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日記と小説の合わせ技、ツンデレはあまり関係ない。 あと当ブログの作品の無断使用はお止めください
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(´・ω・`)ノやっ


久しぶりに小説を買ってきた


・・・・すいません、小説というかラノベです

見栄を張ってすみませんでした_(._.)_

ちなみに買ったのはこれ

にゃはは






















らぶなどーる?とか言うの、うん前評判とかなにも考えずに買った

・・・・すいません、なんていうかこの絵師さんが私の好きな麻雀物語の絵書いている人っぽいからです

っぽいってのはあくまで麻雀物語の絵師さんは非公開だから、でもpixivの絵を見るとあの口の開き方と目が凄く似ている!!

というかそれ抜きでも好きな絵なので買っちゃった、てへ☆

んで内容はどんな感じなんだろうね・・・・今から読んであとで感想書きます

今回買った本はこれだけ、メイド物はいまいちよさそうのがなかったというか全部見たことあるのばっかり

ラノベももう一冊くらいかってもいいかなとか思ったんだけどなんか流行りのソードなんちゃらオンラインは流行っているから買わず、Amazonで酷評されてて気になった放火後バトルなんちゃらはちょっとそこにお金使っていいの?
とか思ったので買わなかった

・・・きっとその選択は正しいはず
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前回までのあらすじ
国枝実によってクスリの売人へと落ちた神楽坂恭治はある日ゴスロリ服を着た女性とサングラスにスーツを着た強面の男に追いつめられ反撃を繰り出すも一撃で気を失ってしまうのだった

 

「・・・・ぐっ、うんん」
意識が覚醒する。なんていうか酷い目覚めだ、身体中が痛み、倦怠感が酷い。
「ようやくお目覚めか?」
「え・・・・あっ」
けだるく顔をあげるとそこにはオレが気を失う前、無我夢中で殴りかかった 黒いサングラスの男がいた。
「う、うわぁぁぁぁぁ!」
思わず叫び声をあげ逃れようと体を動かすがすぐにそれは無理だという返答が全身から激痛となって返ってきた
「くぅ・・・・痛っ!」
「一応手当てをしたがまだ動かないほうがいい。それにそんなに取り乱すな別にとって食おうというわけじゃない」
サングラスの男はそう言うと懐から煙草を取りだし一本口にくわえ火をつける。
この人は一体なんなんだ?警察、ではなさそうだがかといって暴力団のようにも見えない。
辺りを少し見渡してみるがそこは木製のテーブルが並び、奥にカウンターとキッチン、店内にはコーヒーの良い香りが立ち込める・・・・どうみても喫茶店だ。
「あの、貴方は?」
「自己紹介が遅れたな、俺は天城仁。この喫茶店『リチェルカーレ』の店長だ。」
「え、店長?」
その言葉に思わずオレはなにかの冗談かと思った。いやなんていうか全然想像できない
「・・・・おかしいか?」
「い、いえ全然」
「ならいい。それで目が覚めたところ早速で悪いんだが聞きたいことがある」
警察でも暴力団でもない喫茶店の店主がオレに聞きたいことがるってなんなんだろう?そんなことを考えていると天城さんはスーツの内ポケットから一枚の写真を取り出しオレの前に差し出す。
「この写真の右の男に見覚えはあるか?」
 写真にはどこかの山をバックに肩を組む男性が二人写っていた。たぶん兄弟なんだろう、二人揃って髪を短く刈り上げお揃いの真っ赤なシャツにジーパン姿で満面の笑みを浮かべている。
「いえ見覚えはありません」
だがこんな男性の知り合いはいなかった。一体彼がオレとなにか関係あるのだろうか?
「そうか・・・・。こいつはな、少し前までちょうどお前が居たところでクスリの売人をやらされていたというのを聞いて探していたんだ」
「クスリの売人!?」
彼のことは全く知らないが、オレの前にクスリの売人のことなら確か国枝のやつが言っていたことがある
「天城さん、あの・・・・もしかしたら言い難いんですけどその人はもうこの世にはいないかもしれません」
「それはどうゆうことだ?」
「オレに売人をやらせている奴が言っていたのを聞いたことがあるんです『前に売人やらせていたやつは警察にチクろうとしたから海に沈めた』って」
「・・・・そうか」
天城さんは静かにただ力強い口調でそう呟くと煙草を口から離し灰皿に押し付ける
「それが本当なら仇をとってやらんとな」
「仇?」
「こいつは俺のダチの弟だ、少し前から家に全く帰っていなくてな。最近遺体があがって警察の捜査じゃ自殺なんて言っていたがやはり裏があったか」
吐き捨てるように言う天城さんの表情はサングラスを掛けていてもわかるくらいに憂いを含んでいる。胸ポケットから煙草を取り出すと火をつけ深く息を吸う。
「・・・・それでおまえはなんでクスリの売人なんてやっているんだ?自分からこうゆうことに手を染める質には見えねぇが」
「オレは・・・・」
真っ先に脳裏に浮かんだのは伊波早苗さん、そして国枝実の姿だった。少し前までは三人『リフレイン』で楽しくやれていた
のにどこをどう間違ってこんなことになってしまったのかそれを思い出すだけで胸が締め付けられる気分だった。
「・・・・まぁ言いたくなければいいがな。少なくともお前は罪の意識に苛まれているというのはわかった」
天城さんはオレの表情から察したのかそれ以上何も聞かなかった。殆ど吸っていない煙草を灰皿に押し付けると目の前のコーヒーを一気に飲み干し立ち上がる。
「とりあえず首謀者のところへ行くぞ、案内してくれ」
「は、はぁ・・・・えっ?」
あまりに唐突の展開に思わず生返事をしてしまったがあいつの、国枝のところへ行くってこの人大丈夫・・・・なのか?

 

喫茶店『リチェルカーレ』を出たオレと天城さん、そしてもう一人、オレに最初に話しかけてきたゴスロリの女性を含めた三人で国枝実のいるバー『リフレイン』に向かっていた
「・・・・ねぇ仁、あんまり本気出しちゃダメ」
「わかっている。というかだな、なんでついてきた」
「・・・・仁、一人だと心配」
オレの目の前を天城さんとゴスロリの女性がそんな会話をしている。ゴスロリの女性が天城さんの腕を抱き締めるようにして歩いているその様子はただのカップルにしか見えない。
オレはそんな二人の後ろを黙ってついていっているが正直不安で一杯だ。天城さんは確かに強いんだろうけど相手はあの国枝だオレの知らない私兵っぽいのも囲っているかもしれない。オレが役に立てるわけもないしましてや女連れの状態の天城さん一人でなんとかなるものなんだろうか。
「俺一人だと心配って言われてもな、こっちは一人の方が気が楽なんだが」
「・・・・だめ。クスリをやらされている女性はきっと酷い目にあってるから」
ゴスロリの女性の言葉に胸の奥がチクリと痛む
酷い目にあっている、か・・・・。その中には伊波早苗さんもいる、今も酷い目にあっている。オレは何度となくあそこで彼女の救いを求める声を聞いている、聞こえてきていた、でも・・・・なにもできなかった。
そんな後悔の念に苛まれつつしかし着実に足は進んでいきついには国枝実、そして伊波早苗さんのいるバー『リフレイン』の前まで来ていた。
「しかし灯台下暗しとはよく言ったものだな。よく見れば社会不適合者のようなのが湧いてきやがる」
「・・・・仁、くれぐれもあんまりやりすぎちゃだめ」
「わかっている」
店の前に着くなり天城さんはそう言うとゴスロリの女性の掴んでいた腕を強引に振り払う。一瞬なんでそんなことをしたかわからなかったが天城さんがそうした意味、“そいつら”はすぐにオレ達の前に現れた。
「おいおい、恭ちゃん。持ち場を離れてなにしてるんだぁ?」
「なんか変なグラサンのおっさんとゴスロリのカワイコちゃん連れてきてさぁ、なにしてんの?」
オレ達の周りを五人の不良が囲みニヤニヤと不敵な笑みを浮かべながら近づいてくる。正直こうなることはなんとなくわかっていたんだ、国枝実をどうするとか伊波さんを助けるとかそんなことに辿り着くよりも前の障害。
「あ、天城さん」
「恭ちゃん?そう呼ばれているのか・・・・。そういやちゃんとした名前を聞いてなかったな。お前なんて言うんだ名前?」
狼狽えるオレにあくまで冷静によくわからないことを聞いてきた。いや今はそんなオレの名前なんてどうだっていいはずだ!
「いや、あの・・・・」
「まさか記憶喪失、なんてことはないだろ?」
いやわかっている!名前、それくらい言える!でも今このタイミングで言うようなことなのか?
「フヒヒ、おいおい教えてやれよ。どうせ騙して連れてきたんだろ」
不良の一人、上下灰色のスウェットの男がそう言いながらフラフラとした足取りで天城さんに近づいていく。
「グラサンのおっさんは金を毟り取られ、そこのゴスロリの子はクスリ漬けセックスだ。お前達は恭ちゃんに騙されてここに連れてこられたんだよ!なぁ?」
「ち、違う!」
「そんなことはどうでもいい!!」
オレの否定も不良の言葉も意を返さず天城さんをオレの方を振り返る
「それでお前の名前はなんて言うんだ?」
天城さんの眼光、そして言葉がオレを貫く。その威圧はサングラス越しだというのに身の毛がよだつほどで思わずオレは自分の名前を答えていた。
「か、神楽坂恭治です」
「そうか。なら恭治、今から俺が言うことを心に刻んでおけ」
そう言うと天城さんはゆっくりとサングラスを外し胸ポケットへとしまい込む。天城さんの鋭い眼光が俺の視界に入る、それはどこまでも真っ直ぐでオレはまともに天城さんの目を見ることはできなかった
「男だったら硬派に生きろ、今のお前の目は心が折れているぜ」
硬派に生きる?心が折れている?だがその言葉の意味を聞くよりも前に天城さんの背後に迫る不良の姿に思わず俺は叫んでいた
「天城さん、後ろ!!」
「さっきからなにくっちゃべって・・・・・・・・ごはッ!!!」
オレの言葉に天城さんがゆっくりと後ろを向くと突然殴りかかろうとしていた不良が吹き飛んだ。それはもう数十メートルくらい飛んだだろうか、壁に叩きつけられた不良は一瞬何が起きたのかわからなかったように目を見開いたまま気絶してしまってた。
「な、なにが起きたんだ!?」
「・・・・あれは寸勁。別名ワンインチパンチ、痛い」
天城さんに腕を解かれたのでいつの間にかオレの腕に胸を押し付けるように抱きついているゴスロリの少女が呟く。
そんなことよりも現実的に人があんなにも吹き飛ぶなんてことがあるということが驚きだった。
「どうした?弱いものにしか殴れないのは硬派とはいえないぜ、かかってこいよ」
「て、てめぇー!!!」
「ブッコロ!!」
天城さんの挑発に残りの不良達が一斉に襲いかかる。あの吹き飛んだ不良を見て天城さんと喧嘩しようなんてよく思う、それとも複数で殴りかかれば勝てると思ったのだろうか?
「がはっ!」
「ぐほっ!!」
「ぐぺぺぇ!」
だが天城さんの強さは複数で襲えば勝てる、そんなレベルではなかったんだ。まるで非現実、まるでゲームのように不良達は次々と宙に舞い激しく地面へと叩きつけられる。
そんな光景が現実にオレの目の前で繰り広げられていた。
「つ、強い!」
それしか言葉に出なかった。そしてその強さはオレがあの時欲しかったものだった。あれくらいの強ささえあれば国枝を止めることができただろうし伊波さんを助けることができた。
「なにをぼけっとしている?行くぞ恭治」
息ひとつ乱れていない天城さんはそう言い煙草をくわえるとバー『リフレイン』に入っていく。
その後ろ姿に、その強さにオレは一気に憧れてしまった。
目の前で起きた非現実なことも強さがあれば起こせるのだと


