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日記と小説の合わせ技、ツンデレはあまり関係ない。 あと当ブログの作品の無断使用はお止めください
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この物語は私、氷桜夕雅の高校時代からの親友((〃▽〃)キャッイッチャッタ)のM氏の書いている「千里の道まっしぐら」と近頃全く更新してない「メイド服とおまじない」のコラボ企画?です
ちなみに本編を書いているのは私ではなく普段全然書かないM氏なのでそこんところ注意してね!!


大体分かる?千里の道まっしぐらの加筆あらすじ(勝手に書いてみた

小さい頃から春美ねぇこと高峰春美(タカミネハルミ)の営業する喫茶店「四季彩」が大好きだった主人公、聖千里(ヒジリセンリ)
しかし親の都合で転校することになり、千里が再び地元に戻ってきたのは高校一年になってからのことだった
久しぶりに会う懐かしい幼馴染 春美ねぇの妹であるツインテールハリセンツッコミの高峰美夏(タカミネミカ)。
なぜか爺さん口調の僕っ娘、浅葱良(アサギリョウ)に千里の悪友?工藤満(クドウミツル)そして小さい頃から大好きだった春美ねぇ
千里は懐かしい面々との再会に一つの決心をする

───「喫茶同好会」を作ると!

この話のーあらすじ
部員が規定の三人となり喫茶同好会として活動をスタートさせた千里達ではあったが
千里達には部室がなかった!!
そんな中、生徒会長 咲山瑠久の提案によって突如として演劇部との部室争奪戦をやることとなった、対決内容は『3日間の模擬店の収益勝負』
演劇部はメイド喫茶で勝負をするということを良から聞いた千里は「このままじゃ勝てない・・・」と春美ねぇに相談を持ちかける
そして「喫茶店を知るには実際に喫茶店で働いてみるのが一番」ということでー春美ねぇの知り合いである天城仁さんという人がやっている「リチェルカーレ」へ研修へ行くのだった!!


↓こっから本編
---------- ヤキトリ -----------

この細い路地を抜けたところに目的地があるはずなのだが・・・
俺たち『喫茶同好会』+αは、春美ねぇの地図を頼りに到着した喫茶店を目指してやってきたが
「こんな辺鄙なところに本当に『最強の喫茶店店長(マスター)』がいるのかねぇ」
と満がつぶやく。
俺もちょっと不安になってはいるが、春美ねぇが出鱈目を言うとは思えないので、
「いるに決まってんだろ、それよりも『最強』ってのがどういう意味なんだろうなぁ」
と肯定しつつ話を微妙にずらす。
「ふむ、確かに喫茶店の店長に付く肩書きにしてはえらく物騒ではあるな」
その話に乗ってくれたので俺も続ける。
「だよなぁ。大体、『最強』とか付くといったら、・・・たとえば、『昔は番長やっていた』とか」
「そうそう、それから『全国制覇を拳一つで成し遂げた』とか」
「それで喫茶店をやっているならその人にあこがれた後輩あたりに店を手伝わせているとかはどうじゃろうか」

と三人で喋っていると、

「ほら、もうすぐ着くわよ」

と先を歩いていた美夏が声をかけてくる。

そして、

「ここが“リチェルカーレ”ね」

と美夏がつぶやく

「えらい雰囲気が良いのう」

「ああ確かに、いかにも渋いって感じが貴族や紳士が利用しますってぇのをかもし出してんな」

「コーヒーの香りもとても良いですねぇ」

と皆がそれぞれの感想を述べる。

「よし、店の前でグダグダ言ってても始まらない、入ろう」

と皆を促して店の扉を開けた。

 
カランカランッ

「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様」

扉のベルを鳴らしながら店に入ると、メイドさんが笑顔で出迎えてくれた。

「・・・ってメイド喫茶ぁ?!」

と美夏が叫んだとおり、“リチェルカーレ”はまごうごとなきメイド喫茶だった。

「あ、ありのまま起こったことを話すぜ、・・・春美ねぇの地図に従ってやってきたらそこはメイド喫茶だった。お、おれ自身何言って・・・」

「大丈夫か、満?」

横ではお約束を言いながら呆然としている満とお約束を知らず純粋に心配している良。

そして、

「はぁ~、かわいらしい店員さんですねぇ」

と、いつもどおりのポヤポヤ具合の綾音先輩。

ま、まあ、メイド喫茶であろうと喫茶店ではあるし、春美ねぇの紹介でもある。

「と、とにかく場所も店も間違っていないはずだ。ここで呆然としていても邪魔なだけだし、とっとと目的を果たそう。」

と言って先頭に立つ。

「席にご案内いたします。 」


とこちらが入る気持ちをつけたところで、タイミングよく声をかけてくれて、つかず離れず絶妙な距離をキープしながら席へと案内してくれるメイドさん。

そして流れるような仕草で案内された俺はそのままメイドさんの言われるがままに席へと座り、注文を・・・

「って違うでしょうがっ!」

ひゅぱーんっ!!

と美夏にハリセンでつっこまれて我に返る。

「そうだ、俺たちはここへ研修に来たんだった」

頭を振ってメイドさんの魔力?を振り切り改めて尋ねる。

「すみません、俺は城山学園高等部の聖千里です。本日は春美ねぇの紹介でこちらを勧められたのですが、・・・天城様はご在宅でしょうか? 」

というと綺麗なメイドさんは

「あ、天城でしたら只今外出中でございます。」

ニッコリ笑顔で答えてくれた、それから

「え、と本日はどういったご用件でしたか? 」

と尋ねてくる。

「え、と春美ねぇの紹介で、ここでアルバイトをする為に面接にきまひた。」

その返答をしたがつい早口になってしまった為、少々咬んでしまった。

「そうでしたか。では天城が戻ってくるまで、奥の部屋にてお待ちください。」

といって「ご案内いたします。」と奥の部屋に通してくれた。

 
ガチャ

『はちゃっ、エリスまたやっちゃいました~\(゜ロ\)(/ロ゜)/』

奥の部屋に入ると同時に42型の液晶テレビからアニメ声が流れてきた。

「あ、四葉ねえさん、ここで休憩してたんですか」

「あら五葉・・・と誰?」

「ええと、この人たちは天城さんの友人からの紹介でアルバイトの面接に来た人たちです。」

「そう・・・、まあ別にいいけど、私には関係ないんだからね」

と会話を打ち切り再びアニメにのめり込もうとしていた。

そんな二人の会話にちょっと退屈した俺は満に向かい小声で、

「・・・今の彼女のツンデレ値は幾つくらいだと思う?」

「まあ、いいとこ【7ツンデレ】といった所か、月代先輩の【98ツンデレ】には遠く及ばないな」

と、あほトークをする。

ぴくぴくっ

・・・何か四葉さんがこちらのトークに対し反応しているように見えた。

すると、そのタイミングで

「またせたな」

と俺たちが入ってきたほうから低く静かだが、重みのある声がした。

 
「五葉、四葉、恭治が騒いでたぞ、早く仕事に戻れ。」

「・・・元々天城さんが出かけていなければすぐでしたけど、かしこまりました」

「べ、べつにサボってたわけじゃないんだからね(棒読み)」

というと二人は店のほうに戻っていった。

「さて、高峰(春美ねぇの事)からさわりは聞いているんだが、ここで働きたいだと?」

と、声や眼力による恐ろしいほどのプレッシャーを与えてくるこの男、その風貌は、

・・・黒のスラックスに黒のスーツ、バッチリと決めたサングラスとオールバック、一言で表すなら『黒豹』だった。

「は、はい、お、私たちは今日から喫茶店の経営について勉強させていただく為、ここで働かせてもらおうと思い、参りました。」

「ふむ・・・、で、名前は?」

「聖千里です」

「工藤満です」

とまずは男性陣が自己紹介するが思いっきり聞き流され、

「浅葱良じゃ・・・です」

「高峰美夏です」

「麗江綾音ですぅ」

と女性陣の自己紹介に対して真剣に聞いていた。

・・・何?この差別感

「わかった、まずは研修を認めよう。俺の名前は天城仁(あまぎじん)。ここ、リチェルカーレの店長だ。

それからさっきの二人がホール担当の音瀬五葉と音瀬四葉だ。そしてもう一人調理場に神楽坂恭治という男がいる」

とスタッフの紹介を済ませたあと、

「じゃあ、まず女子共、更衣室で制服に着替えてもらおう。制服は更衣室にすでに用意してある。」

・・・はい?

