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日記と小説の合わせ技、ツンデレはあまり関係ない。 あと当ブログの作品の無断使用はお止めください
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前回までのあらすじ
国枝実によってクスリの売人へと落ちた神楽坂恭治はある日ゴスロリ服を着た女性とサングラスにスーツを着た強面の男に追いつめられ反撃を繰り出すも一撃で気を失ってしまうのだった

 

「・・・・ぐっ、うんん」
意識が覚醒する。なんていうか酷い目覚めだ、身体中が痛み、倦怠感が酷い。
「ようやくお目覚めか?」
「え・・・・あっ」
けだるく顔をあげるとそこにはオレが気を失う前、無我夢中で殴りかかった 黒いサングラスの男がいた。
「う、うわぁぁぁぁぁ!」
思わず叫び声をあげ逃れようと体を動かすがすぐにそれは無理だという返答が全身から激痛となって返ってきた
「くぅ・・・・痛っ!」
「一応手当てをしたがまだ動かないほうがいい。それにそんなに取り乱すな別にとって食おうというわけじゃない」
サングラスの男はそう言うと懐から煙草を取りだし一本口にくわえ火をつける。
この人は一体なんなんだ?警察、ではなさそうだがかといって暴力団のようにも見えない。
辺りを少し見渡してみるがそこは木製のテーブルが並び、奥にカウンターとキッチン、店内にはコーヒーの良い香りが立ち込める・・・・どうみても喫茶店だ。
「あの、貴方は?」
「自己紹介が遅れたな、俺は天城仁。この喫茶店『リチェルカーレ』の店長だ。」
「え、店長?」
その言葉に思わずオレはなにかの冗談かと思った。いやなんていうか全然想像できない
「・・・・おかしいか?」
「い、いえ全然」
「ならいい。それで目が覚めたところ早速で悪いんだが聞きたいことがある」
警察でも暴力団でもない喫茶店の店主がオレに聞きたいことがるってなんなんだろう?そんなことを考えていると天城さんはスーツの内ポケットから一枚の写真を取り出しオレの前に差し出す。
「この写真の右の男に見覚えはあるか?」
 写真にはどこかの山をバックに肩を組む男性が二人写っていた。たぶん兄弟なんだろう、二人揃って髪を短く刈り上げお揃いの真っ赤なシャツにジーパン姿で満面の笑みを浮かべている。
「いえ見覚えはありません」
だがこんな男性の知り合いはいなかった。一体彼がオレとなにか関係あるのだろうか?
「そうか・・・・。こいつはな、少し前までちょうどお前が居たところでクスリの売人をやらされていたというのを聞いて探していたんだ」
「クスリの売人!?」
彼のことは全く知らないが、オレの前にクスリの売人のことなら確か国枝のやつが言っていたことがある
「天城さん、あの・・・・もしかしたら言い難いんですけどその人はもうこの世にはいないかもしれません」
「それはどうゆうことだ?」
「オレに売人をやらせている奴が言っていたのを聞いたことがあるんです『前に売人やらせていたやつは警察にチクろうとしたから海に沈めた』って」
「・・・・そうか」
天城さんは静かにただ力強い口調でそう呟くと煙草を口から離し灰皿に押し付ける
「それが本当なら仇をとってやらんとな」
「仇?」
「こいつは俺のダチの弟だ、少し前から家に全く帰っていなくてな。最近遺体があがって警察の捜査じゃ自殺なんて言っていたがやはり裏があったか」
吐き捨てるように言う天城さんの表情はサングラスを掛けていてもわかるくらいに憂いを含んでいる。胸ポケットから煙草を取り出すと火をつけ深く息を吸う。
「・・・・それでおまえはなんでクスリの売人なんてやっているんだ?自分からこうゆうことに手を染める質には見えねぇが」
「オレは・・・・」
真っ先に脳裏に浮かんだのは伊波早苗さん、そして国枝実の姿だった。少し前までは三人『リフレイン』で楽しくやれていた
のにどこをどう間違ってこんなことになってしまったのかそれを思い出すだけで胸が締め付けられる気分だった。
「・・・・まぁ言いたくなければいいがな。少なくともお前は罪の意識に苛まれているというのはわかった」
天城さんはオレの表情から察したのかそれ以上何も聞かなかった。殆ど吸っていない煙草を灰皿に押し付けると目の前のコーヒーを一気に飲み干し立ち上がる。
「とりあえず首謀者のところへ行くぞ、案内してくれ」
「は、はぁ・・・・えっ?」
あまりに唐突の展開に思わず生返事をしてしまったがあいつの、国枝のところへ行くってこの人大丈夫・・・・なのか?

