぇぇぇ!」
僕の刀が家康の一撃で簡単に宙を舞う、そしてそのまま地面に落ちることなく刀はどこかへ消えていく。おそらく政子の刀は“隔離”されたってことなんだろう。いや、今そんなことを気にしている場合じゃなかった。
「さぁ、あなたも隔離室へ行くのですぅ!」
「うわぁぁぁっ!」
無防備の僕に家康は容赦なく刀を降り下ろす。前は政子が何とかしてくれたけど政子は今僕の後ろで動けないし足が竦み逃げることもできない。ただ叫び声を上げながら頭を押さえ目を閉じるしかできない!
ああ、僕ってバカだな・・・・勝てるはずないじゃないかゲームのキャラなんかに。向こうはレベル1でだって武将と呼ばれる存在で一方僕は貧弱男子高校生、ちょっとでも勝てるかもなんて考えが浅はかすぎる。
ああ、隔離室ってどんなところなんだろ?こんなことなら信長の美脚をスリスリしとけばよかったなぁ、というかまずどれくらい痛いんだろう隔離室どころか死ぬんじゃないのかあの刀を吹き飛ばされた一撃で頭を殴られたら・・・・
「・・・・って、あれ?」
てっきりこの長々と妄想している間に僕の人生ジエンドと思ったんだけど一向に斬られる様子がない。恐る恐る目を開けてみるとなんていうか恐ろしいことになっていた。
「どうなってるんだこれ?」
目の前には家康の刀が僕の腕に触れている、制服が切れているけど刀は肌に触れるか触れないかのところで止まっている。
いや、止まっているのは刀だけじゃない。僕の目の前には徳川家康が細い目を見開き怖い顔で止まっている、一体何が起こったんだ?と辺りを見渡すと僕達から少し離れたところよく『イクサカーニバル』見慣れたポップアップウィンドウが浮かんでいた




『サーバーとの接続が切れました』




その文字を見た瞬間、ステンドグラスが割れるようにして景色にヒビが入り崩れ落ちる。卵の殻が濾そげ落ちるようにして向こう側には僕のいた現実世界が見える。
それを認識し始めると政子や信長、家康の様子も変化していく
政子は普段着のゴシックパンクからメイド服に、信長は美脚のモデル体型から残虐非道のロリ将軍へ、そして家康が僕に振りかぶった刀は『隔離プログラム』の入ったUSBにその姿を戻す。
なんで急にサーバーが落ちたのかはわからない。けどこのゲームの世界から現実世界に戻る一瞬のタイミング、これはチャンスという以外何者でもない。
「わるいけどこれ、返してもらうよ!」
家康からUSBメモリを奪い取るとほぼちょうどのタイミングで周りの景色が現実世界に戻り停止していた政子達が元に戻る。
「あ、あれ?戻ってきちゃった?」
「サーバーが落ちて妾達は現実世界に戻されたのだ~」
流石に現実世界では〈亡者の足枷〉の効果は発揮しないようで政子も信長の行動も制限されず元に戻っている。
そして、家康は・・・・
「な、なんでこのタイミングでサーバーとの接続が切れるんですかぁ~?わざとですかぁ~偶然なんですかぁ~?可愛くないアイドルイメージキャラクターにしている暇あったらサーバー強化しやがれってんですよぉ~『どうせレア装備あげるから一回やらせて』とかやってんだろぉゴミ運営がぁ~私の崇高な目的の邪魔するんじゃねぇよですぅ~」
と低い声で恨み節を吐きこちらを睨んでいる。
「『イクサカーニバル』の世界を壊そうとした人に運営批判なんてされたくないですね」
その言葉と共に東雲さんが僕の背後から姿を現す。恐らくさっきの家康の恨み節は東雲さんに向けられたものだ。
「しかし予想通りですね、サーバーが落ちるとは思いましたよ」
「そうなの?」
僕の言葉に東雲さんが小さく頷く。まさかあの絶妙のタイミングで東雲さんがサーバーを落としたのか?
「そうか東雲さんがサーバーをナイスタイミングだったよ」
「いえ私ではないですよ、サーバーを落としたのは平野頼友貴方です」
「え、僕が?」
僕がサーバーを落とした?って僕ってなにかやったんだろうか、ただ無為無策にって家康に挑んで無様に負けたってだけだと思うんだけど。
「本来現実世界の人間が『イクサカーニバル』の世界にいけるはずがないと言いましたよね」
「あ、ああうん」
けど僕はあっさりと『イクサカーニバル』の世界に入ることができた。まぁ念願の二次元の世界だぁと思いながらも毎回ひどい目にしかあってないけど。
「『イクサカーニバル』の世界にあっさりと入れる貴方の体はデータ化しやすい存在になってしまっているようです」
「データ化しやすい!?」
「そして人間をデータ換算すると膨大な情報量になります。大量接続が予測されている通常のフィールドでは大丈夫ですが隔離室のような本来不正行為をしている人間だけを送るようなところに大量のデータが流れれば」
「サーバーが処理できずに落ちるってことか」
つまり僕が家康に隔離室に送られそうになったあのときに膨大な情報量が弱いサーバーに流れてサーバーが落ちて助かったってことだ、しかし僕の体がデータ化しやすいって一体どんな状態になっちゃってるんだよ
「ちょっとそこぉ~なにをくっちゃべってるんですかぁ~?まだ私には『隔離プログラム』が・・・・あれ?」
「ああ、家康が探しているのはこwmれだろ」
僕はさっき奪ったUSBメモリを見せる。そこで初めて家康は自分がUSBメモリを持っていないことに気がついたようだ。
「なんであなたがそれを持っている,んですぅ!!」
「なに、サーバーが落ちたときにちょっとね。ということで、東雲さん」
「ええ、ありがとうございます平野頼友さん」
東雲さんはUSBメモリを僕から受けとるとノートパソコンにセットしキーボードを弾く。
「これで貴女の野望は潰えましたね、徳川家康」
「くっ、まだですぅ!ひ、秀吉!」
狼狽えながらも家康は秀吉を呼ぶ。だけどあの猿は返事をしない、なぜならば・・・・
「秀吉ならここでグルグル縛りの刑なのだ!」
「猿に猿轡でサルサルグツワ~なんちゃって」
とっくの昔に信長と政子によって秀吉は時計台の柱す巻きにされているからだ。
「くっ、ここまでか・・・・」
「では徳川家康、貴女を隔離室へ送らせてもらいます」
「は、はは・・・・本気で言ってるんですかぁ?」
もはや勝ち目がないとわかったのか家康の声には覇気がない、東雲さんにすがるような目をしながらか細く声を漏らす。
「す、すぐに元に戻してくれるんですよねぇ?私がいないといらないアイテム倉庫に入りきりませんものねぇ、一生私倉庫番やりますよぉ、冒険につれていってくれなくても平気ですから、だからだから隔離室に送るのはやめ・・・・」
なりふり構わず這いずり寄ろうとする家康。その姿を一瞥することもなく東雲さんは片手でキーボードを打ち込み誰にも聞こえないような小さな声でこう呟いたのだ。
「えいえんは、あるよ」



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

メンテ明け~!! - 2013.04.07 15:58 編集 URL


はいは~い、三度の飯より二次元美少女大好き~!
「ヤキトリはいらない」管理人の平野頼友ですっ!

いやぁ昨日の公式ランキングハッキング事件大変でしたねぇ
ここ見ている人で被害にあわれた人いるのかな、ちょっち心配です。
僕も学校で公式ランキング見てたら20位台に上がっていてちょっとビックリしましたよ。まぁでもなんかメンテ明けたら90位台に落ちてて・・・・ヘコみました。
んまぁ運営からお詫びのアイテムも貰えましたし頑張りますけどね!



それで文化祭はどうだったかって?な、なんのことかなぁ?

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「ふぅ、まぁこんな感じでいいか」
夕日の差し込む自分の部屋で僕はキーボードを叩く。
いつもの内容薄いブログ記事を打ち込むと日記を更新ボタンを押す。
まぁなんていうか今回もどっと疲れることばかりだったなぁ、政子が狙われたのもビックリだけど、ゲームのサブキャラクターが反乱を起こすとか想像もできなかった。
いうなれば僕のやっている『イクサカーニバル』ってのはただのゲームではないってことだ、僕の使っていた伊達政宗や東雲さんが使っていた徳川家康、豊臣秀吉。それぞれがゲームのキャラなのに自分の意思って言うか自我を持っている。
なんで運営はこんなことをしているのか?『扉形成プログラム』もそうだけど謎は増える一行だ。
「ま、考えてもしょうがないな。さぁて明日は休みだし『イクサカーニバル』を徹底的にやりたいところ、なん・・・・だけど」
そう言って僕は後ろを振り返る。そこには
「コーラとポテチ!やっぱりゴロゴロしながら食べると格別だね」
「焼き鳥うまうまなのだ!」
人のベッドの上でコーラ片手に宴会を開いている政子と信長、もうどこのおっさんなんだよ。そしてもう一人、正座した膝の上にノートパソコンを乗せてジトーとした目でこっちを見ている美少女が一人。
「あのぉ、東雲さんがなんで僕の部屋に?」
僕の問いかけに東雲さんは丸眼鏡の蔓を指で押し上げながら答える。
「平野頼友、それは簡単な答えですね。重要な仕事をしに来ただけです。北条政子の監視とレベル上げを手伝ってもらうためにね」
「そ、そうなんだ」
どっちが重要な仕事なんだろうなぁ、さっきから政子の方なんか見ずにノートパソコン弄ってるだけに見えるんだけど。
「さて新しいアカウントができました、いつでもいけますよ平野頼友」
「あ、新しいアカウント取ったんだ」
「ええ、徳川家康、豊臣秀吉は隔離室ですし織田信長は随分とこちらの世界が気に入ったのか帰る気もないみたいですから」
『イクサカーニバル』のキャラスロットは三人、全員使うことができないから新しいアカウント取ったということか。
「次はどのキャラをメインで使うの?やっぱり織田信長?」
「徳川家康ですね」
ノートパソコンに視線を動かし僕と顔を合わせないようにして東雲さんが呟く。
「徳川家康?なんでまたそんな・・・・」
そこまで言いかけて僕は気づいた。なんで東雲さんが徳川家康を選んだのか、反旗を翻した家康を隔離室へ容赦なく送った時の東雲さんは冷徹極まりなかったがやはり心の何処かで気にしていたんだろう。だから冒険へ連れていってもらえないサブキャラクターだった徳川家康をメインで使ってあげようとそうゆうことなんだろう。
随分とゲームのキャラクターに感情移入してるなぁ、ってそれは僕も一緒か。
チラリと横目で政子の姿を捉える。大好きなポテチを頬張りながら満面の笑顔を見せる政子、それを見ていると僕の選択は間違いではなかったと思わせてくれる。ま、これからも面倒なことが一杯あるんだろうなぁって不安はあるけど今はまぁこのつかの間の平穏な日々を楽しもう、そう僕は思うんだ。



おわり
 ツンデレ武将がやってきてラブコメになるとおもいきや俺が征夷大将軍になっていた2

第二話:残虐非道ロリ将軍がやってきて鳥類絶滅大ピンチ?


『王子様が盟約の実行を迫るのなら、その女の子はお菓子の国に連れて行かれて、この世界からいなくなっちゃうんじゃないかって』
「ほぇ~」
朝の早くからテレビの連続ドラマを食い入る様に見る美少女が一人。見新しい制服に身を包みまるで池の鯉のようにあんぐりと口が開いている。
真っ白な肌に水晶のように透き通りぱっちりした瞳、真っ赤な薔薇のような髪をツインテールにしている彼女が巷で噂のゲームの世界から飛び出してきた美少女、北条政子である。
そしてそんな美少女と同じ部屋で生活すると言う一見素敵なラブコメ展開をさせられているのが僕、ごくごく普通の男子高校生と思いたい平野頼友だ。
まぁ現実は聞くも涙、話すも涙の非情なものなんだけどね。
「ねぇねぇ頼友」
そんなことを考えていると政子が横に座る僕の袖をぐいぐいと引っ張るとまぁた意味不明なことを言い出す。
「私も源頼朝様と盟約結んでお菓子の国に連れてかれたい~」
「いやいやこれドラマの話だから、しかもこれ連れてかれたらあんまり良くない話だから!話理解してるのかよ!?」
「お菓子の国を目指す話でしょ?」
「全然違う、全然違うよ!!お前は毎日このドラマ熱心に見てるくせに話理解してないのかよ!」
とまぁこんな政子との下らない茶番をするのももう既に二週間この関係にも慣れたもんだ。
二週間前、戦国時代を元にしたネットゲーム『イクサカーニバル』で僕は伊達政宗を使うトップランカーだった。
けど信じられないことだがこのゲームのキャラであるはずの伊達政宗が現実世界への侵攻を目論み、『扉形成プログラム』とかいうのを産み出したんだけど実際伊達政宗より早くその扉を通ってきたのはこの僕の隣にいる北条政子だった。
・・・・オーケー、オーケー。今きっと皆は「北条政子がいるのは戦国時代じゃなくて鎌倉時代だろ~そんなこともわからないの?童貞なの?」とか思ったんだろ?いやでも僕も何故だかはわからないんだけど実際北条政子はこの『イクサカーニバル』の隠しデータで更にはテストプレイ用データ、トップランカーの僕が育てた伊達政宗を軽くあしらうほどの強さをもった奴なんだ。
まぁその政子の強さのおかげで伊達政宗の現実世界侵攻と言う野望は潰えたが僕のキャラクターデータも消えてトップランカーじゃなくなってしまうというね、折角作ったブログがまさかの二日目で「元トップランカーのブログ」になるとは思いもしなかったよ、まったく。
とはいえデータが消えて落ち込んだのは二日ほどで三日目からはまた僕はまた『イクサカーニバル』をやっているんだけどね。
「あー面白かった。頼友~今日文化祭だよね、そろそろ出掛けた方がよくない?」
「ああ、うん。もうそんな時間か」
どうやら僕の長々とした説明の間にドラマも終わってしまったようで部屋の掛け時計も八時を過ぎていた。
政子もなんだかんだで僕と同じ学校へ通っている。「源頼朝を探すこと」と「現実世界の娯楽を楽しむこと」の二つの目的で現実世界にやって来ている政子にとって学校ってのは目的を果たす格好の場所、らしい。どう考えても前者の目的は不可能が気がするがまぁ現実世界にゲームのキャラがでてくるようなこの現状だ、もしかしたらありえなくもないかなとは少しだけ思っている。
「文化祭だからって羽目を外しすぎるなよ」
「はいは~い」
一応釘を刺しておくが僕の言葉なんてまるで聞いてないような生返事をすると政子は部屋を出ていく。
「絶対、なにかやらかすだろあいつ・・・・」
僕はため息混じりに後ろ首を掻くと学校指定の鞄を担ぎ、スマートフォンを充電器から外すのであった。



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ランキング上がりました - 2013.04.06 08:07 編集 URL


どうも~「ヤキトリはいらない」の管理人 平野頼友です!
愛しの伊達政宗ちゃんが消えて落ち込んでいた僕ですが
サブキャラクターからレア装備を集めて一気にレベル上げをやったらとうとうプレイヤーランキング87位にまで戻ってこれました!

まぁこっから上がるのが苦行なんですけどね~(涙)

ちなみにご存じかと思いますがプレイキャラクターを伊達政宗から織田信長に変えました!
織田信長は攻撃力が初めから高いから強い敵を狩れてレベル上げが楽なんですよね。
まぁこの方法は今トップランカーである「Shinono」さんのやり方を真似しただけなんですけど技術がないと上手くいかないからいきなりやろうとしても無理かもしれません

いやぁにしても使ってみてわかったんですけど織田信長ちゃんも可愛いですね!
可愛いというかエロ格好いいというか
スラリとしたモデル体型に足元まで伸びた金髪、肩まではだけた着物から覗く北半球の膨らみに色白の長い美脚!!
踏まれたいですよね!!!


