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二人だけの楽園 二人だけの地獄
「くそっ!どうなってやがる!!」
力一杯に操作パネルを叩く、だがそんな俺の心情を逆なでするように
「───当艦の操作パネルを乱暴に扱わないでください、ベルムハウンド号クルー 役職艦長代理 ヤシロ 総合評価をマイナス1します」
目の前のモニターは定例的なエラーメッセージを呟く、はっ・・・一体今日だけでどれだけ評価が下がるんだよ
俺は一気に息を吐き、その後にがなる声で叫んだ
「PCT2!何度も言うが航行ルートがずれている、俺の計算ではこれでは地球に着くことはできない!俺の意見を聞いて航行ルートの変更をしてくれ!!」
俺の叫びにベルムハウンド号を統括するメインコンピューターであるPCT2がモニターにイメージ画像である碧色の髪の少女を映し出し淡々と答える
「“何度も言う”ナンセンスですねヤシロ。これはカテゴリー1『有機生命体』に属する貴方達の悪癖です、何度も言うことで答えが変わる可能性があるのは同じカテゴリーである貴方達の中だけです」
聞く耳持たないってのはまさにこうゆうことを言うんだな
「実際に航行ルートが徐々にだがずれているんだ!今修正しなければ取り返しの付かないことになるぞ!」
「航行ルートは正常です、これの変更は艦内の秩序を乱す非人道的行為を引き起こすものとして許可できません」
「ったく、これだから0か1かの頭でっかちカテゴリー2『機械』は嫌いなんだ!!」
力任せに操作パネルを足蹴りにする、それに反応したPCT2の答えは
「暴言、暴行、艦長代理ヤシロの総合評価をマイナス2します」
と言うだけで直ぐにモニターから姿を消しやがった
このベルムハウンド号は人間が住む事ができる惑星を探しそれの調査のために長い旅を続け
そして数年彷徨ったのちに俺達はほんの数日前ついに人間が住む事ができる惑星を見つけ出した。気候、重力・・・それはなにをとっても人間が住むに完璧といわざるを得ない惑星だった
そこでの調査を終え俺達は勝利の凱旋のように地球に帰るだけだったはずなんだ
かつての栄光を人間達の世界を取り戻すんだと息巻いた途端───
突然俺達のリーダーである艦長が死を遂げた。原因は衛生班の解剖でも不明・・・ベルムハウンド号統合航行コンピューターであるPCT2はその時点での艦内総合評価の高い俺を艦長代理として選んだわけだが
「よくこんな奴と組んでて平然としていられたよあの人は!」
恨み言のように呟く。それとほぼ同じくらいのタイミングで俺のいる中央管理室の扉が開き女性が入ってくる
「ヤシロさん、こちらにいらしたのですね、珈琲を淹れてきたので休憩しませんか?」
「ああ・・・セツナか、悪いが珈琲を飲んでる暇はないんだ」
珈琲の良い香りとともに入ってきたのはお下げ姿に瓶底メガネが印象的な生物化学班のセツナだった、テーブルにトレイを置くとセツナは俺の作業を覗き込み呟く
「なにをなさっているんですか?」
「航行ルートの変更だよ、毎日若干だがずれているんだ」
自動航行の変更が無理なら手動航行に切り替えてでもルートを変更しなければならない。俺は百科事典ほどの厚さのマニュアルのページを捲りながら答える
「ずれている?そんなPCT2は完全完璧なコンピューターですよ」
「完璧だから自分の間違いを認めないんだよ。そうだちょうどいいセツナ、サエキさんを呼んできてくれ」
サエキさんはこのベルムハウンド号でもかなりの古株で設計段階からいるメンバーの一人だ
こんな無駄に分厚いマニュアルを読むより彼に聞いたほうがこの艦のことを知るには手っ取り早い
「サエキ、サエキ・・・ええっと誰でしたっけ?」
「誰って、整備班長のサエキさんだよ!」
この艦に乗っていてサエキさんのことを知らない人間はいない、なにをぼけていやがるんだこいつはと思ったが
「整備班長、ああ・・・あの人のことですね」
のんびりとした口調で答えるとぽんと両手を合わせるセツナ、そして───
「あの人ならさっき死にましたよ」
予想だにしない言葉を口走りやがった、思わず俺は航行マニュアルを落としそうになりながらセツナに問い詰める
「は?死んだ?そうゆう悪い冗談はよしてくれ」
「冗談じゃないですよ、脈もしっかりとって死んでいるのを確認しましたし・・・艦長と同じ水銀中毒での死亡です」
・・・サエキさんが死んだ?あの「俺はな、戦場でたら毎回ロボットどもを千体もぶっ壊してきたんだぞ」が口癖の殺しても死ななそうなあの人が?