「ちょ、ちょっと、何ですでに制服が用意されてるのよ?」

と美夏があわてて尋ねる。

「ああ、高峰からサイズを確認させてもらって用意した。安心しろ、さっきの五葉に任せてあるから、俺たち男陣はそういったことは聞いていない。」

「あぁ~、春美さんにみんなのサイズを聞かれたのはそのためだったんですねぇ」

とのんびり口調で言う綾音先輩

「そういうことだ、わかったらとっとと着替えろ。」

といきなり今日から手伝う流れになっている俺たち

「男共はこっちだ、着いて来い」

と言うと早々に歩いていく。

おいてかれまいとついていく俺と満。

そして、着いたのは厨房だった。

「あ、天城さん、お疲れ様です」

「おう、恭治、ご苦労。・・・そんで、突然なんだが、今日から研修ということでしばらく手伝うことになった『聖 千里』と『工藤 満』だ。ここでお前が面倒を見てやれ。」

「え、ちょっと、天城さんっ?!」

「恭~治っ!」

突然の指導命令に対し、慌てふためく恭治さん

そんな恭治さんに天城さんは叫んで恭治さんの言葉を遮る。

「この程度であわててどうする?硬派を目指しているならならどんな不測の事態が起きようと慌てるな」

何を言っているんだこの人。

そんな言葉で納得するはずが・・・

「そうですねっ、わかりました。」

ってえぇぇぇぇっ!?

「納得しちゃうんだ・・・」

隣を見ると満も同じような表情をしている。

「おい、ボーっとしてないでとっとと自己紹介をしろ」

と天城さんに言われてあわてて恭治さんと自己紹介を済ます。

「俺の名前は神楽坂恭治だ。よろしくな」

「お・・・、私は聖千里です。短い間ですがご指導の程よろしくお願い致します」

「工藤満です。お願いします。」

本当に簡略的に

「じゃあ任せたぞ、恭治」

と言うとホールの方へ去っていった天城さん。

「じゃあ、千里と満だっけ?そう呼ばせてもらうが問題はないよな?」

「えっと、別にお、私は問題ないです」

「ん?別にかしこまらなくても良いからな、そんな私だなんて無理に使わなくても良いぞ」

「いいんすか?ありがとうございます」

「そんで、研修なんだっけ?どういったことを学びに来たんだ?」

「いや~、実は春美ねぇって人にここに『最強の喫茶店店長(マスター)』がいるって聞いたもんで俺達の活動している喫茶同好会の参考になると思い、勉強に来ました」



                                              つづく
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「ちょこれぃとくろすえっじ」

「あなた、遺伝子異常を起こしていないカカオの種子のありそうな所知らない?」
赤茶けた砂漠の廃墟に一人蹲る老人に私は問いかける
やせ細り皺だらけ老人は光を失ったその目でじっとこちらを見つめるとしばらくして首を横に振った
「そう、ありがとう」
私は礼を言うと肩からかけている雑嚢から数種類のカプセルを取り出すと老人の前に置く、食料が食べられなくなったこの世界では人間が生きていくためにはサプリメントで栄養を補充するしかなくなっていた
人間以外の全ての動物、植物が突如遺伝子異常を起こすという現象が起きてから約二千年の歳月が過ぎた。一説には当時の大陸を支配していた国の軍事兵器の影響だとか自然を破壊しつくした人間への罪だとか色々言われてきたが今となっては定かではない
ただ、間違いなくこの世界において人間が生きることはとても難しくなったのは間違いない
「ちょっと、ちょっと待って!」
老人の下を立ち去ろうとした私に背後から若い男の声がする。振り返ると小汚い布切れを纏い無精髭を生やした男が大きく手を振りながらこちらへと走って来ているのが目に入った
「カカオの種子のあるところ、知っているの?」
「いや、それは知らない。そもそもカカオってなに?」
「なら用はない」
私は軽く嘆息すると踵を返し歩き出す、こんなところで油を売っていられるほど私は暇ではないのだ
「待って、待ってって!君のその胸の紋章、『管理局』の人だよね!」
男の言葉を無視し駆け足気味に歩を進める。こうゆう人間を相手にしてしまっては面倒だ、こいつらの次に言うであろうまず言葉は決まっている
「管理局は遺伝子異常を起こしていない生き物を集めているんだよね?だったら───」
「食べ物ならない、管理局から配られているサプリメント以外はな」
「それでもいい!この辺の地域の管理局の奴らサプリメントを俺達に配らずに自分達だけで独り占めしているんだ!」
男の言葉に私の足を止めた。管理局にそういうことをする人間がいるという報告は聞いていたがそれよりも気になったのが
「私がその管理局の奴等だったら、お前死んでるぞ」
管理局の配るサプリメントなくてはもはや人間は生きていくことはできない、管理局に逆らうことはこの世界での死を意味する
「あんたの紋章、奴等のとは違うもっとお偉いさんがつけているものだ、わかるんだ」
確かに私の紺色のコートに刺繍された紋章はこの地域のものとは色が違う、ここのような僻地にいる管理局は管理局の中でも一番低い位を示す茶色であるが私は管理局本部の人間でありその中でも特殊な遺伝子管理者と呼ばれる立場であるため紫色をしている、それを知っている人間は少ないはずなのだが
「詳しいな、だが管理局の悪口をあまり言わないほうが長生きできるぞ」
私は振り返りそう言うと雑嚢からサプリメントのビンを取り出すと男に向って放り投げる
「さっすがお偉いさんは話が分かる!あ、俺がそうゆうことに詳しいのは情報屋やってるからで名をドニチエコ、ドニーって呼んでくだせぇ」
「呼ぶつもりはない」
再び踵を返し私は歩き出す、先ほども言ったが私には時間があまりないのだ
「いやちょっと待ってよぉ!名前、君の名前教えてよ!」
「翠歌だ、満足か」
「翠歌ちゃん!いい名前だ!!でも情報屋としてはまだ気になることあるんだよ、そのなんだっけ君が探しているなんとかの種子っての」
「カカオの種子だ」
「そうそれ!それって美味いの?」
パッと顔を輝かせながら矢継ぎ早に質問してくるドニーに対して私の歩く速度はどんどん早くなる
「味は───知らない、管理局のデータベースだと『ちょこれぃと』と呼ばれるものの材料になるらしい。それは甘くて少し苦いと聞いた」
「苦いのかぁ、それはあんまり食べたくないなぁ」
「・・・・・・っ!」
残念そうに項垂れるドニーを他所に私は何かを違和感を覚えその足を止めた
この人を惹き付ける様な甘い香り、だがそれが食べ物に飢えた人間をおびき寄せる奴等の手口だというのは認識している
「あれ?どうしたの翠歌ちゃん?」
「五月蝿い、黙れ、私に近づくな!!!」
叫びと共に私は後ろにいるドニーを蹴り飛ばす。それは苛立ってのことではない、私の足元乾いた砂漠の砂が異常な盛り上がりをみせたからだ
「っってぇ!!!いきなりなにするんだよ翠歌ちゃ・・・えええっ!!!」
地面を勢いよく転がりながらも顔を上げたドニーが思わずその盛り上がった砂山、そしてそのなかに見える異形の生物に叫び声を上げる
「カテゴリーエラー!」
盛り上がる砂山から飛び降りながら私は叫ぶ。
「クケクケクケクケクェェェェヤァァァラァッァァ!!!!」
奇怪な声と共に異形の生物の姿が露になる。身の丈人間である私の六倍あろかという胴体に六つの顔、六つの右手、六つの左手、六つの右足、六つの左足が合わさった異様な姿におもわず嫌悪感を覚える
「な、なんだこの化け物は!?」
「情報屋という割には知らないのね。こいつはカテゴリーエラー、管理局の警告を無視して遺伝子異常生物を食べた人間の末路よ」
「これ人間かよ!」
「クックックッ!ニンゲン、ニンゲンニンゲン!!」
ほとんどの顔がだらしなく涎をたらしどこを見ているのか分からない中、一つの顔がじっと私達を見つめ声を上げた
「カンリキョクは、管理局は───遺伝子異常生物を食べるなと警告しているが俺は思う。もっともっともっともっともっと食べるべきだと!!そうすればほらこんなにニンゲンは強くなれる!!ヒヒッ、ヒヒヒッ!!」
カテゴリーエラーが両腕を振り上げ巨体に似合わず俊敏な動きで砂を巻き上げ飛び上がる
「う、うわぁぁぁ!」
「ちっ、叫んでいる暇があれば逃げろ!」
腰を抜かしているドニーに向って私は叫びながらカテゴリーエラーから距離をとり雑嚢から剣装布を取り出す
「人間のカテゴリーから外れた者っ!」
「外れた?ちっがぁぁぁぁぁぁぅっ!越えたんだよ俺はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
地響きのようなカテゴリーエラーの怒号と共に跳躍ひとつで私の前に着地すると力任せに両腕を振り下ろす
「腕が六本で六倍パンチ!!両腕あわせて十二倍のイリョクダァァァァ!」
「翠歌ちゃん危ない!」
振り下ろされた腕が地面を殴り砂漠の砂がカテゴリーエラーの身の丈ほどまで舞い上がる。確かに当たればただでは済みそうにはないな、当たればだが
後方へ跳躍すると剣装布から両刃の投剣を数本取り出しカテゴリーエラーへと投げつける。投剣は神速をもってして空を切りカテゴリーエラーの肉体を貫かんと飛ぶ、が───
「ろぉぉぉぉぉく倍の防御力!!きくかぁぁぁぁぁっ!!」
カテゴリーエラーは両腕を振り回しいともたやすく投剣を弾き飛ばす
「クックックッ!管理局とはいっても所詮、しょせぇぇぇぇん小娘だな!!ここんところ遺伝異常生物しか食べてなかったから美味しくいただいてやるぜぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「管理局をなめないほうがいい」
長い銀髪が風に靡き真紅の双眸がカテゴリーエラーをじっと睨みつける
「───絶対必中武装“ソードビッカー”」
「はぁぁぁぁぁ?何をいってやがっ───」
次の瞬間、声を上げていたカテゴリーエラーの首が飛んだ
「すげぇ!弾かれた剣が戻ってきた!」
「あばぶるびゃぁぁぁぁぁっ」
残りの頭達が涎を垂れ流し身体を大きく揺らしながらこちらに向ってくるがもはや勝負は決していた
「あぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
弾かれた投剣は空中で向きを変え、再び神速をもって次々とカテゴリーエラーの身体を刺し貫いていく
何本目かの腕が、頭が飛び宙に血しぶきを巻き上げたところでカテゴリーエラーは身体機能を停止───死んだ
「管理局すげぇ!!なになに翠歌ちゃんその武器なに!?」
先程まで腰を抜かしていたドニーが打って変わって嬉しそうにこちらに駆け寄ってくる
「くっ、邪魔だ!全く時間が無いというのに」
そう言ってドニーを振り払うと私はどこまでも続く砂漠を見つめ深く息を吐く
「えーなに?翠歌ちゃん、なにをそんなに急いでるんだい?俺に協力できることだったら言ってよ」
「今日はバレンタインだ───」
私は消え入るような声で呟いた