踏まれたいぃぃぃ!!!

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「相変わらずブログでの自分のテンション高いな」
桜並木を歩きながら桜には目もくれず、僕はスマートフォンを弄りブログを更新しポツリと呟く。
「なにか言った頼友?よっ!ほっ!」
「なんでもない、こっちの話。というかそんなにはしゃぐと転けるぞ」
さっきから色の違う石畳だけを踏みながら舞い落ちる桜の花びらに手を伸ばすなんて今日日小学生でもやらないような遊びに興じている政子。
「大丈夫、大丈夫~♪だって今日はお祭りだよ~はしゃぎたくもなるでしょ~」
石畳の上でつま先立ちになりクルクルと回って見せる政子の姿はさながら春を告げる花の妖精・・・・もしくは春の陽気に浮かれたただの変人に見える。
「ただの文化祭にはしゃぎすぎだって」
「え~だってお祭りでしょ、人が一杯来るんでしょ?もしかしたら愛しの源頼朝様が来てくれるかもしれないじゃん!」
自信満々で答える政子に「それは絶対にない」と心の中でツッコミを入れて歩を進めるとしばらくして僕の通う城川高校の校舎が見えてくる。
城川高校は勉強も運動も平均クラス、僕の住む地域でよっぽど頭が良いかよっぽど頭が悪いかしないかぎり大体の生徒が中学からエスカレーター式にこの高校に通うことになる。
この城川高校の文化祭は春に行われる。普通文化祭って言えば秋のイメージだけど新入生の歓迎もとい各部活の紹介を兼ねて
いるためらしい。
「まぁ文化祭なんてのはリア充達のお祭りで僕には関係ないの」
どうせ今回も中庭あたりでだらだらとスマフォを弄ってるだけで終わるんだからな。
「お~皆準備してる準備してる~」
僕の言葉なんて完全無視で政子は小躍りながら辺りを見回している。確かに普段のこの時間なら生徒もまばらといったところなんだけど文化祭ともなると校庭から校舎にいたるまで多くの生徒が準備にごった返している。
「あちこちから良い匂いがする!楽しみ~!!」
「はいはい、それはよかったな」
「ん~もう!さっきから頼友暗すぎ~!しょうがないなぁ」
政子はそう言うと足を止め、踵を返し、ぐぐぐいっとこちらに近づいてくる。
「な、なんだよ・・・・」
大体政子がこうやって近づいてくるときはろくなことをしでかさないんだ。政子には一つ恐ろしい特殊能力がある、それは政子が『傀儡政権のはじまりよぉ~』なんて言いながら相手の額を弾くと相手を少しの間政子の思うように動かすことができるというそれはそれは恐ろしい能力。そしてその被害者が僕、出会って早々ポテチとコーラを取りに行かされたり肩を揉まされたり征夷大将軍にされたりと、まぁ散々な目に遭っているんだ。
「ふふふ、一緒に祭りをまわる相手のいない可哀想な童貞頼友のために超絶美少女のこの北条政子様が一緒にまわってあげようじゃないか」
「は・・・・はい?あれ?」
てっきり『傀儡政権のはじまりよ~』なんてのが来ると思ってただけに政子のそんな言葉は意外だった、意外だったけど
「そうゆうわけで全部頼友の奢りね」
「だぁぁぁぁぁっ!!また俺の奢りなのかよ!!!」
結果は結局一緒、そして僕の叫びだけが桜舞い散る校庭にむなしく響き渡るのだった。



僕のクラス、二年A組(正確には学年が上がったので三年A組なんだが)の文化祭の出し物は悪友である三奈本が言い出したメイド喫茶である。
文化祭でのメイド喫茶なんて所詮は学生が準備するもの、お遊び程度のものだと思っていたんだけどまぁ教室に入った瞬間僕と政子の口からは自然と感嘆の声が漏れていた。
「な、なんだこりゃ」
「すごい、すご~い」
床に敷き詰められた真っ赤な絨毯にガラス張りのテーブルが六脚、学生の教室感溢れるロッカーや掲示物はすべて取り払われ天井からはどでかいシャングリアがこれでもかってくらい存在を誇示している。
外側は完全に教室なのに中に入った途端高級ホテルのスウィートルームに早変わりとはこれにはさすがの僕も唖然とするしかなかった。なるほどどうりで三奈本の奴が『設営手伝う必要ないぜ』と言っていたわけだ、だってこれ完全に業者の仕業だよ。
「おお、頼友に政子ちゃんおはよう!」
そしてその豪華絢爛な教室の真ん中で異質な迷彩服を身に纏った我が悪友、三奈本が仁王立ちで構えていたことに更に唖然とする。
「おはよう三奈本・・・・って、なんで迷彩服なんて着てるの?」
「それはだな頼友、今俺の中で『軍隊モノ』ブームだからだ!」
「あーっ、なるほど」
最後まで聞く必要はなかった。自他ともに認める超絶変態野郎の三奈本の口から出るジャンルの話なんてAVの話以外にないんだからな。
「いいか頼友、戦場と言う命の危険に晒されている状況だからこそ激しく男女は燃え上が・・・・」
「もうその話はいいよ。ところで他の皆は?」
長くなりそうな三奈本の話をばっさり断ち切って僕は教室を見渡す。でも教室の中にいるのは僕と政子、それと三奈本だけのようでこれじゃメイド喫茶じゃなくてミリタリー喫茶なんじゃないの?
「ああ、ダメイド達は朝練に行ってるよ。そろそろ戻ってくる頃なんじゃないかな」
「朝練ってなにやらしてるんだよ」
「なにってメイドっていうのはだな、掃除洗濯から料理までを完璧にこなし更には夜伽までするんだから体力が基本なんだ」
「へぇ~なんか大変そう、メイドさんって」
なんか隣で政子が妙に納得しているけど、いやいやそれ文化祭でやる必要はないだろ。
「まぁということで俺が選抜したダメイド達には今日まで徹底的にメイドとしての教育を施したんで期待して良いぜ」
「へ、へぇ・・・・そいつはすごいね」
自信満々に三奈本は言うが正直どこも共感できそうになく棒読みのような返事をするのが精一杯だ。
・・・・というかあれ?ここで一つ疑問が沸いてくるんだけど
「そういえば政子もメイドをやるんだよな?」
「そだよ~。この超絶美少女の私がじきじきに傅くのよ、感謝してよね!」
僕の言葉に政子は張りのある胸をぐんと突きだし答える。
そうだ、だってメイド喫茶をやることに決まったときに率先してメイドやりたい、メイドやらせろと言い出したのは政子だからな、よく覚えている。だからこそ・・・・
「ああ、そこはどうでもいいんだよ。なんていうの?政子はなんでその訓練に参加してないの?」
少なくとも俺が知る限り文化祭の準備中政子が朝練というか訓練のようなものに参加しているそんな様子はまるでなかった。家に帰るなりポテチを食べコーラをラッパ飲みしながらゲームをやるか漫画を見てるかしかしてないからなこいつ。
「そ、それはあれよ!私が超絶美少女だからやらなくていいって三奈本が言ったの、そうでしょ」
「あーうん、なんかそんなこと言った気がするなぁ。んでもなんでそんなこと言ったのか全然覚えてねぇや」
三奈本の言葉に僕は政子が『傀儡政権』を使ったのを確信し政子を睨み付ける。
「まさ・・・・いや、北條さん・・・・あんた、やったな?」
「やってない、やってないよぉ!あはは~頼友は細かいこと気にしすぎだから童貞なのよ。と、いうことで私は着替えてくるね~」
僕からの視線を避けるようにして政子はそそくさと教室から出ていく。なんていうかことあるごとに能力を使ってさぼるんだからなあいつは。とはいえ文化祭のメイド喫茶のために訓練を強要されるのは確かに逃げ出したくもなるか。
「サー!失礼します!!」
そんなことを考えていると教室の扉が開きぞろぞろとメイド服に身を包んだクラスメイト、略してクラスメイド達がアサルトライフルの代わりに竹箒を胸に構え入ってくる。
「サー!教官、朝練を終えて来ました!」
「うむ・・・・これにてこの『ドキドキ文化祭で御主人様をメロメロだ第一段階』作戦全行程を終了した」
なんだその頭の悪そうな作戦名は、それなのにしっかりとクラスメイト達は三奈本の前に起立整列している。
「えーコホン!」
三奈本は一つ咳払いをすると大きく息を吸いどっかで聞いたような台詞を高らかに叫びだす。
「本日をもって貴様らはダメイドを卒業する。本日から貴様らはメイドである!姉妹の絆に結ばれる貴様らのくたばるその日までどこにいようとメイドは貴様らの姉妹だ!多くはベトナムへ向かう!ある者は二度と戻らないだが肝に銘じておけ!メイドは死ぬ、死ぬために我々は存在する。だがメイドは永遠であるつまり―――貴様らも永遠である!」
「サー!イェッサー!サー!」
「では今日の文化祭のために尽力してくれ!解散!!」
三奈本の言葉にクラスメイド達が散らばり準備に動き出す。
その統率のとれた機敏な動きには目を見張るものがあるが・・・・いやしかしなんだ、この茶番は。しかも三奈本の奴さっきさらっとベトナムとか言ったぞ、台詞の改変やるなら最後までちゃんとやれよ。
「うう~疲れたぁ」
いそいそと準備をするクラスメイド達の中から一人のメイドがフラフラとした足取りで呻きながらこちらにやってくる。
パッと見最初はそれが誰だかわからなかった。なぜなら彼女がいつものポニーテールを解きイメージの違う足元まで隠れるロングのスカートを履いていたからだ。
「だ、大丈夫日向さん?」
「あんまり大丈夫じゃない感じ。文化部にはきついよ」
竹箒にもたれ掛かるようにして疲弊した声を出す日向さん。日向みなみさんは我がクラスのアイドルの一人で普段はポニータールにギリギリまであげたミニスカートが印象的な元気娘だ。
「訓練って一体なにやったの?」
その元気娘が普段見せない文化部の体力のなさを口にするなんて一体なにを訓練してたのか少しだけ気になる。
「お辞儀を毎日千回、しかもきっちり角度まで決められてて失敗すると腕立てや校庭一周とかさせられてさぁ」
「うわぁそれは御愁傷様」
うん、そりゃ政子も逃げ出すな。僕だって同じ立場なら逃げ出しそうだよ。
「でもね~三奈本君の文化祭への意気込みは本物だからやめるわけにもいかなくてね」
「はは、なるほど」
三奈本のやる気は確かに認めるがあいつに真面目に付き合うとろくなことにならないからな、真面目な日向さんは堪えただろう。
「そういえば男子や他の女子はどうしたの?」
「んと、色んな所でここの宣伝をする係?まぁサクラというかステマというかそんな感じの役割だよ」
「そっか、じゃ僕もそうするかな」
僕がこのメイド喫茶にいてやれるようなことはなさそうだ、去年と同じで中庭辺りの日陰でスマフォでも弄っていよう。ただ一つ気がかりがあるが・・・・
「あのさ日向さん」
「ん、なにぃ~?」
お疲れモードの日向さんにそれを頼むはちょっと気が引けるが
他に頼めそうな女子はいそうにない。
「まさ・・・・北条さんのこと頼むね、なにやらかすかわからない奴だから」
「あ、うん!大丈夫だよ任せといて!それじゃ御主人様、いってらっしゃいませ!」
そう言って深々と頭を下げる日向さんのお辞儀の角度はきっちり45度とばっちし完璧であった。うむ、流石だな。



「ふむ、結構混んできたな」
僕が校舎を出る頃には一般のお客さんも入ってきだしたようでかなりの賑わいを見せていた。僕はそんな人混みをスマフォを弄りながら中庭へと歩を進めていく。まぁ僕くらいなスマフォユーザーになると画面を見ながら人を避けて歩くなんて簡単な話だ。
「そろそろブログでも更新するかなぁ」
更新頻度が高いってのはいいことだ、最近になって結構見てくれる人も増えたしそろそろコメントであった質問にも答えていくかな。
僕の気持ちは文化祭なんかよりも完全にブログの記事に集中している。僕は素早く記事作成画面を開くと慣れたフリック入力で文章を打ち込んでいく。



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質問返答コーナー - 2013.04.06 09:58 編集 URL


はいはーい!はいはーい!「ヤキトリはいらない」の管理人
平野頼友でございますですよ!

今回はコメントであった質問にまとめて答えていこーと思います!
ちなみに今僕の学校、文化祭中・・・・あはは
いいんです!僕は『イクサカーニバル』に命かけてますから
一緒にまわる人がいなくても平気平気!!

ではでは質問コメント返していくよ~

〉煎餅固いの食べれませんの助さん
〉初心者にオススメなキャラ、スキルはどれですか?

初心者さんは基本見た目で選んで良いと思うんだけど、あえて言うなら・・・・
豊臣秀吉、ステタースが初めから高いから序盤が楽(ただしリアルで猿)
徳川家康、アイテムスロットが初めから広いのでアイテム一杯持っていける(だたしぽっちゃり系)
くらいでしょうか。
スキルは〈亡者の足枷〉が攻められることが多い初心者さんにはオススメかも、『味方が負けた数が多いほど長い時間相手の行動を封じる』ってやつだからね。

頑張ってランキングに載れるよう精進して
僕の織田信長ちゃんと勝負だ!


〉魔法少女ドウケレディさん
〉トップランカーで気になっている人っている?

やっぱり現在一位の「shinono」さんでしょうかね、同じ織田信長使いとしては。あ、あと「shinono」さんって女性って噂もあるので是非ともお近づきに・・・・


〉山葵拉麺大盛りさん
〉やきとり食べれないの?ぷすす

ついにこの質問きた!ブログのタイトル「ヤキトリはいらない」は麻雀用語で「一ゲーム中に一回も上がれなかった人」のことです。ちょっとローカルなルールだけどD

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「ちょっとローカルなルールだけ・・・・うぉっ!」
相変わらずの変なテンションで文字を打っているそのときだった。僕の体、腰辺りになにかがぶつかりおもわずつんのめる。
おかしい、スマフォを触っていたけどそれとなく前は確認していて誰もいなかったはずなんだけど・・・・
「いったああああああああい!!」
辺りにいる全員が振り向くような大声が足元から聞こえて僕がなんでこの子にぶつかったのに気がつかなかったか理解した。
「うう~痛いのだ」
尻餅をついて目尻に涙を浮かべる少女はかなり小さい。身長で言えば僕の腰ぐらい、小学生の低学年レベルでそれだから僕の視界に入ってなかったみたいだ。
しかしよく見るとこの少女、ちょっと変わった格好をしている。ところどころ金の装飾がなされた真っ赤な着物に紫色の帯、目元できっちり切られた前髪に地面に付きそうなくらいの長さの後ろ髪は日本人形のような容姿だがその髪の色は金髪だった。
って、いやそんなことはどうでもいい見えていなかったとはいえこれは僕が悪い。
「あっ、ごめん!大丈夫?」
ふと手を差し出そうと一歩踏み込んだ瞬間、ぐにゅっと足に嫌な感触。
「あああああああああっ!!!妾の焼き鳥をぉぉ!」
「えっ、あ・・・・ごめん」
慌てて足を上げるも時既に遅し、校庭の砂が焼き鳥のタレにべったりとつき当然ではあるが食べれるような状況じゃなかった。
「おのれぇ~!妾を『だいろーくてんまおー』と知ってのろーぜきかぁ!」
少女は立ち上がると小さな頬を膨らませピョンピョンと跳ながら抗議する。怒っているんだろうがその様子はちょっと可愛いと思ってしまう。
「だ、ダイロークテンマオー?競争馬かなにか名前か」
「違うのだ!むぅ~妾を怒らすと怖いのだ~!」
少女はそう言うと左の着物の袖口に右手を突っ込みそこからなにかを取り出す。
「焼き鳥を奢らないとホトトギス殺しちゃうもんね~ぷっぷくぷ~!」
「は?えっホトトギス?」
状況がうまく飲み込めないが確かに少女の手にはホトトギスが握られている。いやでもなんでホトトギスなんだ?
「どうなのだ~妾の恐ろしさに声もでないのだ~」
「いや全然声出ますけど、というか焼き鳥は奢るから鳥さんをいじめるのやめような」
「わかればいいのだ~」
満足そうに少女は言うと袖口にホトトギスを戻す。なんだあれもしかして袖の中で飼っているのか?
「というかなんでホトトギスなんだよ」
「ん~最近の若い者は『鳴かぬなら殺してしまえホトトギス』って言う私の名台詞を知らないの」
「えっ・・・・それは知ってるけど台詞じゃないだろ、いやしかしまさか」
頭の中に一人の人物が浮かび上がるがどう考えても目の前の少女と一致しない。いやだってあの人はスレンダーで美脚でセクシーな美人キャラのはず・・・・!
「もしかしてですけど君って織田信長様、なんてことはないよね?」
「なんじゃ知ってるんじゃないか、妾こそ『イクサカーニバル』の世界からやって来た だいろーくてんまおーの織田信長なのだ」
「イクサカーニバルって・・・・マジで?」
思わず頭が痛くなる。セクシー美女のはずの織田信長がなぜか残虐ロリ将軍に変わっているのもあれだが北条政子以外にもこっちの世界にやって来ている『イクサカーニバル』のキャラがいるなんて、もしかして僕が知らないだけで他にも一杯いるのか?
「あの~信長様?一つ聞きたいことあるんだけどいい?」
「ん~じゃ焼き鳥一本につき一つ質問に答えるのだ!それで決まりなのだ~」
「お、おいっ!」
言うが早い焼き鳥の露店へと駆け出す信長。こちとら聞きたいことが山のようにあるのに財布の紐を緩めないと教えてもらえないなんて今の僕には酷すぎる。
「つくねと~ネギマとネギマとネギマとネギマとネギマとネギマとネギマとネギマとネギマとネギマ!全部タレなのだ!」
「やめてくれ~~!!」
露店の前でまるで復活の呪文のようにネギマを連呼する信長に重なるように僕の悲痛な叫び声が校庭中に響き渡るのだった。



