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日記と小説の合わせ技、ツンデレはあまり関係ない。 あと当ブログの作品の無断使用はお止めください
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幻=クレイド
 
 
気だるい朝だ、いつのまにか寝る前カーテンを閉めた窓から日光が入ってきている。
その光がジャストの位置で俺の顔に当たっているし、ったく誰が開けたんだよ
嫌な目覚めだ、体の機能が回復しきらない寝起きというのはいつもこうだ
だがその日光はあの悪夢からの助けだと思えば感謝することのなのかもしれねぇな
またあの夢だ…
俺は髪を掻き揚げると部屋の奥の古時計を見る、六時…少し早く起きたか
「っ、やれやれだぜ」
ゆっくりと起き上がるが何故か体が妙に重い、案の定腕に金髪の女がくっ付いてや
がった、しかも気持ちよさそうに人の腕を抱き枕にしてる
ったく、こいつまた人のベッドに潜り込んでるのかよ!
いい歳して男の寝室に勝手に潜り込むなんてどうゆう神経してるんだか…
「おいシーラ!寝るなら自分の所へいけよ!」
体を揺すってみる、この程度で起きるほどの奴じゃないのはわかっているが一応な
まぁ当然の如く起きるわけないんだが…
それにしてもシーラの奴、俺を誘惑でもしてるのか?
いやってほど胸を腕に押し付けているわ、着衣は乱れて白い肩があらわになっているわで
んーこりゃクリスの奴ならくらっときてもおかしくないな
ま、俺に色仕掛けなんて無駄なんだけど
纏わりつく腕をほどいて端にかけてある黒皮のジャケットをはおる、後は符術を入れた対暴発用ポーチと愛剣のディレントセイバーを腰につけて俺の準備は完成だ
乱暴に髪を掻きながらギィギィと軋む階段を降りる、もう何十年も前に造られた教会はあちこ
ちガタがきている一階は一応解放されている大聖堂になっていて、そしてそこから上手側の二
階に俺達の部屋があり下手側の二階がキッチンや風呂になる。
そういえば雨漏りがどうとかシーラの奴が言ってたな
昔はこの教会、シーラの母親が戦争孤児を何人も養っていたらしい…
その名残か階段のあちこちにはクレヨンだったり鉛筆だったりで落書きがされている
実際俺の記憶にも孤児の奴等の記憶はある、仲の良かった奴の記憶もある。
だがそれはすべて造られた記憶だ、あいつがシーラの奴が俺を幼馴染だと思ってるのと一
緒でな
そしてもうそんな孤児たちも落書きに描かれた希望に満ちた未来を見ることなく姿を消し
「これはこれは、おはようございます。もしかしてここに住んでいるお方ですか?」
階段を降りた先、つまりは大聖堂には珍しく人がいた。大聖堂は二階である俺達の部屋と
違って開放したままなんで別に人が入ってきてもおかしくはないんだが教会といってもこ
んな辺境のボロ教会に人が来るのは珍しい、しかも服装からいってそれ系の偉い奴のよう
のようで豪華な装飾が施され小奇麗な格好、ご丁寧に胸元には十字架とセドナ教の紋章が
ぶら下がっている。
セドナ教ってのはこのウイングガルド大陸でもかなり普及している宗教の一つだ
「そうだがあんまり気にしないでお祈りでも続けてくれ」
「お祈りなら既に終わりました、すいません勝手に入ってしまって」
そう言うとお偉いさんは深々とお辞儀する
「別にここは完全解放してるから勝手に入ろうがかまわねぇよ」
「そうでしたか、それにしてもここはいい雰囲気の教会ですね」
いい雰囲気?こんなボロ教会が?これだから宗教家ってのはわかんねえ
「実に美しい造形物だとおもいませんか?」
「そ、そうか?」
「この壁から覗き込む光が斜線状に内部を照らしている、まるでセドナの女神が地上に舞
い降りられたときのような情景じゃないですか」
感極まったのかお偉い兄ちゃんは両手を高々と広げセドナの女神とやらを妄想してやがる
確かにさぁボロボロになった壁のあちらこちらから光は漏れているが…
ま、まずい…話についていけねぇな
こいつ明らかに自分の世界に入ってるぜ、こうゆう相手は適当にあしらって帰ってもらう
「んーあーそれじゃ俺はこれで失礼するぜ」
「あ、ちょっと待ってください!」
っ!ぼーっとしてるうちに横を素通りしようと思ったらあっさり気がつきやがった
「んだよ?」
面倒くさそうに振り返ったらなんか目をキラキラさせてやがる、なんかさっきと感じが違
うのはなんだ、さっきまで落ち着いた感じの妄想宗教家って感じだったのが今はまるでヒ
-ローを見るガキの眼差しだ
「今気がついたんですがもしかして幻=クレイドさんじゃないですか!?」
「ん、ああそうだが」
それを聞いたお偉い兄さんは喚起の声をあげる
なんでこのお偉い兄さんが俺の名前を知ってるんだ?バウンサーの仕事の依頼じゃこんな
顔見たことねぇし…
「やっぱりそうでしたかっ!!」
お偉い兄さんは突然俺の手を握る、思わず体が引いたぜ
「な、なんだよあんた!何で俺のことを知ってる?」
「そりゃもう異常事態の4563回大会といったらもー感動の嵐ですよ!」
4563回大会?なんだっけそれ…趣味でやってるカードゲームの大会だっけ?
