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日記と小説の合わせ技、ツンデレはあまり関係ない。 あと当ブログの作品の無断使用はお止めください
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リスティア=リースリング
 
遙か昔、東の大陸ウイングガルドにセドナという女神がいた。彼女は世界の行く末を決める運命の女神であり、その頃の世界は一つの運命しかなかったという
世界記憶<アカシックレコード>に“接続”して世界の、そしてそこにある全ての存在の運命を描き連ねる。無論感情には左右されない、いや正しくは興味が無かった。
ある人間の男が現れるまでは・・・
その男はごく普通の羊飼い、特になにか優れているわけでもなく、これといった名誉も地位もない外見もたいした特徴の無い男。
しかし男は他の人間、いや他の全ての存在とは明らかに違うものがあった
その羊飼いの男はセドナの決める運命に逆らい時には全く違う運命にしてしまう力があったのだ。
いや初めからセドナの決めた運命など無視しているのかもしれない
ともかくセドナが主神より運命を操る力を分け与えられてから今までそんなことができる存在はいなかった。それゆえそんな力を持つ羊飼いの男にセドナは興味を抱いた
セドナがどんな運命を与えても男には関係ない・・・・・・はじめこそ運命に従わないことに憤りを感じていたが次第にこの男がどんな人生を歩むのかそれをセドナは知りたくてたまらなくなっていった
しかしそんな興味を抱いてすぐに男は不治の病にかかってしまう
セドナは男ならばそんな運命でも変えてしまうのだろうと心なしか期待をしていた
が、男の病状は一向に回復する気配をみせない、この男はまさかこんなところで死んでしまうのだろうか?不安と焦りがセドナの心をゆるがす
人の苦しみ、死など彼女にとって今まで気にもとめていなかったことだ。だというのに男が日々症状が悪化し苦しむのを見ていることはできなかったし、なにより死なせたくなかった
そしてセドナはこのとき初めて自らの感情で運命を操る
男の運命は変えられない、だから彼を蝕む病の運命を変え男の命を救ったのだ・・・
それから逸脱した行為に対してセドナは力を封じられ天より追放される。このことによって運命を調律するものがいなくなり様々な可能性を持つ平行世界が生まれたという。
そして多次元に世界が広がった今、世界記憶<アカシックレコード>は過ぎ去った時間だけを記憶しつづけているという
 
「・・・・・・そうゆう話、知ってる?」
小さく呟くとリスティアは振り返る。
「・・・・・・と、いうかちょっとは休ませてくれない?」
「時間、ないから」
冷静沈着な様子とは違いリスティアの後ろを歩く妖花はというと足取りもおぼつかず今にも倒れそうだ
「あんたねぇ・・・自分だけ流砂に乗ってずるいんじゃないの」
「・・・・・・。」
答えることなく妖花の方を向いたままリスティアは流砂に乗って進んでいく。実際ハームステインからグバルディン闘技場までの距離をほぼ走破(途中船に乗ったが)したんだから途中休んでもよかったんだが、これだけ文句が言えるのなら休む必要はないと判断していた
「・・・・・・痩せるかも」
「余計なお世話よ」
「・・・・・・それで、さっきの話知ってる?」
「さっきっていうとあれ?運命の女神セドナがどうとかという話だっけ」
妖花の言葉にリスティアは小さく頷く
「リスティの言う“知ってる?”ってのはあれだね、あたいの世界に似た話がないかって事でしょ?まぁあたいが知らないだけかもしれないけど聞いたことないかな」
「・・・・・・そう」
それだけ言うとリスティアは体を向き直し進んでいく。そのあっさりとした様子におもわず妖花は肩を落とした
「も、もうちょっとコミュニケーションの仕方覚えたら?」
「・・・・・・・・・。」
「はぁ・・・まぁいいわ。あ、そういえばそのセドナってその後どうなったのよ?もしかして羊飼いの男とくっついたりする?」
足取りふらついている割に妖花の口はよく動く
「・・・・・・妖花の言うとおり、セドナは羊飼いの男と結ばれる。そして女神であるセドナはやがて人々に崇められそれが今のセドナ教・・・。人伝えの話は時代が変わるごとに脚色されてるけど表向きはそう」
「なによ表向きって?」
「・・・・・・そのうちわかる」
リスティアは小さく呟く
この戦いは幾度も繰り返されたあの姉妹風に言えば流転に続く血塗られた戦い・・・・・・