「やっきとり~やっきとり~嬉しいのだ~」
「僕の財布は全然嬉しくないことになってるよ」
僕の財布の中身と反比例するように紙皿には焼き鳥が山のように積まれている、しかもほとんどがネギマのタレ。
さすがにこれを食べながら歩くのは難しいので校庭に設置されたテントにまで僕達はやって来た。
「うまうまなのだ~!あ、そういえばまだお主の名前を聞いていなかったのだ」
「ああ、僕の名前?僕は平野頼友だよ、ごくごく普通の男子こう・・・・」
「お~もしかして頼友は噂の童貞という奴なのだ?」
「なっ・・・・!」
僕の言葉を遮って放たれた信長の一言に正直吹き出しそうになる。あれ、なんだ?僕ってそんな見た目からしてそうゆう風に見えるのか!?ほぼ初対面の小さな女の子にまでそんなこと言われるなんて重症だぞ。
「ん~違うのかえ?現実世界生活マニュアルには『おおよそイクサカーニバルのメインプレイヤー層は童貞で、童貞というのはお祭りとかで一緒にまわる相手のいない可哀想な人』のことを言うって書いてあったのだ」
なんていうかピンポイントに僕の事を書いてある気がするなその現実世界生活マニュアルってのは。しかもなにか事あるごとに童貞に精神ダメージを与えてくる辺り相当書いた奴は精神が歪んでる。
「僕が童貞かどうかはまぁ置いておいて、そろそろ僕の質問に答えてもらってもいいかな?」
ただでさえお財布が軽くなってヘコんでいるところに童貞の話なんかまで掘り下げて聞かれたら立ち直れそうにないので話題を変えることにする。
「ん~いいよぉ~。妾の答えれる範囲ならなんでも答えるのだ」
「ええっと、それじゃあ・・・・」
いざ質問をするとなるとどこから聞いたらいいか難しいな。焼き鳥一本百円と考えてこの後政子のやつにも奢ることも考慮に入れると精々質問は二、三個ってところか。
「信長様はイクサカーニバルの世界から一人でやって来たの?」
気になるのはどれだけの人数、あのゲームから来ているのかそして目的だ。あの伊達政宗みたいに現実世界への侵攻を考えてたりするのなら大変だぞ、僕にやれることはないけど。
「んとね~一人じゃないのだ。猿と狸と一緒に来たんだけどあの二人迷子になったのだ」
そう言いながら物凄い早さで焼き鳥の串を積み上げていく信長様に僕は少し考える。きっと一緒に来たって言う猿と狸ってのは豊臣秀吉と徳川家康のことで間違いないと思う、そしてこれは僕の推測でしかないんだけど
「もしかして信長様って迷子なの?」
「わ、妾がま、迷子なわけがないのだ!だいろーくてんまおーは迷子にならないのだ!」
滅茶苦茶狼狽えながら反論する信長に僕の推測は確信に変わったがあんまりつっこんで機嫌を害われても困るので話題を変えることにする。
「そ、そうだよね第六天魔王だもんね。ところでどうしてこっちの世界に来たのかな?」
宥めるよう静めるように言葉を選んで聞いてみると信長はいつの間にか最後の一本になった焼き鳥を手に取り僕の予想を裏切るとんでもないことを言い出した。
「妾の目的は『しののめ』に言われてな、こちらの世界に来ておる北条政子を捕えることなのだ」
「えっ!?」
突然出てきた北条政子の言葉に思わず反応していまいハッとなって口を押さえるが今更出てしまった声が消えるわけもなく信長は怪訝そうな表情を浮かべこちらをじっと見据える。
「どうしたのだ?」
「いや北条政子って戦国時代じゃなくて鎌倉時代じゃないですか、そんなのいるのかなぁって思って」
我ながら上手く切り返した、と思ったが信長は全然納得いかないようで小さく小首をかしげている。
「ところで頼友はゲームの世界からキャラクター来るような体験は初めてなのだ?」
「それってどうゆう意味?」
「なぁに、普通ならもっと驚くものなのだ。そんなところからキャラクターが出てくるようなことには」
信長の言葉がグサグサッと胸に突き刺さる。ただののだのだうるさい幼女くらいにしか思ってなかったけどかなり頭の回る幼女のようだ。
「いやほら僕は多少の事では動じない紳士だからさ」
「というわりには妾が北条政子の名前を出したとき動揺してたのだ!つーまーりー!」
まずい、この周りが楽しそうにしている中、まさか僕がこんな幼女に追い詰められるとは。
「頼友、お主はもしかして北条政子を知って・・・・」
「あ~信長様見つけましたぁ~」
完全にバレる・・・・もうダメだ。
そう思った瞬間信長の背後、意外なところから助け船が入った。
「もうぅ~迷子にならないでって言ったじゃないですかぁ」
妙に間延びした口調で信長に話しかける女性。お世辞にもスレンダーとは言えないぽっちゃり体型に深い海のような暗い青色のショートボブ、開いているか開いていないのかわからないくらい細い目、そして肩には手乗りサイズの猿が一匹。服装こそうちの学校の制服だけどその姿は『イクサカーニバル』で良く見る徳川家康の姿そっくりだ。
「猿に家康!妾は迷子になんてなってないのだ!てーせーするのだ!てーせー!」
「はぁ~でも多数決的には信長様が迷子だと思うんですけどぉ~」
家康の言葉に手乗り猿の豊臣秀吉が「ウキキ!」と叫びながら手を叩いている。
「ひ、卑怯なのだ!猿を連れていったのは家康なのだ!」
「そんなこといわれましてもぉ~」
信長と家康のやりとりを見ながら僕はゆっくりと席を立ち上がる。信長が家康の方を振り返ってる今がチャンス、すたこらさっさと逃げたほうが良さそうだ。
「あのぉ~ところで信長様、そちらの殿方は?」
「おおっ!そうなのだ!頼友、さっきの話じゃが・・・・」
逃げ出そうとしたところで家康の言葉に信長が振り返る。
ピタリと会う視線、妙な沈黙。僕は演技力0の棒読み台詞を言うと共に走り出した。
「あーそういえば僕はそろそろ教室に戻らないとー戻らないとみんなに叱られるーということで失礼しますっ!!」
「あっ!待つのだ頼友!!」
慌てて信長が声をあげるが振り返ることなく全速力で走る。
なんていうか最近ちょくちょく走らされるな、普段運動してない僕には苦行でしかないよ本当。



