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日記と小説の合わせ技、ツンデレはあまり関係ない。 あと当ブログの作品の無断使用はお止めください
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《 鴛鴦の戯れ 》

 信頼する証に、自分の一番大事な本を預ける。次に店内から一冊の本を選ぶことがこのゲームの最初の手順。
それからお互いに持った本から三つ問題を相手に投げかけ、多く答えられたほうが勝ち───ただし問題の答えは必ずその本の中に文字として記載されていること。
私───浅宮紗希はそこまで手帳に書いて隣の出来の悪い幼馴染、この暑苦しい真夏に黒スーツと黒のソフト帽をかぶる黒澤翔を横目に見る。翔はさも全てを把握しているかのように腕を組み「なるほどな」なんて呟いている。
でも結局聞いているようで全く聞いてないから私がこうやってメモを取ることになる、もうそんな関係にも慣れてしまった。
今回の依頼者のことを語る前にこの出来の悪いバカな幼馴染、黒澤翔について面倒だし知った所で記憶容量の無駄だけど語っておこう思う。
黒澤翔、私の幼馴染でちょっと前まで同じ大学に通っていた出来の悪いバカで間抜けで鈍感で変態で・・・・語り出したらキリがない男。そして自分がやりたいと思ったならなにがなんでもやらないと気が済まない男。
小さい頃からそんな黒澤翔に振り回されてきた私だけど、今回の彼の行動には正直今までの中でも閉口せざる出来事だった。
どこでまた影響されたのか知らないが急に「探偵王に俺はなる!」なんて意味不明な供述とともに折角受かった大学を途中で退学して気がついたらちゃっかり探偵事務所なんてのを構えている本当に出来の悪いバカで間抜けで鈍感で変態で・・・・
まぁ一番のバカはこんな男に付き合って“助手一号”なんてやっている私なんだけどね。
そしてこのバカ幼馴染がやり始めた探偵ごっこに初めて依頼してきた奇特な人が、六爪寺佳奈さんだ。
「あの、えっとーそのー」
華奢な白い肩をのぞかせた白いワンピースに麦わら帽子、おどおどとした様子で語る姿はまるで避暑地のお嬢様、もっと言えばこう言っていいものかわからないけど可愛い小動物のようだ。
「しかし古本屋でそんなギャンブルをして借金一千万とはいやはや信じがたい話だ」
「で、でも本当の話なんです」
翔の問いに涙目で答える佳奈さんではあるが、今回の彼女の依頼それは確かに普通のところじゃまともに取り合ってくれそうにもない話だ。
「お母さんの手術代が足りなくて金融会社に行ったんですけど私未成年でお金貸してもらえなかったんです。でもそうしたら金融会社のおじさんが『金は貸せないけど金を稼ぐ場所を紹介する』ってその古本屋を紹介してくれたんです」
金融会社の紹介する仕事って水商売だとかそんな類いだと想像するまでもないと思ったのだがまぁ古本屋で良かった、と思うところか。まぁでもお金がない人をギャンブルに走らせるなんてのは到底容認できるものじゃないけど。
「お母さんの手術代を集めないといけないのに逆に借金をしちゃうなんて私もうどうしたらいいかわからなくて・・・・」
「大丈夫ですお嬢さん、この名探偵黒澤翔にお任せていただければ円滑に解決して見せましょう!」
佳奈さんの手をぎゅっと握り熱く語る翔。けどこいつのことだ
口先だけでなんにも解決策考えてないんだろう、どうせ大方ただ佳奈さんの手を握りたかった、それだけだ。
「ちょっと翔、そんな安請け合いして大丈夫なの?」
肘で小突きながら訊ねてみるが当の翔は怪訝そうな表情でこっちを見る。
「なんだよ紗希、幼馴染みのお前が俺のこと信用してないのか?」
「幼馴染みだから信用してないんだけど?」
私が最もらしい言葉を返すと翔はしばらく沈黙し佳奈さんのほうを振り向く。
「なにか心配性の助手一号がいますがご安心を、佳奈さんは豪華客船タイタニック号に乗ったつもりでいてくだされば結構ですので」
「は、はぁ」
再び佳奈さんの手を強く握りしめ熱く語ってるけど、その船じゃ沈むでしょうが。
「でも一体どうやってお金取り返すつもりなの?」、
「そんなの簡単だ、そのギャンブルで勝てばいいんだろ」
翔は本当に簡単に言ってくれる。でもそれができたら誰も苦労しないし佳奈さんだって依頼してこないでしょうが。
そもそもギャンブルで失った金をギャンブルで取り返すなんて探偵の仕事じゃないし、そもそもそのギャンブルだって裏があるかもしれないじゃない。万が一負けて借金が増えたらどうするつもりなのよ。
「よっし!それじゃ本を選んでさっさと金を取り返しにいきましょう、任せてください」
私のそんな考えを言う前に翔は立ち上がり本棚を漁り出す。本当に思い立ったら後先考えずにすぐに行動するんだからフォローしなくちゃいけない私の苦労も少しは考えてほしい。
今だって本を探すことに夢中で依頼金や成功報酬のこととかまるで話していない。本当そんなことでやっていけるのか常々不安に思いながらため息混じりに私は手帳を閉じた。



「あの、えっとそこを右に曲がったらすぐです」
佳奈さんの案内のもと私達は例の「古本屋」へと向かっていた。
「へぇ・・・・意外と近くにあるんだな」
翔の言うようにその「古本屋」の場所は翔の事務所から目と鼻の先、歩いて五分ほどの近場にあった。まさかこんな近くに美少女をギャンブルで借金背負わせるような怪しい店があるとは思わなかった。
「こ、ここです。ここが古本屋「猫の目書房」です」
佳奈さんが立ち止まった店の前、その建物を見て思わずその崩壊具合に唖然としてしまった。木製の建物はいたるところが腐ってしまっているのか穴が空き、根幹自体が崩壊しかけ建物自体が斜めに傾いてしまっている。震度1くらいの地震でもあったら今にも崩れ落ちてしまいそうなくらいのオンボロ具合だった。
「へっ、上等じゃねぇか。腕がなるぜ」
なにが上等なのかよくわからないが翔は自信満々な様子で店の扉に手を掛ける。
「たのも・・・・・・・・って開かねぇ!!」
曇りガラスの引き戸を翔が必死に引っ張るがガタガタと激しい音がなるだけで一向に開く気配がない。むしろ戸が開く前に建物自体が崩壊しそうなくらいだ。
「ちょっと翔、あんまりやると壊れるわよ」
「だってしょうがないだろうが開かねぇんだから!」
なにやら足まで使い始めた翔に佳奈さんが恐る恐る近づくと消え入りそうな声で呟く。
「あ、えっとその・・・・翔さん私に任せてください」
「それは構いませんけど男の俺でも開かないんですよ」
「あ、これちょっとしたコツがあるんです」
そう言うがままに佳奈さんは引き戸に手を掛けながら戸の縁をそのか細い足で戸に蹴りを入れると───
「はい開きましたよ」
男の翔がいくらやっても開かなかった戸があっさりと横へとスライドした。それと同時に店の中から数匹の猫が飛び出してくると翔の周りを取り囲む。
「うわっ、ちょっと待てよなんだよこいつら!」
「なにって可愛い猫ちゃん達じゃない、いいわね猫には大人気で」
「よくねぇよ!と、とにかく俺が猫嫌いなの知っているんだろなんとかしてくれよ」
そう言いながら翔は擦り寄ってくる猫達に「あっちいけ」だの「しっし」だのやっている。まぁなんていうか翔が大の猫嫌いなのは小さい頃に猫にちょっかい出して顔面を掻き毟られたからなんだけど、正直ここは放っておいてもいいかなって思っている。
「あの助手一号さん、黒澤さんって猫が嫌いなんですか?」
「そうなんですよ、こんなに可愛いのに変なやつでしょ」
「それは困りましたね・・・・」
「困ったってどうしてですか?」
「はぁ、それは店の中を見てもらえばわかりますけど」
ちょっと心配そうに言う佳奈さんに言われるがまま店内を覗きこんでなぜ彼女が心配そうなのかはすぐにわかった。
「翔、良かったわね。店内に可愛い子が沢山いるよ」
「なにぃ!?それを早く言え!!」
猫に怯えていた翔は私の甘言に乗って足にまとわりつく猫ちゃんを払いのけ店の中に突っ込んでいく。
バカだ、本当にバカ。なんでこんな簡単な嘘も見抜けないんでよく探偵なんて自称しているんだか・・・・“可愛い子”をすぐに人間の女の子だなんて勘違いするバカにはちょっとお仕置きが必要かもしれない。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!!やめろ、俺に近づくなぁ!!」
ほどなくして翔は店内の可愛い猫ちゃん達に囲まれて叫び声あげていた。普通に考えてこんなところに可愛い女の子が沢山いるわけないじゃない、そんなこともわからないなんて本当この先大丈夫なのかだろうか。
「おやおや、随分と元気なお客さんだね」
私がそんな不安を抱いていると店の奥からそんな声が聞こえた。
「あ、あの人が店長の清次郎さんです」
「あれが店長さん?」
佳奈さんに言われるまま奥のカウンターに座る店長さんを見るがなんていうんだろう想像してたのとは全く違っていた。
短く切り揃えられた髪に青い甚平に小さな丸眼鏡、柔和に微笑むその姿はなんだろうギャンブルでお金を巻き上げる、そんなことをするようには見えない爽やかそうな好青年。
「佳奈さん、そこのお二人は?」
「あのえっと探偵さんと助手一号さんです」
「探偵・・・・」
佳奈さんの言葉に一瞬、清次郎さんの目付きが鋭くなる。
「そうゆうことですか。佳奈さんは僕ともう一度戦いたいと」
「お願いします!」
深々と佳奈さんは頭を下げる。けど止めておいた方がいいんじゃないかなぁなんて今更ながらに思う。なにせ「俺がギャンブルで金を取り返してやる!」なんて息巻いてた張本人が猫に囲まれて瀕死状態なんだから。
「や、やい!極悪人め!この俺、黒澤翔様がギャフンと言わせてやるからな!」
翔はそう息巻くが、正直へっぴり腰で言われてもまるで様になっていないし、そしてなにより今時ギャフンなんて言葉を使う幼馴染みに呆れてものも言えなかった。