その悲運な戦いにはある目的がある、そしてその目的が果たされるのが今回であるのはおおよそ間違いではないだろう。彼女達の力は戦いを繰り返すごとに膨れ上がり後少しで“あの場所”に届く。
そうすればあの姉妹の戦いはとりあえず終わる。
しかしそれがもう一つの悲劇を生み出すのも見えている。
姉妹の戦いを裏で操る真の敵・・・・・・それを彼らは知らない
今それを知り、行動できるのはこの幼き砂の魔女リスティア=リースリングただ一人
「・・・・・・。」
視界の先にグバルディン闘技場が見えてくる。一方的ではあるがリスティアが彼ら・・・幻=クレイドとティア=マローネ・・・と待ち合わせをする事にした場所。
今回彼らは夜風楓と接触していないのでかなり情報に乏しい。なのでリスティアが出した手紙には必ず反応しここにやってくるはずだ、それがどんなに怪しくても唯一の手がかりなのだから
 
「あーもう、疲れた・・・。」
着いた途端に妖花は地面にどさりと倒れ込んだ。
「・・・・・・。」
妖花を一瞥してリスティアは流砂から降りると軽く砂を払いじっと闘技場を見上げる。
グバルディン闘技場
西の大陸グラディアルステーションにある闘技場でハームステインほどではないがそれでもかなりの大きさを誇り月一で大会が行われている。
「それでリスティ、ここに何があるわけ?」
「・・・・・なにも」
さらりというと無表情のまま少し右にずれた眼鏡を直す
「なにもって、なんていうかいままでちゃんと聞かなかったあたいも悪いけど一体全体なにをしようとしてるのよ」
「・・・その話は後」
リスティアは荷物から砂の入った小瓶をとりだすとそれを辺りに振り撒き軽く念じる。
「今度はなにが始まるのよ」
「砂の結界」
撒いた砂は淡い光を放ち、闘技場を覆うように風に流され広がっていく
「・・・・・・。」
しばらくして術式の完成を確認するとリスティアは闘技場の奥へ進んでいく。
「ちょ、ちょっとまちなさいよ・・・・・・ってぇ!?」
結界の内側に足を踏み入れた途端先程聞こえていた街の喧噪がぱったりと消えていた。そしてさっきまでの体の火照りが一気になくなるような寒気が妖花を襲う。
「なによ、これ」
思わず不安の声が妖花の口から漏れる。いままでに感じたことのない不安、なにも起きていないのに今にも何かが起きそうな恐怖、それらがこの結界には渦巻いていた
「この中では音は外に漏れない、そして入ってきた人に精神的な不安を抱かせる。」
「ここにいると危険だっておもわせるわけ」
「・・・・・・妖花にしては上出来。しばらくすればこの不安感は慣れるから」
涼しい顔で言うとリスティアはそのまま選手入場のゲートをくぐっていく。
「はぁ、あんまりこんなの慣れたかないけどね。」
あきらめたように嘆息すると妖花もリスティアの後を追った
 
                           3
ティア=マローネ
 
・・・・・・現状報告
ジークの突然の失踪、そして再び姿を現した夜風紅葉。何故別次元の記憶が私にあるのか?それはわからないがともかくジークと紅葉をそのままにしておけば世界を根底から覆すようなことが起こるという。
この状況に先手を打つべく私は幻=クレイドとともに中立都市ルラフィンで予知能力を持つセトラ=カートスルに接触するも結局はっきりとした情報は得られなかった。
しかし手がかりがなかったわけではないセトラから渡された差出人不明の手紙
『翌朝、グバルディン闘技場で待つ。来るも来ないも貴方達のご自由に』
言ってしまえばまだ私達は本当の意味でこの物語にかかわっていない・・・しかしこの手紙が私達に道を示してくれるかもしれないのだ、たとえそれが罠であったとしても
「ったく、翌朝って指定しておいてもうすぐ昼じゃねぇか」
観客席の一番前に足をかけ気だるそうに幻がぼやく。闘技場に着いてから何度と無く繰り返された問答、隣で聞くのもあきてきた頃だ
「まだ昼までには一時間はある。向こうにもなにか事情があるんだろう」
「そうかねぇ?やっぱりガセネタなんじゃねぇのかこれ」
確かにグバルディン闘技場に着いたとき手紙の差出人と思われる人物の姿は見あたらなかった、しかしここに着いてみて初めて気がついたことが一つある。
「それはない、ガセでここの場所を指定してくるとは考えにくい」
「どうゆうことだ?」
「あくまで推そ・・・・・・っ!!」
言いかけて思わず息がつまった。
突如として街のざわめきがなくなり冷たい空間が広がっていくのを感じる・・・・・・これはいったい?