「はぁはぁ、くっそまけたか?」
切れる息を整えながら校舎の壁に手をつく。さすがに運動してない僕でも幼女と猿とぽっちゃりからは逃げることが可能なみたいだ。
「よくよく考えれば僕が逃げる必要ないよな、狙われているの政子なんだし」
制服の首元を緩めながらふらふらとした足取りで3年A組の教室へ歩いていく。
しかしまさか政子を捕らえるために『イクサカーニバル』から三人も武将がやって来るなんて本当困った話だ。
一体何をやらかしたんだよあいつ、いやもしかするともうやらかしたから狙われているのか?
「例えば現実世界に北条政子がやってきたからとか、ありえるぞ」
それを考えるとその北条政子を匿っている僕だって罪になるのかも、そう考えると頭が痛い。
「それに『しののめ』って誰だ?」
チラリと信長の口から出た「しののめ」とか言う人物。こいつが命令してあの三人がやって来たとするならやはり『イクサカーニバル』の関係者ってことになると思うけど。
「ん~考えてもわかんないな。でもとりあえず政子が狙われているのは間違いないから伝えといたほうがいいよな」
そんなことを呟きながら階段をあがると目の間にどこの新規開店のラーメン屋かとおもうような行列ができていた。しかも並んでいるのは全員男性というね、この行列がなにを意味しているのかはすぐにわかった。
「相当盛況しているなメイド喫茶」
まぁ三奈本の奴があんだけ張り切ったんだ当然も当然か、しかもメイド達はクラスのアイドルな日向さんや東條さんがやってるんだからな。メイド喫茶自体には行ったことないけどなまじ普通に営業しているメイド喫茶なんかよりもレベルが高いだろう。
「はいはーい、メイド喫茶だよぉー♪今なら特別サービス中だよぉー♪」
行列の横を歩きながら先頭の方まで進むとそこにはミニスカートのゴシック風メイド服を華麗に着こなした北条政子が真っ赤なツインテールを振りながら客引きをしていた。
「ちゃんと真面目にやってるみたいだな」
「当然じゃない、いっぱい売ったら三奈本がポテチ奢ってくれるって約束したんだから」
自信満々で答える政子だけどなんだ食べ物に釣られているのか、まぁかなりクラスでも政子の扱い方がわかってきているみたいだな。
「ああ、ところで大事な話があるんだけど」
「ん?話?あ、ちょっと待ってね」
政子はそう言うと行列の先頭で待っている男子学生の方を向く。
「はい、それじゃ特別サービス。超絶美少女の私がおでこにツンってやるサービスだよ♪」
「お、おねがいします!」
ドキマギしている男子学生の額を政子が指で弾く、それが特別サービスなのか?とその様子をなんとなく見ていたが次の言葉で僕は戦慄することになる。
「傀儡政権の始まりよ、んっと一番高いホールケーキ頼んでくれると嬉しいな」
「は、はい!注文します!!」
「それじゃ一名様ごあんなーい♪」
こ、こいつもしかして来る客みんなに『傀儡政権』やって高いホールケーキ頼ませているのか?!フラフラと店内に入っていく男子生徒を見送って僕は政子に詰め寄る。
「こらこらこら!なにやってるんだよ!」
「なにって特別サービスに決まってるじゃない、あれー?もしかして知らない男の人にやってるから妬いちゃってる?」
「そうゆう意味じゃねぇ!」
思わず口からでた大声に周りの視線が集まる。真面目にやってると思ったらこれだよ、とはいえ今はそんなことを問い詰めている場合じゃないか。それよりも重要なことがあるんだから。
「んもぅ、そんな大声出さなくてもいいじゃない。いいじゃないったらいいじゃない!」
「いやなぁ、というか大事な話が・・・・」
「頼友もやって欲しんでしょう?もう怒らなくてもやってあげるんだから。はい、それじゃ特別サービス♪」
「えっ?あっ・・・・ちょっと!?」
僕の言葉よりも早く政子が僕の額を指で弾く。瞬間政子の背後から後光の様に強烈な光が目に飛び込んでくる。これがもう全然慣れない、きっとこれ視力下がるんだろうなってそんなこと言っている場合じゃない!
「傀儡政権の始まりよ!頼友もホールケーキ頼んで食べてね♪」
「ちょっと、ちょっと待てぇ!!」
僕の意思とは関係なく足が勝手に教室へと入っていく。こんなことしている場合じゃないってのに!
「あれ平野君じゃない、お客さんとして来店?」
入ってすぐに出迎えてくれたのは日向さんだった。朝あった時の気だるそうな感じとは打って変わっていつもの活発な雰囲気に戻っているところが日向さんの真面目な性格をよく表していると思う。
「いや、そうゆうわけじゃないんだけ・・・・ホールケーキを一つお願いします!」
ああもうなんか僕の意思を無視して勝手に注文を口走っている。これが北条政子の『傀儡政権』の恐ろしいところなんですよ。
一時的とはいえ政子の思うように相手を行動させることができるそんな能力、ゲームの中ならいざ知らず現実世界で使っていたらそのうちとんでもないことになりそうな気がするんだよなぁ。
「ホールケーキね、それじゃこっちの席に座ってすぐに用意するから」
「ああ、うん」
日向さんに言われるまま近くの席に座るとなんとなく周りの様子を眺めてみる。朝来た時とは違って忙しない様子で動きまわるメイドさん達の姿はまるで本物のメイド喫茶に来たような錯覚を覚えるくらい完璧に見える。しかも当然のことながら皆高校生、こりゃ沢山の行列ができるのもわからなくはない。
「ん~そういえばホールケーキっていくらするんだ?」
僕はテーブルに置かれた皮表紙のメニュー表を手に取ると政子のせいで頼むことになったホールケーキの値段を確認・・・・って
「三千円だと・・・・高っ!!!」
あまりに高い値段に思わず大声をあげてしまい周りの視線が集まる。
「高・・・・高枝切りバサミが三千円か~お安いな~お買い得だなぁ」
ちょっと恥ずかしくなって思わず意味不明な口走りメニューで顔を隠す、なにやってるんだ僕は。しかし三千円って値段は高校生の僕には結構な大金だぞ、日頃から北条政子にはポテチとコーラを奢らされさっきは織田信長に焼き鳥を奢っているんだ。ていうかなんだいつから僕はそんな武将に食べ物を奢るそんな役割になっているんだよ!
「はいお待たせしました御主人様、シフォンケーキのホールになります」
僕がお財布薄くなる現象に頭を悩ませていると日向さんがこれまた大きな切り株のようなホールケーキと紅茶の入ったポットをカートに乗せてやってきた。
「切り分けるからちょっと待ってね。あ、食べきれなかったらテイクアウトもできるから安心してね」
「それは助かるよ」
正直あの大きさのホールケーキを見た瞬間食べきれないと思ったからテイクアウトができるのは本当にありがたい。政子の『傀儡政権』の能力だと注文して食べるまでが効果っぽいから一口でも食べてしまえば効果は切れるだろうしさっさとテイクアウトして政子に織田信長のことを伝えないと。
「はいそれじゃどうぞ、紅茶はおかわり自由だからいつでも言ってね」
「ありがとう、それじゃいただきます」
早速フォークを手にとりケーキを一口、口に入れる。口にした瞬間、表面のカリッとした部分の芳ばしさと中のふわっともちっとした
食感が噛んだ瞬間に良い感じで混ざり合い程良い甘さが広がる。普段あんまりケーキなんて食べない僕でもこれが美味しいのははっきりとわかった。
「これ美味しいね、作ったの?」
「これはね近くのケーキ屋さんに作ってもらったの。でもまさかこんなにホールケーキの注文があると思わなくて今大慌てで追加で作ってもらってるんだけどね」
「そ、そうなんだ」
確かにこのケーキは値段相応の美味しさがあるけどここまで売れるのは値段も値段だし予想外だろうなぁ、うん全部政子のやつのせいだけど。
「そういえばさ前から平野君に聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「え、ああうんいいけど」
日向さんは誰にでも別け隔てなく接してくるからこんな風に改まった様子で聞いてこられるとちょっとだけドキッとする。
「それじゃ遠慮無く聞くよ、平野君って政子ちゃんとどこまでの関係なの!?」
「は、はい!?」
あまりに予想外の質問に思わず聞き返してしまう。え、なんだって?僕と政子の関係?
「ほらだって一つ屋根の下で暮らしている男女といえば色々あるでしょ?」
「ないない、全然そういうのないよ」
はは、こりゃ一つ屋根の下どころか一緒の部屋で過ごしているとか言ったらもっとツッコミが入りそうだな、まぁ黙っているけど。
「えええっ!?なにもないの、本当に」
「いやまぁこれっぽっちもないね」
そうさらりと言ってのけると日向さんはまるでこの世の終わりかというような愕然とした表情でこちらを見ている。まぁなんていうのかな、僕も最初は期待したよそうゆうラブコメ的展開、でも結局僕に政子が授けてくれたのはラブコメなんかじゃなくてなんの意味もない征夷大将軍という称号?くらいだ。
「はぁそこまで平野君が二次元好きだとは思わなかったよ、政子ちゃん結構他の男子から人気なんだよ」
「へぇ~そうなんだ」
是非ともその男子には代わって欲しいものだよ毎日ポテチとコーラを奢る役目っての。
「普段一緒にいるからって安心していると他の男子に取られちゃうんだからね、もし平野君にその気があるなら同じクラスのよしみで協力するよ。なんてったって私は生徒会長の恋も実らせちゃうほどの恋のキューピッドなんだから」
うーん、政子の人気もいいけど日向さん自身の人気も結構あるってことを認識してほしいよなぁ。さっきから仲良く話しているところを周りの男子から恨めしそうな目で見られているんですけど。
「はは、まぁそのときはよろしく日向さん」
後ろ首を掻きながら乾いた笑いをしたその時だった。手にコツンとなにかが触れる。
「あれ?」
「どうしたの平野君?」
「いやなんだろ後ろの襟になにかついてる」
僕はそれを掴むと自らの目の前に持ってくる。しっかり止まっているというよりかは引っ掛かっているだけのようであっさりと取ることができた。
「ん~なんだろう?」
それはボタン電池ほどの小さなサイズの発光体で先程から全体が淡く赤色で点滅している。裏側には小さな鍵爪がついてあってこれがどうやら制服の生地に引っ掛かっていたみたいだ。
「なにかよく映画とかである発信器みたいだね」
「えっ・・・・?」
日向さんのさらっと言ったその言葉に思わず嫌な予感がする。確かにこれ発信器と言われたらまんまそんな風に見える、そして今僕にそんなものを付けそうなのは一人くらいしか考えられない。
「まずい点滅が早くなっている、これってまさか近づいているって事なん・・・・」
僕が言葉を言い切る前に突然それは起こった。
ドンという爆音に突風、激しい土煙を上げながら教室の廊下側の壁がだ、うん信じられないことにものの見事崩れ落ちたんだ。
「えっ、な、なに!?」
日向さんが慌てるのも無理は無い、というか僕だって声にこそ出さなかったけど突然起きた目の前の状況になにがなんだかわからなくて思考が停止、ただただ唖然とするしか無い。
「んもぉ~!なんなのよ~なんなのよったらなんなのよぉ~!!」
突然に爆発に慌てふためく者逃げ出す者で騒然としだす中、土煙から政子がフラフラとした足取りでこちらにやってくる。
「だ、大丈夫か政子!?なにがあった!?」
「知らないわよぉ、いきなり幼女と猿とぽっちゃりが現れていきなり『見つけた~』とか言われて銃をつきつけられてさぁ」
聞き覚えのある幼女と猿とぽっちゃりとという響き、間違いなくあいつらだ!
「わははぁ~!火力調整ミスったけど結果オーライなのだー!」
「これはやりすぎなんじゃないでしょうかぁ、怒られるますよぉ」
「ウキキ!」
そして晴れる土煙の中から現れる、幼女と猿とぽっちゃりと・・・・こと織田信長、豊臣秀吉、そして徳川家康。
「妾から逃げられると思ったのかえ?『ダイロークテンマオーからは逃げられない』って有名な言葉があるのだ」
手に持った大きい火縄銃を振り回しながら信長は高らかに笑う。その姿は第六天魔王というよりおもちゃを買ってもらえてはしゃぐ女の子って感じだが恐らくあれが教室の壁を吹き飛ばした物と考えるとかなりまずい状況なんじゃないのか?
「そんな言葉聞いたことないけどまさか発信器なんてつけられているとはね」
僕は手に持った発信器を信長達の前に放り投げる。
「これはですねぇ~家康ちゃん特製の『どこに誰がいるかすぐにわかる君一号』なんですぅ。咄嗟につけといてよかったですね信長様」
「さすがイクサカーニバルの青狸と言われるだけはあるのだ、褒美に後でねぎまのネギだけあげるのだ」
全く緊張感のない喋りの二人だけど信長も家康も侮れない、秀吉は・・・・秀吉はなんかお飾りだから気にしなくてもよさそうだけど。
「ねぇ頼友、さっきから信長とか家康とか言ってるけどもしかしてこの人達って」
「そうだよ、『イクサカーニバル』からやってきた奴等だ。しかもお前を捕まえるのが目的みたい」
日向さんがいる手前大声を出すわけにもいかず呟くように政子に告げる。
「な、なんで私が狙われるのよぉ~超絶美少女だから?」
「知らないけどそれは違うと思う」
理由はわからないけどこいつらが本気なのは間違いないだろう、わざわざ『イクサカーニバル』の世界からやってくるくらいなんだからな。
そんなことを考えていると信長がこちらに銃口をゆっくりとこちらに向けてくる。
「覚悟するのだ平野頼友!質問に答えた分焼き鳥を奢ってもらうのだ!」
「って、そっちかよ!!」
信長達の目的は北条政子でしょうが、なんでいつの間にか僕の方に切り替わっているんだよ。まぁ確かに僕は焼き鳥奢るのからは逃げたけどさ。
「焼き鳥・・・・ちょっと頼友、私に内緒で焼き鳥なんて食べてたの!?」
「僕は食べてないっていうか、お前も焼き鳥に食いつくなって」
「ま、まだ食いついてないわよ!!!」
「そうゆう意味じゃないし!!状況を把握しろよ!」
こっちはこっちで意味不明なことを言い出すし、全くよく暢気にしていられるな政子は。なんとか逃げたいところだけどここは三階、窓からは逃げれそうにないし銃を突きつけられていて信長達の脇を抜けるのも難しそうだ。
まさかこんなところで絶体絶命かよ!
「くくくぅ~のくぅ~!覚悟するのだぁ!」
絶望する僕を嘲笑うように信長がそう言うと銃の引き金をひこうとした、そのときだった。
「こらぁぁぁぁぁ!」
僕の背後、さっきからずっと黙っていた日向さんが大声で叫んだ、それはもう関係ない人でも吃驚するくらいの声量で。
「玩具とはいえ銃口を人に向けちゃダメでしょ!」
そして僕と政子の間をズカズカと通って信長の前に立つ。
「いや日向さん、あれは・・・・」
「平野君は黙ってて!」
いや、あれは玩具じゃなくて多分本物だと思うんですけど。だってほら壁だって壊しているんだし。
だがそんな僕の言葉も遮って日向さんは信長に視線を合わすようにしゃがみこむ。
「な、なんじゃお主は」
「私は日向みなみ、平野君のクラスメイトよ。信長ちゃんだっけ、いーい?そうゆうのは人に向けて遊ぶものじゃないの」
「なにを言っておるのだ~!妾の邪魔をすると容赦しな・・・・」
突然の出来事に少し狼狽えながらも信長が日向さんに銃口を向けた瞬間・・・・
「こらっ!だからダメって言ってるでしょ!」
日向さんの容赦しないゲンコツが信長の頭にクリティカルヒットする。
「うううっ、ぶったのだ」
「悪いことしたら私はぶつんだからね!良い子になってもらうためにね、わかる?」
日向さんの言葉に正直よくわかんないといった感じの信長だが相当ゲンコツが効いたのか涙目で頷いている。
「信長ちゃん、悪いことしたら何て言うのかな?」
「ご、ごめんなさい」
「そうそう、悪いことしたら素直に謝ろうね」
信長の頭を撫でる日向さんの様子を後ろで見ながら僕はこれはチャンスだと思い横にいる政子を肘で小突く。
「おい、政子・・・・今のうちに逃げるぞ」
「え、なんで?もしかして焼き鳥奢ってくれるの?」
「違ぇよ!はやく状況を理解しろって、ほら行くぞ」
僕は政子の手を引くと信長の横を抜けて走り出す。信長が日向さんにお説教を受けている今がチャンス!
「ああっ~もしかして逃げるんですかぁ~?」
「ウキッキー!!」
僕達の前に回り込もうとする家康と秀吉、だがそれも
「貴女信長ちゃんのお姉ちゃんよね!しっかりしないとダメじゃない!あと動物は入店禁止です!」
ちょっと勘違いしている日向さんによって制される。もはや信長に至っては怒られてへこんでいるのかこっちすら見ていない。
「いやあのぉ~私は信長様のお姉ちゃんでもなんでもない・・・・」
「問答無用だよっ!いい?小さい子ってのはお姉ちゃんの姿を見てないようで見ているものなの!だからお姉ちゃんがしっかりしないとグチグチグチグチ」
小さくなっていく日向さんのお説教を背中に聞きながら僕と政子は走る。そして心の中で思うのだ、「本当にありがとう日向さん、ホールケーキはあとで買わせていただきます!」と。

「ツンデレ武将がやってきてラブコメになるとおもいきや俺が征夷大将軍になっていた」


夜がまだ明けきらず、暗かった。
暗い部屋にパソコンの明かりだけが光る中、僕は黙々とキーボードを打ち込んでいく。
「ん~まぁこんな感じかなぁ?」
僕は椅子の背もたれに寄りかかり細目で画面を見てみる。うーん、初めてにしては上出来かな僕のブログ。
ブログの制作なんて初めてだったんで結構苦戦したが慣れたらこれは色々と改造しがいがありそうだ。
「とりあえず記事の一つでも書いておくか」
早速マウスを動かし記事作成のボタンをクリックする。


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ブログ始めました♪ - 2013.03.22


あーえっと、初めましてこのブログ『ヤキトリはいらない』 にようこそ
管理人の『平野頼友』って言います。読み方は「ひらのよりとも」ね
決して「たいらのよりとも」じゃないですよ。
よくそう間違えれて「お前平家なのか源氏なのかわかんねー!」とか
言われますがもうそれは慣れっこです。
あっ、ちなみに本名で現役高校生です!

このブログはまぁ日々の学校生活とかも語るんですけど、メインは
今一番熱いネットゲーム『イクサカーニバル』についていっぱい語って行きたいと思います!
ああ、知らない人のために説明すると『イクサカーニバル』は戦国時代を舞台にした
シミュレーションゲームで、近頃の美少女ブームに乗って戦国武将が皆美少女っていう
実にわかりやすいゲームです。

これでも僕はこのゲームでトップランカーなんですよ、だから初心者さんでも上級者さんでも
気軽に声をかけてくださいね~♪

ちなみに僕の嫁は伊達政宗ちゃんです!!
青髪ショートボブにキリリとした表情ハート型の眼帯が可愛いですよねー♪
あんな子が画面から出てきてくれないかなぁ~そんなわけで皆さんよろしくお願いします!!


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「こんな感じ、かなぁ?」
何となくブログで文章を書くと僕のキャラとはなんか違う気がするけどどうなんだろう?
僕は極々普通の男子高校生、勉強もスポーツも並で顔も並という・・・・うん、ちょっと嘘ついたな。
どっちかというと僕は全てにおいて中の下を位置してちょっと人見知り、けどツッコミだけは
物凄くしたくなるのでいつも心の中でツッコミを入れているようななんか暗い男子高生だ。
彼女?当然そんなものいませんよ、だからこそこの『イクサカーニバル』の伊達政宗ちゃんにどっぷり傾倒しているんだけど。
「はぁ~画面から出てきてくれないかなぁ伊達正宗ちゃん」
そんな寝ぼけたことを呟いたその時だった。目の前のパソコンが一瞬光輝いた・・・・ような気がした。
「な、なんだなんだ?今一瞬画面光ったような気がしたけどフリーズでもしたか?」
マウスを動かしキーボードを叩いてみるが別段問題はない、ブラウザを閉じてデスクトップに
戻ってみても可愛い可愛い伊達政宗ちゃんが微笑んでいるだけだけ、どうやら気のせいだったみたいだ。
「もう三時か、流石に寝ぼけてきたのかな?そろそろ寝るか明日も学校あるしな」
休みの日なら徹夜でこれから『イクサカーニバル』といった所なんだが流石にオールしての学校は勉強に差し支えが出る。
「よし寝よう、そうしよう」
パソコンをシャットダウンしフラフラとした足取りですぐ後ろのベットに転がり込む。ひんやりとした布団の冷たさに一瞬身を悶えさせながら布団にくるまる。
「あー気持ちいい。今度伊達政宗ちゃんの抱き枕でも買おうかなぁ」
「抱き枕ってなに?」
「ん?抱きまくらってのはさ、こう可愛い女の子の絵が描いてある枕でぎゅーっと抱くんだよ」
「そうなんだぁ」
「そうそう・・・・まだ伊達政宗ちゃんの抱き枕は出てないんだけど・・・・ん?」
なんとなく聞かれたから答えたんだけど、僕は今誰と話していたんだろう・・・・幻聴か?
布団から顔だけ出して見る。
「抱きまくら、ねぇ・・・・」
そこにはベッドに腰掛けそんな事を呟く美少女の姿があった。
パンクゴシックに真っ赤なツインテール、雪のように真っ白でスラっとした肌にに水晶のように透き通りぱっちりした瞳
それらが月明かりに照らされてまるで精巧に作られた人形のようにとても美しく見える。
なんていうかマズイな、どうやら幻聴どころか幻覚まで見える。どうやら慣れないブログ制作に思ってた以上に疲労が溜まっているみたいだ。
「さっさと寝たほうがいいな、おやすみ~」
「おやすみ・・・・」
本当返事までしてくれるとは相当疲れている、うん完全に疲れてるなさっさと寝てしまおう。
そう思って僕は布団を頭から被ると瞼を閉じる。疲れているせいなのか物凄い早さで僕は深い眠りへと落ちていった。

 