いやいくらなんでも4563回もやってないしあれは身内だけの大会だからな
「なんの大会だったっけか」
「ハームステイン大闘技会4563回!!幻さんの活躍はもう予選大会から見てました
よ!まさに疾風の狩人ここにありってかんじで!」
つばを飛ばしながら熱く語るなって…
ああ、確かにあったなそんな大会。その観客だったわけか宗教家なんてこんなもの見ない
のかと思ったら案外そうでもないらしい
クリスとの対決の場であり、そして真実を知った忌まわしき場所だ
詳しい話?詳しい話はパスだ、気軽に話せるようなネタじゃねぇんだよ
「準々決勝での前回優勝者オルディ=ハウランドとのタッグ!!あれは最高でした!!」
こいつ苦手だ、もうなんか熱くなると人の事かまわず喋り捲ってくる
いいのかよセドナの女神はー!
「そうだ!幻さん、サインもらえますかサイン!」
答える前に豪華そうな鞄から色紙とペンを取り出し差し出してくる、断る権利なしか
しかしなんで宗教家がサイン色紙なんて常備してるんだ…
まぁ俺のファンって言うんだから悪い気はしないが、いやこいつとはあんまり関わりあい
になりたくねぇな、とりあえずサイン書けば帰ってくれるだろう
「ったく、しょうがねぇな」
とりあえず色紙とペンを受け取る。だがいざ真っ白い色紙を目の前にするとなにを書け
ばいいのか悩むな
「あ!ちゃんと『イグジットへ』って書いてくださいね」
受け取ったままぼーっとしていたせいか指示が飛んでくる
俺はそれを聞いてなんとなくでペンを走らせる、サインっていうと崩し字みたいもんだ
ろ?正直『幻=クレイド』なんて書いたつもりはない、ただサインを書いてる雰囲気を
演出しただけだ。
とりあえず自分でもよくわからない絵なのか文字なのか蛇が張ったような物を書き手渡す
気にしないだろ、俺の書いた文字なんかに。どっちかというと俺が書いたという行為自体
に意味があるはずだ、きっとそうだぜ
まぁどうやって書けばいいかわからなかった言い訳なんだがな
「ほらよ、これでいいか?」
「うわぁ!ありがとうございます!!」
まるで欲しかった玩具を買ってもらったガキみたいに喜んでやがる。こんなに喜んでるな
ら書いたほうとしても悪くはないな、まぁ適当に書いたんだがな
「んじゃまぁ、俺ちょっと散歩してくるわ」
「あ、はい!すいません時間を取らせてもらって。いやぁ今日は朝からいい日だなぁ」
こっちは朝から疲れたってんだよ
やれやれ、サインに見とれて全然帰りそうにないんでしばらく外で時間を潰すとするか
一つ大きく背伸びすると出口へ歩く、そしてちょうどドアノブを掴もうと思ったときだ
ゴンッ!!と激しい音が教会内に響いた
「ってぇーーーー!」
思わずのけぞりぶつかった頭を押さえる
ありえねぇ…まさか俺が開けるよりも先に扉が開くなんてよ!
