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日記と小説の合わせ技、ツンデレはあまり関係ない。 あと当ブログの作品の無断使用はお止めください
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おまじないが終わりしばしの沈黙がエレベーター内に流れる。
我ながらよく五葉のおまじないを覚えていたと思う、そして咄嗟の行動とはいえ結構大胆な
ことをしたと少しばかりの後悔・・・けど
「ありがとうございます神楽坂さん」
頬を紅く染め微笑む五葉を見たら自分のやったことは間違いではなかったと確信した
「でも神楽坂さんがおまじないをかけてくれるなんて思っても見なかったです」
「まぁオレも間違えなくて良かったよ、間違えてたら洒落にならないからなぁ」
そう言って二人で笑いあう。今日は色々あったがなんにせよこれで戦いは終わったんだ、後は帰ってゆっくりと休むだけ・・・と思っていた
ゆっくりとエレベーターの扉が開きどこかで見たことがある金髪ツインテールのやたら背の小さいメイドさんと目が合うまでは
「や、やぁ」
思わずぎこちなく手を上げる。ぎこちなかったのは金髪ツインテールのメイドさん───
四葉が妙に殺気だっている気がしたからだ
「あんたなんでまだここにいるのよ、それにメイドさんに手を出して」
「いや待て四葉さん、これには海よりも深い訳があるんだ」
「え、四葉お姉ちゃん?」
五葉が振り返る、あれ?今何かお姉ちゃんだとかなんとか・・・
「五葉、五葉じゃない!なんでこんなところでメイド服・・・っていうかぁ!!」
物凄い怒りの形相でずんずんと四葉が近づいてくる、やばいなんか知らないがやばい
「四葉さんなんかしらないが落ち着こう、落ち着こ・・・」
「なんでもいいから五葉からそのいやらしい手を離しなさいっ!」
「うぉっ!」
四葉に両手で突き飛ばされて後ろにふらつく。別段大した力じゃない、それこそ天城さんや雛形の手下に比べたら蟷螂の鎌なのだが
ゴンっと鈍い音が頭の中に響く
運の悪いことに思いっきり壁に後頭部をぶつけた、それはもうクリーンヒットな感じに
───あ、やばい落ちる
考えるまもなく全身から力が抜け膝から崩れ落ち意識が遠のいていく、消え行く意志の中目に映ったのは
「え、あれ?なにどうしたの?」
自分がやったことが理解できずに立ちつくす四葉と
「神楽坂さん大丈夫ですか!?」
心配そうに駆け寄ってくる五葉の姿だった
ああ、せっかく五葉が笑ってくれたっていうのにまた悲しそうな顔してる
なんとかしなくちゃ、そう五葉の顔へと手を伸ばしたところでオレの意識は完全に落ちた

 

手が握られていた───
柔らかくて温かい、それはどこか懐かしく安心できる気持ちにさせる
「・・・・・・ん、ううん」
ゆっくりと目を開ける。見慣れた天井だ、そこがリチェルカーレの五葉のベットだということにすぐに気が付いた
「うっ・・・」
頭痛がして次に全身に痛みが走る。思ったよりも目覚めは悪かった
「神楽坂さん!気が付きましたか」
「あ、ああ・・・ごめんなんかまた心配かけたみたいで」
心細そうにオレの手をギュッと握る五葉を見て、心配させないようにとにかく無理して笑顔で作る
「もしかしてあそこから運んできてくれたのか」
「あ、はい。・・・一応傷の手当も少しですがしました」
確かに五葉の握るオレの手は包帯でグルグル巻きだ
「でも本当神楽坂さんが無事で良かったです、もしものことがあったら私・・・私!」
「おいおい、泣くなよ」
薄っすらと瞳を濡らす五葉の涙を拭おうと身体を起したとき視線の端にオレを一発ノックアウトした金髪ツインテールの美少女がいることに気が付き、思わずオレは動きを止めた