「ん~~~くっ、背中痛い・・・・」
朝、僕は背中に走るじんわりとした痛みに目を覚ました。
「あれ・・・・なんで僕、床で寝てるんだ?」
それほど寝相が良い方ではないけどそれでもベッドから落ちて寝ているなんて事ははじめてだった。
床の冷たさと固さに身体が痛い。寝転がったまま部屋の掛け時計を見てみると時間はまだ午前六時、まだ起きるには早い時間だ。
「少しだけ二度寝しても大丈夫だよなぁ」
全身の気だるさを回復するにはもう一度寝るのが一番、僕は床をズリズリとベッドに這い上がろうとし、その先に広がっている光景におもわず動きが止まった。
「えっ・・・・?」
僕のベッドに見知らぬ女の子が寝ていたからだ。
「あれ、幻覚じゃないの・・・・か?」
いや正確には見知らぬわけではない、薄ぼんやりだが寝る前に見た美少女そのものだった。だけどそれてっきり僕の二次元脳が見せた幻覚だと思ってたんだけど。
「生きてるよな」
小さく寝息をたてている美少女に徐に近づいてみる。長いツインテールがベットから溢れ落ち辺りにふわりと女の子特有の甘い香りが広がると、その香りが強く僕の鼓動を高鳴らせる。
「ちょっと触っても良いかな」
恐る恐る人差し指で美少女ホッペに触れてみる。キメ細やかな白い肌に触れた瞬間に吸いつきてくるような感触がある、これはお肌年齢かなり若いぞ!
「ってことはなにか?こんな美少女と僕は一夜を過ごしたと、つまりよく覚えてないが僕はいつのまにか卒業してしまったのか童貞を!!」
きっとそうだ、そうに違いない。もし違っててもあれだ急に美少女が部屋にやって来るなんて話ってのは大体そうゆう展開になるのは時間の問題!
「いやぁ、でも覚えてないのは悲しいな。しかし今の僕は男としてのランクが数段階上がったんだからないっそ今からもう一度チャレンジ一年生するのも」
「ランクがあがるとどうなるの?」
「ん~ランクがあがるとだな、少女漫画のようにいきなり過激なことしても『強引な人、好き』ってなるんだな、これが」
「過激なことって?」
「そりゃまぁこうゆうところではおいそれと言えな・・・・ってうわぁ!」
おもわずベットから飛び退く。なんか普通に会話してたがいつのまにかこの美少女が起きてるなんて思わなかった。
「なんかさっきから不潔な妄想が口から垂れ流しになってたようだけど私とお前にそんな関係ないから」
少し乱れた髪を手で鋤きながら美少女はなにか物凄く不審者をみる目でこちらを見ている。どう考えてもそっちの方が不審者でしょうが。
しかもきっぱり肉体関係なかったなんて言われるし、ちょっとヘコむ。
「あ、あのいやさっきのはただの独り身言だから。というかどこから聞けばいいのかわからないんだけど君はいったい何処から来たの?」
「どこから?ああ、あそこよあそこ」
美少女が指差したのは紛れもない僕のパソコンのモニター。
「あそこから、正確にはあのパソコンってやつに入ってる『イクサカーニバル』ってゲームからね」
「マジで!?」
「嘘ついてもしょうがないし」
平然とした様子で答える美少女に僕は心の中で小さくガッツポーズをする。
ってことはこの子本当にパソコンからしかも『イクサカーニバル』から来た美少女ってことになる。二次元から美少女がやって来るなんて全くもって非現実な話だけど実際目の前にいるんだから疑いようがない。
だけど僕の問題は別のところ、この美少女のことだ。
「ところで君の名前は?」
ゲーム内でこんな赤髪ツインテールにゴシックパンクのキャラクターなんて見たことないんだ。僕は『イクサカーニバル』のトップランカー、正直ゲームの情報は運営者並みに知っているけど目の前の美少女のようなキャラクターは見たことないと断言できる。
「あれ?わかんないかなぁ、しょうがないから教えてあげるか」
美少女はそう言うとベッドの上に立ち大きく息を吸う、ってこいつブーツ履いたままじゃないか!
「遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ!我が名は北条政子なりぃ~~!」
芝居がかった台詞を力一杯叫ぶ美少女、北条政子。うん、正直まだ午前六時だし近所迷惑なんで大きい声出さないでほしかったな。
「北条政子・・・・」
「それなりに有名でしょ、こちらの世界でも」
そこそこ張りのありそうな胸を全面に押し出し主張する政子。
まぁ確かにそんな名前歴史の授業で習った気がするな、正直なにをやったかはさっぱり覚えてないけど。
「ああ、うんまぁそれなりに。というかですね一つ引っ掛かるところがあるんですけど」
「なんなりと言ってみなさい」
「これ言っていいのかなぁ、なんていうかこの話の根底を覆すようなことなんだけど」
「ええい、勿体ぶらずに言いなさいよ~」
「わ、わかったよ。それじゃ言いますよ」
僕は歴史の勉強はそれほど得意じゃないけど『イクサカーニバル』をやってるからわかる、この違和感。
「北条政子って戦国時代じゃなくて鎌倉時代の人でしょ」
『イクサカーニバル』の時代設定は戦国時代、そりゃ登場人物の中には史実上同じ年代にはいないキャラクターが一同に介していたりするがそれでもあくまで戦国時代の中での話だ。戦国時代にも北条家ってのはあるけど北条政子とは関係ないし、鎌倉時代のキャラクターが戦国時代が舞台の『イクサカーニバル』にいること自体疑わしい。
「なにやら細かいことに五月蝿いのね、それじゃ女性も寄り付かないでしょ、うんうん」
「よ、余計なお世話だよそれは」
なんで初対面の奴にそんなこと言われないといけないのか、しかも当たってるのがちょっと悔しいし。
「別に信じなくても私は良いけどね、私は私の目的を果たすだけだし」
「目的?」
政子はベッドからポンと跳ぶと今度は僕のパソコンの前の椅子に見事に着地する、しかもブーツで。
「そういえば君の名前を聞いてなかったわ」
椅子にどっしりと腰を下ろすとそのままクルクルと椅子を回転させる。
「ああ、僕は平野頼友。ごくごく普通の男子高こ・・・・」
「頼朝様!?」
なぜか僕の言葉を遮って名前に物凄い反応を見せる政子。気がつけば目がキラキラと恋する乙女少女漫画チックになっているし。
「この童貞こじらせたようなのがまさか愛しい源頼朝様だったなんて」
「誰が童貞をこじらせただ!大体僕は源頼朝じゃなくて平野頼友!頼朝のともは『朝』じゃなくて『友』!」
僕が叫ぶと政子は見るからにがっかりした様子で椅子の背もたれに頭を垂れる。
「そうだよね、こんなに簡単に見つかるわけないかぁ」
「いやいやいるわけないじゃん源頼朝なんて、ここ現代ですよ」
「わからないわよ、私みたいにこっちの世界に来ているイケメンの源頼朝様いるかもしれないし、はぁ~私の愛しの頼朝様いずこへ~」
まぁたクルクルと椅子を回転させだす政子。史実上では確かに源頼朝と北条政子は夫婦だけどさ、そうゆうのなら現実世界よりもゲームの中の方が確率高い気がする。
「その『イクサカーニバル』の隠しデータとやらにはいないの?」
「いない~だからこっちに来たんだけどっ!」
政子は椅子をピタリと止めるとズリズリと床を滑りこちらに近づいてくる。
「まぁそっちはとりあえず置いといてもう一つの目的果たそうかなぁ」
「な、なんだよ」
やたらと顔を近づけてくる政子におもわず後ずさりしてしまう。なんだかんだ言ってもやっぱり女の子だしかなり可愛いときたら警戒するのは仕方ない。これは別に僕が童貞ということとは全くないと声を大にして断言しておこう。
「ふふふ、初々しいぞ頼友。そう逃げなくてもいいんじゃないかなぁ?」
「えっ、いやそれはだな」
「私からは逃げれないんだから・・・・ねっ!」
後ずさりする俺に政子が一気に体を乗り出し・・・・
「『傀儡政権』の始まりよ!」
政子はその謎の言葉と共に僕の額を指で弾く。その瞬間政子に後光が差し込み、まるで沢山のカメラが一斉にフラッシュを炊いたかように明滅する。
「な、なんだ!?」
その眩しさに思わず目を閉じ手で顔を覆うが光はお構いなしに瞳に飛び込み焼き付いていく。
「さてそれじゃ頼友、とりあえずコーラとポテチを持ってくるように」
こっちがパニクってるのに政子はなんか呑気なことを言ってるし、なにをしたんだこいつ。
「いやいやそんなことよりこの光を止めてくれよ!」
「何を言っているのかしら、とっくに止まってるわよ」
「えっ?」
政子に言われて初めて光が止まっていることに気がついた。恐る恐る指を退けゆっくりと目を開けてみるとそこには不適な笑みを浮かべている政子の姿がある。
「おまえなにしたんだよ・・・・」
「実際体験した方がいいと思って、それじゃコーラとポテチ持ってきてね」
「はぁ?だから何を言って・・・・って、あれ?」
気がついたら僕は立ち上がり踵を返すと歩きだしていた。
「あれちょっと待て、なんで僕の意思と無関係に歩き出しているんだ!」
そんなことを言っている間にも僕の手は扉を開け足はパジャマの裾を踏みながら一階への階段を降りていく。
これはもしかしてあの北条政子にやられた光のせいなのか?
一階に降りるとまだリビングは薄暗く誰も起きてきてはいないのが確認できる。
「確か『傀儡政権』がどうとか言ってたよな」
傀儡政権って幼くして政権を握った奴に成り代わって政治を行うことだろ、なんか意味が違う気がしないか?まぁ僕があいつに操られている『傀儡』になっているという点ではあってるけどな。
「って、もしかしてあのポテチを取るのか」
僕の足取りは真っ直ぐリビングのテーブルに置かれたポテチへと向かう。ああこれ妹の早苗が昨日買ってきてたやつじゃなかったか?
「ああもう知らね、早苗ポテチ持ってくけどこれは俺の意思じゃないぞ~どうせグチグチ言うだろうけど」
ポテチを手に取ると今度はキッチンの冷蔵庫に勝手に足が動く。
「これコーラなかったらどうなるんだろ、まさか外に買いにいかされるのか?この格好で?」
パジャマ姿で外に出るなんてそんな恥ずかしいことはごめんだ。とはいえこの状況、僕に拒否権なんてないんだろうけど。
「あ、あった」
意外にも冷蔵庫の中には2リットルペットボトルに入ったコーラが開けてない状態で入っていた。
「ああ、もしかしてこれも早苗が買ってきてたのかな。父さんも母さんも炭酸なんか飲まないし・・・・なんていうか、すまん早苗」
今は部屋で寝ているだろう妹に謝りながらペットボトルを掴む。なんでこんな朝っぱらかこんなことしないといけないんだ、全く。


「北条政子様、お待たせしましたポテチとコーラでございます!」
「うむ、ご苦労」
僕が土下座をしながらポテチとコーラを差し出すと政子は満足そうに頷きそれらを受けとる。
「これが現実世界のジャンクフードというものね、実にいい感じだわ」
「そりゃ結構だけどもお前、僕になにしたんだよ」
「ふむ、しょうがない説明するか」
政子はポテチの袋を開けると一枚指で掴む。
「私が『傀儡政権』と言いながら相手のおでこを指で弾くと私の思うように動かせるのよ・・・・うむ、美味い!」
ポテチを頬張りながら満面の笑みを政子は浮かべているがなんだよその能力、恐ろしすぎる。どうやら僕への能力は解除されたのか体は自由になったけど気を付けないとなにをされるかわかったもんじゃない。
「ぷはぁ~っ!おおっこれシュワシュワする!これが炭酸飲料というものなのかぁ」
僕の心配をよそにコーラをラッパ飲みする政子。その手にはいつのまにか漫画雑誌が握られている。
「コーラとポテチを食しながら、この漫画とやらを読むのが現実世界の『すたんだぁど』ってやつなのね」
「そんなスタンダードないよ!どこ情報だよそれ!」
どっちかっていうとそれはダメ人間の生活じゃないか。
「そうなのか?童貞はそうやって生活してるんじゃ?」
「ちげえぇぇぇぇぇっ!」
思わず声を荒げるが政子は全く気にしてない様子で漫画雑誌の方に目を落としている。
「ん~しかし『現実世界生活マニュアル』に書いてあったぞ。これによるとこの『イクサカーニバル』のメインプレイ層は『二次元の美少女を愛するおよそ現実世界では恋愛できそうにもない可哀想な人』で、そうゆうのを童貞といってポテチとコーラを主食にしていると書いてあったし」
誰だよそれ書いた奴、全『イクサカーニバル』プレイヤーを敵にまわしたいのか。しかもことあるごとに童貞って言葉挟みやがってどんだけ人の心をえぐりたいんだ。
「なんかもう全然違いすぎてどっからツッコミ入れたらいいかわからないよ」
「まぁともかく私のもう一つの目的は現実世界の娯楽を体験することなんで存分に楽しませてもらうわ」
「娯楽を体験だって?まさかここで?」
「ん~今良いところだから話しかけないで~」
よほど漫画雑誌がお気に召したのかもはや話などシャットアウトで雑誌を見ている政子に僕は嘆息し続ける。
「あのさぁ、僕もう少ししたら学校行くんだけど家族にばれないように部屋から出ないでくれよ」
「あ、はいは~い」
聞いているのか聞いてないのか適当に返事をする政子に思わず天を仰ぐのだった。
「・・・・ってこれからどうすりゃいいんだよ」


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


例えばの話 - 2013.03.22


どうも、管理人の「平野頼友」で~す
ブログ開設のご挨拶の次がこんな記事で申し訳ないんだけど
一つ、凄く凄く局地的な例え話をするんでどうしたらいいか
答えていただけるとありがたいです!

『例えば急に自分の部屋に美少女がやってきたら親にどうやって説明しますか?』


あ、例えばの話ねこれ。
いやぁもし二次元から伊達政宗ちゃんが出てきた場合親になんて説明しようかなぁなんて妄想してたら気になってね
まぁ僕の嫁なのは間違いなんだけどな!!

