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日記と小説の合わせ技、ツンデレはあまり関係ない。 あと当ブログの作品の無断使用はお止めください
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『孤高と孤独の狭間』


 

「k語sphg9あshgじゃswhjtqhj0おてゃ0S」

言葉にならない文字をただ自分の知能と結びつけて必死に読み上げる
薄暗い乱雑と物が散らばった場所で
他の・・・
他の誰かがこの部屋を見れば嫌悪感を示すだろう
鬱陶しいお節介な奴なら「部屋を綺麗にしろ」だの「清潔感がない」など文句を言うのも当然な位の空間
いつ食べたかもわからないコンビニ弁当の残り物に集る虫
湿気で黴の生えた壁、床
整頓などされるわけもないくだらない雑誌、本
でも、もはや、誰も、それを、指摘、する者、も、いない
今、ここにいるのは俺一人だ
以前よりなりたかった『孤高』という存在に私はなったのだ
「ふふ、ははは・・・」
何時以来か出した己の声は乾ききっていて自分でも懐かしさを感じる“生の声”だった
『ありがとう!!お父さん、お母さん大好き!』
『見てよ、またテストで100点取れたよ!』
『大丈夫だよ!僕が頑張って大学行って偉い人になるんだ!それでお母さん達に沢山恩返しするんだぁ』
大丈夫、大丈夫、大丈夫・・・
その言葉がリフレイン、思考停止した脳内に虚しく響き渡る
今更どうしようもなかった、もはやその言葉に返す『ヒト』すらこの場にはいない

「mt@d呪詛jホイjshんpsmt@hkんぽstkhdん:ぽhjのdp」

言葉にならない言葉を無理矢理紡ぎあげ読みあげる
震えていた───
よくわからないが今、自分が震えているのだけは感じている
『孤高』だ、今の自分はまさに『孤高』の存在なのだ
自分に言い聞かせる、だがソレの波は心の奥底から静かにだが着実にこちらへと忍び寄っている
世界には何十億人と『ヒト』がいる。小さい頃学校で聞いた時は60億人だったのが今では70億人だそうだ
ヒトは増えた、間違いなく何よりどんな計測、測定その定義もよくわからないがヒトは増えた
だがその内何人が『自分の望む幸せな世界』を生み出されただろうか?
そして自分、私、僕、俺、見出されたか?
よくわからない勝手な理由で生み出され、既存の生活の固定概念を強制され“その世界の基準に満たされない者”は降格される
そんな世界に拘束され寿命と言う名の数字を浪費する

「あg@0gじゃjgぽあうぃんsbぽしgjm;psgじょs;klgんlskghんmlskjmk;ls」

自分でもその言葉の意味がわからないが今までよりも確実に早口にその文章を読み上げていた
消えてしまいたかった、結局自分にあるもの、産み出してきたのその全てを捨てて
『そこに残ったのモノはなんだ?』
どこかの誰か、あざ笑うように宣う者が言う。もはや幻想、しかし意味不明な呪文をただ単に唱える私にはそれすらもどうでも

いい雑音にしか聞こえない
「僕の、俺の・・・世界は───」
『正しかった』のか』
『恵まれていた』のか?
なにより───
───『幸せだったのか』のか?

何のために、生まれてきたのだ?

何時以来か思いがけもなく涙がでてきた、その意味は知っている、だが言わない、言いたくない

『寂しい』

その言葉を言ってしまえば負けだ、『孤高』でなければいけない者にとって禁忌の言葉

「Gジャンがポgんjホアgm;L庵msごbjkjkspgtjmps;kgのs;kghjのsjklhm;」

結局その意味すらわからぬまま、いや答えがあるのかしらわからぬまま、私はその言葉を紡ぎ・・・自分の世界を閉じる

永遠に───

 
 

                          

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アヴィオールにフルボッコ!

ベネトナシュが来てるよー

一時的にシリウスちゃんぱわーうぷ

アヴィオールちゃんと勝負!→アヴィオールちゃんは魔王を倒すことよりもアイテムコンプリートに躍起になってる

シリウスちゃんが本気を出してアヴィオールちゃん撃破→ゲームオーバー

ベネトナシュちゃんのところへカムバック

勇者の意向なんでやっぱ負けろと 意向っていうか威光じゃねぇーか

c(`Д´と⌒c)つ彡 ヤダヤダ

ネックレスを取られないためには?

アヴィオールちゃんの仲間になればいいのです!そのために職業を変えるのです!

 

 


主人公:シリウス
勇者のガキ:アヴィオール
彼女:スピカ
神:ベネトナシュ


-------------------------------------
以上原文ママ

適当にもほどがあるだろ・・・・・・


 

男は見下した笑みを浮かべていた。
そうれはもう醜悪で下衆な笑み、こいつの表情を見てどこの誰が「冒険を始めたばかりの勇者(十六歳♂)」だと思うだろう
「くっ、流石勇者の息子ってわけ、か───」
俺はそんな男を前にして朦朧とした意識の中ふらつきながらなんとか“お決まりのセリフ”を吐くとぐったりとその場に前のめりに倒れこんだ
目の前が真っ暗になる───
自分の体から血がドクドクと流れて俺の周りに血の池を作っていく───
ああ、まずいこれは死ぬな。今回ばかりはなんて言うんだろうあの勇者のガキ───アヴィオールの動きがまるで違った、どこをどう見たって「冒険を始めたばかりの勇者(十六歳♂)」の動きじゃない。普通なら剣を持つ手も立ち回りも儘ならぬ状態で俺が手加減してようやく勝てるって話のはずなのに今日のアヴィオールは立ち回りからして熟練されすぎてやがる
『ちっ今回もレアアイテムなしかよ、また最初からやり直しだな』
そんなことを思っているとアヴィオールの奴がもはや勇者とは思えないような言葉を吐きその場から去っていった
もしかしてあれか?アヴィオールの奴、俺が隠し持っている初恋の彼女から貰った“銀奏のネックレス”が狙いなのか?
確かにあれは世の中じゃレアアイテム扱い、売れば数万とする品物だけどそんなものそう簡単に渡せるわけねぇ!!
そんな決意を決めたところで今の俺に、死ぬゆく俺にはなんにもできるわけない
薄れていく意識の中、只々俺は“銀奏のネックレス”が失くならないでくれとだけ願うしかなかった