「あ・・・四葉さん」
こんなことをしていたらまた「私の妹になにしてるのよー!」と突き飛ばされる・・・と思ったがなぜかベットから少し離れたところで何故か四葉は体育座りをしていた、しかもなんかあれだ金髪のツインテールが元気なさそうにしょげている
「あのえっとごめんなさい。五葉から話は聞いたわ、まさかあなたが五葉を助けてくれてたとか知らないで」
四葉はオレに気がつくと立ち上がり申し訳なさそうに頭を下げる
「いや俺は大丈夫だよ、しかし驚いたよまさか四葉さんと五葉が姉妹だったなんて」
気を失う前に確かに聞いた五葉と四葉が姉妹という事実、無論一番驚いたのは姉妹は姉妹でもあのロリな体型している四葉が姉ってことなんだがやはりここは黙っておこう
「びっくりしたのは私も一緒よ、まさか五葉が『リチェルカーレ』でメイドやってるなんて思ってなかったわ。お兄様の仕事の手伝っているんじゃなかったの?」
「ええっとその、それには海よりも深い訳があるの四葉お姉ちゃん今度ゆっくり話すね」
少ししどろもどろになりながら答える五葉、そういえばなんで五葉が『リチェルカーレ』で働いているのかはオレも知らないな
「ふぅん、まぁいいわ。ああ、それから五葉にはもう話したけどこれから私も『リチェルカーレ』で働くからよろしくね硬派なオタクのお兄さん♪」
「だからオレはオタクじゃない・・・って!四葉さん『リチェルカーレ』で働くの!?」
「そりゃ私の大事な妹の五葉にへ・ん・な虫が付かないようにしないといけないからね。あ、そうそうもちろん私のこの部屋に住むからそれなりのスペース開けておいてね」
「・・・まじですか」
“変な”を妙に強調してにっこりと嫌な笑みを見せる四葉に思わずオレは天を仰ぐ
この八畳間に五葉と四葉とオレ、三人が一緒に暮らすんだぜ?これからどうなるんだ、オレの硬派な男になるための修行ってのは
「でもなんだか楽しくなりそうですね♪」
五葉だけがこの状況の中楽しそうに微笑んでいた・・・ぎゅっとオレの手を握ったまま

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狭いプレハブ内に激しい音が響き渡る。
なにが起こった?その激しい音は少なくともオレが殴られた音───ではなかった。
なにせ痛みを全く感じいていない、意識だって失っていない。
「なっ、馬鹿ななんでお前がっ!」
雛形がうろたえるように後ずさり、五葉が「店長!!」と叫んだところでなんとなく状況が把握できた。
「天城・・・さん?」
「待たせたな恭治、お前の意地の叫びしっかりと聞いたぜ」
振り返るとプレハブの入り口、確かに硬派のカリスマ天城仁はそこにいた。先に聞こえた音はプレハブの入り口の扉、金属製の扉のそれが飴細工のように曲りくねった音だった
「や、約束が違うぞ天城ぃ!お前は『リチェルカーレ』に残ってろと言ったはずだ!」
「ああそうだな、でもお互い様だろう?お前だって『店の権利書を渡したら五葉を返す』って約束を破ってるんだからな」
「ぐっ・・・!」
雛形は押し黙って更に後ずさる
「大体監視役のやつらはなにをしてやがる連絡もよこさないでぇ!」
「お前の仲間六十三人は全員連絡する前に叩き潰したさ。まぁ骨があったのはあの石渡ってやつくらいか、それでも二発で沈んだがな」
天城さんはレンズの細長いサングラスを外し胸ポケットにしまいこむと一歩雛形に近づく。
「安心しろどいつも気絶程度で済んでる、だがお前達はそうはいかない」
その目は怒りと殺気で満ち溢れてまさに鬼神ともいえる形相だった
そしてゆっくりと構えを作る。噂に聞いたことがある、天神拳の型・・・この構えを取った天城さんは本気だ
「お、俺は雇われただけなんだっ」
「悪かった、俺が悪かったから!」
口々言い訳を吐きながら逃げようとする手下達に雛形は後ろから容赦なく蹴りを入れる