おかげでおもいっきり頭をぶつけたじゃねぇか
「む、大丈夫…なんだ幻か」
反対側から扉を開けた人物がひょっこりと顔を出す、最初は心配そうな声だったが俺の姿
を見た途端態度を変える辺りあいつだ、クリス=リューガスだ
「なんだじゃねぇよ、いってぇな!!」
「そんなところでつっ立ってる貴様が悪いんだろう」
ぶつかった相手が俺だとわかった途端クリスの奴の態度が変わる、まぁあいつから見れば
俺は突然現れた者だったんだからな…正直あのハームステインでの一件があってなお
ここで俺が生活できるなんてほうが普通じゃおかしいくらいなんだ
シーラとクリス、そして俺はまぁ一応は幼馴染だ、クリスの奴も元は戦争孤児でこの教会
に引取られた人間の一人になる
だが俺は違う、クリスやシーラの記憶では俺も昔起こった属性戦争の戦争孤児ということ
らしいが実際はそんなもんじゃない
「ど、どうかしたんですか?」
俺の叫び声にイグジットの奴が心配そうに駆け寄ってくる、まずいなクリスの奴もハーム
ステインでの大会にはでているからな。「貴方は4563回大会準優勝者のクリス=リュー
ガスさん!」とかなんとか言ってまた熱く語りだしそうだ
「なんだあいつは…貴様の客人か?」
おもいっきり笑顔で走ってくるイグジットにクリスが怪訝そうな顔で聞いてくる
「ちげぇよ、旅の途中の妄想宗教家だ」
「そうか…ああ、そういえばお前に手紙が来てたぞ」
「手紙だぁ?誰からだよ」
「私の知った事か」
クリスが差し出した手紙を手に取る、ザラザラとした紙質の高そうな封筒だ
「あ、あなたはやっぱりっ!!!」
宛名すらない封筒をぼけっと眺めてしまっていた俺はイグジットの声で一気に我に返った
まずいまずい、そういえば俺はここで捕まるわけには行かないんだったぜ
「んじゃそうゆうことで出かけてくるわ」
そういって俺はクリスの脇を抜けるように走り出す、クリスの奴が「そうゆうことってど
うゆうことだ貴様」とか叫んでるがそんな相手をしてる暇はないぜ
案の定振り返ってみればクリスがイグジットの奴に絡まれている、やれやれさっさと逃げ
ておいて正解だったな
まぁしばらくそいつの相手でもしていてくれクリス!
 
 
 
清々しい朝ってやつか?流石高原とでもいうべきか空気が澄んでいて気持ちがいい
シーラの教会は町からだいぶ離れた小高い丘の上に建っている、そこから町を一望すると
まるでそれは一種の絵画のような美しさ…らしい、まぁクリスの受け売りなんだがな
「やれやれ無駄に走りすぎたぜ」
落ち着いて深呼吸する、空気が体に入ることで人間は一定のリズムを取り戻し精神的にも
身体的にも回復する、いわばクールダウンってやつだ
胸に手を当ててみる、ドクドクとした血の流れが聴こえる。こうゆう身体現象が自分が
人間であると実感させてくれる
人間として実感?なんか変ないい方だが、まぁ詳しい話はそのうちわかるぜ
「そういえば手紙誰からなんだ?」
先程クリスからもらった手紙を取り出し太陽にかざし見る、封筒の中には小さなカードら
しきものがあるのがわかる他には何も異常はない感じだ
たまにあるんだよな、バウンサーなんて仕事で飯を食ってる以上恨み辛みはよく受けるん
で嫌がらせかなんなのか罠っぽいのを送ってくる奴、宛名がない辺りからその類かとおも
ったがどうやら違うみたいだ
「さて何が出てくるんだか」
俺は封を切って中を覗き見る、なかにはやっぱり手の平サイズのカードしかはいってなか
った。
カードは特に変哲もない紙だ、なんだが手紙には警戒心ばっかり先立ってるな俺
裏返してみるとなにやら文字が書いてある、独特な癖の入った文字なんとなくこいつを書
いた奴の事が誰だかわかってきたぜ
───どうやら紅葉の奴が動き出したようだ、今すぐルラフィンまで来て
カードにはそれしか書いていなかった、んん…ティアの奴名前くらい書けよ
名前は書いてなかったが文字からティア=マローネっていうことはわかった、こうなんか
書き捨てられた文字まで無愛想な感じなんだよな
ティアってのはまぁいわゆる俺の仕事仲間っていったらいいんだろうか西の大陸で『アクロポリス』とかいう会社の仕事をしている奴だ、前に偶然仕事で一緒になってからちょくちょ
く頼みごとをされたりしたりする間柄だ。無愛想な感じの女だが腕は確かだ、パワーこそ俺には劣るがスピードと正確無比なナイフ投げの技術には目を見張るものがある
まぁソロでしか仕事を請けない俺がパートナーとして認めてやってもいい数少ない人物と
でもいっておくか、向こうはどう思ってるか知らねぇけど
「それにしても随分とまぁ突然なお誘いだな、それにしても紅葉って誰だ?」
紅葉?モミジ?もみじ?頭の中で復唱してみても一向にその紅葉とかいうやつのことはで
てこなかった、記憶喪失でもど忘れでもなくこれは最初から知らない初めて聞く言葉だ
しかし妙だな、ティアの奴はまるで共通の話題かのように書いている
まぁ深く考えたってわかることじゃないな、こうゆうのは直接聞いた方が早いだろう
宛先や名前すら書かないほど焦ってるのらしいからな向こうの勘違いって事もあるだろう
今日は仕事は入ってないからティアの奴に付き合ってもいいだろう
俺は手紙を後ろポケットに突っ込むとゆっくりと町の方角へ歩き出す、しかしなんとなく
不安だぜ、なにが不安ってティアと仕事をすると大抵他の事件にまきこまれるからな
そんな俺の気持ちを感じるかのように風がざあっと吹く、さっきまで感じていた日差しが
陰ると太陽が雲に隠れて日差しが届かなくなってきていた
…おいおい、いくら山の上だからって天気変わりすぎだ!