「さて、これで少しは落ち着いて話せるかな」
清次郎さんがそう言いながら急須から四つ湯飲みにお茶を注ぐ。番茶だろうか出だしの香ばしい匂いが鼻に入ってくる。
「へっ、俺にその手は効かないぜどうせ大方毒か薬でも・・・・」
「頂きます」
なにやらゴチャゴチャと言っている翔を無視してお茶を啜る。
とりあえず翔がいつもの調子に戻ったのはじゃれていた猫ちゃん達を佳奈さんが抱き抱えているからだ。まぁ抱いているのが三匹、頭の上に器用に乗っているのが一匹で後は足元に集まっているという感じ、そんな佳奈さんが私の右側に私の左側に翔がアホ顔でふんぞり返っている。猫が怖くて私を盾にしているなのに随分と偉そうだ。
「大体細目の奴ってのは悪者なんだよなー」
「あはは、そう言われましても生まれつきなもので」
そして正面、木製のカウンターを挟んだ向こう側にいる清次郎さんが翔の言いがかり的な暴言にも笑顔で答えている。
「ではもう佳奈さんに聞いて知っているでしょうが改めてルールを説明しておきましょう」
お茶を一口飲むと清次郎さんは淡々とした口調で続ける。
「まず信頼の証として一番大切な本を私に預けてもらいます。お金のやり取りをする以上お互い信頼が必要ですからね」
「信頼とかどうでもいい。別に勝つためなら一番大切な本じゃなくてもいいよな」
「まぁ構いませんよ。ですが問題は多岐にわたるため一番読んでいる馴染みの深い本の方がいざというときに役に立つと僕は思います。」
翔の荒々しい口調にも清次郎さんは丁寧且つ慎重に答える。ギャンブルでお金を巻き上げる人には見えないとはさっき思ったがこと勝負事には強そうなタイプに見える。
「次に黒澤さん達にはこの古本屋の店内にある本を一冊選んでもらいます」
「それって売り物じゃないとダメなのか?例えばそこにある電話帳とか」
翔がちょうど清次郎さんのとなりに積んである地域電話帳を指差す。
「店内にある本の体をなしたものなら売り物である必要はありません・・・・ですがそこの電話帳は止めておいた方がいいでしょう」
「なんだよ、自信ないのか?」
「あのえっと、逆です。私が勝負したときにそこの電話帳使ったんですけど清次郎さん電話帳の中身すべて覚えていて完敗しちゃったんですよ」
佳奈さんの言葉はにわかには信じがたい話だった。電話帳の中身をすべて覚えるなんてできるのだろうか。いやそれだけじゃなくてこの古本屋にある本の内容をすべて記憶しているとしたら、なまじ適当な問題で清次郎さんに勝つなんて無理じゃないのか?
考えれば考えるほどこの勝負の先行きは不安になってくる。とはいえ私が言ったところで翔が止めてくれるわけないから困る。
「まぁ黒澤さんがこの電話帳で対決を望むのであれば私は別に構いませんけどね」
「・・・・それはまぁ考えておくぜ」
「それではルールの続きを。お互い本を選んだらそこから三問問題を作り相手が答えられなければポイントとなります。ただし問題の答えは必ず本に文字として記載されていること、記載されていることから連想しなければ答えが導き出されないものはダメです、あくまで答えは本の中になければならない」
「じゃ『このときの作者の気持ちを考えろ』ってのはないわけだな」
「そうですね」
「ふっ、なら問題ないぜ」
なにが問題ないのかわからないけど翔は意味ありげに笑みを浮かべている。
「ルールは以上です。あとはレートですが、どうでしょう本来なら一勝五百万としているんですが今回は特別に三戦して私に一勝でも勝てたら佳奈さんの借金をゼロにして一千万差し上げ、逆に私に一勝もできなければ佳奈さんの借金を一千万上乗せというのはどうでしょう」
清次郎さんのその提案は随分とこちらに譲歩した提案だった。単純に二回勝っただけでは佳奈さんの負け分がチャラになるだけのところをたった一回勝っただけで借金をチャラにしてさらに一千万を貰えるという話なんだから。けど逆を言えばそれだけ清次郎さんはこの勝負に自信があるということになる。
「へっ、あとで『やっぱりなかったことに』ってには受け付けないからな」
翔はおそらく状況を全く把握してないのだろう勢いだけで話を進め、今も自信満々なご様子で椅子にふんぞり返っている。
多分数分後には泣きを見ている気がするけど。
「大丈夫ですよ、約束は守ります。ではさっそくですが勝負と───」
「いや、ちょっと待ってくれ。最初の勝負は俺以外の奴にやってもらう」
清次郎さんの声を遮って翔が声を張り上げる。えっ、というか翔以外がやるって私か佳奈さんにやらせるっていうの?事前にそんな話してないし、なにより
「私の一番大切な本なんてもってきてないわよ」
「ん、ああ大丈夫だ。最初に勝負するのは助手二号だからな」
「じょ、助手二号!?」
翔の思わぬ言葉に私はつい大きな声をあげてしまった。
なんというかいつの間に助手二号なんてできたの?というより
翔の戯れ事に付き合うようなおバカさんが私以外にいたなんてという方が驚きだった。
「ちょっと一体誰なのよ、助手二号って」
「紗希もよく知ってる奴だよ、ここに来る前にメールしておいたからもうすぐ来るぜ」
私が知っている人って大学の友達か?翔のことだ、男の助手ってのはないだろうしあるとすれば同じサークルだった麻佑ちゃんか由紀ちゃんかだけど・・・・ダメだダメだ、あの二人に私が助手一号やっているってのがバレるのも恥ずかしいし、あの二人が貴重な青春をこんなバカ男のために使うのも許せない。
そんなことを考えていると背後の戸がガタガタと音をたてて揺れる。
一瞬風で戸が揺れただけとも思ったがそれは違う、曇りガラス
越しに人の姿が見えたからだ。
「あ、開かないのか。私開けてきます!」
すぐさま私は立ち上がり戸に向かう。私が真っ先に開けてあの二人のどちらかならお引き取りしてもらおう。
「今開けますね」
私は戸の向こう側に声をかけると佳奈さんがやっていたように
戸に手をかけ、縁を足で蹴る。
「これで開くはず、なんだけどおかしいな」
何度か戸を引きながら縁を足で蹴るが全く戸は開こうとしない。なんて立て付けの悪い建物なんだ、そう思っていると全然開かないのを心配してか佳奈さんが声をあげる。
「あのえっと紗希さん、内側から開けるときはもうちょっと左側を蹴ってみてください」
「わかりました、もうちょっとひだ・・・・きゃっ!」
佳奈さんに言われるままほんの少し左の縁を蹴るとさっきまでびくともしていなかった戸が勢いよく開く。その勢いに思わず私はつんのめって倒れてしまった。
「いたた」
「大丈夫ですか?さぁお手をどうぞ」
凛とした声とともに戸の向こう側にいた女性が手を差し伸べる。その手を取り顔をあげると随分と見知った顔がそこにはあった。
「あれ・・・・明音ちゃん?」
「えっ、もしかして紗希さんですか」
私の目の前にいる明音ちゃんもびっくりしたように声をあげる。腰ほどまで伸びる黒髪に透き通るような色白の肌、この辺でも有名な御嬢様学校の白い制服を着た彼女は黒澤明音ちゃんはまぁ苗字からもわかるけどあのバカ翔の三つ下の妹さんだ。
とはいえ明音ちゃんの方は翔とは本当に兄妹なのか疑いたくなるほど優秀で頭脳明晰、容姿端麗、スポーツ万能とありきたりな誉め言葉を全部並べても足りないくらいの良い子なんだけど
まぁ問題があるとすればあのバカ翔のやるアウトローなことにちょっと惹かれているってところかな、例えるなら中学生の時クラスで一番可愛い子が高校でヤンキーと付き合ってた、みたいな?自分の持ってないところに惹かれているんだろうけど、正直そんなところ明音ちゃんには真似してほしくないと思う。
「あれ、じゃあもしかして助手二号って明音ちゃんなの?」
「はい!兄様にお願いしたら助手にしてくれました」
屈託のない笑顔で答える明音ちゃんに私は呆れてものも言えなかった、ていうか自分からあんなのの助手になりたいとかやっぱり変わってる。
「おい二人ともなにやってるんだよ、早く来いよ」
「わかってるわよ」
翔の催促に振り返ることなく答えると立ち上がり明音ちゃんに耳打ちするように近づく。
「ねぇ明音ちゃん、助手やりたいのはわかるけどさ今回のお仕事は危ないから止めた方がいいよ」
「いえ、私は兄様のお役に立ちたいんです。それに危険なお仕事でも兄様と紗希さんがいれば安心ですから」
ん?それって落ちるときは一緒だから大丈夫って意味なのか?
一瞬そんなことを思ったがともかく明音ちゃんの決意は固い。
私との話もそうそうに翔の元へといってしまう。なんていうか一度決めたら一直線なところは兄妹一緒みたいだ。