「てめぇら逃げるんじゃねぇ!!」
「───安心しろ、初めから逃がすつもりはない!」
それは一瞬の出来事だった。天城さんは一気に距離を詰めると背中を向け逃げようとする雛形の手下二人の首根っこを掴み軽々と持ち上げると
「お前らは後だ、ちょっと退いてろ」
まるでゴミを捨てるかのよう壁に向って放り投げた。簡単に投げたように見えたが大人を二人あんな風には投げることなんてまず無理だ
「ぐへぇっ」
「あ、あわっ・・・待てよ天城、話し合おうじゃないか」
潰れた蛙のような声を上げて崩れ落ちる手下達を見て雛形は完全に戦意を無くし震え上がっていた。
「恭治お前一人で立てるか?」
「ええ、なんとか」
天城さんに支えられてなんとか立ち上がる、全身に痛みが走るが歩けないこともなさそうだ
「悪いが恭治、五葉を連れて先に帰ってくれるか?こっから先はR25指定だ、血生臭いのは五葉に見せるわけにはいかないからな」
「は、はい!」
その言葉にオレは頷き五葉の元に駆け寄る。
「待ってろ、すぐに解いてやるからな」
真っ赤になった目に涙を溜めて五葉はただ頷く。麻縄で縛られた五葉の細い腕は必死にもがいたせいか赤く腫れ上がっていた。
それが目に入って居た堪れない気持ちになる。
「よし解けた、行こう五葉」
「はい・・・」
五葉の手を引いて出口へと向う。それを確認した天城さんは静かにそしてゆっくりと雛形の頭に手を伸ばす。
「ゆ、許してくれ!?なっ?天城・・・なぁ!!」
「許すとか許さないよりも死ぬか生きるか考えたほうがいいぜ、俺の天神拳は今調整が効かないんでな」
腰を抜かして倒れている雛形の頭を鷲掴みにしたまま持ち上げている
オレはそれを見て急いでプレハブから出て扉を閉めた、別の意味で嫌な予感を感じたからだ。
───案の定、次の瞬間
「ぐるあぁがぎゃがぶるじゅらばぁばぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
雛形の形容しがたい叫び声が扉の向こう側から聞こえた。人間をどうやればあんな叫び声上げさせることができるのかわからないが天城さん、もう少しオレ達が離れてからにしてほしかったです。
「・・・こんなところさっさとおさらばして『リチェルカーレ』に帰ろう、な」
五葉を助け出せばこんな薄暗い所に長居は無用だ、オレ達は駆け足気味にエレベーターへと向う。
「五葉、大丈夫か?」
「・・・はい、私なら大丈夫です」
軽く笑顔を見せて五葉は答える。その様子を見て少しホッとした、下手したら今回のことは
五葉の心に大きな傷を作ったんじゃないかと心配だったんだ
「ちょうどエレベーター来てる、急ごう!」
丁度地下に停止していたエレベーターのボタンを押しそれに乗り込む。
「あの・・・神楽坂さん」
「ん?どうし・・・」
振り返りボタンを押そうと手を伸ばしたときドンっとオレの体になにかがぶつかってきた。一瞬なにがぶつかったがわからなかったが今この状況でぶつかるのは一人しかいない。
ボタンを押さないままゆっくりとエレベーターの扉が閉まる。
「い、五葉?」
五葉がオレの胸に飛び込んでいた。俯いていてその表情はわからないが少し肩が震えている、勢いあまってぶつかってきたわけじゃないな
「ごめんなさい、私・・・嘘をつきました」
「嘘・・・?」
「私全然大丈夫じゃ・・・なんかないんです、今でも怖くて・・・震えが止まらなくて」
嗚咽混じりに言葉を漏らす
「私なんかのために神楽坂さん一杯殴られたり蹴られたりされて死んじゃうんじゃないかって、怖くてでも私何もできなくて・・・」
「五葉・・・。」
オレの胸の中で咽び泣く五葉を見て胸の締め付けられる気持ちになる
こんなときオレにできることはなんだ?どんな言葉をかけてやればいい?