頭の上に落ちた雫に思わず空を見上げる、雨だ、さっきまで清々しいとかなんとかいって
たのに一転して暗い灰色の廃退的な雰囲気になる
「な、なんだこの感じ」
突然物質ではない精神的ななにかが俺の上に強く圧し掛かる、朝の空気とは真逆のいわば
人を不安にするような感じのプレッシャーのようなものだ
思わず誰かいるのかと辺りを見るがなにも変わりはなかった
そして突然の強い雨が降り出し俺を濡らしていく
だがなにかおかしいぜこれは…普段なら“突然の雨に服がびしょびしょになって“あん
にゅい”なんてことで済むんだろうがこの状況は明らかにそんなもんじゃない
俺の不安を煽るかのように一気に雨が強くなる、そして俺にかかる謎のプレッシャーも強
くなってきていた
「っ…誰かが近づいてるのか?」
思わず呟いた唇を噛む、誰かが?なんて不明なものじゃないのはわかっていた
こんな負の力を憎しみの力をぶつけてくる奴はあいつしかいない
だがそれを信じれない自分がいるのも事実だ、なんせあいつは三年前に俺が倒したはず
だから誰かと言った、別の誰かであって欲しいという願いも込めて
「これも夢のお告げってやつかよ…」
自嘲気味にいうと刺突剣ディレントセイバーを引き抜いた、どうやら今日はあの夢からはじまって厄日のようだぜ
あの夢、今朝見た夢は俺がハームステインでの大会の時にもみた夢だ
いわばあの夢は俺にとって奴が現れるという予知夢のようなものといっていいだろう
大きく開けた湖畔に純白のドレスを着た女が立っている、シーラの奴に似ているといえば
似ているが髪は短く大人しい感じだ。
そしてその女はじっと俺の方を見つめているだけの夢
女はなにも言わない
だが助けを求めているような目で俺を見つめている
近づこうとする、だけど近づけない
声をかけようとしても声がでない
そして夢の醒めそうになる直前になって女は一言こういうのだ
『あの人を救って…』
そうして女は消える、ハームステインで見たときは女が言う「あの人」が誰の事かわから
なかったが今ならわかる、俺を生み出したもう一人の自分、女はそいつを救ってほしいと
言っている
あの女の名前は咲夜=フランクだ、あいつの唯一心を許した女性…
「でてきやがれ!スリティ!!」
雨が激しくなる中俺は叫ぶ、一度殺したもう一人の自分の名前を
俺の叫びに呼応すかのようにいままでよりも強い風が吹く
おいおい、まじででてくるつもりか
風の強さにおもわず目を閉じる。こうやって目を閉じればいやな現実から逃れれるならど
んなにいいことか…
だが現実ってのはそんなにあまくないぜ、いくら神に願ったって嫌な事から逃れれるわけ
じゃないんだ
まぁ俺は神なんて抽象的なもんは存在しないと思ってるしな
俺はゆっくりと目を開く
「や、やれやれだぜ…」
失笑、なんだかこんな無茶苦茶な状況に笑いがこみ上げてくる
だって本当にいるんだからなあいつが
漆黒の鎧に漆黒のマント、そして漆黒の兜から覗かせる紫水晶の瞳…姿こそ違えど鏡
を見てるかと思うような顔のあいつが俺の前に立っていた
「久しいな、名もなき者」
「なにが久しいなだよてめぇ、てめぇはとっくに死んだはずだろ!!」
そうだ、奴は死んだはずなんだよ、三年前のハームステインで俺に殺されてな
俺は奴に生み出された同じ能力を持つ分身体だった…
そして生み出された俺の目的はシーラの教会の奥深くに眠る魔剣『ライオット』を奪う事
シーラやクリスの記憶を改竄し、幼馴染として教会へ侵入した俺だったが、スリティの
思惑はここで大きく狂った
ただの分身体であるはずの俺が魔剣『ライオット』に触れたことにより自我をもったんだ
あいつは自分と同じ力を持つ俺の存在を危惧し、クリスを操りハームステインで俺を消そ
うとした…そうこれが、ハームステインでの戦いの真相ってやつだ
「ああ、そうだあの時私の器は滅んだ。だが貴様では私の魂までは砕けなかったようだな