ここはよくある剣と魔法のファンタジー世界
「ええっと、死んでしまうとは情けない・・・てかまたこのおっさんじゃん、また死んだの?うけるー♪」
俺が目を覚ましたのはその街の一角にある大聖堂、そのちょっとシスターと思えないようなアクセサリーをジャラジャラと付けた金髪の乙女?の前だった
「う、うるせぇ!大体俺はまだ二十三歳だ、おっさん言うな!俺にはちゃんとシリウスって名前がある!」
「どうせまた勇者様にやられたんでしょー。ま、お金落としてくれるからこっちとしては全然どんどん死んでくれていいんだけどー」
「全然よくねぇよ!蘇生代は自己負担なんだから・・・はーっこれで何回目だよ」
俺は渋々ジャケットの内ポケットから銀貨を三枚取り出すとシスターに手渡し苛立ちながら踵を返しその場を後にした
「はぁーーーーっ、これでまた昼は当分一番安い定食だな」
昼前の街の明るさをよそに軽くなった硬貨の入った袋を手の中で踊らせながら俺は思いっきりテンション低いですアピールをしながら街中を歩く
「はっ!そういえば俺のネックレス・・・っ!」
初恋の彼女から貰って、もし心臓を弓矢なんかで狙われた時守ってくれるかなって内ポケットに入れておいたんだが
慌ててジャケットの内ポケットを探るとジャラリと金属の感触が指に絡みつく、取り出してみるとそこには銀色の音符の形をしたネックレスがその手にある。紛れも無い“銀奏のネックレス”だ
「あ、あったぁ!!」
思わず安堵の吐息が漏れる。アヴィオールの奴探しきれなかったか諦めたかはしらないがとにかくよかった
勇者の奴、アヴィオールにやられるのは今に始まったことではない。なぜならあいつに負けることが俺の役割だからだ
“冒険を始めたばかりの勇者に対してギルドの先輩として戦いの厳しさを教えてやる!って感じで戦いを挑み、圧倒的な力を見せるも勇者の潜在的な力を前に惜しい所で敗北する”
そんな長ったらしくて途中で読むのを止めたくなるようなそんな役目が俺にはある
そりゃまぁそんな役目なんだから勇者アヴィオールにやられるのはしょうがないんだけどここ最近あいつが俺の持つこの“銀奏のネックレス”を狙ってどうやってかは知らないけど何度も俺に挑んでくるというのは正直納得がいかない
「とは言っても俺にはどうすることもできない、か」
この世界じゃ勇者様ってのは大陸を治める王様なんかよりも偉い、そりゃもう他所様の家に勝手に上がりこんでタンスとか漁ってもお咎めなしだからな
そう考えると俺の初恋の彼女から貰った“銀奏のネックレス”が奴に持って行かれるのも時間の問題か
「はぁぁぁぁぁぁぁっ・・・」
今日一番のため息を付いたところでちょうど古臭い赤レンガの建物の前、俺の自宅兼ギルド本部である『夜空に飛翔する鷲』のについていた
『夜空に飛翔する鷲』はこの街随一の冒険者ギルドでようは冒険始めたばっかりの勇者、正確にはのちのち勇者になるアヴィオールが王様に言われてここに来て俺が相手にしてやるのさ、「ギルドに入りたければ実力を見せてみるんだな!」ってまぁ今のは俺のセリフなんだがそんでもって俺とアヴィオールが対決してまぁ結局俺が負けるって・・・ああ、これさっきも言ったな
なんか思い出したらテンションがまた下がってきたわ、さっさとギルドの二階にある家に戻って酒飲んで寝たいところだ
「ああ、でも言われるんだろなぁ言われるんだろうなぁ」
気分が重いままナラ材の扉を開ける、シャランと爽やかなカウベルの音がするがすぐにそれは不快な笑い声で掻き消された
「よぉー今日はまた笑わせてもらったぜシリウス!」
その声の主は奥のカウンターの席で酒をあおるように飲みながらこちらを向かってニヤついた表情を見せる。見知った顔だ、ギルドの最長老と呼ばれるプロキオン、白い髭の飲んだくれオヤジだ
しかも役割が“俺がアヴィオールにやられるのをツマミに酒を飲む”とかいうなんの役にも立たないどうしようもないやつだ
「なんだよ俺がやられるのはいつものことだろ」
俺が少し苛立ちながら答えるとプロキオンは笑いを堪えるよう腰に付けた古ぼけた懐中時計を俺に見せつける
「十七秒、最短記録だよ。お前のオヤジも大して強くなかったがこりゃ免許皆伝だな」
「そうかよ・・・俺は悪いけど部屋に戻させてもらうぜ」
付き合ってられないと馬鹿笑いするプロキオン爺の横を抜けようとしたとき、プロキオン爺がサラリと小さく呟いた
「おっ、そういえばお前にお客さんが来ておるぞ、上で待っておるからの」
「は、はぁ!?なに勝手なことしてるんだよ!?」
「そう怒りなさんな、小さい女の子じゃよ。なんでもお前に大事な話があるらしいぞ」
小さな女の子が俺に話?そんな知り合いもいないが一体誰なんだろう
「というか勝手に部屋にあげるなよな、割とマジで」
俺はその言葉だけ残して階段を駆け上がる
「大事な話とかそういうのは勇者様にしろよな」
そうだよ大事な話とかそんな話はあの勇者アヴィオールに話せばいいんだよ。俺の家系は親父も、爺ちゃんもずっと勇者の最初の相手をさせられるそんな役目なんだから、街から出ることもないし冒険したり魔王とかと戦ったりもしない
「そうだよ、俺なんかになんのようが・・・」
二階の一番奥の部屋、そこが俺の部屋だ。どこの誰だかしらないが用事があるって女の子が待っているその部屋の扉を俺はゆっくりと開けた
「フッフッフッ、よくぞたどり着いたなシリウス!」
「てかここ俺の部屋なんだけど?」
思わずツッコミを入れてしまった。目の前にいて訳の解らんセリフを吐いた少女は白くて足まで付きそうな髪に白いワンピース、背丈は俺の腰ほどまでしかない
「知ってまーす!知ってて言ってまーす」
椅子に座る少女の特徴的な深紅の双瞳がこちらを見つめる。ちょっとイラッときたが一応大人なので堪えて笑顔を作り話しかける
「はいはい、それでえっとお嬢ちゃん名前は?」
「よくぞ聞いてくれたぞ!私の名前はベネトナシュ、この世界の神ですよー。もっと褒め称えて良いぞ」
「はい?神様ごっこでもしているのか?」
思わず意味不明なことを言うベネトナシュに大人の余裕も忘れてツッコミを入れてしまっていた
「ごっこじゃないもん!!本当に神様だもん!!」
両手両足をバタバタとさせながら反論するベネトナシュ。余計に子供じみていてどうしたものかと頭が痛くなってくる
「あのさ、俺ちょっと疲れているのよ。遊ぶなら外でやってくれよ、な」
「うわ、私の神様度低すぎ・・・。折角全知全能の神様が迷える子羊シリウスちゃんの悩みを直々に解決しにきたのにー」
「お嬢ちゃんが俺の悩みを解決に?」
この小さい女の子が俺の悩みを解決してくれるって?本当どこまで自分に酔ってるんだか
「あ、そうだ!私がその悩みを聞く前に答えたら神様って信じてもらえる?」
「んまぁ当てずっぽうでもなんでも言ってみたらいい、それで満足したら帰ってくれ俺は疲れているんだ」
「んとね、じゃ勇者アヴィオールに初恋の人スピカちゃんに貰った銀奏のネックレスをしつこく狙われてきゃー全知全能なベネトナシュちゃんなんとかしてー・・・って感じでしょ?」
「・・・・・・へぇーそいつはすげぇや」
俺はそれだけ言うと静かに頭を押さえ考えこむ
・・・おかしい、なんでこの女の子俺の悩みを全部知っているんだよ!しかも俺の初恋の人の名前は今ここで初めて出たし!
でも確かにアヴィオールのやつに銀奏のネックレス狙われているのは間違いないしやはり本物なのか?
「え、じゃあ本当に神様なのかあんた?」
「だから最初から言ってるし!うわ、私の神様度低す・・・」
「それはもういいから!それで俺の悩みを解決してくれるってのは本当なんだろうな!?」
ベネトナシュのおどける様子に少々苛立ちながら俺はちょうど向かいの席に座り声を荒げる
「そもそもだ、なんで俺の悩みをわざわざ神様が出しゃばってきて解決してくれるんだ?普通神様ってのは良くも悪くも平等っていうかそういう立ち位置にいるもんだろ?」
「えーそれは、なんていうの?上司に二週目のイベント面白いのをなにか追加しろとか言われたからとか・・・・・・ってそんなのどうでもいいじゃん!私この世界の神なんだから敬えー休みくれー敬えー!」
再び意味不明なことを口走りながら再び子供っぽく手足をバタバタとさせるベネトナシュに思わず「こんな奴が本当に神なのか」とため息が漏れる
「それでその神様とやらは本当に何とかしてくれるのか?アヴィオールに銀奏のネックレス取られない方法なんてあるとは思えないけど」
「あるよ、アヴィオールぶっ殺せばいいじゃん♪」
「は、はいぃ?」
今この神様、サラリと残虐非道な言葉口走ったぞ。しかも妙に楽しそうだし
「殺すっていうかまぁ力の差を見せつけてやればいいのよ、んでもって『うぇーん、こいつ強すぎ何回も戦うとか無理!もう先進んでやるー』ってなればいいでしょ?」
「まぁ確かにそうなれば御の字だけど、今のあいつ滅茶苦茶強いぜ?俺が本気を出しても勝てるかどうか」
「フフフッ、そこは神様の私の力でなんとかしてあげようじゃあないの!」
ベネトナシュは目を輝かせ机に乗り上げるとビシッとこちらに指を突きつける
「な、なにするんだよ」
「えっとーシリウスちゃんは一応中級者の冒険者って役目だからそれなりに装備は充実しているでしょ?」
「装備が充実・・・確かにそうだがこれはどれもレプリカでしかないぞ」
あくまで俺の役目は演出だからな、実際に冒険に出るわけでもないからレプリカで問題はない
「だったら私が本物と変えてあげる」
言うが早い、ベネトナシュが指を鳴らすと俺の視界が突如として強烈な光で真っ白になる
「わ、なにしやがった!?」
「だから言ったじゃん、装備をレプリカから本物に変更っと」
「変更って・・・」
「そろそろ目を開けてみたらぁ?目の前には超絶美少女がいますよー?」
ベネトナシュの言う通りにというわけではないが俺はゆっくりと目を開く
そうしてまじまじと自分の装備を見つめてみるがまぁレプリカから本物になっただけだから見た目が変わるわけはなかった
「本当にこれ本物、なのか?」
「当たり前でしょーついでにほらなんかこう体の奥から力が湧いてきたりしてない?」
「言われて見れば確かに」
さっき死んだばかりで倦怠感があったんだがそれがいつの間にかなくなっており、むしろ体が熱く力がみなぎっている
「ついでなんでレベル99にしてみた!」
「は、はぁ!?そんなことしていいのかよ!」
「いーのいーの!『二週目からは敵キャラが皆レベル99!やばい!』って説明しとくからさ」
説明しておくって一体誰に?とは思ったがそんなことよりも俺はこの高揚感に少し溺れかけていた
この力があれば間違いなく勇者アヴィオールには勝てるだろう、それであいつが諦めてくれれば問題ない
「それよりも・・・」
どうやら俺は自然とあいつ、アヴィオールを倒してもいいってこの状況を楽しんでいた
早くこの力を試したい・・・いつもやられている身からすれば徹底的にアヴィオールに仕返しができるこれは願っても無いことだ
「感謝するぜ神様、これで一発あいつの目を覚まさしてやる」
「うむうむ、ちゃんと神様に感謝するとは成長したなシリウス!」
「ああ、でもとりあえず明日に備えてもう寝るんで帰ってくれないかな?」
「え、あのちょっともうちょっと感謝の言葉みたいなの欲しいなっていうか」
「はいはい『神様すごい、すごい』。だからもう帰ってくれ」
さらりと言った俺の言葉にベネトナシュは静かに辺りを見渡した後、息を大きく吸い込み・・・
「私は神様だって言ってるでしょ!!丁重に扱えーーーーーーっ!!!」
無駄に大きい声で辺り当たり散らしたのだった