 

喫茶店『リチェルカーレ』を出たオレと天城さん、そしてもう一人、オレに最初に話しかけてきたゴスロリの女性を含めた三人で国枝実のいるバー『リフレイン』に向かっていた
「・・・・ねぇ仁、あんまり本気出しちゃダメ」
「わかっている。というかだな、なんでついてきた」
「・・・・仁、一人だと心配」
オレの目の前を天城さんとゴスロリの女性がそんな会話をしている。ゴスロリの女性が天城さんの腕を抱き締めるようにして歩いているその様子はただのカップルにしか見えない。
オレはそんな二人の後ろを黙ってついていっているが正直不安で一杯だ。天城さんは確かに強いんだろうけど相手はあの国枝だオレの知らない私兵っぽいのも囲っているかもしれない。オレが役に立てるわけもないしましてや女連れの状態の天城さん一人でなんとかなるものなんだろうか。
「俺一人だと心配って言われてもな、こっちは一人の方が気が楽なんだが」
「・・・・だめ。クスリをやらされている女性はきっと酷い目にあってるから」
ゴスロリの女性の言葉に胸の奥がチクリと痛む
酷い目にあっている、か・・・・。その中には伊波早苗さんもいる、今も酷い目にあっている。オレは何度となくあそこで彼女の救いを求める声を聞いている、聞こえてきていた、でも・・・・なにもできなかった。
そんな後悔の念に苛まれつつしかし着実に足は進んでいきついには国枝実、そして伊波早苗さんのいるバー『リフレイン』の前まで来ていた。
「しかし灯台下暗しとはよく言ったものだな。よく見れば社会不適合者のようなのが湧いてきやがる」
「・・・・仁、くれぐれもあんまりやりすぎちゃだめ」
「わかっている」
店の前に着くなり天城さんはそう言うとゴスロリの女性の掴んでいた腕を強引に振り払う。一瞬なんでそんなことをしたかわからなかったが天城さんがそうした意味、“そいつら”はすぐにオレ達の前に現れた。
「おいおい、恭ちゃん。持ち場を離れてなにしてるんだぁ?」
「なんか変なグラサンのおっさんとゴスロリのカワイコちゃん連れてきてさぁ、なにしてんの?」
オレ達の周りを五人の不良が囲みニヤニヤと不敵な笑みを浮かべながら近づいてくる。正直こうなることはなんとなくわかっていたんだ、国枝実をどうするとか伊波さんを助けるとかそんなことに辿り着くよりも前の障害。
「あ、天城さん」
「恭ちゃん?そう呼ばれているのか・・・・。そういやちゃんとした名前を聞いてなかったな。お前なんて言うんだ名前?」
狼狽えるオレにあくまで冷静によくわからないことを聞いてきた。いや今はそんなオレの名前なんてどうだっていいはずだ!
「いや、あの・・・・」
「まさか記憶喪失、なんてことはないだろ?」
いやわかっている!名前、それくらい言える!でも今このタイミングで言うようなことなのか?
「フヒヒ、おいおい教えてやれよ。どうせ騙して連れてきたんだろ」
不良の一人、上下灰色のスウェットの男がそう言いながらフラフラとした足取りで天城さんに近づいていく。
「グラサンのおっさんは金を毟り取られ、そこのゴスロリの子はクスリ漬けセックスだ。お前達は恭ちゃんに騙されてここに連れてこられたんだよ!なぁ?」
「ち、違う!」
「そんなことはどうでもいい!!」
オレの否定も不良の言葉も意を返さず天城さんをオレの方を振り返る
「それでお前の名前はなんて言うんだ?」
天城さんの眼光、そして言葉がオレを貫く。その威圧はサングラス越しだというのに身の毛がよだつほどで思わずオレは自分の名前を答えていた。
「か、神楽坂恭治です」
「そうか。なら恭治、今から俺が言うことを心に刻んでおけ」
そう言うと天城さんはゆっくりとサングラスを外し胸ポケットへとしまい込む。天城さんの鋭い眼光が俺の視界に入る、それはどこまでも真っ直ぐでオレはまともに天城さんの目を見ることはできなかった
「男だったら硬派に生きろ、今のお前の目は心が折れているぜ」
硬派に生きる?心が折れている?だがその言葉の意味を聞くよりも前に天城さんの背後に迫る不良の姿に思わず俺は叫んでいた
「天城さん、後ろ!!」
「さっきからなにくっちゃべって・・・・・・・・ごはッ!!!」
オレの言葉に天城さんがゆっくりと後ろを向くと突然殴りかかろうとしていた不良が吹き飛んだ。それはもう数十メートルくらい飛んだだろうか、壁に叩きつけられた不良は一瞬何が起きたのかわからなかったように目を見開いたまま気絶してしまってた。
「な、なにが起きたんだ!?」
「・・・・あれは寸勁。別名ワンインチパンチ、痛い」
天城さんに腕を解かれたのでいつの間にかオレの腕に胸を押し付けるように抱きついているゴスロリの少女が呟く。
そんなことよりも現実的に人があんなにも吹き飛ぶなんてことがあるということが驚きだった。
「どうした?弱いものにしか殴れないのは硬派とはいえないぜ、かかってこいよ」
「て、てめぇー!!!」
「ブッコロ!!」
天城さんの挑発に残りの不良達が一斉に襲いかかる。あの吹き飛んだ不良を見て天城さんと喧嘩しようなんてよく思う、それとも複数で殴りかかれば勝てると思ったのだろうか?
「がはっ!」
「ぐほっ!!」
「ぐぺぺぇ!」
だが天城さんの強さは複数で襲えば勝てる、そんなレベルではなかったんだ。まるで非現実、まるでゲームのように不良達は次々と宙に舞い激しく地面へと叩きつけられる。
そんな光景が現実にオレの目の前で繰り広げられていた。
「つ、強い!」
それしか言葉に出なかった。そしてその強さはオレがあの時欲しかったものだった。あれくらいの強ささえあれば国枝を止めることができただろうし伊波さんを助けることができた。
「なにをぼけっとしている?行くぞ恭治」
息ひとつ乱れていない天城さんはそう言い煙草をくわえるとバー『リフレイン』に入っていく。
その後ろ姿に、その強さにオレは一気に憧れてしまった。
目の前で起きた非現実なことも強さがあれば起こせるのだと