「えっと私、黒澤明音と言います。今日はよろしくお願いします」
「僕はこの『猫の目書房』の店長をしている清次郎と言います、よろしくお願いしますね」
明音ちゃんと清次郎さんの丁寧な挨拶とともに最初の勝負は始まった。けどなんで翔は明音ちゃんに勝負させているのかが全然わからない、なにより翔が私や佳奈さんにどうやって戦うかとか作戦とかそういう話を一切していないのでこっちは不安で一杯だ。
と思いきや、そんな不安を抱えているのは私だけのようで依頼主である佳奈さんは猫に囲まれて楽しそうにお茶を飲んでのほほんとしている始末。古本屋で一千万円かけての勝負も違和感があるがこのほのぼのとした空気もかなりの違和感だ。
「それでは明音さん、貴女の大切な本を」
「はい、えっとこれですね」
明音ちゃんは学校の鞄から一冊の本を取り出すと清次郎さんに差し出す。B5サイズの青い本には大きく白文字で『これで数学がわからなかったら脳の異常です!』と書かれていた。
「って明音ちゃんこれ数学の参考書じゃない」
「はい、私高校に入ってから全然数学わからなかったんですけどこの本のお陰で今ではすっかり数学ガールになれました!」
数学ガールって、森ガールみたいに言ってるけど私が言いたいとことはそこじゃない。普通一番大切な本って言ったらなんか小さい頃に親から貰ったとか大切な人に貰ったとかそうゆうのを言うんじゃないの?
「ちょっと翔、参考書で大丈夫なの?」
「まぁそれが明音の一番大切な本なら参考書もありだろ。ええっと、んで次はこの店内の本から一冊選ぶだったな」
翔は私の訴えも話し半分で辺りを見渡すと椅子に座ったまま本棚に手を伸ばし一冊の本を取る。
「よし、まぁこれでいいか」
「いやいやいや!翔、もうちょっと考えようよ!」
あまりにあっさり勝負する本を選ぶものだから思わず大声をあげてツッコミを入れてしまっていた。
「いいんだよとりあえず最初は『見』って決めてるんだから」
「様子見ってこと?でもいくらなんでもそんな決め方はないでしょ」
「やれやれ心配性だな、そんなに俺が信用出来ないのか」
「うん、全く信用出来ないから言っているの」
決め台詞のように言った翔に冷静に言葉を返す。なんで自分にそんな信頼があると思うのか、この店にある辞書で信頼って言葉一度引き直して見てもらいたいくらいだ。
「またも心配性の助手一号がなにか言っているが名探偵の黒澤翔はそのまま手にとった本を妹に渡すのであった、っと」
そんな私の想いも翔は意味の分からない語り口調で無視するともに明音ちゃんに本を渡していた。まぁなんにしても私の意見なんてのはいつもこうやって無視されるから慣れっこだけど、今日という今日は天罰が下ると思う。
「それではそちらの『とりあえず最後はオリーブオイル』で勝負といきましょうか」
「構わないぜ、しかし聞いていなかったが先攻後攻はどうやって決めるんだ?」
「ああ、言い忘れていましたね。黒澤さんが自由に選んでもらって構いませんよ。先攻めにしてプレッシャーをかけるのもいいですし後攻めにして様子をうかがってもらっても構いません」
「ふーん、なるほどね」
自分から聞いたくせに翔は適当な返事を返すだけで明音ちゃんの持つ『とりあえず最後はオリーブオイル』に集中している。
私も後ろから『とりあえず最後はオリーブオイル』を覗き見る。どうやら料理の本のようで和洋中様々な料理が載っているが本の題名通りどの料理も最後にオリーブオイルでベットベトになるという酷いことになっている。洋風の食べ物ならともかくちらし寿司やざる蕎麦、茶碗蒸しに至るまでオリーブオイルをかけるその徹底振りに正直胸焼けしそうになる。
いやだが大事なのはこの本から問題を作って清次郎さんに勝つこと、こんな見てて気持ち悪くなるような本のことまで清次郎さんは把握しているんだろうか?例えば今ちょうどページが開いている『麻婆豆腐のオリーブオイルかけ』に表記されている塩の分量だとか。
「よし、こっちの問題は出来たぜ」
そんなことを考えているほんのわずかな間に翔は問題を作っていた。本当なら『もうちょっと考えなさいよ!』とか言いたくなる所だけどそれももういいかなっと思い始めている。翔は様子見と言ってたしまぁ普通にやって清次郎さんに勝てることはないだろう、なら次の勝負に向けて清次郎さんを観察してた方がよっぽどましだ。
「そうですか。私もちょうどすべて読み終えたところですよ」
パラパラとページを流していただけに見えた清次郎さんが本を閉じそう言う。あれってもしかして速読術というやつなんじゃないだろうか、「最近の学生さんは難しい勉強しているね」なんて笑っているけど速読術が覚える方がよほど難しそうに見える。
「それでは最初の勝負と参りましょうか、先攻後攻はどうしますか?」
「こ、後攻さんでお願いします」
清次郎さんの問いに明音ちゃんが緊張した声色で答える。さっきから翔が本を選んだり問題考えたりしてでしゃばっているけど最初の勝負をするのは明音ちゃんだ。様子見とはいえ緊張するのは仕方ない。
「明音ちゃん、あまり勝敗のことは気にしないで落ち着いてやってね」
「はい、紗希さんありがとうございます」
気休めにもならない言葉をかけるがそれでも少しは緊張がとれたのか明音ちゃんは軽く息を吐くと清次郎さんの方を向きなおす。それを清次郎さんは確認するとゆっくりと手元の本を捲りながら第一問目を出した。
「では第一問、この参考書『これで数学がわからなかったら脳の異常です!』の総ページ数はいくつでしょう?」
「えっ?」
その問題はあまりに意表ついた問題だった。てっきり一番大切な本なんて言ってたから本の内容、あの参考書なら公式だとかそんなのが問題になると思っていただけにこんな総ページ数なんてのが問題として出てくるなんて思いもしない。
「兄様、私どうすれば」
「んぁそこはまぁあの本の厚さから勘で言うしかないな」
言葉を詰まらす明音ちゃんに翔は意外にも冷静に言葉を返していた。まぁいくら大切な本とはいえ総ページ数なんて覚えている人なんていないだろうから推測で答えるしかないだろう。
「本の厚さから・・・・そうですね、それじゃ158ページ!」
「惜しいですね、正解は152ページです」
「あうぅ・・・・」
明音ちゃんが落胆のため息とともにがっくりと肩を落とす。だが清次郎さんは気にすることなく続ける。
「では続いて第二問。この本は第何版でしょうか?」
「え、えええっ?」
笑みを崩さずに問題を出す清次郎さんに「この人ドSじゃないか」思ってしまった。重版されているのかどうかなんてよっぽどのことがない限り気にするものじゃない、よほど初版にこだわりでもなければわかるものじゃないだろう。
「確か結構後に買ったものなので、第三版?」
悩みに悩んだ末、明音ちゃんは答える。
「これも惜しい、正解は第四版でした。では第三問、この本を印刷した印刷所の名前は?」
「え、印刷所?・・・・わ、わかりません」
そんなこんなであっという間に明音ちゃんは三連敗。けれども彼女を責めることなんてできないだろう。確かに第何版だとか印刷所の名前は本の一番最後に書いてあるものだけどそれを問題にするなんて理不尽すぎる。
「正解は成瀬印刷所ですね。さてこれで次、私が問題に答えたら私の一勝となりますが問題を変更する時間必要ですか?」
「いやその必要はねぇ。明音、わかってるな?」
翔の問いかけに明音ちゃんは「大丈夫です、兄様」と答えると
「では清次郎さんに私、黒澤明音から問題です。この本『とりあえず最後はオリーブオイル』の総ページ数はいくつでしょう?」
最初に清次郎さんが出したのと全く同じ問題を出したのだ。
「なるほどなるほど、いやはや流石に先ほどの問題は我ながら理不尽かと思いましたがそうくるとは思いませんでした」
まさか同じ問題を出すとは思って見なかったのだろう清次郎さんは笑いを堪えるように口元を抑えるともう片方の手で湯呑みにお茶を注ぐ。
「しかし僕には簡単すぎますね、『とりあえず最後はオリーブオイル』の総ページ数は182ページですよ」
さらりと言ってのけるとお茶を啜る清次郎さん、その様子は完全に勝利を確信していた。
「えっとあの、それで正解は?」
佳奈さんに言われて慌てて明音ちゃんの持つ本を覗き見る、『とりあえず最後はオリーブオイル』の最後ページ数は───
「182ページ・・・・正解です」
「これでまずは僕の一勝ですね。ちなみにその本は初版で印刷所は西村印刷所だったかな」
「全てあってますね、はぅぅやっぱり清次郎さんの記憶力は凄いです」
佳奈さんが感嘆の声を上げるが意味わかっているんだろうか、初戦を落としたことも痛いけどなにより清次郎さんの記憶力というのが本物であるのがこれで証明されてしまったわけでこちらとしてはあまりいいスタートは言えないんだけど。
私は改めて店内を見渡してみる。店内は狭いとはいえそこにある本はゆうに千は超えているだろう、その本全部を記憶するなんてことができる人間との勝負なんてやはり無謀なんじゃないのか?
「さて第二回戦といきたいところですがその前に一旦休憩をいれましょう。明音さんにお茶も出したいですし」
「あ、えっとその清次郎さん、私がお茶を出してきます!」
「そうですか、ではお願いします」
佳奈さんは清次郎さんから急須を受けとると猫ちゃん達を引き連れカウンターの奥へと消えていく。なんだろう、というかなんでだろう?佳奈さんは清次郎さんに一千万円ギャンブルで巻き上げられた被害者、のはずなのにどうにも清次郎さんと仲が良さそうに見える。それだけじゃない、清次郎さんの勝利を喜んだり自分からお茶を淹れに行ったりこの店の戸の開けかたに詳しかったり“わざと”やっているみたいで
『六爪寺佳奈は清次郎さんとグル』
その結論に至るのは日を見るよりも明らかだ。ただ確証はないしなんでわざわざグルだってわかるように演技しているかもわからない。もしかしたらこの勝負とは別のところでなにかあるのだろうか?
「まぁ最初は様子見だからな。とりあえず二戦目の本を選んでくるぜ」
黒いソフト帽を被り直すと翔は立ち上がりフラフラとした足取りで本を物色しはじめる。翔は気がついているんだろうか?それを確認するためにも私も席を立ち翔のあとについていくことにする。
「んーなんかどれも埃被ってやがるな。これが800円?高けぇ」
「ねぇちょっと翔」
本当に物色しているだけといった感じの翔に声をかける。店の奥、ちょうどカウンターからは視角になっている場所なんで小さな声で話せば清次郎さん達には聞こえないだろう。
「なんだよ紗希、あれかまた『ちょっと大丈夫なの翔!』とか言うつもりか」
なんか指で両目をつり上げさせて私の真似?をする翔に「私そんな顔してないし」と思いながら問いかける。
「そうじゃなくて、翔は気がついているの?」
あえて何が?という部分は言わない。気がついていれば良いけどもし気がついていないのを私が教えたら確証もないまま清次郎さんに詰め寄りかねないからだ。
「気がついているかだって?ああ、大丈夫だ今の一戦で大体の戦法はつかめたぜ!」
「ん?戦法?」
「この勝負に勝つには自分は簡単な本を用意して相手には難しい本で問題を出す、これがこのゲームの定石!」
「はぁ・・・・何を今さら」
翔は自信満々にそう言うがそんなこと私は事務所で佳奈さんにルールを聞いたとき既に気がついていたんだけどまさかここまで馬鹿だとは思わなかった。
「ん、違うのか?じゃあいったいなんのことだ?」
私の反応を見て訝しい顔で首を捻らしている。ああ、この様子じゃ全く気がついていない、一ミリたりとも佳奈さんのことを疑っていない感じだ。それならそうでこっちにもやりかたがある。
「ああ、うん。その戦法のこと・・・・わかってるならいいんだけど」
「あのなぁこの俺を誰だと思ってるんだ?名探偵黒澤翔様だぞ、それくらいのことあの一戦ですぐにわかったぜ」
「あー凄い凄い、流石は迷探偵ね」
ニュアンスを微妙に変えて言うと翔は「当たり前だぜ!」とテンション高く答える。本当単純でわかりやすいやつだと思う、とりあえず気づいてないのならそのままにしておいて確証を得てから教えればいいだけだ。
「それでどの本で勝負するの?清次郎さん恐らくここにある本の全て記憶していると思っても間違いじゃないわよ」
「だぁから今それを考えているところ!本当は一戦目を様子見で二戦目、三戦目連勝する予定だったがああも難しい問題を出されるとは思わなかったからな、できれば次の一戦俺の一番大切な本で勝負を決めときたいぜ」
「ふぅん、というか翔って本読むんだ」
私の記憶だと事務所じゃテレビ見ているか寝ているかかしてないのでどんな本を読むのか少し気になる。
「俺だって本の一つや二つ読むっての。まぁ持ってきたのは特に俺が自信を持っているやつだからな、問題を答える方は万全なんだが・・・・っと、これなんてどうだ?」
翔は話ながら本棚の一つに手を伸ばすと一冊のやたらぶ厚い辞書のような本を掴む。
「『星海天体図鑑』、どうやら星のことがやたらめったら書いてある本みたいだな。つーかこれ文字ばっかりで絵がねぇ!」
「しかも随分と字が小さいわね、翔なら読みきるのに十年はかかりそう」
「なぁ紗希、まさかこれの内容も全部清次郎は覚えていると思うか?」
「さぁ、それはどうかしら?」
翔の前ではそう言ってみたが多分清次郎さんは覚えていると思う。いやむしろこの勝負に勝ち目はないというか本当に探さなきゃいけないのは勝負する本ではないような気がする。
「まぁこれでいいか、この本が一番分厚そうだしな」
「またそんな適当に決めて負けたら一千万円なのよ」
「大丈夫だって、それになにかあったら紗希がサポートしてくれるだろ」
サポートってなによ、まさか私にまでお金の請求するってわけじゃないわよね。なんにしてもこのまま黙って負けるわけにもいかないし、私は私でできることをしたほうがいいのは間違いない。
「それじゃ二戦目、翔が負けたら最後は私に全て任せてくれる?」
「んぁ?別にいいぜ、多分出番はないだろうけどな」
どこにそんな自信があるかはわからないけど自信満々な翔の後ろ姿を見ながら私は溜息をつきながらその後をついていくのだった。