穢れし器もて私はこの世界に戻ってきた」
奴は自らの魔剣『スワルツアンド』を引き抜く、やれやれ魔剣も砕いたはずなんだが一緒
になって甦ってやがる
「名もなき者よ、私がどうしてここに来たのかわかるな」
「はっ、また俺にやられにきたんだろっ!!」
一気に走り出す、スリティの奴の存在を確認した時点で戦いが避けれないものはわかって
る、なら先手必勝だ
雨を切り裂くように奴との距離を縮め、空中で旋回一気に剣を振り下ろす
「その程度で私を倒すだと?戯言を!」
俺の一撃を軽く受け止めると一瞬だけ力が放出される、黒い瘴気が奴の周りに纏いそのま
ま近くにあるものを俺ごと吹き飛ばした
「脆い、その程度か名もなき者」
まずいぜ、奴にとっては軽く力を放出させただけなんだろうが軽くあばらにひびがはいっ
てやがる。思えば前に勝ったときはほとんどハンディキャップ戦のようなもんだったな
奴は魔剣を失い俺が奴から切り離された事によるダメージが回復しきらない状態だった、
それに俺はあのときは神器と言われるスターソードがあったし、なにより一度死んで人間
として復活する前だったからな分身体としての俺には限界なんてもんがなかった
奴と魔剣はまさに鬼に金棒って事かよ
ふっ、愚痴たってどうにもなるわけじゃねぇ…ここで俺がやられればあいつはシーラ
やクリスの前にも現れるはずだ、ここはなんとしてでも俺が倒さねぇと
立ち上がってゆっくりとディレントセイバーを平に返し弓を射抜くように構える
そのとき奴の口元がゆがんだ、そりゃそうだこの技は元はてめぇの技だからな
「ソリチュードストライク…か」
「ああ、流石にてめぇもこれを受けたらただごとじゃすまないぜ」
構えた右手に左手の甲を添える、珍妙な構えだがこれが桜花蒼龍剣でいう“龍墜の構え”
とかいうもんらしい、そしてそこから繰り出されるソリチュードストライクは俺の持って
いる技の中で最高の威力を誇る。
「いっくぜぇぇぇぇぇっ!」
叫びに反応し体から蒼き炎が吹き上がり俺を包み込む、体内に魔力を内包していない俺が
唯一放出できる力だ
だが奴は動じる様子を見せない、技を止めようともしない、ただ口元がかすかにゆがんだ
だけだ
なんだ余裕ってやつかよ…なら受けてもらおうじゃないか
蒼き炎を纏い一気に駆け出す俺にようやく奴はゆっくりと剣を弓を引くように構える
なるほどな、同じ“龍墜の構え”そして奇しくも同じ技でやろうってか
奴の体から俺と同じように炎が吹き上がる、だが色が違う奴の炎はどす黒い炎だった
「ソリチュードストライクッ!!!」
対峙する黒き炎と蒼き炎、同じ声色、同じタイミングで二匹の竜が咆哮した
ソリチュードとは太古の昔に生まれし魔力を喰らう龍の名、二つの龍の咆哮が激しくぶつ
かり合い辺りに存在するものの魔力をすべて消し去っていく
数々の色をした魔力がその器を離れていき天に昇っていくのが見えた
「…ちっ、相殺ってやつかよ」
「よもや名もなき者がここまでやるとはな」
スリティの奴は剣を突き出し動きが止まっていた、そして俺もまるで鏡に映るように同じ
構えで立っている
奴の剣が俺の首元に、俺の剣が奴の首元に…どちらかが先に動くかどうかの均衡状態
に陥っている
互角、どうやらソリチュードストライクだけは俺とスリティの差がないみたいだぜ
俺の方にダメージはないがそれはスリティの奴も同じようだ
「フッ…前言撤回か、貴様もやるようになったな」
「伊達に修羅場は越えてないんでな」
見上げてみると奴が笑っていた、こいつが笑うところなんてはじめて見た気がするぜ
なんていうかこいつと出会ってから奴は冷たい感情しか見せていなかったからな
「…咲夜はこんな事を望んではいないのだろうな」
静かに呟くと剣を引いていた、奴の表情に一瞬暗い影が映る
「てめぇ、どうゆうつもりだ?」