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「こんなの明確な回答もってくる人なんていないよなぁ」
朝日の差し込む教室で僕はブログを更新しながらため息をつく。ブログでの楽しそうな口調とは裏腹に僕の気持ちは沈んでいた。
「なんていうか朝っぱらからどっと疲れた」
僕は何回目かと言うため息をついて机に突っ伏す。朝からゲームの中から美少女北条政子がやってきてこき使ってくるし、妹の早苗には「倍にして返してくれないと口聞いてあげないんだからね!」なんて拗ねられるし、なにより問題なのは北条政子の事を両親に説明してないってことだ。
いやでも「二次元から美少女来たんだ!」なんて言っても納得なんてしてくれるわけないしなぁ。
「そもそもあいつ大人しくしてなさそうだしなぁ」
「よぉ、今日は早いな頼友!」
ポップコーンのごとく膨らむ悩みの種に頭を抱えているとポンと肩を叩かれる。振り向くと僕の悪友である三奈本がいつも通りの爽やかハンサム顔で立っていた。
「ああ、三奈本かおはよう」
「おう、おはよう。てか頼友今日暗くね」
三奈本はそう言いながら僕の前の机に鞄を置くとどっしりとこちら向きに席に腰かける。三奈本は小学校の頃から付き合いでなんの因果か知らないがいつも同じクラスになる僕の悪友だ。
学校指定のブレザーを着崩し、整ってるのか整ってないのかわからない茶髪の髪にベイビーフェイスとなにやらチャラい感じのする男だけど実は違う、というかチャラい方が良かったと言うべきか。
「そういやあれ見たか?俺が入れといたアレ、掘り出し物だぞ」
「は?アレって何?というか三奈本おまえまた僕の鞄に勝手に何かいれたのか!?」
今日は朝からごたごたしてたから鞄の中なんてよく見てなかった。慌てて鞄を開けて中を探るといかにもな、いかにもな肌色の多いパッケージが目に飛び込んでくる。
「しずくちゃんの新作だぜ!これで元気出せ頼友」
「本当、三奈本こうゆうの人の鞄に勝手にいれるのやめてくれよ」
思わずため息をつく。三奈本は見た目こそチャラいが中身はド直球の変態野郎なんだ。ルックス的に女子にも人気でよく告白されるみたいだけどこいつのあまりにもな変態具合に大抵は付き合って数日でお別れになる。「男子高校生ならこれくらい健全だ」なんてよくあいつは言うけど正直度が過ぎているんだよなぁ。
「どうしたどうした、マジでなんかあったのか」
「まぁ色々あったんだよ」
三奈本は変態なところを除けば良い奴だが正直こうゆうことを相談するには適してはいない。北条政子の事なんて話したら飛び付いてくるのは目に見えてるからな。
「とりあえずこれ返すよ、今そうゆうの観れる状況じゃないんだ」
いつまでいるのかわからないけどあの北条政子だって女の子、流石にこんなの観れる状況じゃない。
「えぇ~観たら元気になってしばらく賢者モードになれるって」
「いやいや本当僕はいいから持って帰・・・・」
そう言ってDVDを三奈本に押し付けようとしたその瞬間
「おっ、なにやら面白そうなの見てるね~」
僕の後ろからスッと手が伸びDVDを取り上げられる。
「えっ!?」
慌てて振り替えるとそこにいたのはクラスメイトの日向みなみだった。日向みなみさんはクレイジーボンバーの別名を持つクラスの元気娘。長い髪を後ろで束ねたポニーテールに竹を割ったような性格が人気のクラスのアイドルの一人だ。クレイジーボンバーっていうのはこのいかにも体育会系って感じの日向さんが実は科学部の副部長で実験をやらせるといつもなぜか爆発が起こると言う逸話から名付けられたものだ。
「ひ、日向さん!?」
「なになに『しずくちゃんの色んなコスプレを着たまま4時間!!』と、へぇ~平野君ってこうゆうの好きなのね」
「違うよ、これは三奈本の奴が勝手に───」
「うんうん、大丈夫だよ言い訳しなくても。うちの部長もメロンパンかじりながらいつも無表情で官能小説読んでるし」
うっは、なにか誤解されてる!!しかも無表情で官能小説読んでいる変な人と同列に扱われてるし。
「そうなんだよ~頼友がどうしても欲しいって言うから俺がフラゲしてきてやったんだぜ」
「ちょ、適当なこと言うなって!」
三奈本は三奈本でそれ思いっきり嘘言ってるし。どうしても欲しかったのは三奈本のほうだろっ!
「まぁどっちでも私はいいけどね。とりあえずそろそろ三樹先生が来るから隠した方がいいんじゃないコレ?」
日向さんはそう言うと僕の頭にDVDを置き自分の席に戻っていく、慌てて僕はそれを鞄にしまうとちょうどと言うタイミングで担任の三樹先生が入ってきた。三樹先生は初老の国語教師で少し大きめの焦げ茶のスーツを身に纏いまるで亀みたいに歩くのでよく「長老」なんて呼ばれている。
「あ~皆、おはよう」
間延びした口調で挨拶する三樹先生にクラスからは疎らに返事が返ってくる。
「え~と、朝の連絡事項は特になし~。ああ生徒会から連絡があったかな、東條?」
「はい」
三樹先生の言葉に生徒会長兼学級委員の東條綾音さんが立ち上がる。東條綾音、日向みなみと並ぶこのクラスのアイドルだ。なんていうか大人しくて清楚な感じがクラスだけじゃなくて大好評みたいだけど彼女のもっとも特徴的なのは声だ。
「あのえっと、皆さんにお伝えしたいことがあります」
少し緊張した様子で話す東條。なんていうか透明感のあるその声はまるで魔法のように心を掴んで離さない、気がつけばいつも雑談混じりのホームルームも彼女の声を聞くために静まり返っていた。
「そのえっと、来月の文化祭の件で私達のクラスはなにを出店するのかまだ決まってないのでこれから他のクラスがなにをするのか書いてあるプリントを配りますのでそれを参考に決めてもらいたいんです」
そう言うと長い黒髪を揺らして東條さんはプリントを配り始める。
そういやもうすぐ文化祭か、しかしまぁ文化祭とかそうゆうイベント事に僕が積極的に参加するわけもなく去年と同じで中庭辺りでスマートフォンを弄ってるだけなんだろうなぁ。
「なぁなぁ知ってるか頼友?」
そんな事を考えているとプリントを配るために後ろを振り向いた三奈本が声をかけてくる。
「知ってるって何が?」
受け取ったプリントを後ろに回しながら僕は答える。多分また変なことなんだろうけど。
「最近の生徒会長って眼鏡かけてるだろ、おかしいとおもわないか?」
「そういえばそうだなぁ」
言われてみると確かにいつからだっただろうか東條さんは眼鏡をかけてきている。
「多分アレはだな、彼氏の影響だと思うんだよ」
「彼氏なんていたんだ東條さんに」
「ま、あくまで噂だけどな。でも彼氏が変態なのか夜の学校とかで色々しているって話だぜ」
「夜の学校・・・・」
確かに夜の学校でなんてのは変態だけどまさかそれを三奈本みたいなド直球変態野郎が言うとはね。それが聞こえているのか聞こえていないのかはたまた、ただ黙っていないのが悪いのか東條さんは三奈本を指差しこう言う。
「あの~三奈本君、意見がある場合は手をあげてください」
「わっかりました!これ頼友の意見なんですけどメイド喫茶なんてどうでしょう」
「ちょっとまた人のイメージを損ねるようなこと言うなって」
また勝手なことを言い出す三奈本の裾を掴み抗議するが全く意に返さない感じで三奈本は続ける。
「いやぁね、うちのクラス東條さんや日向さんを始め美人で可愛い子揃いじゃないですか。それを活かさないなんてもったいないっ!と頼友は豪語しているのです」
してない、してない。それ完全に三奈本の趣味じゃないか。
「メイド喫茶、ですか。そうなると服の調達や保健所への申請など大変なことが多そうですが他のクラスと被ってはいませんし他に意見がなければ候補には入れたいのですけど」
三奈本の変態発言、意外にも東條さんを始めクラスの女子は嫌悪感を示してはいないみたいだ。
確かに他のクラスの出し物を見ると占いやら演劇、お化け屋敷と様々だがこと文化祭の定番のようであるメイド喫茶はどこのクラスも手を出してはいなかった。
「ええっと、他に案がなければうちのクラスはメイド喫茶ということでいいですか?」
東條さんの問いかけにそこかしこから「異議なし~」だとか「いいよ~」なんて言葉が返ってくる。
「特に反対意見もないようなのでそれじゃメイド喫茶をやるということでお願いします」
小さく頭を下げる東條にクラス中から小さな拍手が沸き起こる。
「やったな頼友、メイド喫茶だぞメイド喫茶」
「良かったね。なんていうかもっと反対されると思ってたけど」
僕の考えじゃ女子連中が猛反対すると思ってたのに、三奈本が「美人」だの「可愛い」だの言ったせいなのかな。
「まぁ全然決まる気配なかったからなんでもいいって感じだったんだろ。だが甘いぜ、これからみっちりメイドとしての教育をしてやるぜ、ククク・・・・」
不適な笑みを浮かべる三奈本に僕はげんなりとして肩肘をつき嘆息する。
「まぁた溜め息なんてついてるな頼友。想像してみろよ生徒会長や日向のメイド姿を!」
「ん、ん~?」
なんとなく言われるままチラリと横目で席に戻っていく東條さんの姿を追う。確かにあの容姿でメイド服なんて着たら相当可愛いだろう、東條さんは大人しいキャラだしクラシックなロングスカートのメイドさんで日向さんはミニスカートのメイドさんかなぁ。
「おーい、頼友」
確かに想像するとそれはそれで物凄く魅力的だ。あれで傅いて上目使いで「御主人様」何て言われたら即押し倒してしまいそうだ。
「おい、頼友ってば!」
そんな僕の妄想は三奈本に肩を揺らされ現実世界へと引き戻される。
「なんだよ三奈本、想像しろって言ったのお前だろ」
「そんな妄想よりも現実を見ろ、ほらあれ!」
うわ、三奈本・・・・その台詞を君が言いますか。ただ三奈本の指差す先を見て思わず僕の動きは止まった。
クラスの皆も同じ所を見てざわついている、やれ「あの子誰?」だの「可愛い~」だの。
教室の扉の前でぴょんぴょんと跳ねながら「お~い頼友~」なんて叫んでいるどっかでみたような真っ赤なツインテールの真っ黒ゴスロリパンク姿の少女に僕は思わず頭を抱えた。
「なんであいつ来てるんだよ・・・・」
「おっ、やっぱり知り合いなのか頼友。なに滅茶苦茶可愛くない?さっきからお前の事呼んでるみたいだぜ?」
「くっ、ちょっと失礼します!」
やたらと人の名前を連呼する北条政子に僕はあまりの恥ずかしさにいてもたってもいられず教室を飛び出す。
なんていうか僕はクラスでも大人しいごくごく普通の男子高校生のはずなのに今日だけでこれからあらぬ誤解と奇異の目で見られるじゃないか!
「頼友、ようやくでてきたわね。ちょっと聞きたいこ・・・・」
「ちょっと来い!」
なんかのほほんと話している政子の手を掴むと僕を走り出す。
「ちょ、ちょっと何をするのよ!」
「いいから来いって!」
廊下を全速力で走る僕達は他の人達にはどう見えるんだろう?
なにか「駆け落ちか~?」だの「青春だねぇ」なんて他のクラスからも聞こえている気がするが今更もうどうしようもない。階段を一気に駆け上がると完全封鎖されている屋上の入り口の前に座り込む。
「・・・・はぁはぁ、こんなに走ったの久しぶりだ」
息がきれる。恥ずかしさあっての全力疾走だったけど自分の体力のなさには少々運動しないといけないかなぁなんて本気で思う。
「なんなのよぉイキナリ走り出すなんて。はっ、まさか私には愛しの頼朝様がいるのに逢い引きしようと!?」
「合い挽きでも挽き肉でもねぇー!!大体人目を忍ぶどころか目立ちすぎだ!」
相変わらず呑気なことを言っている政子に捲し立てるように僕は叫ぶ。
「お前家から、いや部屋から出るなって言ったじゃん!」
「そうだったかしらぁ?あんまり覚えてないや」
「あのなぁ、大体学校にそんな格好で来ること自体・・・・あれ、そういえばなんでここに僕がいるってわかったんだ?」
急な寒気が背筋を通る。もう僕の知らないところでこいつとりかえしのつかないこといくつかやってるんじゃないのか?
「なんでって普通に頼友の母上様に聞いてきたけど」
「おいぃぃぃぃ!!」
あーはい早速ですか、早速やらかしましてましたかこいつは!
「うるさいなぁ、そんな大声出さなくてもいいじゃない。いいじゃないったらいいじゃない!そんなに心配しなくても私の『傀儡政権』で記憶の改竄しているわよ」
僕の声に小さく頬を膨らませて反論する政子。あいかわらず傀儡政権の意味が違う気がするけど記憶の改竄までできるのかよアレ。
「私はゲームのやりかたがわからなかったから聞きに来ただけで頼友の勉学の邪魔をしに来たわけではないんだから」
「いやもう十分邪魔になっているというか、まぁいいや。そのゲームのやり方教えるから帰れよ」
「ん~~~それなんだけどぉ」
煮えきらない様子で辺りをキョロキョロと見渡す政子になにやら言われもない不安が過る。
「こんなに人がいるということは愛しの源頼朝もいるかもしれないわ、よし!私はここで頼朝様を探すぞぉ~」
言うが早い、政子は階段を一段飛ばしで降りると廊下を走り出す。
「おい、こらちょっと待て!ゲームのやり方教えるからおとなしく帰れって!」
「そんな言葉で聞いてもわからないわよ。それにここ面白そうだからちょっと楽しませてもらうわ、ついでに源頼朝様を見つけれたらラッキーだし」
走りながら政子は笑う。てかあいつの足、物凄く早いんですけど。こっちは追い付くどころかどんどん離されていってる。
「はぁはぁ、だからちょっと待てって」
「ここが頼友の『クラス』ね、頼友は魔法使いクラスなのか?体力無さすぎるし」
「そのクラスじゃねぇ!二年A組だよ!」
そんな僕のツッコミもよそに政子は教室に入っていく。フラフラとした足取りでその後を追うと
「『傀儡政権』の開始よ、私がここに居てもいいように計らいなさい」
時すでに遅し、僕の目の前で政子がそう言いながら三樹先生の皺だらけな額を指で弾いていた。
終わった、僕のごくごく普通の男子高校生生活が今完全に音をたてて崩れ落ちていった。

 

「あ~えっと、最近学校帰りにゲームセンターで屯している生徒を良く見かけるそうなので皆さんはいかないように。では以上です、皆さんさようなら」
朝と変わらない三樹先生の間延びした声とともにホームルームが終了し生徒が各々散っていく。そんな中僕は暮れる夕日に黄昏ながらいつもの倍以上の疲労に涙していた。
「政子ちゃん可愛い~こっち向いて~」
「はいはい~」
「アイドルみたい、実は3Dだったりするんでしょ~」
「ゲームでは3Dだったよ~」
「ゲームってなにぃ?なにそれウケる~」
そんな僕の苦労も知らずに隣ではクラスメイトになった北条政子を皆が囲って談笑していやがる。三樹先生を傀儡政権で操った結果、北条政子は『平野頼友の所にホームスティすることになったドイツ人と日本人のハーフの帰国子女』というよくわからない設定が付け加えられしかもなぜかそれを完全にうちのクラスの人間は疑問を抱くことなく受け入れたのだ。
「政子ちゃんはドイツのどこから来たの?」
「どいつ?はよくわからないけど私はイクサカーニ・・・・」
「いやいやいや!インゴルシュタット地方から来たんだよ!」
しかもあいつは平然と自分がゲームの世界からやって来たことを語りだしたりするもんだからこうやってフォローするだけでどんだけこの僕にどれだけの不幸が舞い込んだことか。
政子が「私は愛しの源頼朝を探しに来たの!」なんて言い出したときはクラスのアレな婦女子が「三奈本君と平野君がくっつけば三奈本頼友できるじゃん!」とか意味不明なことを言い出し「それでどっちが攻めなの?受けなの?」と全く嬉しくない
絡まれ方をした。
「頼友ぉ、政子ちゃんみたいな可愛い子と知り合いだったなんてなぜ黙ってたぁ!」
「黙ってたわけじゃなくて今日知ったんだよ僕も。というかもうそろそろ僕は家に帰るよ、やることあるし」
ニヤついた顔をして肘で小突いてくる三奈本に溜め息に混じりに言葉を返す。
「やることだと!?ま、まさかアレか!ベッドの上でやるアレか!?」
「ただのゲームだよ。政・・・・いや北条さんがやりたいっていうからさ」
「なにぃ!ゲームってまさか王様ゲームかツイスターゲームを帰国子女でよくわかってない政子ちゃんにやらせて・・・・」
「だから違うって。悪いけど今日はもうこれ以上三奈本には付き合ってられないよ」
さすがにこれ以上三奈本の冗談に付き合っていられるほど僕の体力はない。鞄を手に持ち席を立ち上がると隣の席で談笑している政子に声をかける。
「あのさぁ北條さん、僕そろそろ帰るけどどうする?」
「んぁ~もうそんな時間なのか。皆の者すまないが私はこれからポテチを食べながらコーラを飲み、ゲームに興じなければならないので帰るよ」
ならないのって、それただ家でだらけているってだけじゃないか。
「ではごきげんよう?さようなら?皆の者」
しかし少し名残惜しそうにしているクラスメイトに手を振る政子の姿は服装こそ違えど完全にクラスに溶け込んでいた。
「それじゃ頼友、ポテチとコーラを買いに行くわよ~」
「買いに行くってお金出すの僕なんだけど」
「細かいこと、私は気にしないよ」
「僕が気にするんだよ!!」
そんな会話をしながら廊下を歩く僕達。なんていうか明らかに周りから注目されているのがわかる、まぁ原因は間違いなく北条政子なんだろうけど他人の好奇の目ってのは実に胃にくるものがある。
「さっき皆に聞いたんだけどポテチには色々味に種類があるらしいわね。全部制覇してみたいわぁ」
「僕の貴重なおこづかいをポテチ制覇に当てないでくれ」
ただでさえ今日は早苗に二袋詫びで買わなきゃいけないのにこれじゃ財布の中身が底をつくのも時間の問題だな。
「まぁポテチは一日一袋、コーラは小さいの一缶で我慢しろ」
「ええぇー!頼友のケチ!童貞!おたんこなす!」
「はいはい、なに言われても変わりませんよ。もらえるだけありがたいと思ってくれよ。つかまた童貞とか言いやがって」
腕をブンブン振り回して抗議する政子を適当にあしらって階段を降りる。階段を降りてすぐ目前には木製の下駄箱がある、なんていうかこう漫画とかに出てくるような扉を開けるとドサッとラブレターが落ちるみたいなそんな展開をいつも妄想するんだがまぁそんなことは当然だけど一度たりともない。
下駄箱から靴を取りだしながら政子の方を一瞥する。本当二次元からやってきたっていうんだったらなんで伊達政宗ちゃんじゃないんだよ、伊達政宗ちゃんだったらもっとこうラブコメちっくな展開になってただろうになぁ
「ふふ~ん、ポテチ~ポテチ~♪」
そんな僕の悩みも知らずに鼻唄を歌っている政子を見て僕は本当今日何度目かというため息をついてまた天を仰ぐのだった。