オレは五葉のことを知らない、どうすれば彼女の泣き顔を笑顔に変えれるのかその術を知らない
知っていることといえば唯一つ、できることといえば唯一つ・・・
「五葉、オレにできることはこんなことしかできないけど・・・」
少し屈んで五葉と視線を合わせる。こうしてようやく五葉の顔を見ることができた、すぐにオレは涙で濡れた顔を指で拭ってやる
「神楽坂さん・・・。」
オレが強ければ、天城さんみたいに強ければこんなにも五葉を悲しめることはなかった
五葉がじっと見つめる中、オレは静かに五葉の肩を抱き額をくっ付ける
「少し幸せになるおまじない、オレがかけるよ」
「おまじない・・・はいっ!」
おまじない、その言葉を聞いた五葉の表情が少し明るくなったようだ
「いくぞ、ちゃんと合わせるんだぜ」
「はいっ!」
『クオーキ クオーキ キワラケチ ラキサト ラキサト サオケスタオ』
エレベーターの中に二人の言葉が小さく響き渡る
オレと五葉、二人を乗せたエレベーターがゆっくりと静かに上昇を始めていた。
 

「よし、これでいい・・・頼んだぞ恭治」
「はい!!」
天城さんは物の数分で店の権利書とやらを書き上げA4の茶封筒に入れるとそれをオレに手渡す
「それじゃ、行ってきます」
「おう、ただ気をつけろよ恭治。すんなり『カンツォーナ』に行けるとは限らねぇ」
「妨害されるってことですか?」
封筒を受け取り恐る恐る尋ねる。天城さんはオレの言葉に頷き答える。
「そいつはわからん、が用心するに越したことはないだろう・・・やたらと外に奴の仲間が控えているみたいだしな」
天城さんは灰皿にタバコの灰を落とすと外を睨みつける。
確かに隠す気がないというか威圧のつもりなんだろうか雛形の手下が居座っているのが店の窓からでも伺える
「なんにせよ用心はして行け」
「わかりました、では行ってきます」
オレは一礼すると日も暮れた桜花町へと駆け出した

「くそっ・・・思ったより数が多いな」
大通りを駆け抜けながら思わず吐き捨てる。普段ならこの時間帯は帰り際のサラリーマンくらいしかいないのだが今日はやたらと治安が悪いようだ、雛形の手下ども・・・どこからどうみても不良って姿していてわかりやすすぎるぜ
だが恐れるな恭治、奴等はあくまでもオレと天城さんの動きを抑止するために偵察に来ているに過ぎないんだ
そう自分に言い聞かせる、でないと正直怖かった。
「ふぅ、行くぞ。」
深く息を吐いて裏通りへと足を進める。街灯がある大通りに比べて裏通りを照らすのは月明かりのみ、しかもそこに雛形の手下どもがわんさかいやがる状況に震えは止まらない
いかんいかん、さっきから自分を気負いさせるような事ばかり考えてしまう
「・・・・・・。」
「あいつが雛形さんが言ってた奴か・・・」
雛形の手下共が遠巻きになにかを言っている中、オレはただ歩を進める。
四葉に連れられてきたときには大した距離じゃなかった『カンツォーナ』への道がともの凄く遠くに感じる。
「つ、ついた・・・『カンツォーナ』に!」
怪しさ満点の雑居ビルの前についたときには何故か逆に安堵感の息が漏れた。
ただ無事に『カンツォーナ』に辿りついたってだけなのにな
「・・・・・・来たな」
「うっ、石渡!」
ビルに入ってすぐ目の前に立ちはだかったのは天井まで背が届きそうな大柄の男、石渡。
その馬鹿でかい図体はそこに立っているだけで威圧感がある。
「な、なんだよ・・・オレを妨害するつもりか!?」
「・・・・・・違う」
拳を固めて構えるオレに石渡はその見えているか見えていないかわからないくらいの細い目でオレをじっと睨みつけるとすぐにエレベーターを指差す。
「・・・・・・雛形さんは地下、お前はそこへ行け」
「地下だって?」
「『カンツォーナ』はまだ営業中。地下は『カンツォーナ』の倉庫、エレベーターを降りてずっと真っ直ぐ進んだところに雛形さんはいる」
雛形はそれだけ言うとオレとすれ違い外へと出て行った。
「案外いい奴なのか?いや、それは違うか」
エレベーターのボタンを押して乗り込み思う。本当にいい奴ならこんな状況を見過ごすなんてできやしないはずだ、所詮はあの雛形の仲間だ。
エレベーターは程なくして地下に止まる、倉庫というだけあって至るところに剥き出しの配管が並んでいる。
「確か真っ直ぐに進んだ先、だったな」
倉庫は思っていたよりも広く、目視では奥のほうは真っ暗でよく見えない。
そして地下っていうだけでなんか息苦しくなる雰囲気だ。
「あった・・・!」
しばらく歩いた先に明かりのついた灰色のプレハブ小屋が見えてきた。石渡の言うことが正しければここに雛形の奴がいる!