バー『リフレイン』の店内はいつになく暗く、空気が淀んでいるように見えた。最近ではこの煙草やクスリの臭いで通常の営業にも支障が出ているらしいがそこは国枝の奴が店長に金を支払うことで好き放題しているみたいだ。
「あーなんだてめぇ?」
店内で流れている激しくデスメタルのビートに体を揺らしながらスカジャンを着た茶髪の不良が天城さんに近づく。一般人なら嫌悪し近づきたくもなくなる男だが、天城さんは動じずスーツの内ポケットから写真を取り出すとその男の目の前に突きつけた。
「この男を殺したやつはお前か?」
「はへぇ?なにこいつら同じ服着てるの?あれかホモか!おホモ勃ちってやつか?」
クスリのせいなのかよくわからないことを言う男。天城さんはそいつの首根っこを掴むと写真を思いっきり鼻っ柱に突きつける。
「質問に答えろ。お前が殺したのか?」
「殺すとか~殺したなんてしてねぇ~よ。俺はただ海で浮かんでくるそいつを棒で突っついただけぇ、さっさと沈んどけばいいのを『助けて~助けて~』って言って面白いんだぜ、んだからあのときは生きてたから俺は殺してなんかないよぉ~~~~」
「そうか」
天城さんはそれだけ言うと掴んでいた手を離す。
「っ~首痛っ、あんたバカ力だねぇ」
男は首を押さえて呑気にそんなことを言う。だから男には見えていなかった、天城さんがゆっくりと腰を下ろし構えを構えを取っていたことに。
「・・・・やりすぎちゃダメって言ったのに」
オレの隣でゴスロリの女性がそう言ったとほぼ同時だっただろうか、轟音と共にその男は奥の客席の一つ、テーブルに乗っていた物全てを巻き込み更には奥にあるデスメタルを流していたジュークボックスまで破壊するほど吹き飛んでいた。
「ああーん?なんだぁ!?」
吹き飛ばされた男の様子を見て静観していた不良どもが一斉に立ち上がる。およそ20人ほどいるだろうかどいつもこいつも足取りがふらついていてまるでゾンビだ、だが数人はナイフを持っている者もいる・・・・正直普通なら死を覚悟してもおかしくない状況だろう。しかし天城さんも一歩も引く様子も内容で向かってくる相手に睨みをきかせている。
「おいおい、待てよ喧嘩なら俺を呼べって」
一触即発その状況に割り込むように一人の男が天城さんの前に立ちはだかたった。そいつはオレがおそらく知っている限りでは国枝実の私兵としては一番強い、スキンヘッドの大柄の男だった。そう、オレに“人間サンドバック”なんて非情なことをしたあいつがニヤニヤと不敵な笑みを浮かべて立ちはだかったのだ。
「あんた強そうだな、その構え中国拳法か?」
「だとしたらなんだ」
「へへっ、一回異種格闘技戦ってのをやってみたかったんだよ俺。相手してくれよ」
軽快なステップとともにワンツーのシャドーボクシングをスキンヘッドの男は始めるが天城さんは全く動じる様子もなく構えたままだ。
「そっちが動かないならこっちから行かせてもらうぜ!」
スキンヘッドの男は一気にステップで近づくと左ジャブを繰り出す・・・・がそれを天城さんは顔を逸らすだけで簡単に避ける。
「甘いぜ!コッチが本命・・・・だっ!!」
だがすぐに前に出た左ジャブを引くと同時に右のストレートが天城さんの顔面を狙う。タイミング、スピードともに完璧の気がして思わず「危ない!」とオレが叫ぶが、それよりも前に乾いた音が店中に響きわたった。
「ぐっ、ぐぐぐっ!!」
「なにが本命なんだ?」
完全に当たったと思った右ストレートを天城さんはいとも簡単に受け止めていた。それだけではない天城さんが受け止めた拳に力をかけて握りつぶそうとしているのかスキンヘッドの男の表情は苦悶の表情で痛みを必死に耐えている。
「ぐぬがぁ、て、てめぇ!!!」
痛みに耐えかねスキンヘッドの男が左腕を大きく振りかざす、天城さんがこのタイミングを待っていたのかはわからないが動いたのは次の瞬間───
「う、うおっ!?」
左腕で殴ろうとするスキンヘッドの男の体勢を天城さんが掴んでいた右腕を後ろへ引っ張ることで崩す。
「・・・・それ以上、いけない」
ゴスロリの女性が小さく呟く。しかし止める間もなく天城さんは身体を沈めるとそこから一気にスキンヘッドの男の右脇、腕の付け根というべき部分を右肘で撃ちぬく。
「う、うががぁぁぁぁぁぁl!!」
スキンヘッドの男の叫び声とともにゴキリッと鈍い音が少し離れているオレの耳にも聞こえた。天城さんが腕を離すとスキンヘッドの男の腕はダラリと垂れ下がりそのままうずくまるように倒れこむ。
「い、いてぇぇぇぇl!!!」
「騒ぐな、ただの脱臼だ」
それだけ言うと天城さんはスキンヘッドの男の横を抜け、ナイフを持ち立ち上がっていた不良どもに近づいていく。圧倒的だった、あのまるで歯が立たなかったあのスキンヘッドの男をたった一撃で倒してしまった。
「ま、まじかよ」
「やべぇ・・・・」
「俺の邪魔をしたいなら面倒だ全員でかかってこい。」
天城さんが煙草をくわえ不良たちに睨みを利かせるが最初こそ威勢がよかった不良たちも目の前の光景を見て完全に戦意を亡くしていた。
「・・・・やれやれなんだよ騒がしい」
その沈黙を破るように店内一番奥の扉が開く。気の抜けたような声とともに現れたのは国枝実だった。上半身裸に白いワイシャツを羽織り気だるそうに髪を掻き上げる。
「全くコッチはお楽しみ中だったってのによぉ、騒がしすぎだぜ」
国枝はテーブルの一つに腰掛けると地面で痛みに唸っているスキンヘッドの男を、そして次に天城さんを、そして最後にオレを一瞥すると全てを察したようにニヤリと笑みを浮かべた。
「なるほどなるほど、ついに恭ちゃんは俺に反旗を翻したわけか」
国枝の言葉にオレは正直どう答えていいかよくわからなかった。実際オレはなにもしていない、天城さんがいなければきっと今までどおりクスリの売人をやらされ続けていたはずだ。
「お前がリーダーか?」
天城さんが国枝の前に立つと低い声で言い放つ。それに対して国枝は酒のボトルをラッパ飲みするとどっしりとソファにもたれかかる。
「リーダー?まぁそう言われればそうかな。あんたあれだろ硬派のカリスマ天城仁だろ、高校生で全国の番長全てを配下に置いたっていう」
国枝が天城さんのことを知っていたことにも驚きだが天城さんがそんな硬派のカリスマだとか言われている人だったなんて知らなかった。だからかなのかなにも反則的な強さをもっているのは・・・・。
「その硬派のカリスマさんがなんで恭ちゃんなんかに誘われてこんなところにいる?あーん、いくら積んだんだ?」
不敵な笑みを浮かべるとソファの脇から大きな黒色のボストンバッグを取り出すとテーブルの上にドンっと置く。
「なぁ硬派のカリスマさんよ、いくらで俺の私兵になってくれる?金なら出すぜ」
「えっ・・・・。」
一瞬、国枝が言うことが理解できなかった。まさかこの状況で国枝が天城さんを買収しようとするなんて思いもよらなかった。
「あんたの力を買って、そうだな・・・・」
国枝がボストンバックから札束を取り出すとテーブルの上に投げる。一束が百万だとしていくらだろうか、かなりの量だ。
「とりあえず契約金1000万でどうだ?」
「ダメだな」
天城さんは即答で答える。これはなんだもしかしたら天城さんの納得行く金額になったら天城さんは国枝の味方になってしまうのか?そんなあやふやな状況をオレも隣のゴスロリの女性も周りの不良どもも息をのんで見守るしかなかった。
「まぁそりゃそうだよな、それじゃ倍の2000万ならどうだい?」