私達が戻るとカウンターでは清次郎さん、佳奈さん、明音ちゃんが楽しそうにお茶会を開いていた。
その様子、これを誰が一千万円を賭けたギャンブルしている場所だと思うだろうか?
「兄様、この煎餅美味しいですよ」
「そうなのか?・・・・っていかん!毒が入ってたらどうする!」
明音ちゃんから受け取った煎餅を放り投げようとする翔の手から私は即座に煎餅を取り上げると口の中に放り込む。
「全く毒なんて入ってるわけないじゃない、そんなことよりも勝負でしょ」
「そ、そうだな!今度は負けないぜ!」
翔は手に持った『星海天体図鑑』を自信満々に見せつけると高らかに笑い声を上げる。
「いくらなんでもこんな難しい本全て覚えているわけねぇぜ」
「なるほど、これはまた面白そうな本を持ってきてくれましたね」
分厚い本を前にしても清次郎さんは煎餅を齧り番茶を啜りながら柔和な笑みを崩さない。
「では第二戦に参りましょうか。では黒澤さん、貴方の一番大切な本をこちらに」
「ふっ・・・・この俺の本を見て震え上がれ!!」
翔は“その本”を鞄から取り出し勢い良く叩きつける。そして出された“その本”を見て翔を除く全員が唖然とした。
「あのえっと、これは・・・・?」
「兄様、卑猥です」
「なるほど、そうきましたか」
各々の反応は様々としていた。佳奈さんはよくわかってないのか不思議そうな顔をしているし明音ちゃんは恥ずかしそうに顔を背け清次郎さんは今までこんな本で勝負してきたのは初めてなんだろう感心して頷いている。
そこにあったのは布地の薄い真っ赤な水着を更にはだけさせて見えそうで見えないキワドイポーズで砂浜に寝転がる美少女が表紙に載っている・・・・なんていうかどっからどうみてもグラビアアイドルの写真集だった。
「はぁ、翔が愛読書なんて言うからなにかと思ったらグラビアアイドルの写真集とはね、そもそもそれ本って言っていいの?」
呆れた口調で私が言うと翔は口をとがらせ子供っぽく反論する。
「ちゃんと本の形を成しているんだから『王道アイドル真城鈴音ちゃんと二人っきりのらぶらぶビーチリゾート』だって問題ないだろ」
「なんていうか別の意味で問題なんですけど。というか女の子の前でよく恥ずかしげもなくそんなタイトル言えるわよね」
「まぁ愛読書だからな!とにかく俺はこれで勝負するぜ、あんたも問題ないだろ」
翔はそのなんか恥ずかしいタイトルの写真集を清次郎さんに押し付けるように渡す。もらった清次郎さんも一瞬困った様子ではあったが最後には「わかりました、これで勝負しましょう」と渋々了承をしてくれた。
「しかしこれはなかなか問題を作るのが大変そうですね」
翔から受け取った『王道アイドル真城鈴音ちゃんと二人っきりのらぶらぶビーチリゾート』のページを一枚一枚めくりながらボヤく。それもそうだ写真集なんだから文字を探すほうが大変、しかもこの勝負のルールに“答えは本の中に文字として記載されていなければならない”というのがあるからかなり問題を作るのは大変なはず。翔がこれを狙ってか、いや絶対狙っているわけないんだろうけどそれでも今迄完全に余裕の様子だった清次郎さんを少し焦らせているのは難攻不落の城に楔を打ち込めたそんな気がする。
結局清次郎さんが問題を作り終えたのはそれから十分ほど過ぎた後だった。
「ふむ、なんとかできましたよ。それでは二戦目の先攻後攻はどういたしましょうか」
「俺達の後攻でいく、けど今回は様子見じゃねぇぜ」
先攻後攻を決め、相変わらずどこからそんな自信がわいてくるのかわからない翔と少し焦りを見せた清次郎さんとの第二戦目が始まる。
「では問題です。この本に記載されている真城鈴音さんのスリーサイズはいくつでしょう?」
「ふっ、やれやれ。鈴音ちゃんは上から89-56-80。その本には記載されてないが身長は157cm、体重は39kg、BMIは15.8だな」
「うわぁ・・・・」
「あ、兄様凄いです!」
即答する翔に思わず明音ちゃんが拍手をして喜ぶがその表情はどこか引きっている。そりゃそうだ幼馴染みの私から見ても女の子のスリーサイズどころかBMIまで覚えている男なんてはっきり言って気持ち悪い。きっとこれで明音ちゃんのアウトロー好きも目を覚ましてくれたら良いんだけど。
「ちなみに鈴音ちゃんは驚異のGカップだが助手一号は驚異のトリプルAかっ・・・・がはっ!」
「人をアメリカ自動車協会みたいに言うな!」
反射的に私の拳は翔の後頭部を殴っていた。ていうかなに人が気にしていることをさらっと言ってくれるんだが。
「一問答えれたくらいで調子に乗らないでよね!」
「はいはい、ったく。貧乳は気が短いから困るぜ」
「ん、なにか言った翔?」
「いや、なんでもない。さて次の問題頼むぜ」
なにか翔が余計な一言を言った気がするけど勝負時にごちゃごちゃと言うのは清次郎さんにも迷惑がかかるので一旦引き下がっておくことにする。
「いいですかね。では第二問、この本に記載されているフォトグラファーの方の名前を答えてください。」
「フォトグラファーってカメラマンの事だよな、それなら水埜康だろ」
「正解ですね」
意外にも二問目、翔はあっさりと解答し正解。てっきりグラビアアイドルのことは覚えていても他のことはさっぱりだと思っていたからちょっと驚きだ。
「鈴音ちゃんの写真集はいつもこいつが撮っているからな。あ、でも最近鈴音ちゃんと付き合っている疑惑が出ててだな、俺は元々こいつのことが怪しいと・・・・」
「翔、もうその解説いらないから。あと一問頑張って」
長くなりそうな解説に途中で割り込み翔の背中を押す。あまり期待してなかったけどもしかしたらこのまま翔が全問正解するって展開もありえるのかも。そうすれば私が余計なことをしなくて済むんだけど・・・・そうは上手くいかないのだろうなぁ。
「なかなか詳しいですね黒澤さん、ですが次の問題は難しいですよ」
清次郎さんは一口お茶を啜り咳払いをすると
「では最後の問題です。この本に記載されている音響監督は誰でしょう?」
とんでもなく意味不明な問題を繰り出してきた。
「音響・・・・監督だと?」
流石の翔もこればかりは知らなかったらしい。いやそもそも写真集に音響監督がいる意味が私にはよくわからないのだが
「これはあれか来週発売のDVDにこの写真集のメイキングが特典映像として入るから音響監督なんてのがいたのか!」
翔曰く、まぁそうゆうことのようだ。
「くそっ、音響監督・・・・そこまでは流石に覚えてねぇな」
「ではこの問題、答えれないと見なしてよろしいですか?」
「仕方ないねぇ・・・・この問題、俺はわからん!」
翔が最後の一問を答えれなかったため結果は三問中二問正解、一戦目からすれば上出来な結果、まだ上手くやれば勝てるかも、とその時は思った。翔の持つあの分厚い『星海天体図鑑』、流石にあそこからの問題なら一問、上手くやれば二問間違えさせることができるのでは?
そう思っていた私の考え、それはすぐに甘い話だと思い知らされる。