 

                                                  つづかない


「あんめいどおぶおーるわーくす 後編」

「あの御主人様、私“五臓六腑家御主人様を学校へお連れする専属メイド”彼方と言います、今からなら高速戦闘機を飛ばせばまだ間に合いますがいかがしましょう?」
「いやごめん、今日はどうしても決着をつけないといけないことがあるから休むよ」
「そうですか、それでは“五臓六腑家御主人様の代わりに学校の授業を受ける専属メイド”椎名を派遣しておきます」
そう言うと彼方は一歩後ろへ下がると深々と頭を下げ踵を返し帰っていく
俺の代わりに授業を受けるだって?おい、大丈夫かよ明日から俺学校行けるのか?なんか学校に着いた途端囲まれて『おいー昨日代わりに来た子紹介しろよー』とかなんとか言われそうで怖い、しかし今は決闘集中しないと俺は雑念を捨て少しはなれたところでなぜか一人仁王立ちしている加絵奈へと向きなおす、それとほぼ同時に辺りに大音量の声が響き渡る
『さぁ!こちら五臓六腑家敷地内室内第十三コロシアムよりお送りしております御主人様対メイド長の世紀の一戦が今まもなく始まろうとしています!!実況は私“五臓六腑家御主人様の決闘を実況する専属メイド”うるめがお送りいたします!!そして解説はもちろんこの方“五臓六腑家御主人様の決闘を解説する専属メイド”棗さんです!今日はお願いします棗さん』
『はいーどうも、解説専属メイド、略して解専メイド棗でございますぅ。』
『えー棗さん、今日の決闘どう見ます?』
『そうですねー御主人様は朝から一発発射してますからね、賢者モードで冷静な判断が期待できますね』
『おお、流石棗さん最新の情報を仕入れての分析流石です!』
いつの間にかコロシアムには観客に実況解説、ジュースやお弁当の売り子にチケット販売のダフ屋まで揃って大掛かりなものになっていた
「それで決闘ってなにをやるんだよ」
俺はこんな状況を生み出した張本人である“五臓六腑家御主人様が決闘をするさいの仕切り専属メイド”雅に少し苛立ちながら言葉を吐く
「いいでしょうそれでは今回の決闘をご説明します。まずは御主人様、メイド長様と一緒に戦っていただけるメイド達に登場してもらいましょう!」
雅が指を鳴らすとコロシアム内の照明がグッと落ち、ちょうど俺と加絵奈二人の背後にある扉にスポットライトが当たる
ああ、ちなみに今俺の周りにはメイド達はおらず俺一人だ。雅が決闘をする際の戦力分析として一旦俺からは離された、そりゃそうだアクセルさん達は心強いが着せ替え隊のメイドたちがいたら決闘どころではないからな
『さぁ御主人様、五臓六腑大二郎様と一緒に戦うことになったメイドはぁ!!ご存知、“五臓六腑家御主人様の警護部隊専属メイド”隊長アクセル、ラピスラズリ姉妹です!!』
実況の声の中スポットライトに照らされながら先ほどまで僕の周りを警護していてた三人は歩を進め僕の前にやってくる
「アクセルさんが俺と一緒に戦ってくれるんですか?」
「ええどうやらそのようですね、しかしご安心ください御主人様。その御身は必ず私達がお守りいたしますので」
「・・・ラピス、頑張ります」
「ラズリ達が居ればどんな敵にも負けませんよ!」
アクセルさんの言葉に双子のラピスとラズリが続ける、アクセルさん達は実に戦力として心強いのだがこの決闘の場ででてくるってことに一概の不安が過ぎる
確かこの決闘を仕切っている雅は言っていたはずだ、この決闘は「お互いの戦力を分析し平等な戦力で」と、つまりだ俺の味方にアクセルさんみたいないかにも強そうな人がついているってことは当然加絵奈のほうにも───
『それでは次はメイド長加絵奈様と共に戦うメイドが入場します!!』
実況の言葉と共に加絵奈の背後の扉にスポットライトが当たる、先ほどからずっと仁王立ちで黙っている加絵奈の様子が不気味で余計に不安を煽る
『登場するのは“五臓六腑家暴徒鎮圧専属メイド”シリウスだぁー!!』
暴徒鎮圧?また仰々しい役職のメイド名前だと思ったが彼女がゆっくりとその姿を現したとき、思わず俺は心の中で思った
───これはまずい、と
出てきたメイド───いやもうこれメイドと言っていいのかわからないが180cmはあるだろうという長身に腰まで伸びる黒髪、そして両手には鋼鉄製のブレードのようなものとハンドガンをそれぞれ装備しており目元は黒いバイザーので覆われているので表情こそわからないがその彼女を取り巻くオーラというか殺気のようなものは俺みたいな素人でもわかるほど恐ろしいものだった
一応なのかメイド服着てるけどもうこれメイドじゃないよ!
「御主人様、気をつけてください彼女───シリウスは私が知っている中でも最高クラスの兵(つわもの)です」
「そ、そんなに強いの?」
「見てもらえばわかりますがこちらの戦力が三人に対してあちらは一人、現に私も彼女と戦場で幾度か戦ったことがありますがまず勝てたことがありません」
淡々とアクセルは事実を述べているけどその言葉に俺は気が気でならない
鼓動が異常に早くなり冷や汗が頬をつたっていくのがはっきりと分かった
「いや、それって俺達勝てないって事じゃないの?」
「それは早計でございますよ御主人様、確かに戦場で私はシリウスに勝てた試しはありませんでした。敗北しおめおめと逃げ帰るしかありませんでしたが今は状況が違います。ここは戦場ではなく、決闘と言えど命を取り合うこともない言わばゲーム───ならばこちらにも勝機はあります」
「ほ、本当なのかよ」
あくまで冷静なアクセルの言葉に思わず不安な俺の気持ちを代弁する言葉が出る、ただそれでも彼女の視線はじっとシリウスと加絵奈を見つめていた
「お願いねシリウス、大二郎に厳しい現実を教えてやるんだから」
「御意」
加絵奈の言葉にただ一言漏らすとシリウスは静かに頷く、悠然としたその様子にむこうはむこうでなにか余裕のようなものさえ見える気がしてならなかった
「それでは双方舞台を彩る役者が揃ったところでルール説明と行きましょうか」
雅が分厚い本をペラペラと捲りながら俺と加絵奈のちょうど間に立つ
「今回のルールは簡単です、お互い持った銃火器で双方のキング・・・つまり御主人様かメイド長に命中させたほうが勝ち、当然アクセルさん達の持つベレッタM12ペネトレイーター、シリウスさんの持つハンドガンベレッタM8000クーガーには実弾ではなくペイント弾を装填させてただいていますが当たるとそれなりに痛いので覚悟してください。そして人数的に加絵奈メイド長様の方が少ないため“五臓六腑家暴徒鎮圧専属メイド”シリウスさんには追加武装を容認してあります、簡単に分かるのは鋼鉄製ブレードに特殊移動装置“ローラーブースター”などですね、これら全てを含めてお互いの戦力をイーブンといたします、ただしあくまで勝敗を決めるのは銃火器による命中のみなのを心してください」
「あのアクセルさん、ブレードはわかるけど特殊移動装置ってのは?」
「ローラーブースターというのは彼女バイザーと連動したブーツ底面に装着された球状物質が随時高速回転することにより瞬時に自己の思った方向へ移動できるものです、恐らく正面からただ銃を撃つだけでは絶対に当たらないでしょう」
「まじかよ」
「逆に連携攻撃でなら命中させることのできる可能性は有ります、こちらのチームワークが勝利の鍵となるのは間違いありません」
そりゃ確かにアクセルさんの意見は最もだけど言うが易し行うがなんちゃらだ
はたしてあのメイドとは形容しがたい悪魔じみたシリウスを倒すことが出来るのやら
「それでは次に大事なことを決めましょう、それはもちろん勝者が敗者になにを命令するかです!!」
雅が高らかに宣言するとコロシアム内は一気に歓声が大きくなる。それに満足そうに雅は頷くと更に続ける
「さぁではお聞きしましょうかまずはメイド長西条院加絵奈様、貴女が御主人様に勝った場合いかがいたしましょう?」
「そうねぇ、ここまで盛り上げるのなら徹底的にしたいからなぁ」
腕を組みじっとこちらを品定めするように加絵奈はこちらを見つめている
ううっ、なんかそういう風に見つめられるのは嬉しくないな
そんな俺の気持ちを知ってか知らずかしばらくして加絵奈はポンっと手を叩き
「それじゃあ“私が大二郎の代わりに御主人様になる”ってのはどうかしら。そして下男として徹底的に扱き使って現実の厳しさを教えてあげるわ」
可愛いらしい口からなんとも恐ろしいことを言ってのけた
「ま、まじかよ」
「なるほど、中々面白い話ですね。では次は御主人様五臓六腑大二郎様が勝利した場合はいかがいたしましょう?」
「え、ええっとそれじゃあ」
雅に話を振られたじろいながらも俺は頭を巡らして考える。どうすれば加絵奈の奴に一泡吹かせることが出来る?
───『言ったわよ、あんたの専属メイドなんかしてたらいつ押し倒されるんじゃないかと不安で仕方なかったわよ、本当にキモイんだから!』
加絵奈のことを考えたら思わずさっきA棟執務室で言われた言葉を思い出した
くそっ、なんて胸糞悪い。しかし、しかしだいいことを思い出させてもくれた
俺は一度大きく深呼吸をして言葉を告げる
「俺が勝った場合は“加絵奈を押し倒す”それでどうだ?」
「えっ押し倒すってちょっと!」
「ふふふ、それは面白いですね。いいでしょうそれで行きましょう」
動揺する加絵奈をよそに雅は楽しそうに手を叩く
『えー実況担当うるめですが、これは面白い展開になってきましたね棗さん』
『そうですねー流石御主人様高校生ということもあって盛ってますねー』
「では御主人様対メイド長の決闘を始めます!!」
そんなこんなで雅が高らかと宣言し俺と西条院加絵奈の戦いは始まったのだった