「私は誰の指図も受けない、それが例え穢れし器を与え私をこの世に戻した者の指図でも
な」
そういって奴が後ろを振り返り歩いていく、後ろから斬りかかろうと思えばできる距離だ
だが何故か剣が動かなかった
呼吸が乱れて心臓の鼓動が早くなっている、俺はもしかしたらここで奴が逃げていく状況
に助かったとでも思っているのかもしれない
「逃げるつもりかよスリティ!!」
「今日の所は所詮様子見だ、一時でも救われた命を無駄に散らす事もなかろう」
思わず剣に力がこもる、救われたという現実に反逆したいが結局奴の後姿をみつめること
しかできない
これが人間って奴だ、無意識に命を守ろうとする
「さらばだ、名もなき者よ…」
一陣の風が吹き奴の姿が消えていく、最後まで俺はその姿を見ることだけしかできなった
「くそっ…もしかしてもう巻き込まれてんのかよ」
思わず天を仰いだ、雨はいつのまにか止み奴が来る前の清々しい朝とやらに戻っている
何者なんだスリティの奴を甦らせて俺を殺そうとする人物は、そしてそんな力を持った奴
が何ゆえ俺を狙ってるんだよ
くっ、どっちにしろまたただ事じゃない仕事の始まりのようだぜ
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無題
この、幻とスリティの過去話がカクテルパーティ第1部なのか?
うかがえる粗筋から判断するに面白そうじゃないか。
RPGツクールはさすがに残ってないか……?

死闘の果てに止めを刺したであろうスリティがあっさり復活してしまってる辺りが外伝たる所以なのだろうか?
この話が面白い、というより、随所にある過去話が面白かった。
クリスとシーラの記憶改ざんとか。
幻とスリティの関係とか。
魔剣とか。
つまり、カクテルパーティが面白そうだな、ということ。
桜井 2010/07/10(Sat)23:31:48 編集
シーラ「ヒロインなのに出番が・・・寝てるだけ」
正確には第一部は
記憶を改ざんされたことにうっすら気が付いたクリスがスリティや組織の思惑に乗ってシーラを誘拐して幻の正体を暴こうとするのですね
幻はクリスとの激闘後、自分の存在の曖昧さに気が付いてクリスの失敗に出てきたスリティと対決し自分の生い立ちを知るまでが第一部まで

第二部はスリティの過去で彼が闇属性ということで迫害を受け島流しに会うわけところから始まって
闇属性の解放を強引に進める組織クラウンが闇属性でしか倒せない種である“アンカース種”をばら撒くことで世界が混乱、アンカース種を排除するために三大国家の一つフランク皇国がスリティ達闇属性の人間を召集する。スリティは初め「都合のいいときばかり利用しやがって」って感じだったんだけどフランク皇国の第二皇女である咲夜=フランクと出会うことでまぁそれなりに打ち融けていくんだけど・・・・な話が第二部です

RPGツクール3のデータは残ってるよ(;´Д`)
でもまぁうんクソゲーヽ(;´Д`)ノ

スリティが復活してるのがまぁ外伝たる所以、うん・・・まさにその通り、随所にある過去話は内容を知っているとニヤリとするそんなファンサービス的なものさ

いやまぁーカクパ自体はどうなんだろうねー高校のときの話だからねーどうなんだろうねーヽ(;´Д`)ノ
ひおうゆうが 2010/07/11(Sun)00:23:09 編集
プロフィール
HN:
氷桜夕雅
性別:
非公開
職業:
昔は探偵やってました
趣味:
メイド考察
自己紹介:
ひおうゆうが と読むらしい

本名が妙に字画が悪いので字画の良い名前にしようとおもった結果がこのちょっと痛い名前だよ!!

名古屋市在住、どこにでもいるメイドスキー♪
ツクール更新メモ♪
http://xfs.jp/AStCz バージョン0.06
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