「やれやれ、ようやくおでましのようだな」
幻もその気配に気が付いたのか腰を上げ臨戦態勢を整える
「おそらく人払いの結界だろうよ、こりゃただ事じゃすみそうにないぜ」
「・・・・・・・っ!」
広がる結界の恐怖を押して私も指輪からナイフを召還する、さすがに戦いは避けれそうにない状況だ
「来るぞ!」
正面の扉がゆっくりと開かれる、そこから姿を現したのは二人の女性だった。
一人は小柄な魔術師、もう一人は軽装の剣士出で立ちからするとそんな感じだろう、しかし敵意のような者は感じない
「・・・来てくれたんですね」
魔術師の方が一歩前にでて小さな声で言う。凛としてはいるがどこか幼さが抜けていないような声、女性というより少女と言った方がいいだろう。しかしこんな少女がどうして私達のことを知っているのか?
「あの手紙は唯一の手がかりだからよ。それより貴女達は何者?少なくとも私達の自己紹介はいらなそうだけど」
とりあえず今目の前にいる二人と過去に面識はないのは確かだ。
「私はリスティア、そしてこっちが妖花。単刀直入に言えば私もティアと同じ、別次元の記憶を持っている者です」
な・・・・ッ!?
魔術師の少女 リスティアは無表情のままさらりと凄いことを言い出した。
「何故私とティアさんが別次元の記憶、といっても夜風紅葉が現れたときだけの記憶だけ・・・それを持っているかという事に関しては断言はできない、けど推測で言えば運命を操る力を内包する夜風紅葉と私やティアの力が作用し一時的無意識にだけどアカシックレコードに接続したものだと思う」
「ちょ、ちょっとリスティ!話がわかんないんだけど」
「右に同じだな」
幻と妖花が口々に言う、私もはっきりいって断片的にしか理解できていない。
「深く考えないほうがいいです。ただ私とティアは別次元の記憶がある、それだけ今は覚えて」
「それはとりあえずわかったわ、それで目的は?」
別次元の記憶を持っているというのだけではこの子が敵か味方か判断することはできない
「簡単な話・・・・・・私達が倒さなければならない敵というのは別にいます」
敵が別に・・・?いままでそんなもの姿さえ見てないけど
「今までは夜風紅葉が運命を操る能力・・・正確には世界記憶であるアカシックレコードに接続する能力まで達していなかったからアレは姿を見せなかっただけ。けど今回は違う」
「夜風紅葉が能力を操れるほどに力を蓄えてきたと?」
私の言葉にリスティアは小さく頷き、続ける
「本当の敵は夜風紅葉ではなくセドナ法王院、彼らは運命を操る能力をもつ夜風紅葉を自分らが崇拝している運命の女神セドナの生まれ変わりだと思っている」
セドナ法王院といえば運命の女神セドナを信仰しかつてフランク公国の実権を握ってたところだ。そして数年前あの男・・・・・・スリティ=クレイドによって一夜にして滅亡させられそれ以来世界の舞台から姿を消している。
なるほど、言ってしまえば法王院にとっては紅葉はセドナの生まれ変わりのようなものだ。そしてそれを阻止しようとしている私達は法王院からも敵ということになる。
「以前の力を失ったとはいえ法王院に私と妖花だけでは太刀打ちできない。それである種同じ目的のティア達の力を借りたい・・・・・・私達には情報があり、ティア達には力がある」
「・・・なるほどね、悪くはない話だわ。」
「セドナ法王院の残党はドルフィルス火山、そこの地下に潜伏しています」
「・・・・・・って、こことドルフィルス火山じゃ地図の端と端じゃないか!」
驚きを見せる幻、それもそのはずドルフィルス火山といえば東の大陸でも南東の端、そしてここグバルディン闘技場は西の大陸の北西の位置だ驚くのも無理がない。
とりあえず今は法王院が火山にいるという事実だけ確認しておく。後気になるのは紅葉の居場所だ、いくら黒幕が法王院だということがわかっても私達の当面の目的は夜風紅葉だ。現に紅葉に運命を操る力を手に入れられてしまったら法王院を押さえても意味がない
「リスティア、紅葉の居場所は掴んでいる?」
「いえ、紅葉は別次元で二回失敗しているせいか今回は前以上に姿を現していません。潜伏場所は特定することは難しい」