 


『オリオン座に誓いを』


夜がまだ明けきらず、暗かった。
「あれは夢じゃないよな・・・・」
彼女と別れてまだ数時間、あの事は実は夢なんじゃないかと思うくらい不思議な出来事だった。
とぼとぼと歩き、ボンヤリした頭を掻きながら考える。
俺はあの子に救われた。
けど俺はあの子を救えただろうか?
それはよくわからない、よくわからないけど。
「楽しい一夜だった」
それだけははっきりと分かっていた。

 

 

その日、俺はオリオン座を見ていた。
一昔はもっと他の星座も見えたもんだが今や工場や車の排ガスに覆われオリオン座ですらぼんやり薄くしか見えない。
しかしそれは本当に工場や車の排ガスのせいなのか?
涙で滲んでいるだけじゃないのか?
まぁもうどっちだっていい、今日俺はここで死ぬんだから。
オリオン座を見ていたのは
「下見たら怖いから上を見て落ちよう」
そう考えていたからってだけだ。

五階建ての廃ビルの屋上、その縁に立って数時間。俺、桐谷隼也は人生最後の一歩に戸惑っていた。
「くっ、寒いな」
正月が開けてまだ一月とちょっと、スーツを着ていても冬の夜風は冷たく厳しい。
「なんでこんなことになったんだ」
ポツリと呟く。去年までの俺からしたら全くもって考えられない状況。若くして起業し社長と呼ばれ、美人な嫁と可愛い娘に囲まれて生活する勝ち組だったじゃないか。
「大凶って恐ろしいなぁ」
年明け初詣で引いたおみくじが大凶だった。「大凶って逆にレアだよな」なんてその時は笑っていたがそのせいなのかなんなのか仕事が始まってすぐに不幸って大津波に飲まれ俺の会社は倒産した。
部品の設計ミスに気がつかないまま社運を賭けた製品を販売、使って一定日数経つと不具合発生、最悪爆発するなんて爆弾を世に送り出してしまった。
もう額面なんて見たくないくらいの賠償請求、それとほぼ同時に優秀な仲間達がここぞと大企業に引き抜かれた。
『前からあんたのこと気にくわるなかったんだ』
『せいぜい頑張って借金返してくれよしゃちょーさん』
これが一緒にやってきた仲間からのありがたいお言葉だった。
どうやら俺はお山の大将を気取っていただけらしい、それに更に追い討ちをかけるように家から嫁が娘を連れて出ていきやがった。
年が明け早々結局俺に残ったのは借金と判子の押された離婚届、それと脱力感。
「もういいや、死んでしまおう」
その結論に至ったのは早かった。早かったが履き潰した革靴と『生きることに疲れました』とだけ書いた遺書を置いたまでは良かったが最後の一歩が踏み出せない。
足が震えている、冷や汗が滝のように出る、痛いんだろうなぁ、「あの~」、血がたくさん出るんだろうなぁ、下に人いないといいなぁ、 次々と脳裏に過っていく言葉。
「あれ?今実際に声がしたような・・・・」
「もしもーし、そこのおじさん」 
はっきり聞こえたその言葉に俺は振り向くとそこにはいつの間にか一人の女性が立っていた。
茶色の長髪に紺のブレザー 、スカートはそんなので寒くないのかってくらいに短くて黒のニーソックスを履いている典型的な女子高生といったその姿はあまりにもこの場に似つかわしくない。
なんとなく「ああ、あれが絶対領域ってやつか」なんて思ってると彼女は屈託のない笑顔でこう言ったのだ。

 

「おじさん、どうせ死ぬんだったら私と不純異性交遊しませんか?」

 

「は・・・・?不純異性って、うわわっ!」
その言葉の意味を理解する前に突然の横風が俺の体を揺らし思わずバランスが崩れる。
「やばい、落ちる・・・・!!」
視界がぐるりと回転しまるで定点観測された星空のようにオリオン座が傾く。ちょっと待ってまだ心の準備がなんにもできてないっ・・・・!
そう思った瞬間、誰かが俺の手を掴み引っ張られ───
「痛ってぇ!!」
圧倒言う間に冷たいコンクリートへと叩きつけられた。
けどコンクリートの上ってのは同じだが俺が落ちたのは屋上の縁から数十センチ下、つまりはまだ屋上。
「ふぅ、もう危ないなぁ」
俺の腕を引っ張ってくれたのはさっきいきなり現れた女子高生。
「ねぇねぇ痛かったでしょ?飛び降りたらもっと痛かったよ?」
微笑を浮かべながら言う彼女に俺は打ち付けた肩をさすりながら立ち上がる。
「そう、だな。助けてくれてありがとう」
なんていうか今から死のうとしてた人間の言う言葉じゃないが助けてくれたのは間違いない、ここは素直に礼を言っておくべきだろう。
「いえいえ~♪それでどうかな私と不純異性交遊。私結構可愛い方だと思うんだけど」
「いやなんていうかいきなりそう言われても」
この彼女さっきはいきなりだったから外見しかわからなかったが近くで見るとどっかのアイドルグループにいてもおかしくなさそうな綺麗な顔立ちにクリっとした大きな瞳、こんな可愛い子から「不純異性交遊」なんて言葉を聞いたらどんな男でもホイホイとついて行ってしまいそう、だけどさっきまで死のうと思っていた僕はそんな気分じゃない。
「そうゆうのはさ、もっと繁華街とかに行ったほうが・・・・」
「もう、据え膳だよ据え膳!行くって決めたら行くの!」
「ちょっとおい待てって!」
俺の腕を問答無用でおもいっきり引っ張ってくる彼女、一体何者なんだ?まさか本当に不純異性交遊したいだけの女子高生なんてことはないと思うけど、まぁとりあえず今そんなことはどうでもいい。
「・・・・とりあえず靴を履かせてくれ」
情けない言葉で呟き、よくわからないまま俺の自殺は未遂に終わった。

 


「えっとぉハンバーガーでしょ、てりやきでしょ、チーズバーガーにえっとナゲットとシェイクと・・・・」
この謎の女子高生に連れられてやってきたのは高速道路沿いにあるお城っぽいホテルなんかではなく駅前のハンバーガショップだった。
「んとあとチーズバーガーにぃ」
「チーズバーガー二回目だぞ、いったいいくつ食べる気だよ」
「じゃチーズバーガーは二つ、それとポテトは塩抜きでコーラはカロリーゼロのやつで!」
おいおい、そこまで食べるのに今更カロリー気にするのかよ。なんてツッコミたくもなったが俺をここにつれてきた手腕といい結構強引なんで注文を減らすなんて行為は止めておいた。
「オジサン、支払って♪」
「はいはい」
言われるままに財布から諭吉先生を一枚取り出すと店員に渡す。
「んじゃお釣りもらっておいて、俺あそこに先に座ってるから」
「了解だよ!」
俺は角のテーブル席を指差してから歩き出す。なんていうか『了解』は目上の人に使う言葉としては不適切だぞ、とか言ってやりたかったがそんな気力もなかった。
とぼとぼと席まで歩きどっしりと腰かけると思いっきり息を吐く。
「なにやってんだろ俺」
死のうと思ったら気がついたら女子高生とハンバーガーショップにいる、なにか夜にスーツで女子高生といると周りから奇異の目で見られそうなのでできるだけ人目につかない隅の席を選んだがどうやら正解だったようだ。席につくまでにもチラチラとこちらを不審な様子で見られていたからな。
「お待たせおじさん」
そんなことを考えると変な目で見られている原因ともあろう謎の女子高生がこれまたたんまりとトレイにハンバーガーを乗せてやってきた。なんていうかその量はさっき注文したときよりも増えている気がする。
「はいおじさん、お釣り」
「ああ、どうも」
受け取ったお釣りもなんかどうも少ない。しかしまぁ諭吉さんなんて渡した俺が悪いな、渋々それを財布にしまいながら声をかける。
「もしかして追加注文したのか?」
「だっておじさんも食べるんだったらあれじゃ足りないでしょ?それじゃいっただきまーす」
そう言ってハンバーガーを美味しそうにかぶりつく彼女。もしかしてさっきの注文は自分一人で食べる量だったのか?
「どしたのおじさん、食べないの?」
「ああ、食べるよ・・・・というかその“おじさん”ってのやめてくれよ。俺には桐谷隼也って名前あるしなによりまだ二十八歳だ」
ハンバーガーの包装紙を外しながら言う。正直まだ二十代だし見た目だってまだ若いつもり、おじさんなんて呼ばれるのは心外だ。
「ふぅん、思った以上に若いんだね。まぁでも十歳も離れていたら充分おじさんだよ」
「さようですか」
「そうだよ~あ、でも桐谷って名前格好良いからこれからは『桐谷のおじ様』って呼んであげようか?」
「すいませんでした、おじさんでいいです」
結局折れたのは俺の方だった。なんていうか言い合いする気力も残ってない。
「んじゃまぁおじさんが自己紹介してくれたから私も自己紹介しようかなぁ。うんと私の名前は白石美玲。見ての通りの女子高生だよ」
そう言って美玲は食べ終わった包装紙をぐしゃりと潰すと次のチーズバーガーを手に取る。
「それでなんでおじさん死のうとしてたの?遺書には『生きることに疲れました』としか書いてないし」
チーズバーガーを齧りナゲットを口に放り込みながら美玲はブレザーのポケットから俺の遺書を取りだしテーブルに置く。
「ちょ、お前俺の遺書見たのか」
道理で屋上で靴を履いたとき見当たらなかったがこいつが持っていたのか。
「というか遺書って他人にしか見せないじゃん」
「いやそれはそうだけど・・・・」
なんていうか今日初めて会ったしかもなにやらやたらと幸せそうな奴に見られたってことがなにか嫌だった。
「それでどんな理由なの?」
「まぁその仕事とか家の事でな」
だからなんとなくはぐらかした。別に美玲に事細かに説明したとしてもなにかが変わるわけではないし。
「ふぅ~ん、まぁ生きてると色々あるよね」
美玲はさっくりとそう言う。まぁ案の定そっちが聞いてきたってのに特に気に止めることなく髪の毛の毛先を指でクルクルと回しながらシェイクを啜ってた。
「それじゃさ、そろそろ次の場所行こ」
そして突然なにかを思い付いたのかのように美玲は立ち上がるとどこからか取り出したエコバックを広げそこにハンバーガーを次々と放り込んでいく。
「ポテトとシェイクは持って、ナゲットは今すぐ食べて」
「おいおいどこ行こうって言うんだよ」
そそくさと店から出ていこうとする美玲を言われるままポテトとシェイクを手に持ち追いかける。
「ちょっと待てって、そんなに急がなくてもいいだろええっと白石さん」
美玲の隣に並んで歩き横目で顔を見るとなにかとっても不機嫌そうなふて腐れているような表情をしている。
「おーい、聞いてるのか白石さ・・・・」
「み・れ・い!ちゃんと名前で呼んでくれないと返事しないんだからね!」
美玲は俺の言葉をそう言って遮るとエコバックにさっきいれたばかりのハンバーガーを取り出し一口かじる。
「それとさん付けも禁止なんだから!ちゃんと美玲って呼び捨てで呼ぶこと!私もちゃんとおじさんって呼ぶから」
「おじさんはちゃんとした呼び方じゃない、ってまぁいいか。とりあえずそのバック持つよ美玲」
「えっ本当?ありがとうおじさん、優しいなぁ」
俺がそう言うとさっきまでの不機嫌そうな顔がすぐに笑顔に変わる。
「それでさ今からどこ行くの?」
「え?そんなの決まってるでしょ、不純異性交遊だよ?」
美玲はなにか口元でゴニョゴニョ言いながら顔を赤く染めている。なんていうかコロコロ表情が変わる奴だな。
「あんまり女の子の口からそうゆうこと言わせないでよ、ほら手を繋いで行くよ」
「お、おい!」
ぎゅっと俺の手を握ると美玲は照れ隠しなのか走り出す。そ、そうだよな不純異性交遊で行くところと言えばもう一つしかないよなぁ。
すっかり冷え込んだ美玲の小さな手に掴まれながら俺はもうどうにでもなれ、そんな気持ちだった。

 

 

 


『それじゃ次は変顔して両手でピースサインぷす♪3・2・1・・・・』
「おじさん、早く早く!」
「お、おう」
美玲に言われるまま指定の格好をする。こんな感じで写真を撮られ続けて数分、馬鹿じゃない俺は流石にここがお城っぽいホテルじゃないことくらいはわかった。というかここは駅裏のゲームセンターにあるプリクラコーナー、じゃあさっきのあの美玲の照れ隠しとかはなんだったんだよ、嘘、大袈裟、紛らわしい!
『撮影終了ぷす!次は表の画面でお絵描きするぷす!』
「はーい」
画面内で踊る時期外れのハロウィン人形に美玲は元気よく返事をすると外へ飛び出していく。
「おじさん、お絵描きするよ」
「はいはい」
ペンを持たされ画面の前に立つがもう既に美玲によって沢山のお絵描きがされていて俺の書く隙間なんて見当たらない。しかしまぁ最後のポーズとっている俺、酷い顔してる。全然笑えないじゃないか。
「どうしたのおじさん。元気無さそうだよ?」
「ああいや、なんでもない」
「あーっ、わかった!ホテルじゃないからガッカリしてたんでしょ?」
「してないっての!ちょっと酷い顔してるなぁって思っただけだよ」
まぁ死のうとしていた奴の顔なんて大体生気の無さそうな顔しているよな。目は真っ赤で頬は痩けてるし酷いものだ。
「そっかなぁ?そこそこ素材は格好良いと思うけど。あ、でも!」
美玲はこちらを向くと俺の頬っぺたを力一杯掴んでくる。
「いたた、ふぁにするんだ」
「無精髭、剃った方がいいよ。余計おじさんに見えるから」
髭か、そういえば会社が潰れてからそんなことも気にしたこともなかった。
「ああ、わかった明日ちゃんと剃るよ」
明日か、自分で言っておいてなんだけど美玲に会うまで俺は今日死のうとしてたんだよな。それが気がついたら明日の事を考えている、これってなんなんだろう。美玲は好き放題やっているだけだけどそれに振り回されながらも少し楽しんでいる自分がいた。
「よし、それじゃ次はクレーンキャッチャーにいくよ~」
「はいはい、もうどこにでもついていきますよ」
出来上がったプリクラを手にはしゃぐ美玲の後ろ姿を見ながらこのよくわからない出会いも良かったのかなぁとしみじみ思うのだった。