「さて、もうすぐか」
次の日の朝、俺はギルド本部『夜空に飛翔する鷲』の入口前で腕を組み奴の、アヴィオールがやってくるのを待っていた
ちなみに昨日の夜あれから散々と喚きちらした年齢不詳、自称神様のベネトナシュ氏は丁重に俺の部屋から追い出しておいた
下の階にいるプロキオン爺の証言からその後、朝までずっとプロキオン爺にやれ「バグが多すぎる」とか「休みくれー」だとか意味不明な発言の後突如としてどこかに消えたらしい
「しかし、しかしだ・・・この力は残ってる」
酔いどれプロキオン爺の証言だから信用できないけど神様であるベネトナシュは消えたようだが昨日の夜ベネトナシュが俺に施した
装備や強さは次の日になった今でも残っている、夢なんかではない
「どこかで見ているのかはわからないが急に意地悪とかしないでくれよ」
誰に言うわけでもなく小さく呟く。程なくして街の奥のほうから真紅のマントを翻し勇者アヴィオールがやってくるのが目に入った
「来たか・・・」
いかにもっていう爽やかそうな顔立ちの金髪の好青年、だが俺はこいつの正体の知っている。人のレアアイテム狙って何度も戦いを挑んでくるとんでもない野郎ということは
『ここが『夜空に飛翔する鷹』ギルドですか?』
俺の目の前まで真っ直ぐとやってきたアヴィオールは消え入るような小さな声で呟く、お決まりのセリフだ
そもそもお前何回目だよここに来るの!とかなんか初心者装ってるのバレバレだぞとか言いたいがそれは黙っておく
「ほうお前みたいな若造が俺のギルドに入りたいっていうのか?」
「いや違う、俺はお前の持っている“銀奏のネックレス”が欲しいだけだ」
「はっ?ちょっと待て!」
アヴィオールはもはや役目とか無視した言葉を吐き捨てるとそうそうに剣を引き抜き剣先をこちらへと突きつける
「レアアイテム落とせ・・・レアアイテム落とせ・・・」
恨み言のようにそう呟きながらジリジリとこちら距離を詰めてくるアヴィオールの表情は昔のような面影はない
見た目はそう変わってないんだが、昔というか以前はもっとこう「僕が勇者を倒すんだー」的な使命燃えていたはずなんだが
今の奴はどこか焦燥感に苛まれているというか窶れているそんな風に見える
「一体どうしたってのかは知らないが銀奏のネックレスは俺の大切な物だ、簡単には渡せないぜ。さっさと魔王を倒しに行けよ」
「断る。銀奏のネックレスはこの世で唯一つ、お前しか持っていない。だから早く落とせ」
「俺しか持っていない?そんな馬鹿な」
確かに銀奏のネックレスはレアアイテムだけどこの世で一つとかそんな物ではないはず、いやそれともあれかスピカちゃんは俺のためにそんな大切なものをプレゼントしてくれたというのか?
「だったら尚更渡せるわけないぞ!これはスピカちゃんから貰っ───」
「問答無用!!」
俺の言葉を遮りアヴィオールが斬りかかる。不意をついたつもりなんだろうがその動き、俺にはしっかり見えていて地面を一気に蹴ると距離を離し腰の剣を引き抜く
「ちっ、避けやがったか」
「あーあーもう知らないからな、先に手を出したのはお前の方だぜアヴィオール」
「だからなんだっていうんだ?」
語気を荒げるアヴィオールに対して俺は余裕の表情を見せながら剣を構えた
「さっきまでのは警告だ、口で言って諦めるならば見逃そうと思ったんだが手を出されたならば───今日はお前を倒す!」
「はぁ?俺の二週目はアイテムコンプリートって決めてるんだよ!だから立場をわきまえてさっさとやられろ!!」
その言葉と共に一気に振り下ろされる剣。しかし昨日は全く見えなかった剣の軌跡が今ははっきりと見える!
「だから今日はやられるわけにはいかないっての!」
アヴィオールの両手で振り下ろされた剣をいともたやすく俺は片手に持った剣で受け止めた、レベル99になった俺にはこの位の芸当たやすいものだ
「なっ、馬鹿な!?」
「だから無駄だっての、生憎と───」
一気に俺は剣を払い、アヴィオールの剣を空高く弾き飛ばすとそのまま一歩踏み込み・・・
「今日負けるのはお前の方だぁぁぁぁぁぁっ!!」
袈裟斬りに斬りつけた。ああ、斬りつけた・・・それはもう思いっきりにな
「ぐうっ!!!俺は勇者で貴様はただの雑魚だってのにぃ・・・!!か、必ず蘇って貴様を地獄にたたき落としてや・・・るッ!」
どこの魔王だよと言わんばかりの捨て台詞と共にアヴィオールはあっさりとその場に崩れ落ちた
奴の体から血が流れ大地に広がっていくのをまじまじと見つめながら俺は剣を払い鞘に収め自分のしたことに少し興奮していた
なんていうか本当にやってしまった、うん
「これ寧ろ諦めるというよりも逆効果のような気もするがまぁいいか」
最後の恨み節からしてなんか嫌な予感がするがそれよりももう一つ気になることがあった
「勇者って死んだらどうなるんだ?」
俺の足元で見事な死体となったアヴィオールをは全く消える様子とかはない、死亡回数に定評のある俺の経験からすればそろそろ消えてあのアクセサリーをチャラチャラと付けた金髪のシスターの所に行くはずなんだけど
「さすがにこのままってことはないだろう、ない・・・ないよなぁ?」
思わず不安の言葉が漏れる。いや大丈夫、大丈夫だとは思うんだけど俺がアヴィオールを倒したなんて状況が今までなかったから気が気ではない
そんな不安な俺の気持ちが現れたのかなぜか辺りが一気に暗くなる
「あ、あれ?なんで暗くなっているんだ?」
辺りを見渡すが暗雲が覆った様子はない、俺の目がおかしくなっているのか?
目を擦ってみるがそれでも辺りの様子は暗いまま、いやむしろさっきよりも暗さは増していた
「どうゆうことだよ、これ」
俺の言葉に誰も返答することなくゆっくりと周りの景色が闇に染まっていく、そうしてしばらくして全く何も見えなくなった世界に誰ともわからない低い声が響き渡った





───GAMEOVER...