「押し倒されるなんて絶対に嫌なんだからっ!頼むわよシリウス」
「御意。メイド長様の御身を守り、敵対勢力を殲滅する。ローラーブースター起動!」
心配そうな加絵奈の言葉にシリウスは鋼鉄製のブレードとハンドガンベレッタM8000クーガーを構えあくまで機械的に答えると辺りに金属が高速回転するような音が響き渡る
これが高速移動を可能にするって言うローラーブースターってやつか
「御主人様、この決闘中たとえ動悸、息切れ、気付けが起きようとも私の指示に従ってください。戦場では冷静さを欠き慌てふためいた者から───死にますので」
「は、はい善処しますです!」
鬼気迫る様子のアクセルさんに俺は思わず語尾がおかしくなりながらも答えた。死ぬとかいうか普通、いやというかアクセルさん戦場での話が多いけど何者なんだろう
「では、ムーン1より各員へコード000を行う、キーワードは───」
「・・・・・・“有無を言わさず”」
「“先手必勝!”だよっ!」
アクセルさんの指示で俺の左右にラピスとラズリがベレッタM12ペネトレイーターの銃口をシリウスではなく少し離れたところに居る加絵奈を方へ向ける
「標的目標“西条院加絵奈”、各員掃射開始!!」
「えっちょっと、そんなのありなの!?」
うろたえる加絵奈を無視してアクセルさんの掛け声とともにラピスとラズリが銃の引き金を引く、俺はこのとき思わず心の中で「勝った!」と思っていた
そりゃそうだ、だってシリウスの装備はハンドガンと鋼鉄製のブレードでこちらは機関銃遠距離戦ならこちらの方が圧倒的有利。
そしてゲームの勝利条件である「俺か加絵奈のどちらかにペイント弾を命中させる」これは加絵奈に一発でもペイント弾が当たればその時点で俺の勝利が確定する
先手必勝は理にかなった作戦、そう思っていたんだ───目の前で起きた異様な光景を見るまでは
「賢しいぞアクセル!!我が力を舐めてもらっては!!」
弾丸が命中するよりも速くシリウスは加絵奈の前に滑るように高速移動すると手にもった鋼鉄製のブレードを振るう
その行為を無駄な行動と安直に捉えていた俺はすぐに唖然とした、シリウスが振るったブレードはラピスとラズリの銃撃を正確に弾き飛ばし加絵奈を間に位置する左右の壁に鮮血と似た赤いペンキが見事に次々と飛び散っていく
「う、嘘だろ・・・」
「情報解析完了、攻勢にでる!」
思わず狼狽する俺を前にシリウスはブレードで銃撃を弾きながら何かをこちらへと投げる
「あれは・・・・・・くっ、まずい!各員掃射停───」
ゴロゴロと転がるその鉄の球体のようなものがなんなのかそれはすぐにわかることになった。それは俺達の目の前で勢いよく爆ぜ、アクセルさんの叫び声をかき消す激しい音、そして灰色の煙を巻き起こし一気に俺達を飲み込む
「うっ、これは」
咳き込みながら俺は目を開くが視界は煙で遮られ近くに居るだろうアクセルさん達の姿すらはっきりとしない
「煙幕手榴弾を使ってくるとは・・・各員御主人様から離れるな!」
「ムーン2・・・・・・了解」
「ムーン3了解ですよ!」
ラピスとラズリが俺の身体に密着するように後退する、柔らかい彼女達の身体を押し付けられているこの状況、普通だったら嬉しい状況なんだけど今は全然嬉しくはない
「ふん、女の子に守られて情けないわね!シリウスさんやっちゃってください!」
攻勢に出て余裕が出たのか加絵奈が俺を挑発する、だが今の俺には加絵奈の挑発に反論する余裕すらない
くそぅ、大体アクセルさん達を雇ったのは加絵奈お前じゃないか!女の子の背中に隠れて怯えるしかないってのは確かに情けないけど俺が出て行ったところでシリウスにブレードで真っ二つにされるのは目に見えているからしょうがない
「御意、敵勢力を殲滅する」
視界が遮られている中ローラーブースター回転し地面に当たる金属音が激しくなる、耳を劈くようなその音はまるで死神が鎌を研ぎながら近づいてくるような恐怖感すら覚える
「敵対象、五時の方向!ラピス!」
「・・・了解!」
アクセルさんの指示とシリウスが攻撃を仕掛けたのはほぼ同時だった
金属と金属が激しくぶつかる音と共にラピス、シリウスの声がする
「・・・・・・御主人様はやらせない!」
「我が一撃を受け止めるとは雑兵にしてはできるな、だが───」
耳を劈く銃声が辺りに響き渡る。
多分ラピスさんがシリウスのブレードを受け止めたんだろう、と思う。俺には全く何も見えないこの状況で強敵シリウスの一撃を防いだ、それだけでも彼女達の能力は俺とは比べ物にならないものを持っているんだと思う
しかしその後起きた銃声はまぎれもなくシリウスのものだった
「くっ・・・すいません御主人様、アクセル隊長」
殺傷力のないペイント弾だとしても当たればそれなりにダメージはあるのかラピスは痛みを堪えながら細い声を上げ崩れ落ちる音がする
そのラピスの言葉で彼女がシリウスとの戦いに負けたことを俺は悟った
「よくもラピスお姉ちゃんを!!」
「待てラズリ!冷静さを欠くな!」
アクセルさんの怒号を無視しラズリがフルオート射撃で闇雲に銃を乱射する
───戦場では冷静さを欠き慌てふためいた者から───死にますので
思わず俺の脳裏にはアクセルさんが決闘前に言った言葉が過ぎる、その刹那
「戦場で肉親の名を呼ぶとは愚か者のすることだ!」
シリウスの叫びと共にラズリのフルオート射撃をかき消すただ一発の銃声が響き渡った
「そんな何時の間に背後に・・・っ!!」
結果は歴然、その言葉と共にラズリは力なくその場に崩れ落ちる。アクセルさんの部下であるラピスとラズリを意ともたやすく倒すその技量、もはやシリウスの強さには圧倒されるしかない
「次に仕留めるのはアクセル、貴様だ」
「くっ、このままでは・・・・御主人様、一旦後退します!」
「あ、ああ!」
アクセルさんに言われるがまま俺は半ば駆け足で後ろ向きに全力疾走する
いや本当はもうこのまま走り去りたいくらいだよ
「ぶはっ!はぁ・・・なんとか表に出られたか」
息を切らしながら地面に転がり込みなんとか俺達は灰色の煙幕から逃れることができた、いや多分あの状況シリウスならいくらでも俺達を仕留めることはできたんじゃないかと思う
『おーっと煙幕からでてきたのは御主人様とアクセル隊長のみ!御主人様チームの有無を言わさぬ先手必勝から一転この状況は予想だにしない展開です!』
『えー御主人様は早く謝ったほうがいいですねー』
実況の声がコロシアム内に響く中俺は体勢を戻しながらアクセルさんに問いかける
「な、なんで今シリウスは攻撃してこなかったんですか?」
「御主人様、シリウスは戦場では“殲滅女王”と呼ばれるほどの戦闘狂、一度戦場に出れば敵軍を一人残さず倒さねば気がすまない人です。彼女の思考からすれば今は御主人様を倒すことよりも私を倒すことに意識を集中しているのでしょう」
「それって俺はいつでも始末できるってこと?」
「言い方は悪いですがまさにその通りです、しかし彼女がそのつもりならば付け入る隙はまだあります!」
俺のほうを振り返ることなくアクセルさんは銃を構えたまま煙幕をじっと見つめ答える
「付け入る隙っていっても正面から撃ったって当たりっこない、連携攻撃をするにもラピスさんやラズリさんがいないんじゃ───」
「戦闘状況解析終了。───いえ、まだこちらには御主人様がいらっしゃいます。チャンスは一度しかありません私がシリウスの攻撃を抑えます、その隙を見計らって私が御主人様に銃を渡しますのでそれでシリウスを!」
アクセルさんのいうことはわかる、わかるんだけどこのシリウスやアクセルさん達が戦う中に俺が入ってどうなるものか不安が過ぎる
俺になにができる?俺なんて所詮親の金ではなんでもできるけど俺自身じゃなんにもできやしないんじゃないか?
「大丈夫です、加絵奈メイド長は私を雇う際言っていました。『あんたの御主人様は一見頼りないけどいざとなったらキッチリ決める奴なんだから』と。私は弱い主人には就きません、メイド長のその言葉を信じているからこそ───ここにいます!」
あ、あいつそんな事言っていたのか?それはちょっと意外と言うかなんというか
しかしそれをアクセルさんに問いかけるよりも先にアクセルさんは銃を構え叫んだ
「御主人様!シリウスが来ます警戒を!!」
「あ、ああ!」
アクセルさんの背中に隠れながら俺は煙幕の先をじっと見つめる。灰色の煙幕の中からゆっくりとそのシリウスの姿が浮かび上がっていく
「アクセル、貴様と戦うのは幾度のことか。貴様は戦場で会う度、戦う度に強くなり私を高揚させる。何時我を越える力を持つかな」
シリウスはゆっくりと一歩づつこちらに銃とブレードを構え近づきながら静かに言葉を吐く、それに対しアクセルさんは警戒するように銃を構え叫んだ