「んぐぐ・・・・それじゃあ、縦軸を絶対等級、横軸をスペクトル型をとった恒星の分布図のことをなんというか?」
「ああ、それはヘルツシュプルング・ラッセル図のことですね」
「あ・・・・ぐっ、正解だよ!」
悔しそうな表情と共に翔は拳を叩きつける
あっという間、本当にあっという間に清次郎さんは三問連続してしまっていた。翔の作った問題だってそんな簡単に答えられるような問題ではなかったというのに清次郎さんはいとも簡単に即答をする。その様子を見るからにやはりまともに問題を出しあっただけじゃこの人には勝てないと確信した。
「あの清次郎さん、一つ質問いいですか?」
「なんでしょう紗希さん?」
「第三戦を前に今更こんなことを聞くのは遅いかもしれないですけど、この私達が本を選ぶ時間あるじゃないですか」
私の作戦を実行するにはそれなりに時間が必要だ。そのためにはここで一つ清次郎さんの言質を取るのが第一関門だ。
「本を選ぶのに制限時間ってあるんですか?」
「制限時間?いや、そうゆうのはないけど」
「そうですか、ありがとうございます」
清次郎さんのその言葉に私は深々とお辞儀すると同時に心の中でガッツポーズをする。時間をかけていいのなら私には一つ作戦がある。
「それじゃ第三戦の勝負に使う本を選ぶわ、翔、明音ちゃんも手伝って」
「ああ、まぁ約束は約束だからな」
「わかりました」
私は立ち上がり店内の本をぐるっと見渡す。正直どれくらいの時間がかかるか想像できないけどこの勝負に勝つにはやるしかない。
「さぁて、やるわよ」
私は長く伸びた髪の毛をゴムで束ねシャツの袖を捲り上げると気合いを入れるように自分の頬を数回叩く。
「んで、紗希・・・・一体なにを始めるつもりなんだ?」
その様子になにかを察したのか、面倒なことが大嫌いな翔が恐る恐る話しかけてきた。
「まぁ簡単な話、この店内にあるすべての本を一度検めさせてもらうわ」
「はぁぁぁぁぁ!?まじで言ってるのかよ!」
「本気と書いてマジなんだから」
大声を上げる翔にそう言いながら私は奥へと歩いていき本棚の本を一つ取りだす。本来ならこんな作業、勝負が始まる前にやっておくべきことだと私は思う。
「全部探せばなんとかなるんでしょうか?」
「そう思うしかないわ、今のところは」
不安そうな明音ちゃんに本を渡しつつ答える。
そりゃ私だって不安はある。なんの本を探せばいいかなんて実のところわからないし、そもそもこのいくら店内の本を探しても清次郎さんに勝てる本はないかもしれない。清次郎さんと佳奈さんがグルだとしても『私達をここに連れてくること』までが目的だったらその後ここで私達がこの勝負でどう足掻こうともう遅いし、そもそもグルだってのも私の推測でしかない、いくら声高々に訴えたところで現状を変えれるほどの効果は望めないだろう。
だけどなにかあるはず、わざわざ清次郎と佳奈さんがわかりやすくグルであることを演じていることには。
その不安を払拭するためにも今はともかく本を一冊一冊読み込んでいくしかないのだ。