予想はしていたが実際聞くと落胆するな・・・
紅葉はジークが一緒とはいえほぼ単独行動、居場所を変えることは容易い。逆に法王院は団体・・・・・・群れて動けばいくら徹底していようがかならずどこかに足跡が残る。やはりわかるのは法王院の場所だけか
「・・・・・・ただ、最終的には夜風紅葉はドルフィルス火山に現れるから大丈夫」
落ち込むのはまだ早いと言わんばかりにまたしても突拍子もないことを言うリスティア
「どうゆうこと?」
「・・・・・・単純な話。ドルフィス火山でなければ夜風紅葉はその能力を使えないから」
能力を使えない?一体火山と紅葉に何の関係が?
「セドナはドルフィス火山で最期をとげた、そして今もあの地に埋葬されている。セドナの力の眠るあの地が能力を使用するのに適している、いえ・・・おそらく能力とはいえセドナの力を借りなければ人間一人で運命を操ることは不可能」
・・・・・・そして法王院はその地で紅葉が来るのを持っているという構図か、なんというか
こんな世界を揺るがすような出来事に対して計画的で且つ効率の物凄いい作戦だ
とりあえず一通りの状況は早足だが理解できた。私自身、別次元の記憶という微妙に曖昧なものを頼りにいくのは正直もどかしかったところだ
「まぁ難しいことはわからないがあんたらが敵じゃないってのはわかったぜ。しかしなんでここなんだ?ドルフィス火山が目的地とわかってればもっと近くでもいいとおもうぜ」
「そうそう、わざわざハームステインからくることもなかったとあたいは思うんだけど」
幻と妖花の意見はもっともだ。しかしリスティアがなにも考えずここを指定してくるとはおもえない
「もしティア達が夜風紅葉を見つけ倒してしまえば法王院は現れずまた別の次元で機会をうかがうでしょう・・・しかしそのとき今回のように私やティアが別次元の記憶をもっているとは限りません。だから今回ティア達には少し迷走を演じてもらいました」
迷走・・・迷走って言葉から何となくわかったような
「もしかしてそれって一回目がルラフィンで二回目がグルバディン闘技場だから?」
私の推測にリスティアは何度目かという頷きで答える。
「どうゆうことだよティア、一回目だとか二回目だとか意味不明だが」
「紅葉と戦った場所よ、つまり私達は『別次元の記憶を頼りに夜風紅葉を追っているが真実にはたどり着いていない』という役、そうゆうことねリスティア?」
「・・・迷い無くそして関係がありそうで全くない的外れな場所へ向かうことで夜風紅葉、セドナ法王院の両者の目を欺ける。でなければここまで双方の追っ手もなく来ることは難しい」
追っ手、か・・・。
確かに今回私の前に現れたのといえばスリティ=クレイドだけだ、それでもあいつが何度も襲ってくることを考えるとこの迷走は正しかったといえる
「さて目的地もわかったんだ、そろそろ出発しよう」
私は話を一旦区切り出発することを提案する。気になることはまだあるがそれは歩きながらでも思ったんだが・・・
「・・・・・・その前に」
まだなにかあるのかリスティアは手に持った杖を突き出すと小さな声で突拍子もないことをまた呟いた
「・・・私と戦ってください」
 
沈黙の流れる闘技場、その中心で幻とリスティアが向かい合う。
「やれやれ、いくら頼まれたからといっても女子供を相手にするのは好きじゃないんだけどな」
「・・・そうゆう言い方嫌い」
剣を抜き今にも突撃するような構えな幻に対して全てを迎え撃つ様子で杖を地面に突き立てるリスティア
そんな中私と水栗妖花は観客席で二人の戦いを見守る。リスティアが戦いを挑んできたのには理由がある、彼女は私達の力というのを実際見たことはない・・・それゆえ自分の力で試さなければ気がすまないらしい。ちなみに対戦相手が私じゃなくて幻なのはリスティアの指定だからだ。
「あたいは別に戦わなくてもそれなりに強そうってのはわかるけどね」
妖花が退屈そうに前の席にもたれながら呟く、確かにまぁ相手の力量を図れなければ戦士としては不向きではあると思うがあのリスティアって子がそれだけで幻に戦いを挑むだろうか?