バー『リフレイン』の店内はいつになく暗く、空気が淀んでいるように見えた。最近ではこの煙草やクスリの臭いで通常の営業にも支障が出ているらしいがそこは国枝の奴が店長に金を支払うことで好き放題しているみたいだ。
「あーなんだてめぇ?」
店内で流れている激しくデスメタルのビートに体を揺らしながらスカジャンを着た茶髪の不良が天城さんに近づく。一般人なら嫌悪し近づきたくもなくなる男だが、天城さんは動じずスーツの内ポケットから写真を取り出すとその男の目の前に突きつけた。
「この男を殺したやつはお前か?」
「はへぇ?なにこいつら同じ服着てるの?あれかホモか!おホモ勃ちってやつか?」
クスリのせいなのかよくわからないことを言う男。天城さんはそいつの首根っこを掴むと写真を思いっきり鼻っ柱に突きつける。
「質問に答えろ。お前が殺したのか?」
「殺すとか~殺したなんてしてねぇ~よ。俺はただ海で浮かんでくるそいつを棒で突っついただけぇ、さっさと沈んどけばいいのを『助けて~助けて~』って言って面白いんだぜ、んだからあのときは生きてたから俺は殺してなんかないよぉ~~~~」
「そうか」
天城さんはそれだけ言うと掴んでいた手を離す。
「っ~首痛っ、あんたバカ力だねぇ」
男は首を押さえて呑気にそんなことを言う。だから男には見えていなかった、天城さんがゆっくりと腰を下ろし構えを構えを取っていたことに。
「・・・・やりすぎちゃダメって言ったのに」
オレの隣でゴスロリの女性がそう言ったとほぼ同時だっただろうか、轟音と共にその男は奥の客席の一つ、テーブルに乗っていた物全てを巻き込み更には奥にあるデスメタルを流していたジュークボックスまで破壊するほど吹き飛んでいた。
「ああーん?なんだぁ!?」
吹き飛ばされた男の様子を見て静観していた不良どもが一斉に立ち上がる。およそ20人ほどいるだろうかどいつもこいつも足取りがふらついていてまるでゾンビだ、だが数人はナイフを持っている者もいる・・・・正直普通なら死を覚悟してもおかしくない状況だろう。しかし天城さんも一歩も引く様子も内容で向かってくる相手に睨みをきかせている。
「おいおい、待てよ喧嘩なら俺を呼べって」
一触即発その状況に割り込むように一人の男が天城さんの前に立ちはだかたった。そいつはオレがおそらく知っている限りでは国枝実の私兵としては一番強い、スキンヘッドの大柄の男だった。そう、オレに“人間サンドバック”なんて非情なことをしたあいつがニヤニヤと不敵な笑みを浮かべて立ちはだかったのだ。
「あんた強そうだな、その構え中国拳法か?」
「だとしたらなんだ」
「へへっ、一回異種格闘技戦ってのをやってみたかったんだよ俺。相手してくれよ」
軽快なステップとともにワンツーのシャドーボクシングをスキンヘッドの男は始めるが天城さんは全く動じる様子もなく構えたままだ。
「そっちが動かないならこっちから行かせてもらうぜ!」
スキンヘッドの男は一気にステップで近づくと左ジャブを繰り出す・・・・がそれを天城さんは顔を逸らすだけで簡単に避ける。
「甘いぜ!コッチが本命・・・・だっ!!」
だがすぐに前に出た左ジャブを引くと同時に右のストレートが天城さんの顔面を狙う。タイミング、スピードともに完璧の気がして思わず「危ない!」とオレが叫ぶが、それよりも前に乾いた音が店中に響きわたった。
「ぐっ、ぐぐぐっ!!」
「なにが本命なんだ?」
完全に当たったと思った右ストレートを天城さんはいとも簡単に受け止めていた。それだけではない天城さんが受け止めた拳に力をかけて握りつぶそうとしているのかスキンヘッドの男の表情は苦悶の表情で痛みを必死に耐えている。
「ぐぬがぁ、て、てめぇ!!!」