古本屋「猫の目書房」の本を片っ端から目を通しておよ三時間という時間が過ぎた。
この作業をやりだしてものの数分で床に転がった翔を放っておいて私と明音ちゃんの二人で集中して本に目を通してきた。そのかいもあり店の半分以上の本に目を通すことができたがそれでも確実にこれだという本は見つかっていない。
「ふぅ、さすがにちょっと疲れてきたね」
「そうですね頭がクラクラします」
流し読みとはいえ重要そうな文字を確認しながらの作業は身体的にも精神的にもかなりの疲労を伴う、集中を切らさないようにお互い声を時折掛け合うがそれも限界が近かった。
「そういえば、紗希さん私・・・・気になったことがあるんですけど」
「ん?気になったことって?」
声を掛け合う内容は大抵が疲れただのお腹空いただのそんな話ばかりだけどふとした瞬間に明音ちゃんは自分の気づきを教えてくれる。明音ちゃんとは翔との付き合いもあって結構長く付き合っているが彼女は人が見ていないところをしっかり観察しているということに気がついたのは今日が初めてだ。
先ほども「佳奈さんが飲んでいるお茶だけ梅昆布茶でした!羨ましいです」なんて重要な情報も教えてくれた。明音ちゃんとしては大したことじゃないかもしれないけど私からしたらそれは清次郎さんは佳奈さんの好みを知っている、つまりは内通しているってことになるんだから彼女の観察眼は侮れない。
「いやでもそんなたいしたことじゃないんですけど」
「いいよ、気がついたことならなんでも言ってみて」
「あ、はい。私先程お茶してて気がついたんですけど清次郎さんと佳奈さんってお茶を飲むタイミングとかが一緒みたいなんです、仲が良いですよね」
「タイミングが一緒?」
「そうなんです。なにか長年付き合ってきた関係って感じで、ええっとなんていうんでしたっけそうゆう夫婦のこと」
疑問を呈する明音ちゃんの言葉に私が気がついていなかった言葉が含まれていた。というよりも初めから明音ちゃんには二人がそう見えていた、ということか。
「ああ・・・・そうゆうことか。明音ちゃん、それ鴛鴦(オシドリ)夫婦って言うんだよ。そしてありがとう、もしかしたらわかったかもしれない」
「そうなんですか?」
「ええ、おそらくこれでまちがいないわ」
私は小さく頷く。明音ちゃんは今回も全く気がついてなかったが私にヒントを与えてくれた、はっきり言うとまるで役に立たない兄よりも遥かに優秀だ。
「明音ちゃん、私が今から言う条件にあった本だけ探してみて」
私が耳打ちすると明音ちゃんは小さく何回か頷き
「は、はい!わかりました」
と答え踵を返し本を探し始める。
これでほぼ材料は揃った、と思う。ただ一つだけ疑問があるとすればなんでこんな回りくどいことをするんだろうということだけだ。