リスティアが自分から戦闘を仕掛けるような好戦的なタイプには見えないし、いやまだあって短いがなんとなくそう思う。
「それじゃこっちからいかせてもらうぜ!!」
短い均衡状態を破り動き出したのはやはり幻だ。一気にリスティアとの距離を詰め剣を振り上げる。魔術師なんかの類と戦うとき常套手段が術者の詠唱を止めてしまうことだ、詠唱さえ止めてしまえば特に術にウェイトを置く者はそれだけで力を失う。
だがその弱点を術者がそのままにしているわけがないのも事実
「くっ、なぁろっ!」
リスティアを捉えていたはずの幻の剣が空を切る。それだけではない、気がついたときには二人の距離はずいぶんと離されている。
「なるほど、流砂か・・・・・・。」
リスティアを中心として放射状に流砂が伸びていた。その速度は目測でもかなりある、全速力で走ったとしても近づくのは困難だろう。
「ふっ、ならこっちは!」
まぁやるとは思ったが幻は体の向きを変え観客席を隔てる壁へと走り出す。
「おらぁっ!!」
気合いの入ったかけ声とともに幻は壁に足をかけそのままリスティアの方へと跳躍、走って近づけないなら跳んで近づけばいいだけ・・・・・・という発想は悪くはないと思う。
「・・・・・・“バレット”」
しかしリスティアはそれさえも見抜いていたようだ、幻が跳躍した瞬間に軽く腕を上げると聞こえないくらいに小さな声でスペルを唱える。
するとリスティアの腕に惹かれるように地面からいくつもの砂の球が幻に向かって飛び出していく
「それはこっちもお見通しだぜ!」
対する幻も先を読んでいたのかすぐさま符術を宙に散開させる。幻の使う符術というのは特殊な墨で魔力の通る回路と起爆となる印を描き、その起爆印を切ることによって回路に魔力が流れ効果を発揮する。そのため魔法が使えないものでも使える上に詠唱時間などもなく魔法的な攻撃が可能となる便利な代物だ。
その便利な代物は印を切られたことによって一気に火球へと変化しリスティアの放った砂球を撃ち抜いていく
「今度こそ、もらったぜ!!」
剣が迎撃に失敗したリスティアを捉える!ふと思ったんだけどまさか本気じゃないだろうな
「・・・・・・終わった、多重詠唱終了・・・砂竜杖から操竜杖へ移行」
だがそれも杞憂だったようだ。狙ったかのようにリスティアは三つ目の術式を展開させてくる。
あれは竜だろうか?リスティアの足元からゆっくりと竜の顎がその姿を晒し彼女の命令を待っている。
流砂、砂の弾丸、そして今度は砂の竜か・・・・・・多重詠唱もさることながらその膨大な魔力量にはおどろかされる
「・・・・・・行って」
リスティアが竜に命令を下す。ゆっくりと竜は砂に隠れた身体を天に向かって伸ばし・・・
「な、なんだとぉぉぉっ!?」
そして、それはもうあっさりと一口で幻を丸飲みにした。
・・・・・・・・・・。
流れる静寂、いや幻がやりすぎるのは予想できたがまさかリスティアのほうがやりすぎるとは思わなかった。
砂の竜は幻を飲み込んだまま微動だにしない、そしてそれを指示したリスティアも無表情のまま動く様子がない。
「妖花、幻は大丈夫なんでしょうね」
「うーん、どっちかというとあたいとしてはリスティのほうが心配かなぁ?」
・・・どうゆうことだ?どうみたってこの現状でリスティアを心配するのはおかしいような気がするんだが?