「はっ!?ここは!?」
意識が覚醒し辺り、周りを見渡す。そこはさっきまでの街中ではなく見慣れた自分の部屋だった
「おお!よく戻ったなシリウス、ここでセーブするか?」
「セーブってなんだよ!」
背後からの言葉に思わず振り返ってツッコミを入れる
「ってこの状況まさかお前の仕業か?」
目の前にいたのは紛れもなく昨日自称神様を名乗った少女、ベネトナシュだった
「仕業ってなんだよぉー私は神様だぞー!お供え物しろー!」
相変わらず手足をばたつかせて子供っぽく反論するベネトナシュに俺は冷ややかな表情で言葉を吐く
「神様なら知っているんだろ?あんたの言うとおりにアヴィオールの奴を倒したらなんか暗くなってなぜかここに来た、この状況についてさ」
「えーシリウスちゃんがここに戻ってきた理由?知らなーい?」
「そいつは残念、全知全能な神様ならきっとこの状況を詳しく知っているんだと思ってたぜ。所詮神様って言ってもその程度かー残念だなー!」
「なにをー!全部知ってるんだからね!神様ナメるにゃ!」
ちょっと自尊心を弄ってやるとあっさりと口を割るベネトナシュ、なんというか子供よりも扱いやすい
「シリウスちゃんがここに戻ってきたのはアヴィオールは死んじゃうとシリウスちゃんみたいに教会じゃなくてセーブポイント、『過去の記憶』に戻るの。その時にこの世界の記憶も一緒に巻き戻るんですねー♪」
『過去の記憶』に戻る、聴き慣れない言葉だったがそれを聞いて一概の不安が脳裏を掠める
「ちょっと待て、それってアヴィオールの記憶はどうなってるんだ?俺に殺された記憶はあるのか?」
「んにゃ、アヴィオールの記憶?そうだねぇないんじゃないかな?時間が戻ってるんだからむしろシリウスちゃんが記憶を持ったまま過去に来ていることのほうが不思議だよ」
ああ、やはりそうゆうことになるのか。ということは俺がいくらアヴィオールを倒したところで何の意味が無いじゃないか
「なになに?シリウスちゃん意味深な顔しちゃってー♪」
「わかってないようだから言うけどアヴィオールが『自分が倒された』って記憶がないって言うんだったらいくら倒したところで無駄だろ」
俺の言葉にベネトナシュは最初はきょとんとした様子でこちらを見つめ返していたがしばらくして「あーそっか」と納得したように手を叩き
「あ、これじゃあ何回やっても無駄だねー♪」
と、おどけて見せた。っていうか提案したのお前じゃないかよ
「これじゃ確かに銀奏のネックレスは取られないけど永遠に戦い続けることになるじゃないか」
朝起きてギルドに行ってアヴィオールを倒す、すると時間が戻って最初に戻る。
アヴィオールの奴は記憶が失くなるから“ただ一回”「シリウスにやられた」だけでそりゃ苛立ちはするだろうがそこまでだ
だが俺はどうなる?俺にはついさっきアヴィオールを殺した感覚がまだ手に残っている。この感覚が心地良いものかといえばそんなわけはない、時間が巻き戻るとはいえ確かにあの瞬間俺はアヴィオールを殺した───人を殺したんだ
それを俺は銀奏のネックレスを取られないためには永遠にアヴィオールを殺し続けなければならない
「・・・俺には無理だ」
正直アヴィオールを殺し続けるなんてのは俺には無理だ、第一アヴィオールがそれで諦めるってのならわかるが一回やられただけで諦めるような勇者じゃない、となればいずれ根負けするのは俺の方だ
これはもう銀奏のネックレスが奴の手に渡るのを諦めるしかないな
「んまぁアヴィオールの記憶はないけどプレイヤーの記憶はあるというかまぁいいか・・・とりあえず、あきらめムードでお悩み中なそこのシリウスちゃんに朗報です!」
意気消沈している俺とは裏腹に何故かベネトナシュ楽しそうだった
「なんだよ、朗報とか言ってどうせまた役立たずな情報だろ?」
「もぅシリウスちゃんは私をもっと神様と讃えるべきだよ!折角良いイベント思いついたのってのにぃ」
良いイベントってなんだよ?相変わらず良くわからないがこの神様とやらは俺の悩みとは別のところで動いている気がする
だけどもうそんなことはどうでも良かった
「あのねあのね、勇者アヴィオールの仲間になればいいんじゃないかなって思ったわけですよ」
「な、仲間?」
俺はその言葉にハッとなってベネトナシュへと向き直った
仲間になる───それは思ってもない提案だった
「仲間になればぁ、銀奏のネックレスは一応アヴィオールの物になるでしょ・・・でも所有者はシリウスちゃんな訳!きゃー私なんていう閃きなのかしら天才すぎる!きゃー!」
「確かにそれは名案だ、けどなんで今まで黙ってた?」
「え、いやーそれはなんというか今思いついたというかもうすぐマスターアップだから面倒くさい作業したくなかったというかなんというか、まぁいいでしょそんなこと!だけど仲間になるのならシリウスちゃんの職業を変更しないとねぇ」
そう言うとベネトナシュはぼうっと上の方を向くとなにやらブツブツと呟き出す
「んー折角二週目、レベル99なんだから奇抜な職業がいいのよね。ええっと、うん!じゃこれにしよう!!」
職業を変えるってどうゆうことなんだ?まぁでもそれで銀奏のネックレスが守れるっていうんだったらどんな職業にでも変わってやろうじゃないか
「それで俺はなんの職業になればいいんだ?」
俺の言葉にベネトナシュは視線を戻すと抑揚のない口調でとんでもないことを口走ったのだった
「え、えーと……お相撲さん、かな?」


          