ドアノブを掴む手がじっとりと汗で湿っているのを感じる。
恐れるな覚悟を決めろ神楽坂恭治!!震えるのは武者震いだ、自分に言い聞かせオレは勢いよく扉を開けた。
「ようやく来たか、ええっと誰だったっけなぁ雑魚の名前なんて覚えてないんだが」
「硬派、神楽坂恭治だ!覚えておけ!」
真っ赤なソファで煙草を吹かすモヒカンの男、雛形を前にして思いっきり啖呵を切る。
部屋の中には雛形とその手下だろうヤンキーが二人、そして・・・
「神楽坂さん!」
雛形の座るソファの後ろ、麻縄で体を椅子に縛られれた音瀬五葉がいた。その顔には薄っすらと涙ぐんでいるのが見える。その表情を見てオレの感情は一気に怒りへとシフトする。
「五葉に何をした!」
「煩いねぇ、なぁんにもやっちゃいないさ。そんなことより持ってきたんだろうな『リチェルカーレ』の権利書をよ」
「・・・『リチェルカーレ』の権利書?どうゆうことなんですか!」
状況がわかっていない五葉に雛形はさも語るのが楽しいように不敵な笑みで言い放つ
「クククッ、お前は取引の材料に使われているんだよ。お前の身柄と引き換えに『リチェルカーレ』は俺様、雛形康弘が頂くってわけ。これからは天城仁じゃなくて俺様がお前の御主人様だ、ありがたく奉仕しろよ」
「そんな!私なんかのために、本当なんですか神楽坂さん!」
オレは悲痛に叫ぶ五葉の言葉に答えることなく茶封筒を持ち上げた。
「あんたのお望みのものはここにある。すぐに五葉を開放しろ!」
「おいおい、随分と態度がでかいじゃないか。状況わかってるのか?てめぇが先に権利書を渡すのが先に決まってるだろうが!」
オレと雛形は睨みあう。ドラマやアニメなんかで良くある展開だよな、まさかオレ自身人生でこんなことをする機会があるとは思ってもみなかったが
「悪い、確かに状況わかってなかったみたいだなオレは・・・」
本来ならここでやれ権利書が先だ、五葉が先だと揉める所なんだろうがオレはすんなりと雛形に権利書を差し出した。あまりの行動に一瞬雛形も驚きの表情を見せたが直ぐにオレから権利書を奪い取ると吐き捨てるよう言う
「はっ、わかりゃいいんだよ雑魚が一丁前に交渉の真似事なんてしてるんじゃねぇよ」 
「さぁ権利書は渡したんだ、五葉を解放してくれ」
オレはそれだけ言うと雛形の言葉を待つ。雛形の奥に見える五葉が物凄く心配そうな表情でオレを見ている。だが安心しろ五葉、すぐに助け出してやるからな。
「五葉を解放?ああ、そんなこと言ってたなぁ」
権利書を手にとぼける雛形。だがオレは動じない、そんな言葉では動じない
いやむしろ・・・この展開は想定しいた!