「いや砂の魔女とも言われるリスティが砂の竜を形作るのにあんなに魔力を使うの珍しいからなにかありそうだなって・・・まぁあたいの勘みたいなものだけど」
私自身はリスティアが戦うのを見るのが初めてなのでよくわからないが妖花の勘ではそうゆうことらしい。そしてその勘が正しかったことはすぐに理解することになった
「・・・・・・っ!」
リスティアの表情がほんの一瞬だが曇る、それとほぼ同時に砂の竜の口から青白い炎が噴出す・・・いや漏れ出していた
あの青白い炎には見覚えがある。
幻=クレイドが得意とし、そしてスリティ=クレイドが自分の技と言ったソリチュードストライクだ。あの青白い炎はただの炎ではない、あの炎は伝説とも言われたソリチュードドラゴンの炎と同じ魔力喪失の輝きを持っていて近くにいるだけで魔力は霧散する、つまり・・・
「リスティアはあの砂の竜を維持するためにかなりの魔力を消費していたということね」
だがリスティアの魔力を持ってしても維持できたのはあの一瞬の静寂の間だけ、今となっては竜の体は次々と崩壊し飲まれた幻の姿も確認できる。
「手加減しないぜ!いくぜソリチュード・・・・・・ストライクッ!!」
そして魔力喪失の輝きを持つ竜の炎は一気にリスティアへと向かっていったのだ
 
「・・・っ!」
勝負は決したのだろうか?巨大な砂煙が舞い上がり未だ視界が晴れない。
あの状況で青白い炎を纏い砂塵を撒き散らしてリスティアに突っ込む幻を止めるのははっきり言って無理だった、というよりもやりすぎることを予想して私が戦わせなければ良かったか
まぁそれを考えればセドナ法王院と夜風紅葉の二つの敵に狙われるのを警戒してこんなところに呼んでおいて戦いを仕掛けるリスティアの方もどうかとは思う
まぁどっちにしてもこれで二人とも充分互いの力を理解しただろう、私としては早いところ目的地であるドルフィス火山に出発したいところだ
「やっぱこっちの世界の人は凄いわね・・・・・・」
驚いているのか嘆息しているのかわからないが妖花が言葉を漏らす。いやなんというか幻が異常なだけだ、私まで一緒にしないでもらいたい
しかし“こっちの世界“ということは妖花は姫奈と同じ世界の人間だったりするのだろうか?
まぁ今はそんなことどうだっていい、ふと現実逃避したくなっただけだ
「やるじゃねぇか、避けるなんてよ」
「・・・・・・そうでもない、これは必然の結果」
砂煙の中から幻の声が、そして次にリスティアの声が聞こえる、どうやら二人とも無事ではあるようだ
声が聞こえてすぐに砂煙は収まった、舞い上がるのが砂ならばその砂をリスティアが制御したと考えるのが妥当な線だろう
「避けられるのが必然とは聞き捨てならないな」
「・・・・・・ソリチュードストライクの直線的な攻撃、そして魔力が宿った砂が魔力喪失にかかる時間には時間差、つまりはタイムラグが存在する。それを統合すれば回避することに必要な最低限の距離はわかる」
砂煙が消えた後の状況なので確実とはいえないが幻とリスティアの距離は近い、確かにリスティアは目測で二、三歩最初の位置から横へずれただけの必要最低限の移動しかしていないようだ
「こ、こいつ・・・なぁんていうか凄くむかつく言い方しやがる!」
「・・・・・・そうゆう言い方、嫌い」
戦いが終わったと思ったら今度はなにやら二人で口論?(というよりも幻がふっかけているだけに見えるが)がはじまっている、しかもこの調子だとまだかなりの時間がかかりそうだ
はぁ・・・しかしこんなパーティで大丈夫なんだろうか?