                                                     END


「あんめいどおぶおーるわーくす 2」


世界でも有数の大富豪、五臓六腑家。
都内某所にあるお屋敷はどっかの野球場が何十個と入るくらいに広い
「んっ・・・んにゃ?」
俺、そんな大富豪の家の一人息子、五臓六腑大二郎が目を覚ましたのはあたり一面を綺麗な花で彩られた庭園の白いベンチの上だった
「あれ?俺なんでこんなところで寝てるんだ?」
朦朧とした意識の中、目を擦りながら辺りを見渡すがそこは全く見覚えのない場所だった
「こんなところで寝ちゃうのはともかくここがどこかなんてまぁそんなことはよくあるから気にしないけどね」
欠伸を大きくすると独り言とともに俺はのっそりと起き上がる
寝る前の記憶が曖昧だが自分が着ている学生服を見るとどうやら着たままここでお昼寝をしていたみたいだ、五臓六腑家の屋敷は無駄に広くて自分でも場所がいまいち把握できないがそんなことどうでもよかった
「おーい、誰かメイドさんいないのー?」
無駄に広い庭園に俺の声が響き渡る。どこにあるか知らないけど広すぎて建物みたいなものさえ見当たらないけどどうせ近くにいるんだろう、幼馴染であり今は借金で俺のメイド長をやっている西条院加絵奈が最近五臓六腑家の金を使ってやたら無駄にメイドを雇っていたからおそらく“五臓六腑家御主人様のお休みを遠くから見守る専属メイド”みたいなのがいるんでしょ?と思ったんだけど
「あ、あれー?誰もいない?」
予想と反して俺の声は閑散とした庭園に無駄に響くだけ
「え、ちょっとー誰かいないのー?御主人様がいますよーここに貴重な御主人様いますよー」
「───遅れて申し訳ございません御主人様!」
「なぁんだぁ、いるんじゃん」
ちょうどそう俺の背後でメイドさんの声がして軽口叩きながら振り返ったとき
思わず俺は絶句した、そう目の前にいたのがなんていうかその
「申し訳ございません御主人様、“五臓六腑家五臓六腑大二郎様専属メイド長 西条院加絵奈”ただいま参りました!」
腰まで伸びる長い黒髪を揺らし長い距離を走ってきたのであろう大きく息を切らしながらやってきたのは紛れもなく俺の幼馴染でありメイド長である西条院加絵奈その人であった
でも、なんか、その、おかしい?
見た感じは高校生一年生とは思えないほどの、えー正確に言えばDカップの無駄に大きい双乳をはじめとした抜群のプロモーションに清廉された顔つきで実に見慣れた西条院加絵奈なんだけど
「今、もしかして“御主人様”って言った?」
「は、はい!御主人様?私何か御主人様の気に障ることしましたでしょうか?」
俺の言葉に挙動不審に慌てふためく加絵奈の姿を見るとますます違和感は強くなる
いやだってなんていうか、これなに?作者がキャラ設定忘れてるのか?
俺の幼馴染である西条院加絵奈といえば家の事業が失敗して借金地獄に陥りよもや体を売るしかない!?ってピンチのところを俺が颯爽と救ってメイド長って役職を与えてあげったってのに口を開けば二言目には俺のことを『キモイ』と連呼するようなそんなツンデレ系(だといいなという希望だけど)メイドさんのはずなんだけど
こんな従順そうな感じだとこれじゃさ話としても成り立たないんじゃないの?
「いや別に気に障るっていうわけじゃないけど気にはなるっていうかなんかいつもの加絵奈とキャラ違うし・・・・・・もしかして偽者?」
「そんな!私は紛れもなく御主人様の専属メイド長西条院加絵奈です!!そのキャラが違うのはその説明させてもらってもいいですか?」
「う、うん」
俺が小さく頷くと加絵奈は恥ずかしそうに頬を赤らめつつもじっとこちらを見つめながら言葉を選ぶように口を開く
「心を入れ替えなおしたんです。大二郎、いえ御主人様に助けていただいてなければ今頃酷い目にあってたというのに私、素直になれなくて・・・・・・申し訳ございませんでした」
加絵奈が深々と頭を下げる。それを見て思わず俺は呆気に取られてしまった
「ええっ?じゃそのあれ?本当に俺の専属メイドになってくれるの?」
「勿論です!!その御主人様さえ良ければ、ですが」
・・・・・・まじで?
思わず俺は辺りをキョロキョロと見渡す。なんかここまできて調子に乗ったら背後から『じゃじゃーん、ドッキリカメラでしたー』なんて展開だって考えられる
「あの、もしかしてやっぱり私今まで御主人様に酷いことしてきたからダメですか?」
加絵奈がぐっと俺に近づいてくる、その距離は腕を回せば抱き寄せられるほど近い
ふわりと加絵奈の長い黒髪から甘いシャンプーの匂いがする
「私を見捨てないでください御主人様!」
「いやちょっと加絵奈?」
「御主人様のためだったら私───」
加絵奈がギュッと俺の手を掴むとそのまま自らの胸に押し付ける
「こうゆうこともできますし、なんでしたら今ここでお、押し倒していただいても結構です」
「ま、マジデ!?」
頬を赤らめつつも加絵奈は「御主人様がお望みなら」と顔を背ける。思わずその言葉に俺は動悸が止まらなかった
いやだってそのさっきからギュッと押し付けられた胸の感触は柔らかくて初めて触ったけど「これは間違いない、加絵奈の胸!」と変なところで自信があるし願ってもないシチュエーションだよ!
このまま押し倒してここじゃ書くことも苛まれるようなことしちゃってもいいんだけど・・・
これだけは、これだけはひとつ確認しとかないとこれからのやることにガッカリというなの支障をきたす
「あのさ、加絵奈お願いがあるんだけど」
「はい、なんでしょうか御主人様?」
「俺の頬をつねって欲しいんだ」
「頬を、ですか?そうゆうプレイをお望みですか?」
「そうゆうわけじゃないんだけど、とりあえずお願い」
加絵奈は俺の言葉に小さく「わ、わかりました」と答えると俺の右頬を抓る
「えいっ!」
それはもう加絵奈は思いっきり抓る、抓った、抓るとき、抓れば、抓ろ!
「あれ?全然痛くない。ってことはええっとどうゆうことなんだ?」
「夢ってことじゃないですかね?」
「あ、そうゆうことか───」
やっぱりそうだよなぁ、うんそうじゃないかと思ったんだ。世の中そんな美味しいことばかりあるわけがないなんてことはとうの昔からわかっていたんだ、この夢もじきもう終わるんだろう
そうわかっていても俺は頬を抓られながら最後までしっかりと押し付けられていた胸の柔らかい感触を味わっていた
悪足掻きくらいさせてくれ、と

───目が覚める。
「んっ・・・あがががが痛たたたたたた!!」
意識が戻り、自分のいるところが自分のベッドだと気がついた矢先思いっきり頬に激痛が走る
手は加絵奈の胸などありもしない空を掴んでいた。あっれー?何だったんだ俺の絶対的な「これは間違いない、加絵奈の胸!」という自信は
・・・いやそんなことよりも
「あのーまじで痛いんですけど加絵奈さん」
「それで?夢の中まで私の名前呼ぶとか本当キモイからやめて欲しいんだけど?」
いつも通り冷ややかな表情を浮かべながら俺の幼なじみ兼メイド長の西条院加絵奈は答えると更に頬を抓る力を強めてくる
「痛い痛い、痛い痛いってば!」
「あんまり手間を掛けさせないでほしいわね、いいからさっさと起きてよ」
「わかった!ギブです!起きますから!抓るのをやめてください!!」
俺はあまりの痛みに体を起こす。それを見て加絵奈はというと満足気に「よろしい」と抓る手を放す
「いってぇーこれがメイドさんのやることかよぉ」
思わず抓られた頬を摩りながらそんな言葉が漏れる。でも心のどこかで『やっぱ加絵奈はこうじゃなくちゃなー』とも思う、いや別にこの状況を望んでいるわけじゃないけどね
「てか今何時よ?物凄く早くない?」
窓から覗くはまだ薄暗い、こんな朝早くからなんだっていうんだ
「朝の五時よ、これでも早いほうなんだら」
「なっ、朝の五時!?なんなんだよこんな朝早───ぐほっ!」
そこまで言いかけたところで俺の顔におもいっきり『何か』がブツケられる、勿論投げたのは俺の専属メイド長加絵奈さんですよ
「学校行くに決まってるでしょうが!!昨日とか無駄に対決とかさせられて学校行けなかったんだから!」
「が、学校?」
「全く、さっさと着替えてよね!」
投げつけられた『何か』は俺が通う高校、桜陵学園の制服だ。気がつけば加絵奈の服装もいつものメイド服じゃなくて制服である紺色のブレザーだということに気がつく
「最近全く学校に行ってないんだから今日こそは行くんだからね!」
「だからといって五時は早くないか?」
確かに五臓六腑家はやたら広くて敷地内からでるのにだってかなりの時間を要するけど学校だったら高速ジェット機を使えば三十分もあれば行けるはず、こんな早くに起きる必要もないんだけど
そんな疑問を浮かべる俺に対して呆れた様子を浮かべこちらを指さし
「最近あんた全く勉強してないでしょ、だから学校行くまでの時間で勉強するのよ!」
「うわ、マジかよ」
「何言ってるのよ、学生の本分は勉強に決まってるでしょうが。さっさと準備する!」
正直面倒臭いと思ったがそんなところで駄々捏ねるほど俺だって子供じゃない、と思う
「へいへい、わかりましたよとりあえず着替えるから出て行ってくれよ。それとも加絵奈が脱ぎ脱ぎしてくれるのかな?」
「するわけないでしょキモイ!あ、二度寝とかしたらさっきよりもひどい事になるから覚悟しておきなさいよ!」
辛辣な言葉とともにアッカンベーをすると加絵奈は部屋から出ていく、珍しくそれっきりだった。いつもだったらもっとこうぐぐいって不満というか文句というか嫌味というかそういうもの・・・・・・なかった
いや確かに普通の人にはわからなかったと思われてもしょうがないけど幼なじみの俺にはなんとなくだけどわかる
「なぁーんか拍子抜けるんだよなぁ」
あっさりと出ていった加絵奈になんとなく物足りなさを感じていた、なんだろなぁこの感覚
夢の中のあの加絵奈もなんか加絵奈らしくなかったけど現実?の加絵奈もなんか調子が狂うなぁ
「まぁでも考えてもしょうがないか」
世の中わからないことなんてのは沢山あるもの、考えたところで人の心なんてわかるわけがない
でもまぁお金で解決できないことはないとは無駄に自負してるんだけどね
そんなことを思いつつ俺は眠い目を擦りながら渋々制服の袖に手を通すのであった