「随分とお待たせしました清次郎さん」
私と明音ちゃんが清次郎さんと佳奈さんのいるカウンターに戻ってきたころにはすっかり日も落ちかけていた。
例の本はあれからすぐに見つかったが念のために店内のすべての本を検めたからだ。
「あの、えっと黒澤さんあのままでいいんですか?」
床に転がって熟睡している翔を佳奈さんは心配するが、私は気にせずにカウンター前の椅子に腰かける。
「ああ、大丈夫ですよ。お気になさらずに」
今更翔が起きてきたところで役には立たないからね。
「では第三戦いきましょうか、では浅宮紗希さんの一番大切な本をこちらに」
「あっ・・・・そういえば本を渡さないといけないんだった」
清次郎さんの言葉で初めて自分の一番大切な本を持ってきていないことに気がつく。自分が勝負する本のことばかり気にしていてすっかりそのことが頭から抜け落ちていた。まぁ正確にはもう勝負は決しているようなものだから最初から考える必要がなかったんだけど。
「んーどうしたものかな」
「あ、紗希さん。兄様の鞄に一冊本があったんですけどこれでいいんじゃないですか?」
そう言って明音ちゃんは私に一冊の本を手渡してくる。
手のひらサイズのこげ茶色の背表紙に銀色の装飾がなされた本はどこかで見たような気がするがさほど気にならなかった。
「それじゃこれでお願いします」
私はその本の中身を見ることなく清次郎さんに手渡す。その本が何であろうともう私が問題に答えることはないからだ。
「第三戦は私の先攻でお願いします。そして私が勝負する本はこれです」
「むっ、それは・・・・」
私が取り出した真っ白な装飾に題名も何もない本。その本を出した瞬間に清次郎さんの細い目がさらに細まり、佳奈さんが驚いた表情をしたのを私は見逃さなかった。もしこれがドラマだったらいい具合に疾走感あるBGMが流れているところだ。
「それではいきますよ、第一問!この本に記載されている夫婦の結婚記念日はいつだったでしょうか?」
「9月22日だ」
「正解です、では次の問題。この本に記載されているプロポーズの言葉はなんでしたか?」
「忘れもしない“一生の相棒になってくれ”だ」
「はい、これも正解です。流石清次郎さんですね、これくらいの問題ならあっさりと答えが出てくる」
「いえいえ、そうでもありませんよ。大事なことなんで覚えているんです」
あっさりと二問立て続けてに清次郎さんが正解し、私と清次郎さんの視線が交差する。お互いなにも言わないがこの後どうなるかはわかっていた。
「では最後の問題です」
私はそこまで言って一息置くと決意を込めてその言葉を静かに呟いた。
「この本を探していたんですよね、六爪寺清次郎さん」
あえてフルネームで清次郎さんの名前を呼ぶ、六爪寺・・・・それは佳奈さんと同じ名字だ。
一瞬の静寂の後、清次郎さんは頷くと
「おめでとう、そのとおり僕が、いや僕たちが探していた本はこれだよ」
拍手とともに答えてくれる。その言葉を聞いたときようやく終わったんだと一気に肩の力が抜けた。
「あの、えっと凄いですね助手一号さん」
「いえ私一人の力じゃないんです。明音ちゃんが色々なことに気がついてくれたから」
佳奈さんの問いに答えながら後ろを振り返るとあまりにあっけない幕切れになにがなんだかわからないといった様子の明音ちゃんがいる。
「あ、あのこれは一体どうゆうことなんですか?」
「ああ、明音ちゃんにはちゃんと順番を追って説明するね」
そう言うと私は手に持った白い本のページをゆっくりと捲っていく。この本は清次郎さんと佳奈さんが付き合っていたころから結婚するまで続けられていた交換日記だ。これには時に喜びあい、ときにはケンカしながらも愛を深めていった二人の記憶が記されている。それはちょっとこっ恥ずかしかったが、どこかそれは羨ましいそんな日々の記憶だった。
「実はこれ勝負じゃなくてこの本を探して持ってくることが目的だったのよ」
「そうなんですか清次郎さん!?」
「まぁ、そうだね・・・・。本の内容は全部覚えているんだけどどこにその本を置いたか忘れてしまってね、面目ない」
ばつが悪そう頭を掻きながら清次郎さんは言う。その様子から正直信じられないことだが本当に置いた場所を忘れていたようだ。そもそもなんでそんな大切な物を売り場にしまうんだか。
「でも紗希さんよく気がつきましたね、流石兄様の助手一号なだけあります!」
明音ちゃんからあまり嬉しくないお褒めの言葉をもらって私は話を続ける。
「最初のルールに“信頼の証として一番大切な本を預ける”とあるでしょ?それが私達だけに掛かっている言葉じゃなくて清次郎さん達にもかかっている言葉だとしたら?言葉遊びかもしれないけど信頼と言うのは私達だけじゃなくて清次郎さん達からも必要だし、そう考えたらこの大量にある古本の中から私達は“清次郎さんの一番大切な本”を探さないとお互い信頼はできない。信頼ができなければ勝負にならない、勝てないってことなんじゃないかと思ったのよ」
もっともこの『一番』って言葉が「世界でもっとも優秀なプレイヤーの一人」みたいな使い方されて一番大切な本が何冊もでてこられたら困ったけどどうやらそれは杞憂で終わりそうなのでよかった。
「佳奈さんが時折清次郎さんのグルなんじゃないかって思わせるような行動をわざとらしくしてたのを見てなにかあるとは思ってはいたの。でも私達を本気で騙すにはあの演技はわざとらしすぎる、変装は完璧なのに」
「へ、変装!?」
明音ちゃんの言葉に私は静かに頷くと私は二人の交換日記をもう一度広げて見せる。
「この日記自体今から五十年も前の物、いくら若作りといっても無理があるわ。まぁでも変装はこの本を見るまで気がつきませんでしたけど」
この本によれば二人は単純に計算して七十歳前後、その事実を知って改めて二人を見ても今目の前にいる清次郎さんも佳奈さんもとても変装したお爺さん、お婆さんには見えない。
「佳奈さんの変装の技もまだまだ衰えませんね」
「そうですね。ではそろそろ本当の私達をお見せしますか清次郎さん」
佳奈さんの言葉に清次郎さんが頷くと二人は自らの顎の付け根あたりのなにかを掴むと一気にそれを引っ張りあげる。
「う、うわわ!」
「これはちょっとビックリね」
ちょっとショッキングな光景に明音ちゃんが私にしがみつく。ベリベリと音をたてながら二人はその皮を剥いでいく。作り物だというのはわかっていてもまるで本物の人間の皮を剥いでいるようでその光景は気分の良いものではない。
「ふぅ、これがまぁ私たちの本当の顔です」
「これはまた意外な・・・・」
本当の顔を晒した二人の姿は意外なものだった。なんだろう確かに顔は嗄れて髪は白髪、だけど見た目はそこまで変わってはいない。言うなれば先程までのマスクの姿をそのまま老いさせたそんな感じだ。
「いつやっても変装を解いた時の相手の吃驚する表情は面白いね佳奈さん」
「そうですね清次郎さん」
うーん、なんだろうこの二人そんなに頻繁に変装とかしているんだろうか?
「あ、あの私一つ気になることがあるんですけど」
「なに明音ちゃん?」
「なんで本を探してもらうのにそんな面倒なことをしたんですか?」
「それは・・・・」
明音ちゃんの問いにおもわず言葉につまる。そうだ変装に気をとられていて忘れてたけどその疑問は私も答えが見つからなかった。ただ普通に本を探すのを依頼してくれればそれだけで解決、こんな茶番必要なかったはずだ。
「それは簡単ですよ、彼が一番の原因です」
そう言って清次郎さんが指差したのは通路の真ん中で横になって猫に囲まれながら熟睡している翔だった。
「翔が原因?」
「そう、一度本を探すのを電話で依頼したときに彼に『俺がそんな雑用するわけないだろ、俺が動くときってのはもっとこう大きな事件のときなんだよ!』と断られましてね。それでちょっと大袈裟に芝居を打ったわけです、まぁ年寄りの戯れみたいなものですよ」
その言葉に私は唖然とするしかなかった。そうすると今回の仕事が初めてと言うけど本当は今回の依頼以外にももしかして依頼ってあったんじゃないの?私が知らないだけで翔が「はーそんなの俺の受ける仕事じゃねぇー」って断っている仕事いくつもあるんじゃないの?
あれだけ探偵の仕事をやるときに最初はどんな仕事でも評判を上げるために受けるって言ってたのにおもいっきり選り好みしているじゃないのあのバカ!!
「清次郎さんと私はこのお店やる前は探偵をやっていたんです。なんで清次郎さんが『最近の探偵の力を見せてもらおう』って乗り気になっちゃいまして騙す形になってしまってごめんなさい」
「あ、いえ・・・・元はと言えば翔が悪いのでこちらこそすいません」
「うふふ、でも楽しかったですよ。なんだかお二人を見ていると昔の私達を見ているようで微笑ましかったです。私達もこんな感じに青春してましたよね清次郎さん」
「ああ、でもまぁ仕事中に寝たりはしてなかったけどね」
「は、はは・・・・まぁそんなことできるのは翔くらいしかいませんよ」
そんな言葉をかわしお互い笑い合う。まぁ私は冷笑だったけど、それでも借金を背負わせれた美少女が本当はいなかった、一千万の借金なんてなかったそしてこの案件がきっちりと解決してくれたら今はもうそれで満足だった。
翔が起きた頃にはすっかり外は夜になっていた。
「いやぁーよく寝たぜ。しかも寝ている間に事件が解決しているなんて俺はいずれ『眠りの翔』と呼ばれる日も近いな」
「そんなわけないでしょ、全く結局最後は私が全部解決させたんじゃない」
呆れながら私は答える。なんかことの顛末を説明すると色々と面倒なんで別れ際には清次郎さんも佳奈さんも変装して翔と話してもらった。まぁそれなのに翔のバカは調子に乗って佳奈さんとメールアドレスを交換していたけどもうそれも放っておいた。
「いやいや、俺の作戦があったからお前も最終戦で勝てたんだろ?」
「あーうん、面倒だからもうそれでいいよ」
「素直でよろしい、流石は俺の助手だな」
そう言って翔が私の頭を撫でる。その大きな手で雑に撫でられただけだってのに思わず私の鼓動が高鳴った、なんでか知らないけど。
「あ、兄様!私も頑張ったんですよ褒めて欲しいです!」
そんな私と翔の間に明音ちゃんが割って入る。
「あーそうだな、助手二号もよくやったぜ」
翔が明音ちゃんの頭を撫でる。なんだろう明音ちゃんの嬉しそうな様子を見ていると何故か不愉快な気分になる、なんでかは知らないけど。
でも明音ちゃんは妹、うん妹だから大丈夫!と自分でも意味の分からない理由で心を落ち着かせようとしている所が嫌になる。
「そういえば兄様、私達が最後の勝負に使った本ってなんだったんですか?」
「ああ、あれは俺と紗希が小さい頃やってた交換日記だよ」
「えっ?」
ふと一瞬思考が停止する。ゆっくりと翔が言った言葉を飲み込でみる。うん交換日記・・・・ああ、あったなぁそんなのってぇ!
「なっ・・・・!わわわわっ!!!あんた、なんてもの持ち歩いてるのよ!!」
どこかで見たことはあると思ったけどそれがまさか小学生のときにやってた交換日記だとは言われるまで完全に忘れてた。
「別に持ち歩いてないぜ、たまたま入ってただけだ」
「たまたまで私の古傷に塩を塗るのやめなさいよぉ!」
私は叫ぶ。あの頃の私はなんか変だった、頭おかしかったんだ。
気がつけば毎日「私は翔くんがスキです」だの「将来は翔くんのお嫁さんになりたいです」だの先見のないことばかり書いてた記憶がある。もしタイムマシンがあって過去に戻れるなら真っ先に「あんな男やめときなさい!」と言いたくなる私の黒歴史だ。
しかもそれを私、第三戦の勝負で清次郎さんに見せてしまっている。あんな本を第三者に見せただなんて考えただけで赤面してしまう。
「んぁーまだページも余ってるし交換日記再開するか」
「ふぇっ!?な、なんで?」
赤面しているところにさらにそんなこと言われたらもう私はどうしたらいいのかわからず立ち尽くすしかなかった。
「なんでって言われると清次郎がさ、交換日記再開した方がいいって言うからさ」
「そ、そうなんだ。い、いいんじゃないかな」
なんて嬉しい提案、いや別に全然嬉しくない・・・・けど、清次郎さんも変に気を回しすぎだけど・・・・ナイスアシスト。
「んじゃまぁ紗希からやってくれ」
「う、うん・・・・わかった」
赤面している顔を見られたくなくてそっぽを向いたまま私は翔から日記を受けとる。
「ちょっと靴紐ほどけたから先行ってて」
「わかったぜ、さっさと来いよ」
しゃがみこんで靴紐を直す振りをする私にそれだけ言って翔は踵を返し歩き出す。
本当翔は観察眼のないニブチンだ、私がヒールを履いているのにも気がついてないんだから、私の気持ちなんてもっと気がついてないだろう。
振り返って「猫の目書房」を遠目にみつめる。色々あったけど清次郎さんと佳奈さん仲よかったなぁ・・・・
ボロボロの建物だけどそこから漏れる光はものすごく温かみに溢れて幸せな光に私は見えた。
私もあんな風になれたら・・・・
知っている人間はあまりいないだろうし、存在を知っていても意識する者は少ないと思うが――この通りには一軒の古本屋がある。