「───私はただの敗北者でしかない、だが今回は違う。私と、そして御主人様の二人でシリウスお前を倒す!」
その叫びと共にアクセルさんは手に持ったベレッタM12ペネトレイーターのトリガーを一気に引きシリウスへ向ってペイント弾が飛ぶ、しかし───
「貴様ならともかく後ろに構えている腰抜け御主人様になにができる!!」
シリウスのローラーブースターが金属を削るような音とともに高速回転しアクセルさんの弾丸を縫うように素早く左右へとかわす
ていうか一応俺御主人様だよな?なんか今かなり貶された気がするんだけど
もっと言えばほんの数時間前まで可愛いメイドさんに囲まれたっていうのに本当なんだよ、これ
「アクセル、貴様の命貰ったッ!!」
そんなことを考えているうちにシリウスは一気に銃弾の雨を潜り抜け飛び上がるとアクセルさんに向ってブレードが振りかぶった
「今です御主人様、銃を!」
アクセルさんはそのタイミングを待っていたかのようだった。言葉と共に振り返ることなく銃を後にいる俺へと放り投げる
「う、うおっ重っ!!」
放り投げられた銃を身体で何とか受け止めたが勢いで一瞬よろめく、だがそんなことよりも目の前で今にもシリウスのブレードがアクセルさんの眼前に迫っていくその光景に俺は声を張り上げた
「アクセルさん、危ない!!!」
「お心遣いありがとうございます御主人様、ですがご心配なく!」
しかし俺の焦りよりもアクセルさんは冷静だった、振り下ろされるシリウスのブレードを前に構え───
「意を一にし心を専らにす!」
振り下ろされたブレードを前にアクセルさんの赤い髪が揺れる、その瞬間思わず俺は目を逸らしてしまった
「くっ、まさか我が剣を素手で受け止めるとは!!」
しかし次の瞬間声を発したのは.シリウスのほうだった
ゆっくり目を開けるとアクセルさんがシリウスのブレードをものの見事に真剣白羽取りで押さえ込んでいる
「慢心し、功を焦ったなシリウス!ここは戦場ではない、今の一撃でもし私を切り伏せれたとしてもお前の敗北は揺るがない!!今です───御主人様!!」
「あ、ああっ!」
惚けていた意識がシリウスさんの声で一気に覚醒する、そしてすぐに理解したチャンスは今しかない!と
俺は銃の重さにふらつきながらも周り込み銃口をシリウスに向ける
「ちぃっ!」
「いっけぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
シリウスがハンドガンを向けるよりも速く俺は引き金は引けた───と、思う
「うっうおぉわっ!」
引き金を引いた途端に起こった激しい音と振動に思わず情けない声と共に腰を抜かし地面へと倒れ込んでしまったので正直命中したかなんてわからなかったが
「いってぇ・・・」
「御主人様、お見事です。お手をどうぞ」
「ありがとう、ってアクセルさんその服!」
手を差し伸べてくれたアクセルさんのメイド服にはまぎれもない真赤なペイント弾が付着している、もしかして俺オウンゴール決めちゃいました?
「ええ、戦場ならば私も一緒に死んでいましたね」
そう言うと珍しくアクセルさんは笑みを零した
「“私も”ってことは?」
「御主人様のおかげでシリウスを倒すことが出来ましたよ」
アクセルさんの手を掴み起き上がると片膝をつき苦渋の表情を浮かべるシリウスの姿が目に入った、それでやっと俺が・・・いや俺達がシリウスを倒したことを理解した
「やった、やったのか俺!?」
「その通りです。ですが私がお供できるのはここまで、あとは御主人様お一人で───」
アクセルさんはそう言うとゆっくりと視線を今まさに晴れていく煙幕へと動かす、俺もそれに合わせて視線を動かした
そうだ本当の意味でまだ戦いは終わっちゃいない
「ありがとうアクセルさん、ここまでこれたのもアクセルさんのおかげだよ」
「いえ、御主人様こそ御武運を」
敬礼するアクセルさんに背を向け俺は歩き出す、そして晴れていく煙幕の奥から加絵奈の姿を捉える
「えっ、嘘でしょシリウスが負けた?」
今回の決闘、半ば途中から傍観者となってしまっていたメイド長西条院加絵奈は起こっている状況に戸惑いながら後ずさりする
「残っているのは俺と加絵奈、お前だけだぜ。ペイント弾それなりに痛いらしいから俺としては撃ちたくないんだが?」
俺は加絵奈に向って銃を突きつけながらゆっくりと近づいていく。いくら加絵奈がスポーツ万能といってもこればっかりは避けるなんて無理だと思う、俺がちゃんと撃てれば
「う、ううっ。私の、負けよ」
結局加絵奈はしばらく悩んだ後消え入りそうなくらい小さな声で自らの敗北を認めた。それと同時に静まり返っていたコロシアム内にいままでにない歓声が沸き起こる
『いやぁ今回の決闘は思わず手に汗握る白熱した戦いでしたねー棗さん』
『そうですねーえっとこれから先起こることに関しては、えー『この物語に登場人物は全員18歳以上です』と私から付け加えさせていただきたいですね』
「ええまぁ御主人様もメイド長も高校一年生ですがー18歳以上ということですね、わかります。では五臓六腑家第十三コロシアムより実況担当うるめと解説担当棗さんでお送りしましたーではまたの機会を!」
「───とまぁこれで御主人様の勝ちが決まったわけでして、となるとメイド長西条院加絵奈様、御主人様のご要望どおり押し倒されていただきます」
雅が淡々と告げる中、加絵奈は俺から離れるようにどんどん後ずさりする
「え、ちょ、ちょっと待ってよ、本気なの?」
「当たり前だろ、さぁて覚悟してもらおうか」
銃を捨て両手の指をわしゃわしゃと動かしながら加絵奈との距離を狭めていく
間違いない、今の俺を人は『変態』と呼ぶだろう、だがもうそれでもいい
「はいはいはーい、お待たせしました“五臓六腑家ベットメイキング専属メイド”愛華がお二人のためにベットをご用意しました!」
「ちょっと、余計なことしなくていいわよっ!」
円形をした淡い桃色のベッドが加絵奈の進路を阻むように配置される。どっからどうみてもこれラブホテルのベットじゃないか
「それではごゆっくり御主人様、メイド長っ!」
満面の笑顔で愛華は一礼するとそそくさとその場から離れていく
「ありがとう!いやぁいいメイド達だなぁ、加絵奈も見習って欲しいよ」
「い、いやよそんなの!というかこれ以上近づかないでよバカ!キモイ!変態!」
やけくそになったのか罵詈雑言を加絵奈は飛ばすものの足が震えていてもうその場から動くことが出来ないみたいだ、俺は罵詈雑言を聞き流しながらゆっくりと加絵奈に近づきその細い肩を両手で掴むと───
「加絵奈ぁぁぁっ!」
「きゃぁぁぁっ!」
覆いかぶさるように加絵奈をベットへと押し倒した。
淡い桃色をしたベッド、光沢のあるシルクのシーツに加絵奈の長い黒髪が広がる。それと同時に加絵奈の使っているシャンプーの薔薇の芳醇とした香りが俺を包みこむ
薄いピンク色の唇に高校一年生とは思えないほどの二つの胸のふくらみ、魅力的な肢体に思わず興奮し息を飲んだ
「うっ、うう・・・やめ、てよ・・・」
加絵奈は俺から目を逸らし小さく呟く、その目には薄っすらと涙が滲んでいる
なにをしているんだ俺、好きな子を泣かすなんて最低じゃないか
「加絵奈・・・ゴメン」
思わず言葉が漏れる。加絵奈の涙を見て俺は思わず自分のやっていることの愚かさに気が付いた
「確かにその決闘する前はムカついて本気で押し倒してやろうと思ったけどその、なんだ無理矢理はダメっていうかなんていうか」
「でも私をメイドにしたのってこうゆうことしたかったからでしょ!」
シーツをギュッと掴み叫ぶ加絵奈の言葉が胸に突き刺さる
「ち、違───わないか。そりゃ加絵奈みたいな綺麗で可愛い子とこうゆうことしてみたいってのはあるよ、それはある!」
俺は支離滅裂になりながらも必死で言葉を選ぶ
「でも本当はずっと寂しかったんだ、だから傍にいて欲しかった、いや誰でもいいって訳じゃなくて一杯いればいいっわけでもなくてだ!だからそのつまりあれだ俺の専属メイドは加絵奈さえいてくれればいいんだよ!」
自分でも何を言っているのかわからなかった、ただ加絵奈にはなにかが伝わったのかじっとこちらを見つめると小さく「そうなんだ」と呟き
「大二郎ならいいよ」
と静かに目を閉じた。
頬を少し赤らめ唇を差し出す加絵奈に一瞬驚きを隠せないかったが自然と吸い込まれるように加絵奈の顔に近づいていく
「加絵奈・・・」
「んっ・・・」
加絵奈の口から吐息が漏れ、顔に触れる、心臓の鼓動が回りに聞えるんじゃないかって言うくらい緊張していた
そしてあと数センチで加絵奈の唇に触れるそんな距離で───