痛みに耐えかねスキンヘッドの男が左腕を大きく振りかざす、天城さんがこのタイミングを待っていたのかはわからないが動いたのは次の瞬間───
「う、うおっ!?」
左腕で殴ろうとするスキンヘッドの男の体勢を天城さんが掴んでいた右腕を後ろへ引っ張ることで崩す。
「・・・・それ以上、いけない」
ゴスロリの女性が小さく呟く。しかし止める間もなく天城さんは身体を沈めるとそこから一気にスキンヘッドの男の右脇、腕の付け根というべき部分を右肘で撃ちぬく。
「う、うががぁぁぁぁぁぁl!!」
スキンヘッドの男の叫び声とともにゴキリッと鈍い音が少し離れているオレの耳にも聞こえた。天城さんが腕を離すとスキンヘッドの男の腕はダラリと垂れ下がりそのままうずくまるように倒れこむ。
「い、いてぇぇぇぇl!!!」
「騒ぐな、ただの脱臼だ」
それだけ言うと天城さんはスキンヘッドの男の横を抜け、ナイフを持ち立ち上がっていた不良どもに近づいていく。圧倒的だった、あのまるで歯が立たなかったあのスキンヘッドの男をたった一撃で倒してしまった。
「ま、まじかよ」
「やべぇ・・・・」
「俺の邪魔をしたいなら面倒だ全員でかかってこい。」
天城さんが煙草をくわえ不良たちに睨みを利かせるが最初こそ威勢がよかった不良たちも目の前の光景を見て完全に戦意を亡くしていた。
「・・・・やれやれなんだよ騒がしい」
その沈黙を破るように店内一番奥の扉が開く。気の抜けたような声とともに現れたのは国枝実だった。上半身裸に白いワイシャツを羽織り気だるそうに髪を掻き上げる。
「全くコッチはお楽しみ中だったってのによぉ、騒がしすぎだぜ」
国枝はテーブルの一つに腰掛けると地面で痛みに唸っているスキンヘッドの男を、そして次に天城さんを、そして最後にオレを一瞥すると全てを察したようにニヤリと笑みを浮かべた。
「なるほどなるほど、ついに恭ちゃんは俺に反旗を翻したわけか」
国枝の言葉にオレは正直どう答えていいかよくわからなかった。実際オレはなにもしていない、天城さんがいなければきっと今までどおりクスリの売人をやらされ続けていたはずだ。
「お前がリーダーか?」
天城さんが国枝の前に立つと低い声で言い放つ。それに対して国枝は酒のボトルをラッパ飲みするとどっしりとソファにもたれかかる。
「リーダー?まぁそう言われればそうかな。あんたあれだろ硬派のカリスマ天城仁だろ、高校生で全国の番長全てを配下に置いたっていう」
国枝が天城さんのことを知っていたことにも驚きだが天城さんがそんな硬派のカリスマだとか言われている人だったなんて知らなかった。だからかなのかなにも反則的な強さをもっているのは・・・・。
「その硬派のカリスマさんがなんで恭ちゃんなんかに誘われてこんなところにいる?あーん、いくら積んだんだ?」
不敵な笑みを浮かべるとソファの脇から大きな黒色のボストンバッグを取り出すとテーブルの上にドンっと置く。
「なぁ硬派のカリスマさんよ、いくらで俺の私兵になってくれる?金なら出すぜ」
「えっ・・・・。」
一瞬、国枝が言うことが理解できなかった。まさかこの状況で国枝が天城さんを買収しようとするなんて思いもよらなかった。
「あんたの力を買って、そうだな・・・・」
国枝がボストンバックから札束を取り出すとテーブルの上に投げる。一束が百万だとしていくらだろうか、かなりの量だ。
「とりあえず契約金1000万でどうだ?」
「ダメだな」
天城さんは即答で答える。これはなんだもしかしたら天城さんの納得行く金額になったら天城さんは国枝の味方になってしまうのか?そんなあやふやな状況をオレも隣のゴスロリの女性も周りの不良どもも息をのんで見守るしかなかった。
「まぁそりゃそうだよな、それじゃ倍の2000万ならどうだい?」