国枝は予想通りといった様子でボストンバッグから更に札束を取り出し重ねる。
「まるで話にならないな」
それでも天城さんは動かなかった。正直オレが同じ立場だったらその目の前の金に手が伸びてしまっていたかもしれない。
「んー流石は硬派のカリスマというだけあるな、それじゃあ倍の・・・・」
「その必要はない」
ボストンバッグに手を伸ばし札束を取り出そうとする国枝を天城さんは制すると今迄積み上がっていた札束の山に一枚の写真を放り投げる。
「あ?なんだ・・・・写真?」
「お前等が殺したこいつを生き返らせてくれ、そうしたら仲間にでも配下にでもなってやる」
「クククッ、そうゆうことかよ。死んだ人間を生き返らせることなんてできないそれが答えってことか」
「あいにくと俺は恭治に雇われたわけではないんでな。俺はただその写真のやつの仇を取りに来た、それだけだ」
「はは、なるほどね。だがそれはどうかな?」
天城さんの睨みにも国枝は動じることはなかった。ゆっくりとテーブルの酒の入ったグラスを手に取る。
「残念だがこの件に関しては俺はなんにも関与してない、指示をしたわけでも実行犯でもない。そこにいるそいつらが勝手にやったことだから仇を取りたならそいつらを好きなだけ殴り飛ばすといい」
国枝は楽しそうにグラスを傾けながら周りにいる不良達を指さす。指差された不良達は怯えるように後ずさるが、天城さんは目もくれることなくポケットからなにかを取り出すとテーブルへと放り投げる。
それは間違いない、オレが売りさばいていたクスリだ。
「このクスリを売らせていたのはお前だ。お前はこいつや恭治にクスリの売人を強要していた。それは言い逃れはできないぜ」
「あーそれね、まぁ確かに言い逃れはできないな。しっかしまぁあんたみたいなのに目をつけられたら商売あがったりだよ。けどそれで俺を警察につきだそうったって無駄だぜ、俺の親父は警察庁長官だからいくらでも揉み消せる」
天城さんの追求にも国枝はどこまでも平然とし挑発すらして見せる。
「まして俺になにかあればどうなるかはわかるよな?一応これでも役者の卵なんだ、顔に傷なんかつけてみろマスコミが黙っていないし君の周りの人間になんらかの被害がないとも限らない」
「そうか・・・・だがな、俺はお前を法で裁くつもりは初めからねぇ!!!」
その叫びと共に天城さんは一歩踏み込むと拳を振り抜く。その拳はなんの躊躇もなく国枝の顔面を捉える。
「ふふふ、あははっ、どうした硬派のカリスマさんよ」
当たった、そう思った天城さんの拳は国枝の目の前で止まっていた。国枝はその止まった拳を前に一瞬表情を強ばらせたがすぐに笑い声をあげる。
「やっぱり硬派のカリスマとはいえ報復が怖いか」
「それは違うな、『天網恢恢疎にして漏らさず』。今、俺がここで裁きを下さずともお前が近いうちに死ぬのが見えた。」
天城さんはそう言うと拳を戻すと煙草を静かに吹かす。
「て、てんもう?」
「・・・・天網恢恢疎にして漏らさず。天の神様が張っている網は荒いけど悪人は必ず捕まる、っていう老子の言葉」
ゴスロリの女性が説明するその言葉、その言葉の意味を聞いて国枝が更に笑い声を高める。
「はっ、硬派のカリスマがそんなオカルトみたいなこと言い出すとはね。俺が死ぬだって?逆だよ、俺みたいなのがお前等ゴミクズの養分を吸って長生きするんだよ」
「そうか、それはよかったな」
ケラケラと国枝に対し、天城さんは先程までと打って変わって怒りというよりも哀れむような目で国枝を見ていた。
「せいぜい残り少ない人生を楽しむんだな、ただし俺の目の光っている所以外でな」
「なんだよそれ。まぁいい、見逃してくれるっていうのなら俺は素直に撤収させてもらうぜ」
国枝は呆れたような声とともに嘆息するとボストンバッグに札束を詰め直し立ち上がる。
「ああ、そうだ。お礼といっちゃなんだが恭ちゃんとそこの奥の部屋にいる女どもは解放してやるよ。俺にはもう必要のないものだからな」
オレはその言葉にもう二度と国枝とは友達に戻れることはないのだと確信した。国枝にとってはオレも伊波さんもただの道具にすぎないんだと・・・・それはずっと前からわかっていたことなんだがオレは心のどこかでまだ「国枝が改心してもとに戻ってくれる」なんて希望を抱いていたんだとおもう。
「国枝・・・・さよならだ」
オレはちょうど脇を抜けようとする国枝に別れの言葉を
かける。その言葉に国枝は一旦足を止めたが結局なにも言わずにバー「リフレイン」をでていった。
これでよかったのか、それはオレにはわからない。なんといってもオレには天城さんのような力はない。だがもしオレが天城さんくらいに強かったら国枝を殴ってでもなんとか改心させたかった。
「さて、後は残りの奴等だが」
天城さんが不良達を一瞥すると一歩踏み出す。不良達は完全に震えがっていて次に不良達ががどんな目に遭うかはもはやわかりきったことだった。
「・・・・仁、ちょっと待って」
するとオレの腕にしがみついていたゴスロリの女性が天城さんの元へと歩いていく。
「なんだ?」
「・・・・血生臭いことするまえに奥の部屋にいる女の子、助けてあげたいんだけど」
「そうか、わかった。恭治も手伝ってやれ」
「は、はい!」
言われるがままに天城さんの背後を通りゴスロリの女性の後を追う。奥の部屋には一度も入ったことはなかったがいつも女性が連れ込まれていることからどうなっているかそれはすぐにわかった。
「・・・・これは、酷い」
ゴスロリの女性は部屋の扉をそっと開け中を覗き込むと小さくそう呟く。少し離れていたところにいたオレのところにまで凄くベタついた嫌な臭いが届いてくる。
「・・・・とりあえず、男の人は入っちゃダメ」
ゴスロリの女性はそう言うと一旦扉を閉めこちらへと振り向く。
「・・・・ジャンバー貸してもらえる?いくらなんでも裸のまま外へは出せない」
「わかりました」
オレは着ていたジャンバーを脱ぐとゴスロリの女性に手渡す。
「・・・・ありがと」
それだけ言うと彼女は再び部屋の中へ入っていく。結局オレにできたことというのはそれだけで後は呆然とそこに立ち尽くすしかなかった。
しばらくして部屋の中からゴスロリの女性に連れられて数人の女性が出てきた。皆服はボロボロでその表情は暗い、なかには顔に痣ができている子もいる。それはこの部屋の中で行われた行為がどれほど酷いものだったのかを表沙汰にしていた。
「あっ・・・・」
最後にゴスロリの女性に支えられ出てきた彼女、伊波早苗さんを見て思わずハッとした。オレのジャンバーを肩から羽織り歩く彼女の姿は以前よりもかなり窶れきって顔自体が変わってしまったようにも見える、そこに以前の明るかったオレの知っている伊波早苗さんはいなかった。
「・・・・仁、私この子を病院に連れていくから先に帰るね」
「ああ、気を付けてな」
ゴスロリの女性は天城さんとそう言葉を交わすと伊波さんの肩を抱いてそのまま歩いていく。
「・・・・・・・・。」
オレとすれ違うその一瞬、伊波さんの虚ろな瞳がオレを捉える。なにか言わなくてはそう思ったがその虚ろな瞳を前にすると何を言っていいかわからず結局言葉は口から出ることはなかった。
きっとオレのことを恨んでいるんだろう、そんなオレが伊波さんにかけていい言葉なんてない。オレは伊波さんがあの部屋の中から助けを求める声を何度も何度も何度も聞いていた、聞こえていた。
伊波さんの背中が遠ざかっていく、そうだ結局今回もあの時も
オレにできたのはただ無力に、ただ強く自らの拳を握りしめることだけだった