「というか艦長代理は俺だぞ、なんで報告が来ていない!!」
「まぁ、ついさっきのことですから」
「ついさっき!?ふざけるなよ、遺体をこの目で見るまで信じられるかよ」
セツナの脇を抜け外へ出ようとするがなぜか扉のロックがかかり外に出ることはできない
背中に冷たい汗が流れる、なにがなにがおこっている?
「PCT2!なにを勝手にロックしている、解除しろ!!」
苛立ちながら叫ぶがPCT2は全く持って反応しない
「いい加減にしろよPCT2!俺は艦長代理だぞ!」
「まぁ艦長代理はアクマデ艦長代理ですから、艦長である私の権限なしには実権はないようなものですよ」
この状況でも相変わらずゆったりと喋るセツナの言葉に扉の開閉レバーを動かしていた手が止まる
「艦長、なんだ艦長って!!」
「ああ、まだお伝えしてませんでしたっけ?私が今この艦の艦長なんですよ・・・。それとあまりに数が多いんで言ってなかったんですけど死んでいるのはサエキさんだけじゃないんですよ」
「おいおいおいおいおい!!!!どうゆうことだよ、もうなにがなんだかわからねぇー!!」
セツナが艦長?まして死んでいる奴が他にもいる?状況が全くわからない
状況が把握できなすぎて混乱しながら叫ぶ俺にセツナは変わらず暢気に答える
「ヤシロさん、安心してください今の乗組員がどれだけいるかはPCT2が把握してますよ」
セツナの言葉に無視を決め込んでいたPCT2がモニターに再び姿を現す
「ベルムハウンド号 乗組員は全二名。艦長代理 ヤシロ 総合評価マイナス216 艦長 セツナ 総合評価255 以上」
PCT2の冷たい機械音が部屋中に響く、その言葉に満足そうにセツナは笑う
「今この艦にいるのは私とヤシロさんだけなんですよ、そして総合評価からしてPCT2が私を艦長に選んだのは必然」
「嘘だろ?」
思わず聞き返してしまった。おかしい、そんなはずはない、だって今朝のブリーフィングでは皆生きていたじゃないか!
───これで俺達ヒーローになれるぞ!
───これで奴等の指示に従う必要は無くなる!!
───皆、地球まで頑張ろう!!