なぜか加絵奈の唇に触れるよりも先に加絵奈の拳が俺の腹をおもいっきり叩き込まれた、それはもう抉るような強烈なボディブローで
「あがっ・・・い、いてぇ!!」
「おっと危ない危ない」
思わず声を上げ倒れ込む俺の身体をするりと器用に避けると加絵奈はベットから抜け出す
「か、加絵奈お前どうゆうつもりだよ!」
「どうゆうつもりって今思い出したのよ。あんたが決闘で勝ったら押し倒すんでしょ?それではい、押し倒されてあげたからこれで終了よね、そっから先のことなんて思えば私やる必要ないし」
スカートの埃を払いながら加絵奈はいつもの調子に戻ってきっぱり言い放つ
さっきまでちょっと泣いていたくせにすぐこれだよ
「ちょ、てかさっきの『大二郎ならいいよ』って言ったじゃないか」
「そ、そんなのあんたを騙す演技に決まってるでしょ!てかなに?さっきのプロポーズみたいなの、はっきり言ってキモイんだけど!」
「だからキモイっていうなぁ・・・俺は御主人様だぞ!」
腹を押さえながら俺は反論するが意に返さず加絵奈はスカートを翻すと
「はいはい、私に御主人様って言わせたいなら精々頑張ることね!!」
と小悪魔っぽく微笑んだのであった