羽のもがれた蝶の行方


ただ1つ救いなのは.そこここに花が飾られていることだった。それが唯一ここが“病室”であることを示す唯一の証
みたいなものでそれがなければここは病室などではなくただの“工場”にしか見えない。
窓のない真っ白な空間、それこそ小さなホールくらいの大きさの部屋に等間隔で並ぶベッドの列、いくつあるだろうか?正直奥の壁が見えないので幾つベッドがあるのかはわからないがただその数は尋常じゃないほど多いとは思った。
ベッドには患者を覆うように無数の機械が取り付けられ低く鈍い音を鳴らし足元には踏み場のないほど無数の配線が敷き詰められている
「どうかなぁ秋葉ちゃん、ここ“第一研究室”の感想は広いでしょー?」
「これだけ広いと天井の蛍光灯をLEDに変えたほうが電気代浮くと思います」
これから上司になるであろう女性に私は適当な答えを返す。正直私、乃木坂秋葉はこの脳医学研究所に来ることは本意ではなかった。
「あー本当だね!流石龍ヶ崎教授の紹介で来た人は目のつけ所が違うね!目の付け所がシャープペンシルだね♪うふふ、これで電気代が浮いて週一だった飲み会が週二になるかもぉ」
上司に・・・・なるであろう女性、まるで手入れされていないだろうボサボサの長髪にノーメイク、いつから洗濯していないのかわからない小汚い白衣に身を包む柳生奏は私の嫌味にも、いや気づいていないのかもしれないけど楽しそうに答える
この実験しか興味ありません!な彼女ではあるがそれでも私の尊敬する龍ケ崎教授の一番弟子とでも言われる優秀な人で
なんでも学会でも沢山の研究報告を披露しているらしい、実際この被験者に取り付けられている珍妙な機械を作ったのも彼女だとか、にわかには信じがたいけど
正直言えば龍ヶ崎教授がどうしてもって言わなければ私がこの脳医学研究所に来ることはなかった
元はといえば大学も卒業間近だっていうのに研究にばっかり明け暮れていてまともに就職活動していなかった私を心配してくれて龍ケ崎教授はここを紹介してくれたんだろうけどこればっかりは余計なお世話と思う
「乃木坂さん、今日はまぁ初日だからお仕事も頼まないし緊張しないで気楽な感じで、ね?」
私の不機嫌さが顔にでているためか素なのか心配するように柳生さんが顔を覗きこんでくる
「いえ、すいませんあまりにすごい機械だなぁって思って。私の仕事ってこれを管理と聞いているのでちょっと不安になってしまって」
私は申し訳なさそうな振りをしつつ頭を下げる。とはいえ折角の龍ケ崎教授の推薦で来たのだから教授の顔に泥を塗るようなことはできない、都合のいい事なのか二週間は研修期間という扱いで研修終了後に正式採用してもらうかは私が決めていいとのことなので研修だけはまじめにやって最後に上手いこと言って断ればいい
「それでこの機械はどういった機械なんですか?」
「んーこれはねぇ、一言で言えば『起きたまま夢を見る』機械だよ」
「『起きたまま夢を見る』?」
「まぁ実際見てもらったほうがいいかな、こっちに来て」
そう言うなり柳生さんは軽い足取りでベッドとベッドの間をどんどん奥へと進んでいく。初日ということもあってスーツにパンプスで来たが次からはスニーカーで来たほうが良さそうだ、じゃないと配線に足が取られて転けるのは時間の問題だろう
「えっとぉ、Eの128、このベッドだね」
「このベッドになにがあるんですか?」
足に絡まる配線をどけながら私は尋ねる。ベッドに横たわっているのは細身ながらも結構な筋肉質の身体をした男性だ
「秋葉っちは滝崎太平って知ってる?」
「あのその前に秋葉っちっての、なんですか」
「え、その方が親しみやすいでしょ?」
あっけらかんととそんなことを言う柳生さんにわざわざ文句をいう気も失せた。もういい、それで少しでもこの仕事が円滑に進むのなら多少のことには目をつぶろう
「滝崎太平と言えばオリンピック選手ですよね、確か幼い頃からの水泳選手で今度のベルリンオリンピックの選考会にもでるとかいう」
スポーツには興味ないが確かそんなことをニュース番組でやっていた気がする。でもここでこんな話をするってことは
このベッドにいるのが滝崎さんってことなんだろうか?
「滝崎太平、2034年3月12日生まれの34歳。今度のベルリンオリンピックに出れれば四度目の出場になるんだけどぉ」
淡々と言葉を吐きながら柳生さんはベッド脇にある機械を操作している
「まぁ彼の活躍は今年は、いえこれから先も見ることはできないでしょうね」
「それってどうゆう意味ですか?」
ベッドに死んだように横たわっているのはその滝崎太平で間違いないだろう。けどなんで彼がこんな胡散臭い場所にいるのかは全くわからない
「どうゆう意味って、まぁそりゃ簡単な話よ秋葉ちゃん。彼は心が折れちゃったからここに来て起きながら夢を見ているの」
「すいません、何を言っているかさっぱりです」
思わず心の内が声に出ていた。心が折れた?起きながら夢を見る?やっぱり日本語って難しいな、さっぱり理解できない「んー面倒くさいけどやっぱりここがキモだし説明しなくちゃね」
柳生さんがボサボサ頭を掻きながら何かを考えるように呟く。頭からは頭垢が飛び散っているしどこぞの探偵かと言わんばかりだがそこいらまで一つ一つケチをつけているほど私も暇じゃないので黙っておく
「この機械はね、私が作ったんだけど“起きながら夢を見ることができる”機械なの、それも自分に都合のいいね」
「自分に都合のいい?」
「そ、彼───滝崎太平はそれこそ最初のアムステルダムオリンピックでは金メダルを取って世間では神童扱いだったんだけど年々彼の力は衰えていってねぇ、今迄はそれなりにオリンピックにも出れてそれなりの成績をおさめてたんだけど今年はその彼の生きがいとも言えるオリンピックの選考で落ちたんだよねぇ~」
確かに滝崎太平と言えば私みたいなスポーツに興味のない人でもどんな人と聞かれれば「オリンピック選手」だというほどのイメージが強いそんな人物だ、そんな彼がオリンピックの選考からもれていた……普段の私ならどうでもいいで済む話なんだけど流石に本人がこんな状況になっていては話を聞かざるをえない
「それでそれが彼がここいる理由とどう繋がっているんですか?」
「簡単な話だよ♪彼は自分の身体の衰えに彼は絶望してしまった、引退して解説者なり指導者なりに進む道もあっただろうけど彼はそれを拒んだ」
柳生さんは何が楽しいかはわからないがベッド脇から小さなモニターを取り出すと私の前に差し出す
「だから夢の中で永遠とオリンピック選手をやってまーす♪」
モニターに映しだされた映像にはどこかのプールだろうかそこで他の選手に圧倒的な差をつけ気持ちよさそうに泳いでいる滝崎太平さんの姿があった
「まさかこれが夢の中の映像だとか言うんじゃないんですよね」
「それがまさかまさか夢の中の映像なんですね、にゃはは」
屈託のない笑顔で柳生さんは答える。なんだろうそんなことがあってもいいのか、考えるだけで物凄く頭が痛くなってきた
この映像が夢の中の映像?まずそこから色々言いたいんだけどこの掴みどころのない柳生奏さんが言うことだ、本当のことなんだろう、じゃなきゃ本物のオリンピック選手がこんなところにいる理由がわからない
「まぁここに来て初日の秋葉っちには理解できない世界かもしれないけど私達はこうやって現実に絶望した人に『理想的な夢の世界』を用意してあげているのよぉ。これで再び現実に生きる希望が湧けばいいなぁーなんて思うんだけどどうも私の機械が完璧すぎてぇほとんどの人が戻ってこないけどね!」
ケラケラと柳生さんは笑うが全く笑うことはできない話だ
「あ、そうそう実は滝崎の隣にはもっと凄かった人がいるんだよぉ」
凄かった人、もう既に柳生さんにとっては過去の人扱いなんだろう。
その隣のもっと凄かった人、それを見て思わず息が止まった。
ベッドの上にはクマのぬいぐるみが沢山並び小奇麗な衣装に身を包んだ少女が寝かされている。顔の部分はバイザーに覆われていてわからないがそれが誰なのかすぐわかった、天才子役と言われてクマのぬいぐるみで腹話術をしながら旅路を稼ぐドラマで一躍脚光を浴びた難波愛海ちゃんだ
「難波愛海ちゃんって去年は引っ張りだこな子役だったけど今年は姫崎葵の登場でまるでダメダメだったよね」
「まさかここに寝かされているのが難波愛海ちゃんだと?ちょっと待って下さい、おかしいですよ彼女まだ小学生ですよね」
そう彼女は確かまだ小学生になったばかり、そんな彼女がこんなところにいるべきじゃないのは誰だってわかるだろうに
「知っているよん、でも愛海ちゃん今年に入ってからお仕事ないんだよ?可哀想じゃん」
「可哀想って、そりゃ人生やってればいくらでもそんな挫折あると思います。それを───」
「歳とか関係ないわよ、この子にとって子役で活躍することが夢なんだからそれが失われた悲しみは深い」
私の言葉を遮り柳生さんは低い声で答える。さっきまでのおちゃらけた様子とは打って変わって鋭い目付きで睨みつけてくる彼女に私はそれ以上言葉が出なくなってしまった
「そ・れ・に!この機械を取り付けるためには本人だけじゃなくてご家族の了承も必要なんだよね♪私が勝手に決めているんじゃないんだよーそこら辺のことを理解してほしいな」
「わ、わかりました」
口調こそすぐに戻ったが少なくとも目付きだけは「私に逆らうな」という威圧が込められている。正直ただの頭の弱い人かと思ったらそうでもないらしい。腑に落ちないことは多々あるが今日は初日ということもあるし大人しくしておいたほうが賢明だろう
結局それからこの日はずっと私は黙って柳生さんの被験者自慢とも言うべき一人語りを永遠と聞かされるだけ終わった。それはまるで子供が採集した自慢の昆虫を見せびらかすような話の連続で正直気分が悪いだけだった
「今日は初日だから帰っていいよ、にゃはは」
なんて言葉で今日は結構早く早い開放されたが正直やっていけるかは不安一杯だ
研究所を出てすぐ来た龍ケ崎教授の「初日の仕事ご苦労様、柳生君は少し変わっているから大変だと思うが大丈夫か?」なんてメールに少しじゃないだろ、と思いつつ心配させるわけにもいかないので「大丈夫です、問題ありません」とだけメールを返しておく、問題ないかは正直自信はなかった