 

                    4  
 
氷上 姫奈
 
楓が店を出てからすでに五時間。
日も落ちたし、三人で乗るはずだったグラディアルステーション行きへの船の出港時間も過ぎた
「・・・・・・はぁ」
かれこれ何度目だろうか?滅多にため息なんてつかない姫奈が今日だけで一生分の溜息をついたように机につっぷしている。
「かえちゃん遅いでするね・・・・・・」
独り言のように呟く、というよりもあんまり何回も同じ事を言うものだから今となっては正面に座っている瑞穂には完全に無視されている状況だ
かという瑞穂は相変わらず我関せずのスタイルなのか片手には分厚そうな本をもう片手にグリーンティの入ったカップを持ち長いティータイムに没頭している
「・・・・・・心配でする」
楓は以前ハームステインでも一人で急に出て行った後トラブルに巻き込まれた、詳しい話を姫奈は聞いてなかったがなにか敵に襲われたということはわかってる
それを考えると今回こんな時間まで帰ってこない、これはまた敵が楓を襲撃しそのせいで戻って来れないんじゃないのか?
楓の記憶が戻ってないのでよくわからないがハームステインでの一件を見るに少なくとも楓は誰かに狙われているというのは明らかだったのだ
・・・なら何故彼女を一人で行かせてしまったのか
「・・・・・・くっ!」
思わず姫奈は後悔の念に唇を噛み締め、席から立ち上がった。
「やっぱりかえちゃんを探してくるでする」
その言葉に瑞穂は読んでいた本を閉じじっと姫奈を見つめ返し悲痛ともいえる言葉を吐いた
「これを機に一言言っておきますけど、これ以上あの子にかかわるのはやめなさい」
「それはどうゆう意味でする?」
「・・・・・・。」
返答はない、ただ瑞穂の目は「言葉通りの意味だ」と言っているように見える。
けど短いとはいえ十日弱一緒にいた友達に対してかかわるのは止めろなんて姫奈には無理な話だ、引くわけにはいかない
「で、でもかえちゃんは友達でする!」
言葉たらずながらも姫奈は必死に抗議するが、そんな必死の思いも瑞穂には通じない
「奇なりし者は奇なりし者を呼ぶ・・・・・・友達だかなんだか知りませんけど貴女は彼女がどんな人間か知っているのかしら?」
夜風楓がどんな人間なのか?
そんなこと記憶喪失の本人ですらわからないのに姫奈にわかるわけがない
姫奈が知っているのはちょっと抜けている所はあるけど友達想いの夜風楓だけだ
「・・・なにを知っているんでするか?」
おそるおそる聞いてみる。次元念者のことでさえ姫奈自身が知るよりも前から瑞穂は知っていた、おそらく楓のことも初めから知っていたに違いない。だからこそ瑞穂は楓や姫奈と一緒にいたのだということはなんとなく察していた
頭の中では理解していた、けどそれは姫奈が無意識のうちに避けていた話題だった
「彼女・・・夜風楓は夜風の民と呼ばれる時の防人、運命を司る者よ」
「運命を・・・・・・司る?」
姫奈はつい聞き返してしまった
思わぬ楓の正体に言葉では理解できたが頭がさっぱりついてこなかったのだ
とりあえず姫奈は一度大きく深呼吸を気持ちを落ち着かせると今一度瑞穂に向きなおす
「えっと・・・じゃあ、かえちゃんがその気になれば未来は変わるのでする?」
「未来だけじゃなく過去をも変えることができるはず。無論、そんな気分で変えられるような単純なものではないですけど」
瑞穂は紅茶を口にすると軽く息をつく
「運命を変えるのには内的に膨大なエネルギーが必要になる。夜風楓が私達の世界にいた頃はその内的なエネルギー、魔力だとかそんなものの存在自体が希薄だったからそう気にする必要がなかったけれどこの世界なら話は別。・・・・・・そしてここに戻ってこないという事はおそらく彼女は自分の目的を思い出したということ、自分は運命を操るためにこの世界に来たという事をね」
「でも、かえちゃんは運命を操ってなにをするつもりでする?」