「御主人様、こちらでございます!」
制服に着替えて中庭にでるとちょうどそこにはアメリカ陸軍のCHー47チヌークがどっから持ってきたのか当たり前のように鎮座しその側に立つ金髪ショートカットのメイドさんが大きくこちらにむかって手を振っていた
「メイド長加絵奈様がお待ちです」
「えっと君は?」
「私、“五臓六腑家御主人様を学校へお連れする専属メイド”彼方でございます。前回も出てたんでこれを気にお見知りおきをお願いしますね」
「前回とかよくわからないけどうん、よろしく」
自分でも思うんだけど、深く考えないところが俺の良いところだ。いろいろツッコミ所があったんだけどそんなことを気にせずヘリの中に乗り込む
「へぇー結構広いんだ」
CHー47チヌークは貨物用ヘリのあのーえっとヘリでも普段思いつくようなプロペラが一つのタイプじゃなくて長い胴体に2つのプロペラがついてるタイプのやつだ。
ただ外から見る感じだとあの軍用特有のカーキ、迷彩色ではなく真っ白なカラーリングにデカデカと『五臓六腑家専用ヘリ』ってPOP体で書いてあるし中は大きく改装されて真っ赤な絨毯に本革製の黒いソファ、天井にはこれ動いたときに揺れまくるんじゃないかっていうシャンデリア
「遅い、何分待たせるのよ」
そんな豪華な内装のソファに座っている俺のメイド長(これ意地でも押してくよ)西条院加絵奈が不満そうな声をあげる
「これでもそれなりに早く来たつもりだって、そういえばいつもの添い寝メイドさんとかいなかったけど?」
とりあえず急かされたということもあって今まで気がついてなかったが昨日からその朝起こしてくれる専属メイドとか添い寝してくれる専属メイドとか朝の具合をチェックしてくれるメイドさんとかいた気がするんだけど?
「あーあの子達がいるとまともに学校にも行けないでしょ、だから休みの時だけにしたのよ。そんなことよりそこに早く座りなさいよ」
「まぁ確かにそれは言えるな、でもなんでそんなに焦らせるんだよ」
ブツブツと嫌味を言いながらも加絵奈のちょうど前のソファに腰掛ける
「大体学校まで行くのにこんな早くに行く必要ないじゃん。というか俺は思うんだ、むしろ学校が来いよ!ってさー♪敷地内に学校があったほうが───」
「またお金で解決しようとする!」
「じょ、冗談だってば」
調子に乗って言ってみたが加絵奈がこれ以上にないってくらいの不機嫌な目付きでこっちを睨んでくるので思わず俺は言葉を止めた
なんかよく知らないけど加絵奈は俺が何でも金で解決しようとすると本当に嫌そうな顔するんだよね
加絵奈は嫌そうな顔のまま大きく一つ溜息をつくと
「はぁーえっとね、こんなに早くに起こしたのは昨日の分の勉強を復習するためよ。椎名さん入って」
なんか格好良く指を鳴らした。やばい、なんか真似したくなるわ
「し、失礼致します!」
加絵奈の声に奥の部屋から一人のメイドさんがスカートを翻し俺達の前に立つ
見たことのないメイドさんだった、黒いショートボブに見るからに薄幸そうな色白の少女・・・それが椎名さんの初対面の印象だった
「わ、私!“五臓六腑家御主人様の代わりに学校の授業を受ける専属メイド”椎名と申します!」
「こんな奴にそんな緊張しなくていいわよ椎名さん、こんなのそこら辺に落ちてるゴミみたいな感じで話しかければいいのよ」
それ酷くね?と思いつつもすぐに彼女の、椎名さんの様子を見て一介の不安がよぎる
「ちょっと加絵奈!俺の代わりにこの子が学校行ったの!?」
「そうよ、だからなに?」
「なにってもうこれじゃ俺学校行けたもんじゃないよ!絶対に学校に行ったら『なんだよーあのメイドさん紹介しろよー』とか囲まれるって!」
「別に私は困らないけどまぁ安心しなさいよ。椎名さん、ちょっとアレやって」
「わかりました加絵奈メイド長」
そう言うと俺の不安をよそに椎名さんはペコリと頭を下げるとすぐに奥へと下がって行く
「いやあのちょっと加絵奈、アレってなに?」
「それはすぐわかるわよ、彼女が“五臓六腑家御主人様の代わりに学校の授業を受ける専属メイド”って呼ばれている理由がね」
「んぁ?なんのこっちゃさっぱり分かんねぇ」
“五臓六腑家御主人様の代わりに学校の授業を受ける専属メイド”をやるのになんか資格とかでもあるのか?俺の代わりに従業を受けるだけだろ?そんなの誰にだってできるだろうに
そう思っていた、でも次に“五臓六腑家御主人様の代わりに学校の授業を受ける専属メイド”椎名さんが奥からその姿を現したとき、俺は思わず絶句、目が覚めた
「お、お待たせしました御主人様、加絵奈メイド長様」
「は・・・はぁ!?え?その顔ちょっと俺と・・・・・・同じ!?」
姿を現した椎名は先程の薄幸そうな顔ではなく、あれだなんの冗談かしらないがこの俺『五臓六腑大二郎』そっくりだった
顔だけ俺で首から下はメイド服なんて全くどんな冗談だよ、その姿には思わず自分でもキモイと思ってしまった