はい、これも駄作


なんかこうMC用だと駄作ばっかりだな、豚の餌だな

「これのどこが駄作かわからん!!」という人のために説明してやろうか?


・結局初めからいらなかったんだよアホ探偵とその妹、こいつらがいるせいで話が無駄に伸びるんだよ!!
・んで、結局紗希が翔のこと好きな理由がおざなりすぎる。なんでこんなバカ好きなの?で終わってるじゃん
・面倒だからそこらへんを語らず端折った時点で負け決定、ゴミ
・これだったら当初の「離婚して出ていったお母さんを待っている娘と古本屋の店主」の話のほうがマシだった
・長いだけの駄文
・そもそも前半1000文字くらい無駄
・むしろ書く前に「これ面白いだろ」と思って調子に乗っていた自分をぶん殴りたい
・オチが弱すぎる
・翔が佳奈さんを好きなのってのが薄い、店入ってからほとんど喋ってない
・むしろ翔には起きててもらったほうがよかったかもな、面倒だけど
・清次郎、超人すぎるだろ・・・佳奈さんと通しをしてたってのも後半無理だから説明してねぇわ
・五人もいると話が長いどころがグダグダ
・結局お前二人以上話に出るとグダグダになるじゃん?みたいな?
・そもそも対決が酷い
・その他もろもろとにかくこれは酷い
・久しぶりに本文が長すぎるとか言われた
・安定の落書きスルー


褒めれるものなら褒めてみろヽ(`Д´)ノバーヤ
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無題
うーん。
面白かったと思うが、あとがき読んだら気が滅入った……
自虐キツすぎ
水曜日 2012/09/30(Sun)13:49:43 編集
無題
やかましい、うっとおしいぞこのアマ!!

ってことでコメントを非表示にしておいた

コメントありがとうございます~(^_-)-☆
次は自虐なしで頑張りまーす
チッ、ハンセイシテマース
氷桜夕雅 2012/10/01(Mon)23:38:16 編集
プロフィール
HN:
氷桜夕雅
性別:
非公開
職業:
昔は探偵やってました
趣味:
メイド考察
自己紹介:
ひおうゆうが と読むらしい

本名が妙に字画が悪いので字画の良い名前にしようとおもった結果がこのちょっと痛い名前だよ!!

名古屋市在住、どこにでもいるメイドスキー♪
ツクール更新メモ♪
http://xfs.jp/AStCz バージョン0.06
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