「そんな口約束この俺様が守るとでも───」
「鼻から思っちゃいねぇよ!」
雛形が言葉を言い切るよりも前にオレは叫ぶと思いっきり後ろ振り返る。五葉には見えたはずだ一瞬オレがほくそ笑んだのを
オレは部屋の中にいた雛形の手下の一人、茶髪ロンゲの男に狙いを定めがぶり寄り握りこぶしを振り上げる。
「まずはお前だ!!」
「なっ・・・がはっ!」
まさか自分が狙われると思っていなかったんだろう、茶髪にロンゲの男はオレの虚を突いた攻撃を受けあっさりとその場に倒れる。
「てめぇ、なにしやがる!」
「その次はお前だ!」
もう一人の手下、金髪の男が突っ込んでくるがすぐさま体を逸らしカウンター気味に思いっきり裏拳を叩き込んだ。
「ぐぁっ、はっ」
嗚咽を漏らし倒れこむ金髪の男に目をやることなくオレはただ正面に立つ雛形に狙いを定める。
「雛形康弘、お前には『リチェルカーレ』も五葉も渡さない!!」
罠があること、すんなり雛形の奴が五葉を返す気がないことなんて最初からわかっていた、オレの作戦は奴等が勝利を確信して嘲笑うその虚をついて攻撃するということだった
『動じるってことは隙を見せるってことだ・・・戦場じゃその一瞬の隙で死ぬぜ?』
これはそう天城さんがオレに言っていたことだ。
そして雛形は手下をこの部屋に二人しか置いていなかったこと、これが運が良かった。虚を突いて一人は倒せるとしてもその次の相手はほぼ素の状態だ、勝てるかどうかは正直わからない。ここにいたのがあの馬鹿でかい図体の石渡だったりしたらまず勝てなかっただろう。
「覚悟しろ雛形!!」
雛形との距離を一気に詰め顔面目掛け拳を打ち込む───これでオレの勝ちだ
「勝てるとでも思ったのか?クククッ、おめでたい奴だな!」
だが現実はそんなに甘くはなかった。オレが全力で打ち込んだ拳を雛形はあっさりとさながらキャッチボールのように簡単に受け止められた。
「なっ・・・に!?」
「神楽坂さん!危ない!!」
そして五葉の言葉に咄嗟に振り返ろうとした瞬間───
「こいつはお返しだっ!!」
「がはぁっ・・・」
背中に激痛が走り、息が漏れる。ゴッソリと体力を奪われる感覚とともにオレはその場に崩れるように倒れこんだ。
「ったく、いきなりこっちに向ってくるから驚いたけどよ・・・こいつのパンチ大したことないっスよ」
ぐらつく意識の中、オレの視界に映ったのはさっき倒したはずの鉄パイプを手に持った茶髪ロンゲの男
「まぁー俺達に手をあげたんだ、これからゆっくりと痛めつけてやる・・・ぜっ!!」
「ぐぁっ!」
金髪の男の蹴りが思いっきり腹に突き刺さる、思わず胃の中の物をぶちまけそうになる。
「なめるんじゃねぇぞこの雑魚が!!これでも俺は桜花高校で番町張ってたこともあるんだからな、天城仁ならいざ知らずお前のような雑魚が勝てる相手じゃねぇんだよ!!」
哄笑する雛形の声がする。
それから先は自分でもよくわからなかった、どこを殴られたとかどこを蹴られたとか認識する意識すら無くなりそうなくらいの暴行が続いたのだけはわかる。
「やめて!やめてください!!」
そして落ちそうになる意識を五葉の悲痛な叫びだけが辛うじてそれを繋ぎとめていた。
「バーカ、誰が止めるかよ。」

───人間サンドバックとかまじ面白いこと考えるよな

「でもあんまりやると死んじまうぜ」

───大丈夫、あいつの親父は警察の上層部だからよ死んでももみ消してくれるって

雛形の手下達の声がする、それとともにオレの頭の中でなにかの記憶がフラッシュバックする。
「しかし流石に飽きてきたな雛形さん、そろそろあっちの女で遊ばないっスか?」
「ああ、そうだな・・・だが一応許可を取らないとなぁ」
朦朧とする意識に声だけが聞こえる。誰が言った言葉か、今雛形達が言った言葉か、それともあいつらか、全くわからない。
「なぁ雑魚、いや神楽坂恭治だったか?お前の口から許可の言葉を聞かせてくれよ『この女を好きにしていいんで僕を助けてください』ってよぉ、そうしたらお前だけは助けてやるよ」
髪ごと頭を掴み上げられる。目の前の雛形が何を言ったかはわからなかった、だがそれは確かに奴の言葉はオレの頭の中の奥底にしまっておいた記憶を呼び覚ました

───さぁ言えよ、「僕は負け犬ですゆるしてください助けてください」ってな!!

