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「神楽坂さん、神楽坂さん!」
五葉の声にオレの意識は一気に覚醒する。五葉の顔が物凄い近い距離で思わずビックリして後ずさった
「あ、ああ五葉どうした?」
「どうした?じゃありませんよ!神楽坂さん、急にぼうっとしちゃって」
「ええ、ああごめんちょっとあれさセイバークエストやりすぎで睡眠不足な感じでちょっと眠ってたみたいで」
五葉の問いにオレは咄嗟に嘘をついた。くそ、まさかいつの間にかあんな昔のことを思い出すなんて思いも知らなかった
「そうなんですか?でも───」
ふと五葉の右手がオレの頬に触れる、十月の寒さが感じられる冷めた手の感触
「なんで泣いているんですか?なにか悲しいこと思い出したとか」
「なんでもない、なんでもないさ。ただ欠伸がでただけで」
オレの心の中を見透かしたような五葉の言葉に思わずオレはまた嘘を───、一つ壁を作ってしまった
五葉に素直に今の気持ちを吐露すればどれだけ楽になれるんだろう?
だがそれは許されない、それはオレが硬派な男であるために
「大丈夫ですか?別に大学行くのが苦痛ならまた今度の機会でも・・・」
「いや本当に寝ちゃってただけだからそんなに心配しなくても大丈夫だよ、ほら電車来たし」
オレがホームの奥を指差すとちょうどタイミング良く桜花線の真赤な鈍行電車がホームへとゆっくりと入ってくる
「大学でなにかあったとかですか?」
「違うよ、いや本当大丈夫だからさ」
五葉の心を見透かしたような言葉に胸が締め付けられるが平静を装いベンチから立ち上がると電車に乗り込む
「早く乗らないと置いてくぜ五葉」
平日の昼間ということもあってか誰も乗っていない車両、オレは座席の真ん中に座ると五葉に声を掛ける。電車の発進を知らせるアナウンスが流れる寸前のことだ、五葉は「あっ、もう待ってください神楽坂さん」と少し不満そうな声をあげながらも駆け足で電車に乗り込んでくる
「別に神楽坂さんに思うところがないのなら私はいいんですけど、なんでしょうか私だって地味かも知れませんけど女の子です。一緒にいるのにぼーっとされたら私と一緒にいるのつまらないんじゃないかと思っちゃうじゃないですか」
チェック柄のスカートを押さえながら座ると五葉は口を尖らせ不満を漏らす
「それは本当ごめん、あとでジュース奢るから機嫌直してくれよ」
「あ、別に怒ってはないんですけどね。でもジュースは奢ってもらおうかな」
五葉が少し意地悪っぽくそう言うのとほぼ同じタイミングで電車がその扉を閉めゆっくりと動き出す
オレと五葉の二人しかいない車両の中、急に会話が途切れた
横目で五葉を見やると五葉はなんだか楽しそうに外の景色を眺めている
なんだか邪魔しちゃ悪い雰囲気だな
そう思い、オレはふと手に持っていた自分の携帯電話に視線を動かす。そういえば五葉と隣にいるのにメールでやりとりしてたんだっけな
携帯電話はメール着信を知らせるエメラルドグリーンのシグナルが煌々と光っている、開いてみると『新着メールが三件あります』の文字が目に入ってきた
携帯電話のボタンを操作してメール画面を表示させる。
一通目『件名:RE:RE:RE:RE:RE:五葉です、送信テストと恭治さんに質問です♪』
『恭治さんは大学で好きな人とかいましたか?』
好きな人、その文字が目に入ってすぐに脳裏に浮かんだ人は伊波早苗さんだった
いやでもそれは正確には違う、オレが好きなんじゃなくて伊波さんがオレのことを好きだったんだ。なんでこんなオレを好きでいてくれたのかはよくわからなかったけどな
でもオレには彼女の気持ちに答える事も彼女を守ることも出来なかった
これはメールなんかで五葉に簡単に答えれることではない、オレは携帯電話を操作し他のメールに目を通す
が二通目は『あれ?どうしたんですか?』で三通目は「ぼーっとしてどうしたんですかぁ?」といったもので思わず息を吐き携帯電話を閉じた