つづく・・・
「盲信サマエル」


「おかしいなあ、イメージ的には回転してるんだけどなあ」
私の彼氏、如月師走はゴロゴロとスローペースでレーンの端っこを転がっていくボーリングの玉をを見つめながら呟く
(下手ね、下手糞だわ。自信満々と言っていてこれとはね)
そんな白のワイシャツにデニムを履いた師走の後姿を眺めながら私───水無月弥生は嘆息していた
案の定というか当たり前というか勢いのないボーリングの玉はカーブすることなく静かに端のピンだけを倒しただけ
「いやでも見た弥生ちゃん!?10番ピンだけ倒すなんて逆に凄くない?」
「全然、そういうゲームではないですから」
なにかを成し遂げたかのように言う師走に対して私は缶のミルクティーを口にしながらテンション低く返答する
「いやでももし10番ピンだけ残ったときにこの才能は発揮されると思うんだ」
「そんな才能よりも自信満々に言っていたストライクを見せてください」
繰り返される単調でつまらない会話
倦怠期?いや彼、如月師走と付き合い始めたのは今から丁度一週間前。デートに至っては今回が初めてだ
しかも告白をしたのは私のほうで、本当はもっと恋人らしくすべきなんだろうけどどうにもうまくいかない
どうしてもあのにやけた顔を見るとこれが“任務”というのも忘れて辛辣な態度をとってしまう
『任務』、そうこれは私に課せられた任務
私、水無月弥生は新興宗教『三栄神教団』の特殊教団員であり彼───如月師走に任務として近づいたのには理由がある
「どぐらっしゃー!!あーくそ!9本かー!!」
奇声を上げながらボーリングの玉を投げ続けている如月師走、彼はこう見えて
この国の内閣総理大臣『如月暦』の一人息子だ。
『三栄神教団』はこの腐敗した国家を浄化するために内閣総理大臣を影から操ろうとしている、師走はそのための言わば人質・・・というわけだ
しかしならば近づいていればいいだけでなんでこんな恋人ごっこまでしなければいけないのか、上司の指示とはいえそこは理解不能だ
「そうだ僕ばっかり投げてるのもアレだから弥生ちゃんも投げなよ」
「いえ私は見ているだけでいいです」
「そんなこと言わずにさ、楽しもうよぅ」
そう言って隣に座りぐっと顔を近づける師走に思わず恥ずかしさから顔を逸らすと私は立ち上がる
「わ、わかった一球だけ投げるから見ていろ」
冷静を取り戻し先程まで師走が使っていたエメラルドグリーンに輝く12ポンドのボーリングの玉を持つと長いレーンの先に並び立つ白い十本のピンを視界に入れる
「要はあれを倒せばいいんだろう」
「“要は”ってもしかして弥生ちゃんボーリング初めて!?なんだったら僕が手取り足取り胸取り教えてあげようか?」
「結構です」
そんな冗談にも私は冷たく言い放つとゆっくりと歩を進めながらフォームをつくりピンへ向けて玉を転がす
ボーリングという競技はやったことないが師走が下手糞なりに投げていたのと周りの人間の投球を見て大体の“動作”は“把握”していた
「おおおっ!そのコースいいんじゃない?!」
師走が歓喜の声をあげるがこれ以上見る必要がなかった
「覚えておくといい、一番ピンと三番ピンの間に入射角3度から6度の間で投げればストライクは取れる」
私が振り返り師走にそう言った所で背後で気持ちのよい音とともにピンの倒れる音がした
「す、すげぇ!本当にストライクだよ弥生ちゃん!」
頭上の液晶に表示されるストライクの文字に大喜びの師走を他所に私は小さく溜息をついた
(なにが楽しいのかさっぱりわからない)
「なるほど、よし!入射角度3度から6度の間を狙えばいいんだね!よっしゃ見ててね弥生ちゃん」
(本当に出来るのか?)
わかっているのかいないのかそう師走が屈託のない笑顔を見せ意気揚々と再びレーンに向おうとした矢先、私のスカートのポケットに入れてある携帯電話から着信音が鳴り出した
「すまない師走、電話だ。しばらく一人でストライクを目指していてくれ」
私はすばやく電話を取り出すと踵を返し歩き出す
「え、いやちょっと弥生ちゃん!?弥生ちゃーん!」
なにか背後でなさけない声が聞えたような気がしたが気にせず私はボーリング場から外へとでた