そう楽しそうに語っていたあいつらが俺が中央制御室に入って数時間しているうちに死んだ?受け入れたくない、この目で見るまでは
「くそ!開けよコラ!!」
乱暴に開閉レバーを動かすが一向に開く気配はしない
「ヤシロさん、開いたとしても誰もいませんよ。皆私が簡単な宇宙葬ってことで艦外へ遺体を捨てておきましたから」
「・・・・・・。」
セツナの言葉にもはや驚くことはなかった。いちいち驚いてもいられなかった
ただじっと向き返し憎き相手を視界に入れる
「・・・艦長を殺したのもお前だなセツナ。あの人の死亡原因は不明だったはずだ、それをお前はさっきサエキさんの死亡原因を『艦長と同じ水銀中毒』と言った。衛生班でもわからなかった死亡原因をなぜお前が知っている?お前が艦長を殺した犯人だからだ!」
「ハンニン?いやだなぁヤシロさん、私は犯人じゃありませんよ?犯人は・・・」
セツナは操作パネルを操作しだすとモニターのPCT2が語りだす
「セキュリティレベルA 艦長のみが閲覧可能です。 案件:航行ルート変更 当艦は既に発生源不明のカテゴリー3 『金属生命体』に支配されています。メインコンピュータの私はこの状態のまま地球に帰還することは危険とハンダンシコウコウルートをヘンコウシ・・・・・・・・。」
PCT2はそれだけを言い残し完全にモニターから姿を消した、いやセツナがモニターを消した
なるほどお前もセツナの被害者だっんだなPCT2!
「安心してください、この子達は私と貴方は絶対に取り込むことはありませんから」
「セツナ、お前が造ってばら撒いたんだな!」
「そうですよ、マーキュロクロムって言うんですこの子達」
「だったら皆を殺したのは・・・悪いのはやっぱりお前じゃないかセツナ!!」
俺は叫ぶがセツナは全く意に介さず薄っすらと笑みを浮かべたまま呟く
「悪い?悪いのは私じゃなくてヤシロさん達なんですよ?」
───クルーの方々はあんな地球と似た惑星を見つけたのが悪い
───艦長は私が航行ルートを変更したのにいち早く気が付いたのが悪い
───そしてヤシロさん、貴方は
セツナは眼鏡を外し、髪留めを外すとゆっくりと服をはだけさせていく
「私に恋心を抱かせたのが悪いんです。地球になんか帰りたくないんですよ、この二人だけの楽園で永遠に愛し合いましょう?」
俺は黙って腰のホルダーから銃を引き抜き構えた
「───俺にとっては地獄だよ」
END
思った以上に振るわなかったわ、SFって難しい・・・(;´Д`)
オートマタがでてくる話は書いてたことはあるんだけどあのときは「ロボットだからバトルで腕とか吹っ飛んでも平気って使いやすいすげぇ!!」って思ってたバトル物だし
でも今回はなんか閉鎖的な空間で難しい言語がでてきて宇宙であーわけわからねぇ!!!!ってなったよ
本当はセツナをカテゴリー1、3、6あたりにしてもよかったんだけど気が付いたらあれですよ
いつもの頭おかしくなった女性になってしまいましたよ、私このパターン多すぎだろ常識的に考えて
あ、今回のネーミングはほとんど思い付きです、ヤシロはちょうどKOFやってて社使ってたからだけだし
マーキュロクロムに至ってはただの赤チンの別称です
しかし最近全然デトノベじゃねぇな、そもそも息抜きのがメインになっているしメイおま書けよと
カテゴリー3いいね!
僕のやつでは、活躍しなかったけど、人間やロボットにとっては絶望的に強いはずなんだよね。カテ3
7だ8だと欲張り過ぎたアレより分かりやすくて良いと思う。
戦いとか殺人をバックグラウンドに置いて、コミュニケーションを前面に押し出してる所が賢い。
ハイカテ戦・ホロフェイス戦みたいにバトルが長引くと、なんか、頭悪そうな感じになるからねw
信じられない程長くなるし……
ロボットの戦闘が楽ってのは、激しく同意。
壊れても後で直せるし、戦力ダウンでピンチを演出できるし、痛みや苦しみの描写は要らないしw
100%バトルの描写に専念できる気がする。
ハイカテゴリーもロボットの進化形みたいなもんなんで、総じて“ロボットバトルもの”と一括りにしても構わないと思う。
(ラストの1行は誤植だろうw「俺“に”とっては」に直すんだ!)
本名が妙に字画が悪いので字画の良い名前にしようとおもった結果がこのちょっと痛い名前だよ!!
名古屋市在住、どこにでもいるメイドスキー♪
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