『終わったら次の人のためにさっさとどきなさい!Go to HEEEEEEEEELL!!』
銃を持ったカボチャ人形の声(なぜかやたらと大音量)を背中に聞きながらプリクラコーナーを後にした俺達は今度はクレーンキャッチャーコーナーにやってきた。
「ええっと、あれだ!」
着くなり美玲は一台のクレーンキャッチャーの前に駆け寄ると
「おじさん、あれ取って!」
と一つの人形を指差す。
「あの黒猫か」
「そうあれ!」
大量にある眼鏡をつけたハロウィン人形とミニシルクハットを被ったハロウィン人形の山の中にポツリと一人転がっている三十センチほどの大きさの黒猫のぬいぐるみを美玲は御所望のようだ。
「これくらいなら俺に任せとけ、俺はこれでも学生時代は台の人形根こそぎ取ったこともあるんだからな」
「そうなの?なんか嘘臭いけど私、おじさん信じるよ!」
俺は財布から百円玉を取り出すと硬貨投入口に放り込む。
「まぁ見てなって」
目標捕捉、横に転がっている黒猫をじっと睨め付けながらボタンを押す。クレーンがフラフラと振り子のように揺れながら俺の視界に入ってくる。
「そしてここ!ボタンを離した後ちょっと滑るからな」
「本当だ、おじさんすごい!」
俺の言う通りクレーンはボタンを押してから少し滑って止まりちょうどその奥には黒猫のぬいぐるみが見える。あとは奥行きを考えてボタンを離せば問題なく取れる!
「これで、完璧・・・・だ!」
タイミングよくボタンを離すとクレーンはゆっくりと開き下降、黒猫のぬいぐるみをがっちりと挟み込む。
「おじさんやったね!」
「まぁざっとこんなもんよ」
ここまでくればもう勝利は確定、後は美玲に俺のクレーンキャッチャー武勇伝を熱く語るだけだな・・・・と思った矢先
ぼとっ・・・・と俺たちの目の前でクレーンからぬいぐるみは落ちた。
「くっ、もう少し左なら穴に落ちてたのに!」
勝利は既に手中にあったと思ったのにまさかほんの少しの間ぬいぐるみを掴んでいる力もないほどクレーンが弱いとは思わなかった。
「うわ、このクレーンの挟む力・・・・弱すぎ」
「ま、まぁ次は取れるよ。そんなに落ち込むなって」
しょげかえってる美玲の頭をポンと撫でると俺は財布からもう一枚百円玉を取り出し投入口に放り込む。
あとちょっとなんだ、すぐに取れるだろうと思ってやり出したのが運のつきだった。

 

 

・・・・五分後
「すまない美玲、野口先生を百円玉に変えてきてくれ」
「はーい」

・・・・更に十分後
「美玲、悪いけど樋口さんを百円玉にしてきてくれ」
「う、うん」

・・・・一時間後
「美玲、諭吉さんを・・・・」
「もういいよおじさん、無理しなくても」
「いや、いやいやいや!無理なんかしてないぞ俺は」
無理はしてないけど意地にはなっている。どうやら最初のぬいぐるみを掴み持ち上げるところまで行けたこと自体がかなりの奇跡だったようでそれからは掴みはすれど持ち上がる前にクレーンからこぼれ落ちてばっかりだ。しかも運の悪いことにぬいぐるみが壁の隅に転がっていったせいでクレーンの片一方が壁で完全にブロック、もはや手としてはぬいぐるみについている吊り下げ用の輪にクレーンの片一方を引っ掻けて持ち上げると言うなんだか高度なテクニックが必要になってきた。
「おじさん、店員さんに言って位置変えてもらおうよ。私みたいな美少女が言えば一発だと思うよ?」
「いやダメだ。そんな邪道俺は認めないからな。とりあえず千円だけでいいから両替してきてくれ」
「はいはい、んもぅ面倒なおじさんだなぁ」
ちょっと呆れた様子で俺から一万円を受けとると美玲は両替機の方へ歩いていく。
ここまできて諦めるなんて考えがでるほど消費した金は少なくない、こうなったら意地でもとってやるんだからな。
ゆらゆらと動くクレーンを凝視ながらそんなことを思う。
しかし俺はなんでこんなことに一生懸命になってるんだろう、さっきまで死のうとしてたのにな。
思わず苦笑してしまう、だが多分これで良かったんだろう。
「おじさん、両替してきたよ」
「ありがとな、でもその必要なかったかも」
今日だけでいくら使ったのか思い出したくないが今回の操作は完璧に上手くいった。ゆっくりとクレーンが下に降りてきてぬいぐるみの頭についている紐に引っ掛かると今度こそしっかりとぬいぐるみはつり上がり落とし口に辿り着いた。
「おじさんすごい!」
程なくして景品払い出し口に落ちてきた黒猫のぬいぐるみを拾い上げ美玲に手渡す。
「ざっとこんなもんよ」
「ありがとうおじさん!これね、ずっと欲しかったんだ」
なんていうかとんだ散財だったけどそれでも黒猫のぬいぐるみを大事そうに抱いて笑う美玲を見れたのならそれで満足だ。
「それじゃそろそろおじさんのおまちかねの場所、行こ?」
「おまえちかねの場所ってどこだよ」
わざとらしく俺の腕に身体を寄せてくる美玲に冷たく言い放つ。
「えーそれ言わせる?だってお金欲しいもん、ホ別苺でどう?」
「お前そんな台詞言うの初めてだろ」
俺はさらっと言ってのけると美玲の額を軽くツンと指で弾く。
「あれ、なんでわかるの?」
「本当に金欲しいだけの奴があんな廃ビルの屋上になんて来ないだろ」
俺が自殺しようとしていた廃ビル、あんな場所に美玲みたいな子が不純異性交遊のためになんて来るはずがない。
俺が考えるに、美玲ももしかしたら・・・・。
「あはは、やっぱりわかっちゃうよね」
ばつが悪そうに笑う美玲。わかってしまったらわかってしまったらその笑顔を見るのがとても辛くなった。
「ちょっと公園にでも行こうか、コンビニで飲み物でも買ってさ」
「うん、いいよ」
少し暗い表情でそう言う美玲にこれから俺は辛いことを聞くんだろうなと思うと少し心苦しくもあったけど
俺でも、こんな俺でもなにか美玲の力になってやりたかったんだ。

 


「あーあ、私もビールが良かったなぁ」
深夜の公園、小さな街灯だけが照らすベンチに俺と美玲は座るとすぐさま美玲が愚痴をこぼす。
「文句言うなよ、大体美玲は未成年だろ」
「えーでもいいじゃんちょっとくらい、女の子には酔いたい夜もあるのよ~」
物欲しそうな顔でこっちを見てくる美玲に俺はコンビニ袋からノンアルコールのビールを取り出し手渡す。
「これで我慢しろって」
「それアルコール入ってないじゃん」 
「いやだから未成年だろって」
呆れた感じで俺は言うと自分用のビールのプルタブを開けて一口喉に流し込む。正直言えば普段から酒なんて飲む方ではないのだが美玲のことを聞くのに素面ではどうも聞きづらかった
「あのさ美玲、ちょっと聞いていいか?」
「スリーサイズ以外ならなんでもいいよ」
ビールの苦味に顔をしかめながら俺は天を仰ぐ。真っ暗な空にオリオン座だけが薄ぼんやりと光っている。
「美玲もあそこに死にに来たんじゃないのか?」
俺の問いに美玲は黙ったままだった。黙ったままノンアルコールビールをちびちびと口にする。
それからしばらくして美玲はなにを思ったのかビール缶を地面に置くと
「ん~・・・・ねぇおじさん、膝枕して?」
「お、おい」
俺の静止も聞かずに美玲はベンチに寝転がり俺の右腿に頭を乗せ天を見つめる。
「おじさん知ってる?オリオン座のリゲルは『足の裏』、ベテルギウスは『腋の下』って意味なんだよ」
「いや、そんな豆知識いいから俺の質問に答えてくれよ」
美玲はじっと目を閉じて「しょうがないなぁ」と呟くいた後、意を決したように言葉を紡ぐ。
「私、後天性免疫不全症候群なんだ」
「えっ後天性免疫、なんだって?」
聞きなれない言葉に思わず聞き返すと黒猫のぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた美玲がはぁと小さく息を吐く。
「後天性免疫不全症候群、わかりやすく言うとエイズだよ」
「エイズ・・・・」
その病名は大して学のない俺でも聞いたことのある病名だった。
「私ね、彼氏がいたんだけどちょっとしたことで喧嘩して今日みたいにフラフラと夜の街を歩いてたんだ」
小さい声、でもはっきりした口調で美玲は続ける。
「そしたらね、イケメンのお兄さんに声をかけられてさ・・・・凄く優しかったし彼氏に当てつけてやろうと思って付いて行っちゃったんだ」
「もしかしてそいつが・・・・」
俺の言葉に美玲は静かに頷く。
「エイズ感染者だったみたい。一夜限りの関係だったしその人、自分がエイズ感染者って知っているのかも今となってはわからないけど」
「でも今は薬とかで大分抑制できるんだろ確かエイズって」
小さい頃はエイズと言ったら死の病みたいなイメージだったが今では医学も進歩して完治とは言わないが発症を長引かせたり症状を抑制できると言うのは聞いたことがある。
「うん、ちゃんと薬を飲んでれば死ぬことはないって・・・・。でもね、それを彼氏に言ったらね・・・・『そんな奴と付き合えない』って言われちゃって」
何も言えなかった、俺だってもし同じ状況だったらそう言っていたかもしれないから。
「理解なんてしてもらえなかった、所詮は学生の恋愛だよね。ただやりたいだけなんだもん、気遣いとか全然なかったし。しかも酷いんだよ、あいつ私がエイズだってことを学校に広めてね・・・・おかげでいっぱいイジメられたよ」
「美玲・・・・。」
「こんな格好してるけど今はもう学校になんて行ってないんだ」
薄っすらと美玲の目尻に涙が溜まっている。
「誰にも相談できないし、もう一生普通の恋愛とかできないのかなとか思うと辛くて・・・・。あれ、いやだなぁ上を見てたら涙こぼれないと思ったのに」
「もういい、もういいよ美玲。もう何も言わなくてもいい」
俺は美玲の身体を引き寄せると強く、強く抱きしめる。ああもう誰にどう思われようがそんなことどうでもよかった。
「わわ、おじさん積極的だよ」
「美玲は凄いよ、俺なんかより辛い目にあっているってのにあんなに楽しそうに笑って俺を慰めてくれたんだよな」
「辛さなんて人それぞれだよ、それに私だってあそこにおじさんがいなかったら多分そのまま自殺してたと思うし」
「そうか・・・・」
俺だってあそこで美玲に自殺を止められてなかったらこんな感情を抱くこともなかっただろう。
「美玲はこれからどうするのかは知らないけど俺はもう少し頑張ってみようと思うんだ。美玲のあの楽しそうな笑顔を見ていたらなんか俺もまだやれそうな気がして」
「えへへ、それじゃおじさんが頑張るなら私も頑張ってみようかな。たぶん辛いこと、泣きたいこといっぱいあるんだろうなぁ」
「そうだな・・・・でも俺はあのオリオン座に誓って頑張るよ」
俺が天を見上げると美玲も同じように天を仰ぐ。
「オリオン座?」
「オリオン座だけはこの都会でもちゃんと見えるからな」
工場や車の排ガスが溢れる都会の空だけどオリオン座だけはぼんやりと輝いている。どんなに周りが暗かろうと瞬くその星達を見ればどんなに辛くても頑張れそうな気がしたからだ。
「そっか、じゃ私もオリオン座に誓って頑張る。でもね、どうしてもどうしても辛くて死にたくなったら」
美玲は俺から身体を離すとニッコリと笑顔を見せる。
「あの廃ビルの屋上に来て・・・・そうしたら私がおじさんと一緒に死んであげる」
「そんな日は来ないといいな」
「そうだね・・・・」
それから俺達は日が昇りオリオン座が見えなくなるまで抱き合い空を見上げ続けた。

 


美玲と別れてからしばらく経った。
俺を取り巻く環境は一切変わってはいないがあの日美玲と出会えたことは本当に良かったと思う。
俺は今、莫大な借金を返すために昼は工場、夜はコンビニでバイトとがむしゃらに頑張っている。
慣れない仕事に精神、身体の疲労もたんまりと溜まるが仕事終わりの帰り道、ノンアルコールのビールを飲みながら天に瞬くオリオン座を見るとなんだか心が落ち着く。
別れて数日は美玲に会いたくてふとハンバーガーショップやゲームセンターに立ち寄ったこともあったが結局美玲にはあれから一度も会えずじまいだ。


「あそこの廃ビル、今度潰して新しくビル立てるんだって」


そんなある日、ふとそんな噂を聞いた。
俺が自殺しようとして美玲に会ったあのビルが無くなる・・・・。
「死にたくなったらあの廃ビルに来て」なんて美玲が言うからあえて行かないようにしていたがそれが無くなるとは。
あそこは俺と美玲を繋ぐ最後の場所、気がつけば俺の足はそこへと向かっていた。
美玲に会えるかもしれない、そう思うと居てもたってもいられず足早に廃ビルの階段を駆け上がる。
真っ暗で何度も壁にぶつかったがそんなこと気にしない。
「美玲っ!」
勢い良く屋上の扉を開ける、だが・・・・そこに美玲はいなかった。
「ま、そりゃこんな夜にいるわけないよな」
わかってはいた、いるわけないじゃないか。けど少しだけ希望を持っていたのも事実だ。
「ははっ、帰るか」
そう呟いて踵を返し帰ろうと思ったその視線の端にとあるものが映る。
「あれは、美玲にあげたぬいぐるみ!!」
思わず俺は駆け寄りぬいぐるみを拾い上げる。忘れもしないゲームセンターで美玲のために取った黒猫のぬいぐるみだ。
見たところ最近置いたばかりなのか汚れも大してなく綺麗な状態だ。
「これって手紙、か?」
黒猫の首輪の部分には小さく折りたたまれた手紙が挟まれていた。俺は慌ててそれを引っ張りだすと広げて見る。
小さく綺麗な文字で書かれたその手紙、名前こそ書いてないがそれは紛れも無い美玲から俺への手紙だった。


『なになにおじさん、またここに来たの?』

「また来ちまったな」

『もしかして私がいるかもと思って来たのかな?』

「ああ、ちょっとは期待した」

『残念でしたぁ~私はここにはいません~眠ってなんかいません~♪(なんちゃって☆』

「なんだよ、それ」

『・・・・っていうのはちょっと嘘、本当は一回だけ辛くなってここに来ちゃったことあるんだぁ』

「そうなのか?」

『ちょっとおじさんにぎゅーっと抱き締めてほしかったんだど甘えちゃダメだよね』

「俺はいつでも抱きしめてやるぞ、一人身だしな」

『おじさん、借金大変だからって危険な仕事とかしてない?ダメだよそうゆうのは』

「危険はないよ、至って普通の食品加工の工場勤務さ」

『それに死にたくなったらここに来てなんて言ってるからここでおじさんと会っちゃったらダメダメ、私はまだ頑張れるよ』

「でも俺はちょっとは会いたいな、美玲に」

『おじさんがここに辛くて苦しくて死にたくて来たんだったら、このぬいぐるみを私だと思って頑張って』

「いつかまた会えるか、美玲?」

『つらくなったらオリオン座を見て「美玲も頑張ってるんだから俺も頑張らないと」って思って、ね?』

「オリオン座か・・・・」
手紙から目を離し空を見上げる。とても冷たい風が吹き抜けていくが俺の心はいつもよりずっと温かい。
星なんて殆ど見えない都会の夜空にオリオン座だけが綺麗に瞬いていた。



                                                    おわり

プロフィール
HN:
氷桜夕雅
性別:
非公開
職業:
昔は探偵やってました
趣味:
メイド考察
自己紹介:
ひおうゆうが と読むらしい

本名が妙に字画が悪いので字画の良い名前にしようとおもった結果がこのちょっと痛い名前だよ!!

名古屋市在住、どこにでもいるメイドスキー♪
ツクール更新メモ♪
http://xfs.jp/AStCz バージョン0.06
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