小高い丘の上にあるボーリング場、夕刻ということもありそこから眺める町並みは真赤に染まっていた。携帯電話の画面には私が唯一登録してある同じ教団員であり私の直属の上司である“さつき”の文字が浮かんでいる、私は辺りに人がいないのを確認して携帯電話の受話ボタンを押す
「こちら弥生、今は任務中のはずだがなにかようかさつき?」
声を潜め言う私にたいして電話の主はおよそ人間には聞えないと言ってもいいような物凄く高い声色で答える
「きゃっほぉ!弥生ちゃん師走君とラブラブしてるかなー?」
「全然していない」
さらっと返答すると耳を劈くような更に高い声が携帯電話から漏れる
「えーダメじゃん!ダメじゃん!ダメダメじゃん!!んもーせっかく私が素敵な服まで用意してあげたんだから大体これ任務なんだよわかってるのぉ?」
素敵な服───任務とはいえこんな身を守る範囲の狭い極端に短い黒のミニスカートや胸元の大きく開いたジャケットを寄越したさつきを恨む
「わかってる。けど上手くいかないものは上手くいかないのだからしょうがない」
「うぬぬ、やっぱり私も一緒に行った方がよかったかもー。あ、でもそうしたら師走君私のほうにメロメロになっちゃうかもーキャー」
「私としてはそっちのほうが好都合だ、こうゆう任務は向いていない」
代わってもらえるのなら本当に代わってもらいたいところだ。さつきはずっと教団内で過ごしてきた私よりもずっと外の世界を知っているし人との付き合い方も上手なんだから
「はいはいぐずらないの、しょうがないじゃない教祖様のお告げは絶対なんだから」
「わかってる、わかってるが・・・」
『三栄神教団』教祖様のお告げ通りにしていれば幸せになれる───
その言葉を信じて今まで幸せに暮らせていたしこれからも信じていけるその自信はある、けれども如月師走といるとなぜか心に蟠りが生じる
電話口の煮え切らない私の感情が伝わったのかさつきはなぜか小さく笑い出した
「なにがおかしい?」
「いえいえなんでもないわ。ところで一つ弥生ちゃんにお願いしたいことがあるんだけど」
さつきの声色が一気に沈んだのがはっきりわかった。私の本職である仕事を彼女が依頼するときはいつもこうなので何の話なのかはすぐにわかった
「誰を殺せばいい?」
私はより声を潜めて言葉を発する。私の本職、本来の仕事それは『三栄神教団』に仇なす政治家や著名人の抹殺。『三栄神教団』のことをなにも知らないというのにカルト教団だとか問題行動を起こすために早く潰すべきだとかそんなことを言っているそんな輩の抹殺、自業自得に口は災いの元とはまさにこのこというのだ───
そんなことを言わなければ本当に殺されたりはしないのにな
「位置は・・・ちょうど今丘の上のボーリング場の、外にいるのね。そこからなら見渡しがいいから良くわかると思う一際大きい赤い建物があるでしょ?」
さつきの言葉通りに辺りを見渡すと確かにそれらしき建物が見える
「あそこか」
「都立康応大学、あそこのウヅキとかいう教授が今度の国会の答弁で『三栄神教団』に関してありもしないことをでっちあげるという情報を得たわ。おそらく三十分ほどで大学から外に出る頃だわ、後で写真を送るから上手く始末して」
「了解した。けど師走はどうする?」
どうでもいいことだけど今もちまちまとストレートを取る為に投げ続けている師走を放っておくのは少しだけ気になるというか頭の隅っこで気になってしょうがなかった
「ああ、師走君ね。まぁ後で『女の身支度には時間がかかるのよ!ぷんすか!』って可愛く言っておけば大丈夫じゃない?」
「相変わらずいい加減だな」
「なぁに弥生ちゃんがささささっと五分くらいで仕事してくれるって信じてますから私。それじゃお願いしますよぅ」
「・・・・・・わかった、終わったら報告する」
私はそれだけ言って携帯電話の通話ボタンを切る
正直納得は出来なかったがこれ以上くだらない問答を繰り返すのも面倒だ、さつきはいつもあんな風だし問答をすればまず先に折れるのは私のほう、だから私も深く考えないことする
私にとっては師走の相手をするよりも教団に仇なすものを始末しているほうが楽だ
そう思い静かに息を吐いて大学へ向って歩き出そうと一歩踏み出したとき
「にしし、だーぁーれーだ!」
気の抜けた声とともに突然視界が真っ暗になる、それが背後から目隠しされたのは直ぐわかったしそんなことをやる人物が誰かのもすぐにわかったのだが
思わず次の瞬間には思考よりも先に手が出てしまっていた
「さぁて誰か・・・ごふぉア!」
背後、みぞおちに向ってまずは強烈な肘うちをいれ視界の拘束を解き
「ちょ、ちょっと弥生ちゃ───」
そのまま腕を掴むと手首をひねり上げ一気にコンクリートの地面へと投げ飛ばしていた
「うひゃおわぁぁぁぁっ!!」
投げ飛ばされた男、というか如月師走は奇声を上げてぽーんとおよそ数メートル投げ飛ばされおもいっきり地面に落ちた
「しまった・・・」
流石に私も思わずしまったと反省、地面に突っ伏し倒れる師走に駆け寄った
「大丈夫か・・・ですか、師走?」
「いやぁははは、ものの見事にやられちゃったねぇ」
むくりと師走は顔を起こすとなぜか笑っていた、あの高さまで投げ飛ばしておいた私がいうのもなんだが受身でもとらない限り平気でいられるはずがない
「怪我はない?いきなり背後に立つからつい癖で投げ飛ばしてしまって、えっとなんだ・・・ご、ごめんなさい」
「あれもしかして弥生ちゃん心配してくれてるぅ?うれしいなぁ」
ニコニコと笑う師走からは怪我を負っている様子も見られない、怪我していないことは良かったんだが逆に何か嫌な予感をも感じさせた
なんで一般人のしかも運動のたいしてできない、更に言えばろくにボーリングでストライクも取れないような運動オンチの師走が突然投げられてこうも簡単に受身を取ったのか
「そうそうそういえば、弥生ちゃんの言う通りに投げてみたらさっきストライクでたんだよ!」
「そ、そうそれはよかった」
「いや本当もうビシドバァーンと決まってさ、いやー見せたかったなぁ」
「一回出たくらいで満足しないほうがいい、です」
「大丈夫、大丈夫!コツは掴んだからさ、今度はキッチリ目の前で見せてあげるよ」
師走はそう言うとボーリングのフォームをやってみせる。相変わらず変なフォームだがあえてツッコんだりはしないでおく、私には速やかにやらなければならないことがあるんだから
「えっとしかしすまない師走、少しその用事を思い出したんだ。だから───」
「残念だけど行かせるわけにはいかないよ、弥生ちゃん」
突然ざぁっと辺りに風が吹く
そのせいかはっきり師走が何を言ったか聞き取れなかった
ただ先程までとうって変わった真剣な様子で師走がこちらを見つめていた
「あの師走、今なんて?」
私の問いに師走は答えない、じっとこちらを見つめると不意に私の腕を掴むと
「なんで弥生ちゃんみたいなこんな細い腕してる女の子が人殺しなんてしなくちゃいけないんだ?」
誰に言うわけでもなく静かにその言葉を漏らした
「なっ・・・」
その言葉と師走の急変に思わず私は動揺しかけた。どうゆうことだ、まさか師走は私の正体を知っているとでもいうのだろうか
「『三栄神教団』の水無月弥生ちゃん、内閣総理大臣である僕の父親を操るために僕に近づいたんだよね」
師走の顔は笑っているが彼の握る腕に力が篭っているのが物凄く痛い
「なにをわけのわからないことを言っている師走」
「知らない振りしたってダメだよ、あんまり僕の情報網を甘く見てもらっては困るなぁ」
───失態だ
内閣総理大臣の息子で能天気なだけの男だと思って完全に如月師走という男に対して油断していた
この男どうやってかは分からないが確かに『三栄神教団』のこと、そして私達の作戦についてのことを知っているようだ。どこまで知っているのかはわからないが知られてしまった以上、やるしかない
利き腕を師走に押さえられているがそれでも本気を出せば師走一人倒せないほど私も普段から鍛えてはいるつもりだ
「そうか如月師走、秘密を知られた以上お前には消えてもらわないと───」
「いやいやいやちょっと、弥生ちゃんストップストップ!」
私の振り上げた手を前に師走は手を離すと慌てた様子で両手を挙げ降伏の姿勢を見せる
「ちょっと、ちょっともー落ち着いてよ弥生ちゃん、そもそも僕を殺すなんて任務じゃないでしょー!」
「・・・・・・。」
私は構えを解かずじっと師走を睨みつける
「目がマジだし、はぁ・・・とにかく僕を殺すのは止めた方がいいよ。僕を殺した瞬間に君達の情報が国家の各関係機関に流れちゃうようにしてあるから、君達『三栄神教団』は間違いなく今までのやってきたことにより崩壊を余儀なくされちゃうよ」
「それは本当なのか?」
「嘘だと思うなら僕を殺してみればって、ダメ!それはやっちゃダメ!!と、とにかく敵意はないっていうのをさ、信じてよ」
あまりに気の抜けた師走の声に私は渋々構えていて腕を降ろす
「全く信用してない、殺したら情報が漏れるだとかそうゆうのも含めて」
「まぁそうかもしれないけどそれは本当だよ。あ、でも大丈夫まだ弥生ちゃんの秘密を知っているのは僕だけだから」
「そもそもなんで教団のことを知っている?」
「えっ、それ聞いちゃう?いやーあのーそれはー」
その言葉に急に師走は顔を真っ赤にして挙動不審な様子を見せる
私は警戒するように再び手刀を振り上げる
「言え、でないと殺す」
「弥生ちゃん怖い怖い!い、言うからその手を降ろして」
「だったら早く質問に答えろ!」
「あれだよ、弥生ちゃんが大学に編入したのって二週間前でしょ」
「確かにそうだが」
如月師走に接触するために私がさつきの手はずで大学へと編入したのは確かに今から二週間前のことだ、だがその“二週間前”という言葉が妙に気になった
「二週間前?師走と出会ったのは一週間前じゃないのか」
そう気になったのは私と師走が出会ったのはまぎれもなく一週間前のはずだ
そこで初めて会って任務として告白して・・・
「僕は編入してきた二週間前から弥生ちゃんのことを見てたよ」
「そうなのか?」
編入して最初の一週間は情報収集のために普通に生活していたのだが、私としたことが師走の方が私を見ていたなんて全く気が付いていなかった。
「うん、長く伸びた黒髪が綺麗でね、儚げな表情といいなんていうかとにかく一目惚れしちゃたんだよ。それからずっと弥生ちゃんのことが気になってね色々調べたらその『三栄神教団』ってのがでてきてさ」
そこまで言って師走は視線を外し少し言葉を選ぶように続ける
「ちょっと怪しい宗教に入ってるし声かけるのやめようかなとか思った矢先だよ、そのまさか弥生ちゃんのほうから告白されるとは思わなくて」
「なるほどだから私の正体を知っていてなお告白を受けたのか」
「それだけじゃないよ。僕は弥生ちゃんが───好きな女の子が人を殺してるなんて状況が耐えられない。その弥生ちゃんにとって『三栄神教団』にどんな思い入れとかがあるのかはわからない、けどなんとかしたいんだよ、だから弥生ちゃんの秘密だってばらしていない」
「如月師走・・・」
私は思わず振りかざしていた手を降ろした。正直どうすればいいのか自分自身では良くわからない状況になっていた
よくわからない、師走の考えていることに対してどう答えればいいのか?
いつも、いつもならさつきや教祖様の言うとおりにしていればそれだけでよかったのに今は何故か胸の奥の鼓動が激しく私を苛める
「弥生ちゃん、僕は───」
師走の瞳が私をじっと捕らえる。何故だかわからない、師走の真っ直ぐな瞳から目を逸らすことができなかった
「『三栄神教団』とか任務とか関係ない、その僕は君のことがす・・・」
「悪い師走、その告白は受けられない」
思わず師走が口走るよりも先に言葉が出た。それはもう自分が発したと思っていた以上に大きな音で辺りに響き渡った
それは自分でもわからない照れていたのかなんなのか
沈黙が二人の間に流れる。しばらくして口火を切ったように声を発したのは如月師走だった
「ええーここまで盛り上げておいてそれっていうかせめて最後まで言わせて欲しいというか!?じゃ友達からは?友達からはいいよね!?」
「と、友達?」
締りのないなんというか先程までとは打って変わって悪足掻きの様にしか見えないくらい滑稽なものだった
「そうそう友達からでいいんでお願いします!!」
『友達』───
だけどその言葉を聴いた時なぜかずっと閉ざしていた私の心になにかが燈った気がした。
ずっと忘れていた感情、どこかに忘れてきた懐かしい感情
「友達───か、まぁそれなら構わない」
自分でも良くわからないまま何故か思わずそう答えてしまった
「えっ本当!やったー!!」
歓喜の声をあげる師走に対して私はなんでそう言ったかもわからないくらい混乱していた、と思う
何故今まで感じていなかっただろうという感情が私の心の中を埋め尽くしている。
唯一つ、今わかることがあるとすれば
たぶん自分は、閉じているのだ。本当は人恋しいくせに、近づこうとしない。友だちが増えることに慣れていないのだ。
プロフィール
HN:
氷桜夕雅
性別:
非公開
職業:
昔は探偵やってました
趣味:
メイド考察
自己紹介:
ひおうゆうが と読むらしい

本名が妙に字画が悪いので字画の良い名前にしようとおもった結果がこのちょっと痛い名前だよ!!

名古屋市在住、どこにでもいるメイドスキー♪
ツクール更新メモ♪
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