 翌日、昨日の教訓を生かして動きやすい地味な灰色のパーカーにジーンズという出で立ちで研究所を訪れた
ついでに言えば化粧もしていない、なぜって?そりゃ必要無さそうだったから
「おはようございま……ってなに!?」
研究所のあのベッドが並ぶ部屋に入った瞬間目に入ってきた景色に思わず驚きの声を上げてしまった
なぜならそこには大量の花束が箱に入れられ並んでいたからだ、花の種類は様々だがどれもプリザーブドフラワーのようだ
「おはよー秋葉っち、青春しているかな?」
「いえ別にしてませんけどおはようございます」
花束の箱の真ん中でなにやらリストを見ながらこちらも見ずに声を掛ける柳生さんに思わず昨日のように反抗的な態度で答えてしまう。いけない、ついこの人と話す時には自分でも反抗的になっているなと思って気をつけなければと昨日反省したのに
「あの、この花束はなんなんですか?」
「これはねープリザーブドフラワーってのでね、長時間保存できる花ね」
「えっとそうゆうことが聞きたいんじゃなくってですね」
「ああ、これはここにいる被験者の家族からのお見舞いの花束ね。初めは家族の意志に任せてたけどこんなに沢山あると手入れも面倒だからこちらで指定した花しかこないようになっているの」
「そうなんですか。それで私も手伝ったほうが宜しいですか?」
ようはここにある踏み場もない沢山の花を被験者の人の所に飾ればいいわけだ、それくらいの仕事なら簡単だ
「いやぁーこんな雑用は他の職員がやるからいいよ、私も“目安”のチェックをしているだけだし秋葉っちは第二面接室に行ってもらえるかな?いいともぉー」
「わかりました、それでは失礼します」
私はくだらない洒落をスルーしつつ頭を下げる。柳生さんは会話の最後までずっとこちらを見ることなく手に持つリストを神妙な様子でじっと見ていたがもしかして昨日の私の反抗的な態度が癪に触ったのだろうか、とはいえ今更そんなことを気にしていてもしょうがないし大人しくその第二面接室へと向かうことにする
「それで第二面接室ってのは……どこ?」
研究所自体それなりに大きい建物なので予め貰っておいたパンフレットを確認しつつ歩く
ただなんだろう引っかかるところもある、確か柳生さんはあれでも研究所のトップそんな人がなんで花束の管理なんてしているんだろう?
実際“こんな雑用”なんて言っているのに何故ああも真剣な様子で“目安”のチェックをしているんだろう?
そもそもなんの“目安”なんだろう?
気になることは沢山あるがあんまり好奇心旺盛なのも仕事に支障がでるだろうししばらくは黙っていよう
「ちょうどこのあたりだけど……ってなにあれ」
目の前の人だかりに思わず足が止まる。結構な数の人間が廊下に並んでいた。どうやらここの研究員では無さそうで老若男女、学生っぽい人もいれば主婦やサラリーマンの姿も見える
「あ、ああここが第二面接室なのか」
彼等が並んでいる先がちょうど私が手に持ったパンフレットでいうところの“第二面接室”だということに気付く
ああ、そうか彼等がここにいるのはあの柳生さんが作った“起きながら夢をみる”機械を求めてのことか
正直あの機械の存在は納得がいかないがその機会を求めてこんなにもたくさんの人がいるってことはそれなりに認められているってことなんだろうか
「ちょい、ちょーい!秋葉っち、なにこんな所で突っ立っているの?」
不意に背後からの声にかかる。振り返るまでもなくそんな風に私を呼ぶのはただ一人だろう、振り返ると慌てた様子の柳生さんが立っていた
「あ、えっとすいません」
「ダメだよ?時は金なり言うでしょ?ちゃっちゃとこの面接片付けないと午後からの仕事に響くんだから」
相変わらずのボサボサ頭を掻きながら並ぶ人たちの横を抜け第二面接室へ入る柳生さんにゆっくりとした足取りでついていく
「けど入って二日目の私なんかが面接の場にいていいんですか?」
面接室の中には誰もいない、ということは私と柳生さんの二人で面接を受け持つんだろうけど正直面接官なんてやったことないのであまり自信はないのだが
「大丈夫、私が被験者の面接するから秋葉っちは数合わせみたいな感じで椅子に座ってふんぞり返ってれば」
「は、はぁ」
数合わせとははっきり言ってくれる。まぁ直接私が面接する必要がないのは結構なことだけどふんぞり返っていてと言われても地味なパーカーにジーンズでは様にならない気がする、今更言っても遅いけど
木製の長テーブルにパイプ椅子が三つ、内二つに私と柳生さんが座り面接は始まった
「それじゃあちゃっちゃと始めちゃうよ、最初の方どうぞぉー♪」
柳生さんはタブレット端末を操作しながら声を上げる。どうやら面接者の情報は全部あの中に入っているみたいだ
「失礼します」
低い声とともに入ってきたのは顎髭の濃い小太りの男性だった。灰色のパーカーにジーンズという出で立ちがちょうど私と一緒であまり嬉しくない。柳生さんの「まま、座って座って」という言葉に彼は一礼をすると深くパイプ椅子に腰を掛ける
「ええっと中村建太君、21歳。職業はフリーター……でよかったかな?」
「はい」
「ねぇ秋葉っち。フリーターってことはようは無職ってことだよね?プータロウだよね?」
ふんぞり返ってればいいって言ったってのにいきなりそんな質問をこっちに投げかけてくる柳生さんには閉口せざるを得ない。しかも本人の前で普通聞くかなそうゆうこと、御本人が凄く嫌そうな顔でこっちを見ているんだけど
「いやまぁバイトしている人もいますし一概に無職とも言えないんじゃないですか?」
「あ、そっか。そだねーじゃ訂正する必要はなしっと、ええとそれで中村君はどういったことで私の“起きながら夢を見る”機械の被験者になりたいのかにゃ?」
マイペースに話を続ける柳生さんに中村さんは「この人大丈夫か?」といった表情で顔を強張らせたが面接ということもあって直ぐに表情を戻し語り始める
「僕には学生時代からずっと付き合ってた彼女がいたんです。でも先週急に別れを告げられて」
「ほうほう、それでなにが理由なの?」
「それがなんでも『他に好きな人ができた』とかで」
「へぇーそれは大変だね」
今にも泣き出しそうな中村さんとは対照的に全くの無関心といった様子の柳生さん。せめてもう少し真摯に聞いてあげてもいいんじゃないかとおもうが、まぁ無理な話だろう
「僕としては大学を卒業したらプロポーズしようと思っていたんです。空いた時間にバイトをいれて結婚指輪とかの資金を貯めていたのに」
「うーん、わかるわかるつらいねぇ」
「彼女のいない人生なんて生きていてもつまらないんです。だから“起きながら夢を見る”機械の被験者になりたくて」
彼女の事を思い出したんだろう、最後の方は涙声になりながら懇願する彼に少しだけ同情したくなる
「そうだ、秋葉っちはなにか聞きたいことあるぅ?」
「えっ私ですか?」
ふんぞり返ってればいいって言ってたのになんでまた私に話を振るかな?とはいえ発言権を得たのだから至極真っ当なことを聞いてみるか
「それじゃあえっと中村さんでしたか、一つ質問していいですか?」
「は、はい」
「別れた彼女のことなんて忘れて新しい彼女見つけた方がいいと思うんですけど」
私の発言はどう考えたって正論。少しは可哀想とか思ったけれど彼女にフラれたくらいで現実逃避、非現実な世界で人生を過ごすなんて馬鹿げている
「いやでも僕は、僕には彼女がいない生活なんて耐えられないんです」
「えっと別れてまだ一週間ですよね、あと一ヶ月もしたらどうでもよくなりますよ?あの機械に入ったら現実ではなにもしていないのと一緒、終わった過去よりも新しい出会いのある未来に期待した方が貴方のためだと思いますけど?」
そこまで言ってちょっと言い過ぎたかなと思った。この煮えきらないクヨクヨ男に対してではなく隣でさっきから睨みを効かせている柳生さんに対してだ
「そう、言われるとそうなんでしょうけど・・・・」
「きっと生きていればもっと可愛い彼女ができますって」
「そうなんでしょうか・・・・」
うつ向いてゴニョゴニョと呟く中村さんに私が更に言葉を続ければ考えを変えてくれるかもしれない、そう思った矢先だ
「いやいや秋葉っち。彼あれだよ?21歳でこんな老け顔だし前の彼女引きずるくらいの根暗だよ?今後彼女なんかできるとは思えないじゃない?」
面接官という上の立場なのか素なのかはわからないが柳生さんが歯に衣着せぬ言葉を言い放った
「あの、柳生さんいくらなんでも御本人の前でそうこと言うのは!」
「えー?でもだってウジウジしちゃってキモイじゃん♪よく彼女も付き合ってたと思うよ、んでんで何年付き合ってたのぉ?」
「に、二年です」
再び俯いてしまった中村さんがか細い声で答える。先ほどまでとは違って柳生さんの辛辣な言葉に憔悴しているんだろう
柳生奏さん、この人はいったい何が目的でこんな酷いことを言うんだろう?更に柳生さんは罵倒を続ける
「二年もよく頑張ったよねぇ彼女も、そして君は一生独身のままウジウジ孤独死♪いやぁ、こんな現実嫌だよねぇ?」
その言葉を聞いて思わずハッとなった。この人がやろうとしていることはとことん現実に絶望させてあの機械に放り込みたいだけ、きっと本当に中村さんのことが可哀想だとかそんなこと気にしちゃいない
私が質問したことで少しは現実に希望を持ち始めていた中村さんをこれで完全に絶望させてしまった
「君のことを唯一わかってくれる彼女も現実ではもういない、一生現れないけど私の機械なら君のことを永遠に愛してくれるんだよ?想像しただけでも素敵じゃない?」
そう言う柳生さんの表情はまさに悪魔の微笑みだった
「あのそれで、僕は被験者になれるんでしょうか?」
「んと中村君はえーここに書いてあるけど非喫煙者でお酒も飲まないんだよね?」
「え、あ・・・・あ、はぁそうですけど」
「それじゃオッケー♪住所に書類を送っておくので色々手を混んで御両親に判子貰ってちょーだい。あ、なんか昔そんな名前のお菓子あったなぁ」
あっけらかんとした様子の柳生さんに私も中村さんも呆然とするしかなかった
なんだかんだ話させておいて結局決め手は酒、煙草をやらないかそんなことでいいのか?
「はいはい~それじゃ次の人呼んできてね」
「あっはい、ありがとうございました。失礼します」
中村さんもよくわからないようだったがとりあえず立ち上がり頭を下げると部屋を出ていく。私は恐る恐るではあるがそのことを尋ねてみることにした
「あの柳生さん、あんな適当な感じで決めちゃっていいんですか?」
「いいのいいの、実は色々と計算されているんだなぁ、角度とか。そんな感じで残りもちゃっちゃとやっちゃうよー」
脳天気にそう言いながらタブレットを操作する柳生さん、どうしたらこんな性格になるのか全く理解できない
これが本当に研修でよかったと二日目にして思う、この人が上司だと気苦労が絶えないわ