「誰が・・・言うかよ、オレはお前らには屈し・・・ない。さっきも言ったはずだ、『リチェルカーレ』も五葉も・・・お前・・・なんかには渡さないッ!」
失いかけた意識が覚醒する、そして掠れた声でオレは叫び睨みつけた。
あの時のように屈しない、それはオレの最後の意地だった。
「はっ?今のお前に何ができるんだよ雑魚が!」
わかってる、これ以上なにもできやしないのはオレ自身充分わかっていた。
雛形が拳を振り上げるのが見える、ああ間違いなくこの一撃でオレの意識は落ちるな
すいません天城さん、そしてゴメン五葉・・・
「こいつで終わりだっ!!」
オレは目を閉じ、雛形の拳が思いっきり振り下ろされた。

「クククッ、そう邪険にするなよ天城。お前は『リチェルカーレ』、そして俺は『カンツォーナ』同じメイド喫茶の店長・・・同業者じゃあないか」
雛形は含みがあるように笑うと乱暴に椅子を引っ張り出し腰を掛ける
「で、どうだよ売り上げのほうはよリチェルカーレの店長さんよ」
「お生憎様でカンツォーナさんがオープンしてから売り上げは0だ、まさかあんたに経営の才能があるとは思わなかったぜ」
言葉自体は落ち着いているが天城さんと雛形は睨み合っている。そもそも雛形って二、三日前に五葉に熱く語ったあの天城さんの武勇伝にでてきた不良だろ・・・なんでこんな奴が『カンツォーナ』の店長なんだ?
「そりゃまぁてめぇがこの桜花町でメイド喫茶をやりはじめた頃から目をつけてぶっ潰す準備をしてたんだからなぁ!!そしてぇ、俺の復讐劇はこれからなんだぜ!」
声を荒げ雛形はポケットから黒い折りたたみの携帯電話を取り出すとなにか操作をしだす。
「復讐だと?あんた十年以上も昔の話引きずっているのか」
「そうだよ天城仁・・・ッ!てめぇにとってはただの昔話に過ぎないだろうが、てめぇのせいであの日以来俺の人生は舐められっぱなしになっちまったんだよ!!俺はそれを断ち切るためにてめぇに復讐することに決めたんだよぉ!」
天城さんを見ることなく雛形は叫びながら操作を続ける、その指に掛かる力は異常なまでに強く憎しみが込められている。
「天城仁、てめぇの強さは充分わかっている。だったら・・・強い奴相手にするなら周りからってな、ほらよライブ映像だ!」
そう言うと雛形は天城さんに携帯電話を放り投げる。オレは天城さんに駆け寄りその画面を覗き込んで驚愕した
「・・・・っ!」
「こ、これは!」
小さな携帯の画面の中にいたのは見慣れた『リチェルカーレ』のメイド服の女性
椅子に縛られぐったりと力なく頭をたれているその女性は間違いなく音瀬五葉だった。
やはりオレの嫌な予感は当たっていた
「クククッ、なかなか一人で出歩かないからよ苦労したぜ。」
「くっ、ふざけるなよ!!」
頭に血が上る、っていうのはこうゆう時を言うんだろう
気が付いたらオレは雛形に詰め寄りその首根っこを掴み上げていた
「よくも五葉をッ!」
拳を振り上げる、だがその拳が振り下ろされるよりも先に天城さんが咄嗟にオレの腕を掴んでいた
「止めろ、恭治」
「で・・・でも」
「いいから止めろ恭治、止めないと俺がお前を殴るぞ」