                                             

                                                  終わりました


「あんめいどおぶおーるわーくす 中編」

「ムーン1より各員へ後少しでA棟執務室へと到着するフォーメーションを維持し警戒に当たれ」
「ムーン2・・・了解」
「ムーン3了解ですよ!侵入者め、どっからでもきやがれです!」
そうそう侵入者なんてこないだろ、そう心の中で思いつつ俺こと五臓六腑大二郎は“五臓六腑家御主人様の防衛専属メイド”達に囲まれ加絵奈のいるA棟執務室へと歩を進めていた
だがその足取りは非常に遅い、なぜなら───
「御主人様、ネクタイが曲がっておりますわ」
「お待ちください!髪型が理想の形から崩れてます!」
「今時点での気温、湿度からするとこちらの衣服の素材の方が合っていますわ、今すぐお着替えください!」
・・・とまぁ、ことあるごとに着せ替え部隊が足を止めさせてくれるもんだから結局予定の時間よりも倍近く掛かってしまっていた
しかし怒ってはいけない、彼女達は自分の仕事を忠実に遂行しているに過ぎない。悪いのは全部あの西条院加絵奈だからだな
「御主人様、A棟執務室に到着いたしました」
「ああ、ありがとうアクセルさん」
「いえ私はメイドとして当然のことをしたまででございます」
「本当、その言葉あいつに聞かせてやりたいよ」
アクセルの言葉に溜息混じりに俺は呟くと扉の前に立つ、ご大層に扉には『五臓六腑家メイド長西条院加絵奈の部屋 ノックしないで開けた者は死あるのみ』なんて紙が張ってある。
まったくどこの悪の組織だ、大体何時の間にかメイド長なんかになってるし
「おーい加絵奈、御主人様が遥々来てやったぞ」
死にたくはないので一応ノックをし声をかける・・・がそれに部屋の中からは怪訝そうな声が返ってきた
「え?ああ、本当に来たんだ面倒だなぁ」
「面倒、いま面倒って言ったか?ていうか用があるなら来いっていったのそっちじゃないか、開けるぞ」
加絵奈の言葉に頭に血が上った俺は答えを聞く前に勢いよく扉を開けた。
思えばA棟執務室に来るのは初めてだった、部屋の中は真赤な絨毯が敷き詰められ天井には巨大なシャンデリアが鮮やかな輝きを映し出し、また奥の壁面は全てガラス張りになっておりそこからは広五臓六腑家の敷地が広がっていて部屋の真ん中にはどこの社長のテーブルかってくらいの大きさの木製テーブルがどっしりと配置されている
そして───
「あーあ全滅しちゃった。全くこれも全部大二郎のせいなんだからね」
「俺のせいにするなよ普段から下手なくせに」
携帯ゲーム機を片手に腰まである長い黒髪を靡かせた美少女メイドが悠然とした様子でそこにいた
ベルベット生地のツー・パーツ・ドレス式メイド服を見事に着こなす抜群のプロモーションにどこぞのアイドルを思わせるような愛くるしくかつ清廉な顔立ちを持つ西条院加絵奈は本当“これで黙ってさえいてくれれば可愛い”を地で行く女の子だ
「それで、私に用事ってなによ?」
「言いたいことわかるだろ、後ろのほら!」
面倒くさそうに答える加絵奈に俺は親指で自分の後ろぞろぞろと並んだ専属メイド達を指し示す
「なんで急にこんなにメイドがいるんだよ」
「そりゃ簡単よ、あんたのお父さんに頼まれたの。『大事な大二郎のためになるならいくらでもお金を使っていい』って言われたから私がわざわざあーなーたーのために一生懸命手配してあげたのよ感謝して欲しいわね。いいじゃない昔の貴族はメイドを沢山雇うことがステータスみたいなところあったし」
なにが俺のためだよ。どうみてもこれ半分いや八割は嫌がらせだろうに
俺はイラつき後ろ首を掻きながら反論する
「あのなぁ、なんでも限度ってもんがあるだろ。例えば靴紐を選ぶのとかそれくらい自分でできるっていうんだよ!」
「へぇーそうなんだ、それくらいはできるんだ」
「くっ、そんなの当たりま───」
加絵奈の人を舐めきった挑発に完全に頭に血が上り声を上げたその時だった
俺の叫び声を一気にかき消す怒号のような叫びがA棟執務室に響き渡ったのだ
「うああああああああんっ!!御主人様に嫌われたですぅぅぅぅ!!!!!」
「え、ええっ!?」
思わず振り返ってみたらショートボブの小柄で可愛らしいメイドが“五臓六腑家御主人様の警護部隊専属メイド”のアクセルさんにしがみつき泣き声をあげていたのだ
しかし朝から何人ものメイド達が入れ替わり立ち代りだったせいか正直彼女が誰だったか思い出せない、いや多分彼女の泣き出した原因が俺にあるのは間違いなさそうだからえっと
「彼女は“五臓六腑家御主人様の右足の靴紐を選定する専属メイド”理夏です御主人様。戦場ではこのように泣き叫ぶ子供が多かったのでこういった状況には慣れていますので、ご安心を」
理夏の頭を優しく撫でながら少し寂しそうにアクセルは言うがどっちかってとそんなこと言われたら益々罪悪感が沸くっていうか、全然安心できねぇ
「は、初めて・・・会う、ご、御主人様のためにえっぐ・・・一生懸命やろうとぐすっ・・・おも、おもってたの、に」
「うわっ、女の子泣かすなんて最低っ!」
「お、お前は黙ってろって!」
泣き崩れる理夏にうろたえるしかない俺に後ろから加絵奈の野次が飛ぶ
くそっ、全くもって目の前で女の子に泣かれるのはつらい。心になんかグサッとくるものがある
「いやあのさ別に今のは例えであってなんていうかなその俺的にはむしろ大歓迎だから、その泣き止んでくれるかな?いやー流石だなーいい靴紐だわこれ」
ちょっと演技っぽく靴紐を褒める俺に理夏は泣き止み俺の顔をじっとみつめる
「本当ですか御主人様?」
「本当本当、この色合いつや流石だなっと思っていたんだよね。だからさ、あくまでさっきのは例えだから泣き止んでくれる?」
「はい、取り乱してすいませんでした御主人様」
そういって理夏は涙を吹きながらすごすごと後ろに下がっていく
俺は安堵の溜息と共に再び加絵奈のほうへ向きを直す
───しかしじゃあどう言えばいいんだよ
また専属メイドはいらないとか言ってさっきみたいなことになるのは面倒だ
かといって朝から思考パニック状態の俺にでてくる案というのは短絡的なものでしかなくて
「あのさ加絵奈、そのあれだわかるだろ彼女達にお金を渡してだな───」
「あーやだやだまたその“なんでもお金で解決”ですか?」
俺の言葉に今まで以上の嫌悪の表情を加絵奈は浮かべる
「な、元はと言えば加絵奈がこんなに一杯雇ったんだろ!」
「だからってそのお金出せば何とでもなるとか思ってるその性格最低よ!私の家の借金のことにまで勝手に手を出してその代わりに専属メイドをやれとか言うし?冗談じゃないわよなんで私があんたみたいなキモイののメイドしなくちゃならないのよ!」
「キモイ?今キモイって言ったか?御主人様に対して!?」
「言ったわよ、あんたの専属メイドなんかしてたらいつ押し倒されるんじゃないかと不安で仕方なかったわよ、本当にキモイんだから!」
「また言ったな!!」
加絵奈の余りのいい口に俺は加絵奈に詰め寄よろうとしたその矢先だった
「はいはい、お二人とも押さえて押さえてぇ♪」
俺と加絵奈の間を一人のメイドが割って入ってきたのだ
「御主人様、加絵奈メイド長様、まさかこんなに早く私の出番が来るとは思っていませんでしたので少し嬉しいですよ。この場は私“五臓六腑家御主人様が決闘をするさいの仕切り専属メイド”雅が仕切らせていただきます!」
なにやらまたやたらと長い役職名のメイドが分厚いなにかのルールブックのようなものをその手でパラパラと捲りながら実に楽しそうな様子で語る
「な、なんだよそれ」
「決闘ですって?」
「御主人様とメイド長、お互い遺恨があるのなら!私がお互いの戦力を分析し平等な戦力できっちりちゃっかりずばっと納得のいく決着をつけさせる決闘をセッティングしますよ!はいそれじゃお互いこの白い手袋をお持ちくださいな」
そう言うと雅はポケットから白い手袋を取り出すと俺と加絵奈に手渡していく
「それじゃその手袋を思いっきり相手に投げつけてくださいませ!」
「あ、ああ・・・」
「えっと、わかったわよ」
よくわからないまま雅から手袋を受け取ると俺は加絵奈に、加絵奈は俺に投げつける
もちろんそれは当たっても痛くも痒くもないわけで白い手袋は当然の如く互いの身体に当たるとポトリと地面に落ちた
「さぁ決闘をするにふさわしいコロシアムへ移動しますよ皆さん!」
そう言えば白い手袋を相手に投げつけるのは決闘の合図とかなんとかなんかの本で読んで記憶がある、ああまさかこれってそういうことか
なにやら一人盛り上がってる雅に対して俺は小さな声で加絵奈に呟く
「てかなんだよこんなメイドまで用意してたのかよ」
「いやうん、実は私もあんまり覚えてない」
ちょっと呆れた様子で答える加絵奈に俺は今日何度目かと言う溜息と共にまた天を仰ぐのだった
「なんかまた面倒なことになってきたぞ」

                                                   

                                                つづきます、まちがいなく


「あんめいどおぶおーるわーくす 前編」

世界でも有数の大富豪、五臓六腑家。
都内某所にあるお屋敷はどっかの野球場が何十個と入るくらいに広い
そこに住むのは今年高校入学したばかりの御曹司、五臓六腑大二郎
その日の朝は何時になく騒がしかった

「御主人様、朝ですよー朝ごはん食べて学校へ行きますよー」
「んぁ、もう少し寝かせてくれよ」
レースのカーテンが開かれ眩しい朝日が俺の顔に直撃し、思わずそれから逃れようと身をよじらせる
「二度寝はダメですよー御主人様」
「あと五分だけ寝かせてくれ、加絵奈」
朦朧しながら普段世話係りをしているメイドの名前を呟く、だが返ってきたのは抑揚のない否定の言葉
「ダメですよー。それと私は加絵奈さんじゃありませんよー」
「・・・・・・はい?」
その言葉に思わず目が覚める。この屋敷に加絵奈以外のメイドはいないはず、なんだけど
「えっとじゃ君は?」
「あ、申し遅れました。私今日からここで働くことになりました“五臓六腑家朝のカーテン開け専属メイド”の白百合と申しますぅー」
「はぁ、さいですか」
間延びした語尾とともに白百合が軽く会釈する。ウェーブかかった紫色の髪をした彼女の姿が寝ているベットから少し見える、なんだあいつ別のメイドを雇ったのかそういうことは事前に言って欲し・・・
「って、なんだよ“朝のカーテン開け専属メイド”って!!」
思わず俺は起き上がり突っ込みを入れようとしたがその身体は起き上がらない
「え?なに金縛り・・・ってなんか腕にいる!?」
全然気が付かなかったがいつの間にか俺の両腕にしがみ付くように二人の女の子が身体を寄せていた
ピンクのネグリジェに頭のホワイトブリムだけはしっかりつけたショートカットの女の子、ああこれなに?気が付いたら物凄く良いマーガレットシャンプーの香りがするし女の子に添い寝してもらうなんて初めてだぞ俺
「ふぇ?まだ眠いですよぉ」
「でもこれで“御主人様の横で添い寝する専属メイド”である私達のお仕事終わりだよ茜」
「えーもう終わりなの桜?」
俺の身体を挟んで双子?のメイドがやりとりしている、てかなんだよ“御主人様の横で添い寝する専属メイド”ってさっきから変なメイドばかりじゃないか
「それじゃ御主人様、またねー」
「またねー」
混乱する俺をよそにその双子のメイド達はベットから降りそそくさと部屋から出て行く
「なんなんだよ、朝から全く」
思わず溜息が漏れる、そしてベットからゆっくりと身体を起こしてみて再び俺は溜息をついた、なんていうかその・・・真赤なランジェリーにも見えるセクシーなメイド服を着たメイドが身体を跨ぎ俺の事を見下ろしていたからだ
「あのぉ一応聞くけど君は?」
「おはようございます御主人様、私は“お目覚めのキス専属メイド”綾音と申します」
「え?はぁ?なにキス!?」
動揺する俺を他所に綾音は猫が寄り添うようにグッと身体を近づけてくる
「本日の湿度、温度などを調べ上げから最適の口紅を選びましたわ」
「いやいやなんなんだよ、これ必要ないでしょ!!」
顔を近づける綾音から身をよじり逃げようとするが今度は下半身が動かないことに気が付く、もぞもぞとなにかが蠢いていた
「な、なんだ布団の中に誰かいる!?」
「ああ彼女は“五臓六腑家御主人様の朝の具合を確かめる専属メイド”雛菊ちゃんですよ」
「長っ!なんか物凄く名前長っ!てかうぉぉぉい、パジャマを脱がすなぁっ!」
「はいはい、これも私達のお仕事なんで我慢してくださいなっと」
綾音は俺に飛びつくと勢いのままベットに再び押し倒される
「ちょ、ちょっと待てぇぇぇぇ!!」
そして俺の叫びだけが虚しく屋敷内に響くのだった