今、彼女はなにをしているんだろうか?そんな気持ちを抱えオレと五葉を乗せた鈍行電車はゆっくりと景色を流しながら進んでいく。時折五葉が「あれ見てください!」なんて言って視線を動かすがそれもあっと言う間に過ぎ去ってゆく、見ようと思っても見ることができなかった
『まもなく桜陵大学前、桜陵大学前。お出口は右側になります』
それから十分ほどして視界には灰色のホーム、そして車内にアナウンスが流れる、たった二駅とはいえなんだかオレには物凄く長い時間が経ったように思えた。
「神楽坂さんの大学って近いんですか?」
「まぁここから五、六分ってところかな」
改札に切符を通し先を歩く五葉にそう言うと並ぶように歩を進める
「うわぁ、なんか都会みたいですね」
「まぁ桜花町に比べたらどこだって都会だろうな」
久しぶりではあるが大して様変わりしていない町並みを見てオレは言葉を漏らす。確かに桜花町とは違って駅前はそこそこ大きなデパートなどが立ち並ぶが本当それだけ桜陵大学と駅前から少しでも離れたら田んぼだらけの田舎な所は大して変わりない
駅から歩いてほどなくしてオレ達は大学へ続く並木道へとでる。黄金色の銀杏の葉が絨毯のように敷き詰められて美しい、そしてそれを楽しそうに五葉はオレの目の前で踏みしめながら歩いていく
「綺麗な銀杏ですね、こんな綺麗な銀杏初めて見ます!!」
「もしかして五葉ってあんまりこうゆうところに来ないのか?」
「そうですね、あんまり桜花町から出たことないですから。あ、もしかして私はしゃぎすぎてましたか?」
オレの言葉に五葉はチャック柄のスカートをフワリと翻し少し恥ずかしそうに振り返る
「そんなことはないけど、いや大学にまだついてないってのに楽しそうだなって思ってさ」
「でもあそこに見えるのって大学の講堂ですよね、あれみてたらなんだかワクワクしちゃって」
そう言う五葉の様子は本当に大学に行くのが楽しいようだ、確かに見上げると年代のいった古臭い茶色の講堂が目に入る
「なんだったらオレの代わりに五葉が大学行くか?」
「え、行ってもいいんですか?」
「いや、普通に考えていいわけないだろ」
「まぁそうですよね。あ、でも合格した受験生みたいに校門前で記念撮影してもいいですか!?」
五葉はオレが返答するよりも早く携帯電話を取り出しカメラモードに切り替えるとオレに押し付けるようにその手に握らせる
「可愛く撮ってくれないとダメですからね!」
オレに携帯電話を渡した五葉はニッコリと微笑むと大きな講堂をバックに指でピースをつくりポーズを決める。まさに『大学に入学しました!!』な感じを全く入学と関係ない秋にやっている五葉に、携帯電話のカメラで撮る現役の俺、そしてそれを校門から出てくる正真正銘の桜陵大学の生徒達に見守られ正直恥ずかしさで一杯だった
「よ、よし撮るぞ!」
携帯電話のカメラを覗き込んでオレは恥ずかしさを吹き飛ばすように意味もなく宣言するとカメラモードになっている携帯電話を覗き込みそこに映る五葉の様子を捉えたのだが───
「・・・・・・なんであいつがいるんだよ」
オレは思わずその光景に溜息をついてしまった
講堂をバックにポーズを五葉、それは問題ない全然問題なんだが問題はその後ろ。なにかどこかで見たことのある真赤なセーターに黒縁めがねの小太りのお男が物凄く笑顔で手を振りながらこちらに駆け寄って来ているのだ
これはまたなんか一悶着ありそうな気がするよ、本当
つづく
じゃーじゃーじゃじゃー♪
じゃーじゃーじゃー♪
恭治「やれやれ前回三ヶ月放置しておいて、今度は五ヶ月放置かよ。しかも短いし、まぁでもちょっと本来の?メイド服とおまじないに戻ったようでなによりだぜ。で、次回?でようやく引っ張りすぎていた音瀬三葉がでるらしいな、なんでも昔のオレと関係が有るとかないとか?全然覚えてないがとりあえず次回!メイド服とおまじない 黎明編その七 『閉塞的な旅路の終わり』に・・・・えっとなんて言ってたっけか最後の台詞は」
本名が妙に字画が悪いので字画の良い名前にしようとおもった結果がこのちょっと痛い名前だよ!!
名古屋市在住、どこにでもいるメイドスキー♪
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