「ふぅ・・・・こんなのがあと十日も続くのか」
午前中の面接を終え、私は無数に機械とベッドの並ぶ“第一研修室”へと一人戻ってきた。戻ってきたというかどうやらここで被験者の状態を見るというのが本来の私のメインの仕事だ
目の前のパソコンには被験者のナンバーと状態を示すデータが表示されている。異常があれば知らせるというそれだけの仕事
やりがいのない仕事だ、そう思うが今となってはこの方が良かった気がする
なにせ午前中の面接、結局あのあともずっと話を聞くだけ聞いて柳生さんの判断基準は喫煙歴、飲酒歴があるかないかだけで合否を決めていた。しかもそれを一人でやってくれるのなら一向に構わないんだけど時折私に話を振るから面倒だ、話は聞いていなきゃいけないし質問するにしても当たり障りない質問でないと柳生さんの機嫌をそこねる
いくら研修といえどこんな不毛な仕事、私には絶対にできないなと思う
「けどまぁ、ここにいる人達。そんなに現実が嫌なのかな」
テーブルの向こう側に並ぶ無数のベッドの光景を見るとふとそんなことを思ってしまう。なにせ面接に来る人のほとんどが本当に些細なことで現実から目を背けたがる。やれ就職に失敗しただ、受験に失敗した、リストラにあっただの
そりゃ本人としてはつらいことなんだろうけどそれだけで現実の自分を捨て去ってしまえるのか、それは私には今でも理解できない
でもそんな想いを持ってここに来た人は一体どれくらいいるんだ?
私は手元のマウスを操作し画面に表示される被験者の一覧を確認してみる。数十、いや数百はいるだろうか画面に表示されているのは“身体良好”を示すグリーンの背景に被験者の名前が表示されている
「ん、これはなんの印だろう?」
被験者の名前の横に星印がついているのとついていないものがあることに気がついた。その星印にマウスカーソルを合わせてみるとポッポアップで“1/6”と表示される
「他にもあるのかな?」
他のを星印に合わせてみると“3/6”とか“4/6”だとかの数字が並ぶ、どうやら“1/6”だけじゃないようだ
「日付、じゃないかそれじゃ六分の一ってこと?」
この数字が何を表しているのかはよくわからない。画面から目を外し、ベッドの方へと視線を移してみるとすぐにあることに気がついた
「ん、これって」
画面の星印とベッドを見比べるとそれが何を意味しているか、それがすぐにわかった。単純な話、星印がついているベッドには花が飾られているってことだ
けどそうなるとあの数字はあの花に関することなのか?とすれば花の交換時期、六日か・・・・いやあの花は確かプリザーブドフラワーだからもっと寿命があるだろう、ってことは六ヶ月を意味しているのか?
「で、それがなんだっていうのよ」
恐らくこの星印が花を示していてそれの寿命が恐らく六ヶ月に設定されている?そこまで無駄に推理しておいてそれが何を意味しているのかはさっぱりわからないから困ったものだ、花の寿命なんかをここに表示しておいて何の意味があるんだろう?
そんなことを考えていたら目の前のパソコンが突如としてけたたましい音を鳴らし始める
「え、なに私なにか変なことしたかな?」
原因を探そうとパソコンを操作するがなぜこうなっているかすらよくわかっていないし、思えばこんなことが起きるなんて説明受けてないので対処の仕方もわからない
「とりあえずアラートが鳴るってことはどこかに異常が出ているんだとは思うんだけど」
とはいえ慌てていてもしょうがない、冷静にパソコンの画面をスクロールさせて異常を探す。いくらベッドの数が多いとしても異常があるならきっとなにか変化しているはず、そう思うんだけど
「はいはいはいはい~!!全国の女子高生のみなさーん、可愛い子だとおもった?残念!柳生ちゃんです!!」
その原因を見つけるよりも先にまた面倒そうな人がテンション高く部屋に入ってきた、しかも手には煎餅の袋を持って
「柳生さん、あのなにか先程からアラームが鳴っているんですけど、これどうしたらいいんですか?」
「ごめんごめん。まさかこんなに早く鳴ると思ってなくてね♪とりま、ちょっと待ってね」
煎餅を口に咥えると面接時にも持っていたタブレットを操作しだす。おそらくここでアラームが鳴ったことはあのタブレットにも伝わっているんだろう、でなきゃこんなにも早くここに来るはずがない
「んとねー秋葉っちのパソコンでCの193番、佐竹雄二さんの所が赤く光っているはずだからそこをクリックしてみて」
「は、はい」
アラームが鳴り響く中言われるがままにマウスで画面をスクロールさせる。被験者の番号がわかれば場所を探すのは容易い、直ぐに場所はわかり緑一色の中に唯一赤く光るアイコンをクリックするとアラームはすぐに止まった
「止まったね♪それじゃ回収に参りましょうか!」
煎餅を齧りながら柳生さんが声を上げると部屋に担架を持った研究員が二人入ってくる
そもそも“回収”というまるで物の扱いのような言い振りに違和感を覚える
「秋葉っちもいい機会だからついてきて」
「わかりました」
渋々了承すると柳生さん、そして二人の研究員の後についていく
私が言うのもなんだけど柳生さんはともかくやってきた二人の研究員も特に慌てる様子もない、パソコンの表示からしてグリーンが“身体良好”ならレッドは“身体異常”でしょうにこんなに呑気にやってて大丈夫なのだろうか?
「んーとCの198番だからここか。それじゃちゃちゃっと回収しちゃって」
現場につくと柳生さんはすぐに二人の研究員に指示し自分は煎餅に齧り付いている。私は柳生さんの後ろでその様子を見ていたがその“身体異常”を起こした佐竹さんは苦しんでいる様子もなく眠ったように動いていなかった
「あの身体異常なんですよね。すぐにお医者様とか呼ばなくていいんですか?」
「ん、その必要はないよ。だってもう死んでるし」
「し、死んでる!?」
あまりにあっさりとその言葉に思わず聞き返してしまった。死んでるって人が死んでいるっていうのになんでこの人は呑気にも煎餅なんて食べているんだ
「まぁ死んでるって言っても脳死状態で身体は生きているんだけどね。この機械って脳に負担が凄くかかるからね、こうゆうこともあるのよたまに」
そう言いながら携帯電話を取り出すとどこかへ連絡を取り始める
「やっほー♪うん元気だよー。んでんで例のアレ、またそっちに送るからお願いねー♪」
たまに、そう言いながらも随分と慣れた様子じゃないか。それにこの遺体をどこへ運ぼうとしているんだ?
怪しい、怪しすぎる。しかもなんだか人が死んで嬉しそうなのが怪しい
「まぁ後は彼等に任せて秋葉っちはまたパソコンの前に戻っていいよぉ~」
「わかりました、ではそうします」
妙に笑顔な柳生さんに私は軽く頭を下げる
この時だっただろうか、ただ適当に過ごしてしまえばいい研修で柳生さんの秘密を暴いてやろうなんてこと考えたのは
それはもしかしたらこの被験者管理という単調な仕事に余計なスパイスを効かせたかったそんな軽い気持ちだったのかもしれない



それから一週間後、私は仕事終わりに第一研究室のPCの前で
龍ヶ崎教授へ向けてメールを打っていた

経過報告
しばらく私は大人しく柳生さん、もといこの研究所の人間の行動を観察した
午前中は被験者面接と言う名の非喫煙、非飲酒の人間の選別で午後は被験者の身体情報管理と退屈な仕事ばかりだったが時間は充分あったので私はこの研究所のデータをかき集めた
それによって様々なことがわかった。まずこの無数にあるベッド、その被験者の数は7366人。この数字自体には特に意味がないのだが実はこの人数がここ一週間変動していない
別に対したことでは無いように思える話だが毎日毎日被験者面接をして何人かの採用が出てこの機械を取り付けられている。実際にあの彼女にフラれたって面接に来た中村さんも今は妄想の彼女とよろしくやってる、そんな感じの人がここ一週間で8人増えているはずなのだ
けれども被験者の数は7366人のまま、つまり8人増えた分8人減ったということだ
じゃあその8人ってのはどこへ行ってしまったんだ?
なんでもペラペラ話してくれそうな柳生さんではあるがこうゆうところだけはのらりくらりとしてまともに話になら無い
逆に言えば隠さないといけないことがあるってことだと思う
考えられることはいくつかある。まず一つが佐竹さんのように身体異常を起こし脳死ということでどこかへ連れていかれたか
もう一つはこことは別の場所に同じような場所がありそこへ移動になったか、そして最後は自分の都合の良い妄想の世界から
急に目が覚めて現実と向き合う気になった・・・・か
とはいえ身体異常を起こせばけたたましくアラームが鳴るわけだしそれを私は聞いていない。当然私のいない時間になっているというのも考えられるけどそんな都合よくあるとは思えない
別の場所に移動されたというのもいささか疑問だ、あの機械はなんでも柳生さん以外の人には扱えない代物らしいし実際にあるとしてもなにも隠れてコソコソ移動する必要もないと思う。となると最後は自分でここから出ていったってことになるけどそれが一番無いような気がするな
「うーん、いまいち確証が得られないな」
龍ヶ崎教授に気になったことは報告するよう言われたので考えながら携帯電話のボタンを押していくが気になることが多すぎてなにを書いて良いかわからなくなってきている
「他に気になることと言えば『いなくなった8人は全員花が飾られていなかった』とかいや、花は関係ないか」
携帯電話のボタンを押す指を止める。花なんてあまり関係ない、どちらかというとあの柳生さんが持っているタブレット型PC・・・・あれにはこのPCには入っていない情報があるはずだ
『柳生奏のタブレット型PCに秘密があると思われます』
花の行を消してその文章を挿入するとそのまま龍ヶ崎教授へメールを送信した
この研究所に出入りできるのもあと五日、できればそれまでにあのタブレットの情報を手に入れることができればいいんだけど
「お、秋葉っちこんな時間までまだ残ってたんだ」
そんなことを考えると不意に背後から声がかかった。言うまでもない私のことを秋葉っちなんて呼ぶのは柳生さん以外いないんだから
振り返ると柳生さんは手に持ちきれないくらいのスナック菓子とコーヒーの缶を抱え立っていた
「柳生さん、すいませんすぐに帰りますので」
「んーそうなんだ」
私が振り返り頭を下げると机に荷物を置くとその中からコーヒーの缶を取りだし私の前へと置いた
「これ秋葉っちにあげるよ~♪遅くまで頑張ってるけど研修なんだから無理しないでね」
「ありがとうございます。柳生さんはまだお仕事ですか?」
「そんなところぉ~♪今日は徹夜だよぉ~やだ~」
柳生さんは憂鬱そうに言うと再び荷物を抱えフラフラと歩きだす
「それじゃねぇ、お疲れさま~」
「はい、お疲れさまです」
私は柳生さんの背中を見ながら考える。徹夜で作業だなんて一体なにをするんだろう?本当ならもう少し残っていればなにかわかるのかもしれないが流石に用もないのにここにいるというのは難しいだろう
「と、なれば・・・・」
夜遅くまで残るのがダメなら逆に朝早く行くしかない、それなら対して咎められることもないし、もしかしたらなにか情報が得られるかもしれない
「よし、それしかないな」
思い立ったら即実行が私の取り柄だと自負している。柳生さんからもらったコーヒーを一気に飲み干すと私は決意を固めた



翌日、私は始業時間よりも二時間ほど早く第一研究室の前までやってきた。あんまり早いんで守衛さんでもいるのかと思ったが案外すんなりと中に入ることができたのは幸運だった
「おはようございまぁす」
研究室の恐る恐る扉を開け部屋の中の様子をうかがう、私が指摘してからすぐに変わったLEDの電球が煌々と部屋を照らしている
「誰もいないのかな?」
辺りを見渡しながらベッドの脇を抜けていつもの被験者を管理しているパソコンの前まで進む。被験者の管理画面なのでパソコンの画面は当然つきっぱなし、スリープモードにすらなっていないが一つ気になることがあった
「あれ、花がない?」
画面には花が設置されていることを示す星印がどこにもなかったのだ
「回収でもしたのかな」
私はパソコンの奥を立ち上がり覗き見る。だが表示ミスというわけではないようだ、実際どのベッドにも花は飾られていない
一体どうゆうことなんだろう?
てっきりあの星印の数字の意味は花を変える月日くらいにしか思っていなかったが一気に回収されていると言うことはもしかして別の意味があるのか?
「ん、あそこに落ちているのってもしかして柳生さんの・・・・」
ちょうどベッドとベッドの間、太めのケーブル同士の間に刺さるように落ちているのは柳生さんのいつも使っているタブレット型PCだった
「なんであんなところに?」
近くに柳生さんがいるのだろうか?私は入念に辺りを警戒しながらタブレット型PCへと近づいていく
あのいつも髪の毛ボサボサでメイクも一切してない人だ、案外その辺で転がっているって言うのも考えられる
はやる気持ちをなんとか押さえて周辺のベッドを調べる
ベッドの下だとかケーブルに埋もれてたり職権乱用で良い男のベッドに潜り込んでいるかもしれない
「いない・・・・ってことはこれってチャンスなんじゃ」
一瞬そう思ってみたりもしたが逆にここまで上手く行き過ぎるとなにかの罠なんかじゃないかと勘ぐってしまう
とはいえ虎穴に入らずんば虎児を得ずとも言うし覚悟を決めてゆっくりとタブレット型PCを手に取る。大体いけないのはこんなところにこんなものを放置している柳生さんなんだから少し触ったくらい大丈夫だろう
「まぁとはいえロックがかかっているだろうからせめてメモリーカードのコピーは取らないと」
データをコピーする程度なら容量にもよるが大した時間はかからないはず
「え、嘘でしょ?」
そう思ってメモリーカードを取ろうとしてふと画面に手が触れてしまう、するとどうだろうロックがかかっているだろう画面はあっさりと開き、そこにやたらと重要そうな資料が目に飛び込んできた
「嘘でしょ・・・・ロックをかけてない事も信じられないがこの資料が本当なら」
思わず息を飲む。まさかこの研究所もとい柳生楓がやっていることがこんなにも恐ろしいものだとは思わなかった