国枝は予想通りといった様子でボストンバッグから更に札束を取り出し重ねる。
「まるで話にならないな」
それでも天城さんは動かなかった。正直オレが同じ立場だったらその目の前の金に手が伸びてしまっていたかもしれない。
「んー流石は硬派のカリスマというだけあるな、それじゃあ倍の・・・・」
「その必要はない」
ボストンバッグに手を伸ばし札束を取り出そうとする国枝を天城さんは制すると今迄積み上がっていた札束の山に一枚の写真を放り投げる。
「あ?なんだ・・・・写真?」
「お前等が殺したこいつを生き返らせてくれ、そうしたら仲間にでも配下にでもなってやる」
「クククッ、そうゆうことかよ。死んだ人間を生き返らせることなんてできないそれが答えってことか」
「あいにくと俺は恭治に雇われたわけではないんでな。俺はただその写真のやつの仇を取りに来た、それだけだ」
「はは、なるほどね。だがそれはどうかな?」
天城さんの睨みにも国枝は動じることはなかった。ゆっくりとテーブルの酒の入ったグラスを手に取る。
「残念だがこの件に関しては俺はなんにも関与してない、指示をしたわけでも実行犯でもない。そこにいるそいつらが勝手にやったことだから仇を取りたならそいつらを好きなだけ殴り飛ばすといい」
国枝は楽しそうにグラスを傾けながら周りにいる不良達を指さす。指差された不良達は怯えるように後ずさるが、天城さんは目もくれることなくポケットからなにかを取り出すとテーブルへと放り投げる。
それは間違いない、オレが売りさばいていたクスリだ。
「このクスリを売らせていたのはお前だ。お前はこいつや恭治にクスリの売人を強要していた。それは言い逃れはできないぜ」
「あーそれね、まぁ確かに言い逃れはできないな。しっかしまぁあんたみたいなのに目をつけられたら商売あがったりだよ。けどそれで俺を警察につきだそうったって無駄だぜ、俺の親父は警察庁長官だからいくらでも揉み消せる」
天城さんの追求にも国枝はどこまでも平然とし挑発すらして見せる。
「まして俺になにかあればどうなるかはわかるよな?一応これでも役者の卵なんだ、顔に傷なんかつけてみろマスコミが黙っていないし君の周りの人間になんらかの被害がないとも限らない」
「そうか・・・・だがな、俺はお前を法で裁くつもりは初めからねぇ!!!」
その叫びと共に天城さんは一歩踏み込むと拳を振り抜く。その拳はなんの躊躇もなく国枝の顔面を捉える。
「ふふふ、あははっ、どうした硬派のカリスマさんよ」
当たった、そう思った天城さんの拳は国枝の目の前で止まっていた。国枝はその止まった拳を前に一瞬表情を強ばらせたがすぐに笑い声をあげる。
「やっぱり硬派のカリスマとはいえ報復が怖いか」
「それは違うな、『天網恢恢疎にして漏らさず』。今、俺がここで裁きを下さずともお前が近いうちに死ぬのが見えた。」
天城さんはそう言うと拳を戻すと煙草を静かに吹かす。
「て、てんもう?」
「・・・・天網恢恢疎にして漏らさず。天の神様が張っている網は荒いけど悪人は必ず捕まる、っていう老子の言葉」
ゴスロリの女性が説明するその言葉、その言葉の意味を聞いて国枝が更に笑い声を高める。
「はっ、硬派のカリスマがそんなオカルトみたいなこと言い出すとはね。俺が死ぬだって?逆だよ、俺みたいなのがお前等ゴミクズの養分を吸って長生きするんだよ」
「そうか、それはよかったな」
ケラケラと国枝に対し、天城さんは先程までと打って変わって怒りというよりも哀れむような目で国枝を見ていた。
「せいぜい残り少ない人生を楽しむんだな、ただし俺の目の光っている所以外でな」
「なんだよそれ。まぁいい、見逃してくれるっていうのなら俺は素直に撤収させてもらうぜ」
国枝は呆れたような声とともに嘆息するとボストンバッグに札束を詰め直し立ち上がる。