あの楓に運命を操ってまで成さねばならないことがあるとは想像しがたい、しかしそれは記憶を失った楓しか知らない姫奈だからであって・・・その点から言えば瑞穂の方が楓のことをよく知っているだろう
「楓がなぜ運命を操ろうとするか?そこまではわからないけどももう一人、対の存在のたる夜風紅葉には明確な目的があるでしょうね・・・そしておそらくこの話を中心で動かしているのも紅葉の方」
「夜風紅葉?って、誰でする」
「・・・・・・夜風楓の八歳上の姉よ、百年に一度の天才といわれ、そしてあまりにも奇抜な多次元同一性概念というものを学会で発表して一時期マスメディアを騒がした人物」
「多次元ってことはもしかしてかえちゃんのお姉さんはこの世界のことを知ってたってことでする?」
「下等生物にしては上出来・・・そのとおりおそらく夜風紅葉はこの世界のことについて知っている、そして自分の運命を操る能力を発揮できる場所がこの世界だということも」
思わず姫奈は息を飲む。ここまでの話を聞けば考えれることは一つである
「その紅葉さんにかえちゃんは利用されているのでする?」
「それは極論、でも今は運命を操る夜風の民の力が二つに分断されている状態でどちらかが死ぬことによってその分断された力は生き残った方へいくわけだから間違いではないとはいえないわね」
「えっとそれって最後は姉妹同士で内的エネルギーを奪うために殺し合いになるってことですよね!?」
「・・・まぁそうゆうことね、どちらかが生きていたら運命を操る能力は得られないだろうし」
瑞穂は少し間をおいて言葉を漏らした。それはまさになにか裏があると言わんばかりの言葉であったが今の姫奈にそれはわからず、彼女の正義感だけが気持ちを動かしていた
「なんの理由があるか知らないでするがそんなの駄目でする!!」
それに対して瑞穂はただ静かに言葉を返す
「それで貴方はどうするつもり?」
「今すぐにでもその紅葉さんかかえちゃんどっちかを止めるでするよ!」
「・・・そう、勝手になさい。でも貴方、紅葉にしろ、楓にしろ今どこにいるのか知っていて?」
「うっ・・・・・・知らないでする」
ちょっとした沈黙・・・・・・瑞穂からすれば案の定というかなんというか予想範囲内の回答
「そんな行き当たりばっかりで止められるわけがないでしょうがまったくこれだから下等生物は」
「で、でもなにもしないわけにはいかないでするよ!!」
「はぁ・・・だったら答えは一つよね」
溜息まじりに瑞穂はブレザーの胸ポケットから一枚の符を取り出し姫奈の目の前のちらつかせる。その行動が意味するところはただ一つ
「・・・協力するわよ。紅葉の居場所はともかく楓の居場所くらいならわかるとおもうから」
「本当でする!?」
「一応あの子の髪の毛を数本回収してあるから式神を使えばそう難しいことじゃない、まぁ見つけた後止められるかどうかは知らないけど」
瑞穂は席を立ちかれこれ数時間滞在してたために溜まった伝票を拾い上げる
「とりあえず会計、すませてきてもらえるかしら?少し準備がありますので」
「わ、わかったでする!」
姫奈は伝票を受け取りカウンターへ向かう
ウェイターがを金額を計算するのを待つ・・・その間姫奈は口元が軽くゆるんでいた
「やっぱり瑞穂っちは優しいでする・・・」
やっぱり自分が友達になった人は優しいんだと
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氷桜夕雅
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非公開
職業:
昔は探偵やってました
趣味:
メイド考察
自己紹介:
ひおうゆうが と読むらしい

本名が妙に字画が悪いので字画の良い名前にしようとおもった結果がこのちょっと痛い名前だよ!!

名古屋市在住、どこにでもいるメイドスキー♪
ツクール更新メモ♪
http://xfs.jp/AStCz バージョン0.06
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