「大変良好な蛋白質成分でした、健康状態に問題はないようですね御主人様」
「はぁ・・・そいつはどうも」
乱れた長い髪をかきあげハンカチで口を拭いながら“五臓六腑家御主人様の朝の具合を確かめる専属メイド”雛菊は言葉を漏らす
もうなんていうかスッキリしたというか、いやそれは頭の中がスッキリしたのでなんとなく冷静に状況を分析できた、ということにしておいてくれ
「御主人様、“五臓六腑家御主人様の上着を選定する専属メイド”椿ございます」
「私は“五臓六腑家御主人様の下着を選定する専属メイド”柊でございます」
「わ、私は“五臓六腑家御主人様の右足の靴紐を選定する専属メイド”理夏、ですっ!」
「ふふ“五臓六腑家御主人様の髪型をセットする専属メイド”秋葉ですわ」
様々な容姿をしたメイド達が入れ替わり立ち代り部屋に入って来ては俺の服やら髪型やらを弄繰り回してくる
俺はもう成すがまま彼女達のやりたいようにされながら呟く
「ところでこの中に“五臓六腑家御主人様の質問に答える専属メイド”はいるのか?」
俺の言葉に周りのメイド達はお互い顔を見合わせる
流石にいないかと安心した矢先にどこからともなく一人のメイドがこちらへと息を切らしながら駆け寄ってきた
「はぁはぁ、お呼びですか御主人様!?“五臓六腑家御主人様の質問に答える専属メイド”胡桃でございます」
「ていうか本当にいるんだ、まぁいいや加絵奈と連絡が取りたいんだけど携帯電話かなにか持ってない?」
ともかくこのやたらとメイドに仕事を細分化している原因の一端を担っていると思われる彼女、五臓六腑家のメイドでありまた幼馴染でもある加絵奈に話を聞かなければ
「ええっと携帯電話ですね、しばしお待ちを」
そう言いながら“五臓六腑家御主人様の質問に答える専属メイド”?である彼女は分厚い瓶底眼鏡を弄りながら携帯電話を取り出し操作を始める
「いや、その携帯電話貸してくれればいいんだけど」
最もな話だと思う、なんで携帯電話を借りたいのに専属メイドとか言うのを呼ばなければならないんだ?そっちの方が効率が悪いだろうに
「コホン御主人様、ここで私が御主人様に私の携帯電話を貸してしまえば“五臓六腑家御主人様の携帯電話を管理する専属メイド”である、ひなのちゃんがお仕事なくて路頭に迷う羽目になってもいいんですか?ニートですよ、ニート!?このご時勢に彼女をニートにしてしまって罪悪感ないんですか?そりゃ御主人様は平気でしょうけど彼女の家は───」
「スマン、俺が悪かったです」
早口で捲くし立てる彼女に対して思わず謝ってしまった、俺一応御主人様なのに・・・
ていうか俺の携帯電話っていつの間にか管理されてるの?よく携帯電話を携帯しない奴はダメとか言われたけど大丈夫なのか
そんなことを考えている最中、部屋の扉が勢いよく開けられる
「ごめんなさいなの!“五臓六腑家御主人様の携帯電話を管理する専属メイド”ひなのが満を持して来たよ!うきゅ!」
「左様ですか、それなら早く携帯を渡してくれ」
「あれれ?なんか御主人様もっと『なんで“うきゅ”とか言った?』とかツッコミが欲しいんですけどぉ」
「悪いけどそんなことにツッコミを入れてる時間はないんだ頼むから俺の携帯電話を貸してくれ」
「はぁーい」
俺の言葉になんか残念そうな表情を浮かべながらもひなのは渋々と俺の携帯電話を取り出し差し出す
「信長殿、携帯電話を懐で暖めておいたござるよ、なんちゃって」
「そうか、でも携帯電話なんて暖めるもんじゃないぜ」
「わーつまらないですよ、その回答つまらないですよ御主人様!」
ひなのの抗議を無視しながら俺は自分の携帯電話を操作し加絵奈の携帯番号を押す
加絵奈、西条院加絵奈は俺の隣の家・・・といっても俺の屋敷が広すぎて加絵奈の家に行くには車で二時間ほど掛かるがともかく家が隣で小さい頃からよく遊んだ幼馴染という奴だ
今加絵奈が五臓六腑家のメイドをしているのは彼女の父親が抱えた膨大な借金のせいだ、事業に失敗し何億との負債を負った彼女の父親を俺の親父が全額清算しその代わりに加絵奈をメイドとして雇いそれの返済をさせるという話だったんだが───
彼女がメイドとして働き始めて今日でちょうど一週間目、この状況からしてみてもやはり加絵奈にこの仕事をやらせるのは無理なんだと思う
「・・・えっと加絵奈ですけど、なに?」
電話口の加絵奈の様子はかなり機嫌が悪いように思えた、しかしながら立場としては俺の方が上なんだからもうちょっと言葉使いに気を配って欲しいって言うかなんというか
「用がないなら切るわよ」
ぶっきらぼうに言い放つ加絵奈に口早に俺は用件を告げる
「それはちょっと待て、このメイドがやたらと世話しにくる状況!これお前のせいだろ、ちょっと俺のところまで来いよ!」
「え?ああ・・・今ちょっとセイバークエストのラスボス戦だからそうゆうの無理ね、急ぎの用が有るならA棟執務室まで来てよ、じゃね」
「お、おい!切るなって!」
俺の抗議もむなしくあっさりと加絵奈は俺との通話を遮断する
「どんなけ反抗的なんだよあいつ」
メイドらしからぬ加絵奈の返答に少し苛つきを憶えながらもこれ以上どんなに抗議したとしても直接会わなきゃ話にならないということは彼女の性格からしてわかっていたので渋々と加絵奈のいるA棟執務室へと向うことにする
そう思った矢先だ部屋の扉が開き今日何度目かというメイド達がぞろぞろと入ってくる
「うっ・・・!?」
彼女達の格好に思わず俺は身を引いてしまった、なにせ彼女達格好はメイド服だがその手に持っていたのはベレッタM12ペネトレイーター・・・イタリア警察で採用されているサブマシンガンだ、えっとここ日本ですよね?
「え、えっと君達は?」
「失礼、我々は“五臓六腑家御主人様の防衛専属メイド”───私が隊長のアクセルと申します」
赤い髪のショートカットに顔にはゴーグルのようなものをつけた彼女、アクセルが敬礼のポーズを取りながら答えた
「そして後ろにいる者達が御主人様の右側、左側を守らさせていただきますラピスとラズリです」
「ラピスです・・・・・・よろしく」
「よろしくです御主人様!左側はラズリにお任せですよ!」
またもや双子なのか同じ顔をしたショートボブの緋色の髪をした少女達が頭を下げる
「御主人様、A棟執務室への最短ルートを通ると54分掛かります。その間の警護はお任せください!」
「でしたら私達着せ替え部隊もお連れくださいアクセルさん、我々は一分一秒たりとも御主人様の衣服等が乱れるのが我慢ならないのです!」
「“五臓六腑家御主人様の上着を選定する専属メイド”椿さん、その気持ち痛いほどよくわかります。では着せ替え部隊を組み込み陣形を整えましょう」
アクセルの指示によりメイド達が俺の周りを取り囲んでいく
「では参りましょう、加絵奈メイド長の元へ御主人様!!」
「あ、ああ・・・」
なんでちょっと出かけるだけでこうも面倒くさいことになるのか
俺はおもわず溜息をつき、天を仰ぐのだった

                                  


                                              もしかしたら続くかもしれないわ
プロフィール
HN:
氷桜夕雅
性別:
非公開
職業:
昔は探偵やってました
趣味:
メイド考察
自己紹介:
ひおうゆうが と読むらしい

本名が妙に字画が悪いので字画の良い名前にしようとおもった結果がこのちょっと痛い名前だよ!!

名古屋市在住、どこにでもいるメイドスキー♪
ツクール更新メモ♪
http://xfs.jp/AStCz バージョン0.06
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