「ああ、そうだ。お礼といっちゃなんだが恭ちゃんとそこの奥の部屋にいる女どもは解放してやるよ。俺にはもう必要のないものだからな」
オレはその言葉にもう二度と国枝とは友達に戻れることはないのだと確信した。国枝にとってはオレも伊波さんもただの道具にすぎないんだと・・・・それはずっと前からわかっていたことなんだがオレは心のどこかでまだ「国枝が改心してもとに戻ってくれる」なんて希望を抱いていたんだとおもう。
「国枝・・・・さよならだ」
オレはちょうど脇を抜けようとする国枝に別れの言葉を
かける。その言葉に国枝は一旦足を止めたが結局なにも言わずにバー「リフレイン」をでていった。
これでよかったのか、それはオレにはわからない。なんといってもオレには天城さんのような力はない。だがもしオレが天城さんくらいに強かったら国枝を殴ってでもなんとか改心させたかった。
「さて、後は残りの奴等だが」
天城さんが不良達を一瞥すると一歩踏み出す。不良達は完全に震えがっていて次に不良達ががどんな目に遭うかはもはやわかりきったことだった。
「・・・・仁、ちょっと待って」
するとオレの腕にしがみついていたゴスロリの女性が天城さんの元へと歩いていく。
「なんだ?」
「・・・・血生臭いことするまえに奥の部屋にいる女の子、助けてあげたいんだけど」
「そうか、わかった。恭治も手伝ってやれ」
「は、はい!」
言われるがままに天城さんの背後を通りゴスロリの女性の後を追う。奥の部屋には一度も入ったことはなかったがいつも女性が連れ込まれていることからどうなっているかそれはすぐにわかった。
「・・・・これは、酷い」
ゴスロリの女性は部屋の扉をそっと開け中を覗き込むと小さくそう呟く。少し離れていたところにいたオレのところにまで凄くベタついた嫌な臭いが届いてくる。
「・・・・とりあえず、男の人は入っちゃダメ」
ゴスロリの女性はそう言うと一旦扉を閉めこちらへと振り向く。
「・・・・ジャンバー貸してもらえる?いくらなんでも裸のまま外へは出せない」
「わかりました」
オレは着ていたジャンバーを脱ぐとゴスロリの女性に手渡す。
「・・・・ありがと」
それだけ言うと彼女は再び部屋の中へ入っていく。結局オレにできたことというのはそれだけで後は呆然とそこに立ち尽くすしかなかった。
しばらくして部屋の中からゴスロリの女性に連れられて数人の女性が出てきた。皆服はボロボロでその表情は暗い、なかには顔に痣ができている子もいる。それはこの部屋の中で行われた行為がどれほど酷いものだったのかを表沙汰にしていた。
「あっ・・・・」
最後にゴスロリの女性に支えられ出てきた彼女、伊波早苗さんを見て思わずハッとした。オレのジャンバーを肩から羽織り歩く彼女の姿は以前よりもかなり窶れきって顔自体が変わってしまったようにも見える、そこに以前の明るかったオレの知っている伊波早苗さんはいなかった。
「・・・・仁、私この子を病院に連れていくから先に帰るね」
「ああ、気を付けてな」
ゴスロリの女性は天城さんとそう言葉を交わすと伊波さんの肩を抱いてそのまま歩いていく。
「・・・・・・・・。」
オレとすれ違うその一瞬、伊波さんの虚ろな瞳がオレを捉える。なにか言わなくてはそう思ったがその虚ろな瞳を前にすると何を言っていいかわからず結局言葉は口から出ることはなかった。
きっとオレのことを恨んでいるんだろう、そんなオレが伊波さんにかけていい言葉なんてない。オレは伊波さんがあの部屋の中から助けを求める声を何度も何度も何度も聞いていた、聞こえていた。
伊波さんの背中が遠ざかっていく、そうだ結局今回もあの時も
オレにできたのはただ無力に、ただ強く自らの拳を握りしめることだけだった