「柳生さん、あの乃木坂秋葉って人凄いですね!!」
第一研究所の被験者管理用パソコンの前でぼけぇ~っとしていたらなにかと元気の良い新人の石崎栄枝が私に声をかけてきた
「ん、なにがぁ?」
「なにって次々とこの研究所の秘密を探り当ててますよ!」
ちょっと正直徹夜で眠たいから話しかけてほしくなかったんだけど栄枝っちは妙にハイテンションで続ける
「なんていうかこう二時間ドラマの刑事さんみたいで見ていると楽しいんですよ、次々と謎を解明していく感じが」
そりゃねぇ~だって私の機械は『自分に都合の良い世界』しか見せないんだから当然でしょ
「そんなことよりぃ、ちゃんと秋葉っちの親御さんから判子とお花代もらってきた?」
「はい!それならここに、お金の方は研究所の口座に振り込まれていました」
わたしの怪訝そうな声にも関わらず栄枝っちは甲高い声とともに判子の押された“被験承諾証”差し出す
「まぁ仕事さえこなしてくれればぁ~別に人の夢を覗き見ようと勝手だけどいくら見ても時間の無駄だと思うよぉ」
どんなに夢の中でオリンピックで活躍しようとも
どんなに夢の中でアイドルとして活躍しようとも
どんなに夢の中で私のことを探ろうとも
現実じゃない、まるで現実世界には影響を及ぼさない
だから、わたしが思うにそんな人間は役に立たないからさっさと別の人間の糧になればいいと思う
献花はその基準、あのプリザーブドフラワーを飾るためには法外なお金を出さないといけないようにしてある
花があるうちはまだその人の事を誰かが思っていて現実へ帰って来いと引きこもった扉を叩いていると判断している
しかし花がなくなった人間は現実世界から完全に忘れられて妄想の世界に陥った愚者、そんな人間を生きながらせるくらいなら
現実を生きたい人間にその権利を渡すべきだと考えている
結果、現実から切り離された愚者には脳死を引き起こし、それから臓器移植ということで他の人間に役に立ってもらっている
・・・・私の秘密を探ろうとしたただ一人を除いては
「あの、それであの人の話って本当なんですか?」
「ああ、秋葉っちの夢の中の話が本当かどうかって?そうだねぇ~真実を知っているのは」
興味津々といった様子の栄枝っちに私は乃木坂秋葉の横たわるベッドを見て呟く
「わたしたちの秘密を知っているのはあの人だけね」



                                                          おわり
(´・ω・`)ノやっ

8月11日に東京であるSKEのライブチケット手に入ったってのは前に行ったけど

ちょうどお盆休みも含めて5連休が取れたのでついでに・・・・

ついでに例の祭りにも行ってやるぜ・・・・デジカメでな!!!

んーでもやっぱり一眼レフのほうがいいのかなーでもそんな金ないしな

まぁそんなわけで4日ほどホテル予約しといたもんね!!

前東京行ったときは結局に何も買わなかったけど今回はなんか買おう、せめて発火すると噂のVITAでも(なぜにw

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きんぎょばち



















そうそう、玲奈ちゃんのDVD買ったよ!!

しかも昨日は玲奈ちゃんの誕生日だよ!!

・・・・うん、それだけ

可愛いと思うんだけどな

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負ける気がしないわ!!

















負ける気がしないわ!!って言っておいて負ける子の非売品クッション

ちゃっかりヤフオクで手に入れてきたよ!!

12000円近くしたけどな(´・ω・`)

袋からは一生出すことはないと思う、胸の部分実は膨らんでるから触りたいんだけどな!!

ちなみにこの「負ける気がしないわ!!」ってのはさやか雀荘バトルリーチのセリフなんだけどさ

実はこれでるとまず負けるんだよね、当たるのは「風上の名にかけて!!」なんだよね・・・・

中古もなんか今売り切れだしちょこちょこ負けてるしニコ動で動画見ている方がまし、、、、かな(;´Д`)

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昨日の画像です

















一人でちょくちょくやっているマモノバスター、画像ではレベル148だけど

今日で151になりましたよ!!

いわばドラクエ1の戦闘を永遠とやる感じ、音楽はないけど攻撃すると画面は揺れたりはするわね

これね、そこらのソーシャルゲームはとは違うところがたくさんあるのね、だからついやっちゃう

1、金がかからない
全くのゼロ、課金アイテムとかない、そんな金を積めば強いなんてのはない

2、協力なにそれ?
一応マイミクとの連携攻撃ってのがあるが基本一人、協力とかないソリチュード、孤独な戦いだ
だから一人でも安心。なんかお友達いないと全ポケモン集まらないとかミッションがクリアできないとかない

3、10分待てば・・・
どこぞの姫は6時間も探索に行って結果「落馬しちゃった、てへ☆」なんだけどこのゲームは10分で10の行動力が回復する、これが冒険ができる・・・・ちょっとした合間にできるのがソーシャルゲームの売りだからこれは当たり前か


ちなみに大変なところもあるよ、このゲーム武器の値段がぼったくりなんだわ
ボッタクリ商店だからだけどね・・・・
2500万で買った、、ミョルニル北欧神話の武器が平然と売っているからこんなものなんだろうけど
次の武器のグングニルなんて8500万ですよ!!

一回の冒険で手に入るのが良くて10万、これは遠い道のりだよ!!

レベルは結構すぐ上がるんだけどね、平気で一日3レベルくらいは(;´Д`)