次回予告!!



じゃーじゃーじゃじゃー♪
じゃーじゃーじゃー♪


天城「やれやれ、気が付けば半年に一度の更新が当たり前になってきているな。本来なら前回、前々回あたりからは
一気に読んだほうが展開的に良かったんだろうが今更遅い話だな。さて、次回からは回想があけて修羅場がやってくるらしいが、一体誰の修羅場なんだろうな。というわけで次回、メイド服とおまじない黎明編その10『三姉妹に囲まれて、どうやらこれが修羅場ってやつらしい」に乞うご期待」



なにか久しぶりにメイおまを書いたと思ったら前回半年前だったよ・・・・しかもさっぱりキャラクターの感じを忘れてて
変な感じだし文章自体も変な感じだ、あとでこっそり直そうと思う(というか以前のやつもちまちま読みなおして直しているんだけどね
国枝くんの出番は終わりです、このあとでとのべ2→でとのべ9へと続きます
そういや前回天城さんによって国枝フルボッコとか書いてたけど結局フルボッコにはなりませんでしたね
まぁ当初からその予定だったんだけどね!!まぁ恭治がぶんなぐってもよかったんだけど
この時点の恭治はまだ天城さんに憧れる前よわよわ恭治くんなので完全に傍観者です
主人公なのに出番殆ど無い
あーあとゴスロリの女性=三葉なのは間違いないのですけどこれには色々あって今回はゴスロリの女性で通してます
すんげー面倒だったわ・・・・
にしてもなんか小説の書き方がわからなくなってきているぜぇ・・・・
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無題
> 『天網恢恢疎にして漏らさず』
予想を吹っ飛ばす決着の付け方だった!
天城さんの圧倒的硬派が貫かれているのが、
分かりやすくてしかも陳腐でもなかった。
水曜日 2012/08/08(Wed)20:53:26 編集
無題
(´・ω・`)ノブッコロ!

作者が最近覚えた言葉を楽しくて使っているだけなのに
天城さんが使うと格好良く聞こえる不思議!!
本当はぶん殴っても良かったんだけど一応天城さんが殴るのは改心させるためみたいなものなんで国枝くんは完全に匙を投げられたということで殴られませんでした

さすが硬派のカリスマといわれているだけあるね
氷桜夕雅 2012/08/08(Wed)21:16:40 編集
プロフィール
HN:
氷桜夕雅
性別:
非公開
職業:
昔は探偵やってました
趣味:
メイド考察
自己紹介:
ひおうゆうが と読むらしい

本名が妙に字画が悪いので字画の良い名前にしようとおもった結果がこのちょっと痛い名前だよ!!

名古屋市在住、どこにでもいるメイドスキー♪
ツクール更新メモ♪
http://xfs.jp/AStCz バージョン0.06
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