手に入るころにはどれくらいのレベルになっているんだろう・・・・

ラブ@ポーション 「その願いは破滅とともに」


街から離れた森の中、そこには人間嫌いの魔術師が住んでいる
「魔術師様!魔術師様!!」
今日も今日とて魔術師の力を頼りにする者が激しく魔術師のいる小屋の戸を叩く
「魔術師さ───」
言葉を遮るように扉に私はフラスコが投げつける。フラスコは思いっきり戸にぶつかると硝子の破片がキラキラと宙を舞う
「別に話しくらい聞いてやってもよくないかのぅセルリアン?」
「いいのよ、私は人間が嫌いで面倒なのも嫌いなの」
先程からの鳴り響く戸を叩く音に呆れた様子で化け猫のヴァンダイクが嘆息するが私は適当に流しながら実験を続けていた
大体良い事なんてないのよ、最近はとくに狼男のスレートがやってくる人の勝手無茶な願いをお節介にも聞いてやってるから
ここんところやたらめったら街の人間がやってきて本当いい迷惑なんだから
「しかし頑張るのぉ、かれこれ一時間か?」
「・・・・・・どうだっていいわ」
ヴァンダイクの言葉に私はそう言うと手に持った赤茶色の液体の入ったフラスコにその辺にある草を放り込む
「魔術師様!どうかお願いします、話を──」
「のぅセルリアンやはり話だけでも──」
「ああもう!五月蝿い!!」
私は机を激しく叩くと近くにあった失敗作入りフラスコを掴み
「だから私は人間が嫌いなのよ!!」
と叫び小屋の戸に向かって投げつけようとした、その瞬間!
ガンッと鈍い音とともに戸の蝶番が外れ、戸が私の目の前を飛んだ。
それはもう物凄いスピードで
「なっ──」
私は辛うじてそれを寸でのところで避けたが、小屋の戸はそのまま勢いよく私の背後にある失敗作の棚をぶち壊すとガラスと液体を飛散させる
「あ、危ないじゃない!!」
「いや、あの・・・・・・その戸が勝手に」
私は入り口に棒立ちの男に向かって怒鳴り声をあげるがその男はごにょごにょと口元で小さく呟くだけだった
「全く、今まで扉が壊れそうになるくらい叩く奴は何人もいたけど吹き飛ばしたのは貴方が初めてよ」
「あ・・・・す、すいません」
間の抜けた感じで謝るその男。綺麗に染めた髪と高そうな身なり同年代の青年と比べると童顔でよく言えば純真、悪く言えば世間知らずを体現しているような青年だった
「それで、私に用事があるんじゃないの?」
私は深く溜め息をつくと山積みの研究材料の中から椅子を引っ張り出す
「座れば?」
「あ、はい・・・・話を聞いてくれるのですね!」
「これ以上小屋を壊されたくないだけよ」
「す、すいません僕はティールって言います、それであの失礼します」
そう言って挙動不審な様子で青年ことティールが深く頭を下げ椅子に腰かけるのを確認すると私も警戒するように椅子に腰掛けた
見た目こそ無害そうだけどこの男軽々と小屋の戸を吹き飛ばすんだから気を付けなければならない
「で?何の用なのよ。まさかその無駄に強い力が制御できないとかじゃないでしょうね」
「いえ別に僕にはそんな力ありません、さっきの扉が飛んだのだって僕じゃないですし」
「はぁ?じゃあ一体さっきのはなんだったのよ」
振り返り改めて崩れ落ちた棚を見てみる。どうみたって起きたことは現実だ、別に扉やガラスはスレートに片付けさせるからいいんだけど先程の現象この男じゃなければなにが起こったっていうんだろう?
「僕が今日魔術師様にお願いにきたのは彼女のことなんです」
「彼女?」
一瞬また恋の悩みか、と呆れかけたが次の瞬間彼が鞄から取り出した小さな瓶を見て思わず私は息を飲んだ
「これって・・・・・・妖精?」
瓶の中にいたのは虹色の蝶の羽を背中に持った手の中に収まってしまうほど小さな妖精だった
そしてすぐに彼の望みもわかった。その妖精が力無くぐったりと横たわって苦しそうに息を荒げているから
「お願いします!シェンナを、この子を助けてください!!」
「いきなりそんなこと言われてもねぇ」
ティールからそのシェンナと呼ばれた妖精の入った小瓶を受け取っては見るものの妖精自体こんな間近で見るのも初めてだ、横目でヴァンダイクに助けを求めてみても我介せずといった感じで体を丸めている
「シェンナは僕が小さい頃からずっと一緒にいたと大切な友達なんです!だから───」
「あーはいはいそうゆうのって私興味ないの、返すわ」
私はティールの言葉を遮り妖精シェンナの入った小瓶を押し返す、いや彼がどんな状況だろうと私の結論は既に決まっていたのだ
「悪いけど私にはどうすることもできないわね、帰ってもらえるかしら?」
「そんな!お願いします、街の医者に見せても原因もわからずもう魔術師様にしかお願いすることができないんです!」
ティールは目に涙を浮かべ懇願をするがだからと言って私には彼の望みを叶えてやることはできない
妖精の体調を治せだなんて妖精なんか書物で見たことしかない私にできるわけがない。いい迷惑なんだ、私は人間が嫌いで「人間以外の何か」になるために研究をしているだけで街の人間のお悩み解決のためにいるわけじゃないんだ
それにこの名も知らぬ青年の悲しそうな表情を見ているとなんだか胸が苦しくなるのは間違いないのだけどもしこの依頼を受けて“この妖精を救えなかったら”ということを想像するとそちらのほうが私にはつらくて後味が悪くなるんから嫌なんだ
「私は実験が忙しいの、諦めてお帰りなさいな」
悪いけどこの彼との会話はをこれ以上するつもりはない、私は彼を無視していつものように実験用フラスコを火で炙ろうとしたその矢先だった、私の頭の中をゴンッと鈍い音が響く
一瞬またこの男が小屋の扉を吹き飛ばしたように何かをしたのかと思ったがそれは違った。痛みに耐えながら青年を見やるが彼はただじっと手に持つ妖精シェンナの入った瓶を抱いて涙を流し懇願しているだけ
「ちょ・・・・や・・・め・・・」
頭を押さえるがそれでも頭の中に音が鐘を鳴らすように次々と痛みが響きわたる
その痛みは耐え難く、しかも段々とその痛みが増してきている
「お願いします!!お願いします魔術師様!!」
「私を魔術師なんて呼ぶな」、そう言いたかったがそれすらも言葉にできないくらいに頭の痛みは酷くなっている
「わ、わかった・・・・から、やめな・・・・さいよ」
朦朧する意識のままこの状況を解決できるだろう言葉を呟く
「え!?本当ですか!?」
ティールが顔を上げた瞬間、酷く続いてきた頭の痛みがスッと収まる。ああ、なるほどなんとなくだけどこの状況を起こした張本人がわかった気がする
「ええ本当よ、とりあえずその妖精預からせて貰おうかしら」
「わかりました、シェンナをお願いします!!」
「やるだけやってみるわ」
その予感と言うか推測は受け取った瓶の中の妖精、シェンナを見て確信した
瓶の中のシェンナはただじっとこちらを見つめていた。その瞳は弱々しく見えるその身体とは違い力強く見える
「数日後にまた来なさい。やれるだけやってみるから」
「はいお願いします!」
「わかったら速やかにでていってもらえるかしら」
「は、はい!す、すみません!」
少し苛立った風に私は言うとティールは何度も何度も振り返り何度も何度も頭を下げたのち扉の吹き飛んだ入り口から帰っていった
「ふむ、にしても難儀しそうな依頼じゃの」
ティールがいなくなったのを確認するとヴァンダイクは大きく体を伸ばし他人事のように呟く、どうやらティールの前ではわざわざ普通の猫を演じて黙っていたようだ
「貴方にも手伝ってもらうわよヴァンダイク、化け猫なんだからそうゆうこと詳しいんでしょ」
「そんなこと言われてものぅ、なにせ儂はずっとあの屋敷にいただけじゃからのぉ」
「使えない猫!」
間延びしただらしない返答をするヴァンダイクに私は辛辣な言葉を浴びせるととりえあず瓶をテーブルに置き考える
瓶の中の妖精、シェンナは先程よりも体調が悪そうに見える
「しかしなんでこうも衰弱しておるのかの」
「この子の体調が悪い原因はわかってる、原因はティールよ」
「ティールというと先程の少年か」
私は静かに頷くと棚から様々な色の液体が入った小瓶をいくつか取り出す
「私がティールを無視していたから小屋の扉が吹き飛んだ、ティールの願いを断ったから私に対して攻撃をしてきた。つまりこの妖精はティールの願いを叶えるために力を使い衰弱してしまっている」
「つまりこの妖精をティールの元から離せば体調は良くなるんじゃな」
「理屈ではそうだけど、多分それだけでは完治までは無理ね」
私はフラスコを取りだし小瓶の液体を次々と流し込みながら答える
「なぜじゃ?」
「小さい頃から一緒にいて、いつからティールの為に力を使っていたかは知らないけどあまりにも力を使いすぎなのよ」
フラスコの中の液体が混ざり合い真っ黒い液体へと変わるのを確認すると私はローブの中から丸薬を取りだしフラスコへと放り込む
次の瞬間、ボンッという音と共にフラスコの口から真っ白な煙が昇り真っ黒だった液体が深い緑色をした液体へと変化した
「魔力増幅剤で回復させることはできるけどそれも一時しのぎにしかならないわ、元々体に良いものじゃないし継続して服用すれば体の小さなシェンナの寿命は間違いなく短くなる」
きっとシェンナはティールの為に死ぬまで力を使うのだろう
シェンナにとってそれは幸福なことなのかもしれない、けどティールにとってそれは幸福なことではないはずだ
「してセルリアン、どうするつもりなんじゃ?」
「本当にシェンナを助けたいと思うならティールには決断をしてもらわないといけないわね」
瓶の中で苦しそうに体を震わすシェンナを一瞥し小さく呟いた

 

そして三日後の朝、朝日が登るのとほぼ同じ頃ティールはやってきた
「魔術師様おはようございます!!あ、あの僕、ティールです。三日前にシェンナのことをお願いした!」
「わかった、わかったからそんなに叫ばないでもらえる?大体今何時だと思ってるのよ」
「すいません」
申し訳なさそうに頭を下げるティールを見ているとこの少年がどれだけシェンナのことを思っているかはよくわかる
けれども彼女、シェンナのことを救うためには私はこの少年に一番辛い現実を突きつけなければならない
「まぁいいわ、それでシェンナのことなんだけど。長期的に魔力を使いすぎていて回復には時間がかかるわ」
私はそこまで言い切って一呼吸置くと言いたくない言葉を吐いた
「もっと言えばシェンナはあんたのために魔力を使いすぎている。だからシェンナの身体のことを心配するのならもう一生会わない方がいい」
「えっ、それってどうゆう」
あまりのことになにがどうなっているのかわからないのだろう
いや、もしかしたらティールもわかってはいたのかもしれないがその現実を受け入れることを必死に拒んでいた
「それじゃ僕はもう一生シェンナには・・・・」
「彼女のためを想うならそうしたほうがいいわ。シェンナは既に自分の命を削ってまで魔力を産み出している。魔力は安静にしていればいずれ回復するでしょうけど削られた命は二度と戻ら・・・・ぐっ!!!」
そこまで言いかけて急に私の身体に激痛が走る。手足に電撃が走るような痛みと頭を締め付けられるような強い痛み
それが誰の仕業か、それはすぐにわかったシェンナだ
「ううっ、シェンナ・・・・」
泣き崩れ俯くティールには私の姿が見えていない
ダメだ、そんな顔をしていては・・・・そんな顔をしていたらシェンナが力を使ってしまう
「ぐっ・・・・やめ、な」
なんとか声を絞り出そうとするがそれを押さえつけるように痛みは強くなる
シェンナから見れば私はティールを悲しませる悪い奴に見えているのかもしれないが今ここで力を使って最悪自らの命を落とすことになりかねない
そうなってしまっては本当の意味で二度と会えなくなってしまう。なんとか力を振り絞りなんとか言葉を紡ごうとするが声はかすれちゃんとした声にならない
「シェンナとは小さい頃からずっと一緒だったんです・・・・」
「だ、だめ・・・・!」
「だからシェンナと別れるなんて僕には・・・・できない!」
ティールがそう叫ぶと共に背後でガラス瓶が弾ける音がした
すると同時に今までとは比べ物にならない激痛が全身に走る
「ぐっああああああああああああああ!!!」
そして私の意識は闇へと・・・・落ちた

 

「・・・・・・・・んっ」
私が次に目を覚ましたときには私は小屋のベッドの上にいて、すべてが終わっていた
「気がついたかセルリアン、大丈夫か?」
心配そうにスレートが私の顔を覗き込んでいるのが見える
「少し頭が痛い、それよりもシェンナは・・・・?」
恐る恐る尋ねる。スレートは私の言葉には答えずただ首を横に振ると私の額の上に水で濡れたハンカチーフを乗せた
額から伝わるひんやりとした感覚がまるで現実を突きつけているかのようだった
「・・・・そう」
「小瓶を壊してティールのところまで行ってそこで息絶えた」
「・・・・ばかみたい」
シェンナは最期の最期までティールのことを想っていた。けれどもティールが本当に求めていたものはただ普通に
シェンナと一緒に居たかった、それだけなのに
「ちょっとスレート、あんたに見られたくないから少し外出ててよ」
「そうか、わかった」
スレートはそれ以上特に何も言うことなく小屋を出ていく。そうゆうところは直ぐに理解するから助かる
「本当、ばかみたい・・・・」
私はスレートが出ていったのを確認すると久しぶりに声を上げて泣いた


                                                  

                                                     FIN
                                                      
プロフィール
HN:
氷桜夕雅
性別:
非公開
職業:
昔は探偵やってました
趣味:
メイド考察
自己紹介:
ひおうゆうが と読むらしい

本名が妙に字画が悪いので字画の良い名前にしようとおもった結果がこのちょっと痛い名前だよ!!

名古屋市在住、どこにでもいるメイドスキー♪
ツクール更新メモ♪
http://xfs.jp/AStCz バージョン0.06
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