骨が軋むんじゃないかってくらいの天城さんの握力にオレは仕方なく掴んでいた首根っこを離す。だがそれを雛形は面白そうに不気味笑顔を浮かべ挑発する。
「おおっと、殴ってもいいんだぜ?まぁ殴った瞬間この店を囲っている奴等から連絡がいってその携帯電話の画面でアダルトなショーが始まるんだがそれでいいのならな」
「くっ・・・!」
辺りを見渡すと窓の外には確かに数人柄の悪そうな奴等がこちらを見ている。
くそっ、こいつらどこまで用意周到なんだ
「クククッ!あいつからの預かりもんだもんなぁ、傷物にはできなよな天城仁」
「ふん・・・どこまで知っているのかは知らないが、あんたがここまで執念深いとは恐れいったぜ。それで要件はなんだ?俺を半殺しにでもしたいのか?」
天城さんの言葉に雛形はおどけてみせ、そして親指を地面に向って突き立てると
「おいおい、物騒なことを言うなよ。俺が欲しいのはこの店メイド喫茶『リチェルカーレ』だよ、この店を俺のものにしてお前を奴隷のように扱ってやるのさ。半殺しにするとかよりももっと恐ろしいものをみせてやるぜぇ」
大声で勝利の雄叫びともいえる笑い声をあげる。
『リチェルカーレ』は天城さんにとってもオレ、神楽坂恭治にとっても思い出深い場所だ
それをこんなやつに明け渡せと言うのか?
「だがまぁ、てめぇにとっても大事な店なわけだからなぁ・・・考える時間を与えてやるか。一時間猶予をやるよ、店の権利書共々を俺の店『カンツォーナ』に持ってこい、それと預かっているメイドを交換だ」
余裕の現われなのか雛形は椅子に乗ったまま右へ左へ体を大きく傾け
「ただし、持ってくるのは天城仁・・・お前じゃなくてそこの雑魚、お前だ」
ビシッとオレを指差した
「な、誰が雑魚だ!」
反射的に思わずオレは叫ぶ。そりゃまぁ天城さんに比べればそうかもしれないけど男として黙ってはいられない。
だが雛形はオレなんか相手にしないようで無視してそのまま話を続ける
「天城、お前はこの店から一歩もでるなよ・・・無論警察に連絡なんかしやがったらあの女はどうなるかはわからないからな」
「恭治に店の権利書を持たせて『カンツォーナ』に行かせればいいんだな」
天城さんはただ静かにそう答えた、その表情からはなにを考えているかわからない
「まぁ嫌なら持ってこなくてもいいぜ?メイド一人の人生で店乗っ取られるかどうかなんだからなぁ・・・クククッ。」
そう嫌味っぽく笑うと雛形は椅子から立ち上がる。
「俺からは以上だぜぇ。石渡、帰るぞ」
「・・・・・・押忍」
雛形と石渡、二人が店からでていくのをオレはただ黙って見送るしかなかった。
天城さんは雛形が座った椅子を片付けるとそのままカウンター席に腰掛け煙草に火をつける
「どうするんですか天城さん!まさか本当に『リチェルカーレ』を明け渡すつもりなのですか!」
「それしか方法はないだろう、悪いが恭治頼まれてくれるか?」
「構いませんけど、こんなのどうみたって罠ですよ」
オレの言葉に天城さんは背中を向けたままただ頷く
「いいか恭治、男には罠だと知っていても行かなければならないときがあるんだ。」
煙草を一吹かしして天城さんは振り返る
「恭治、お前だけが五葉を救えるってことを忘れるな」
「五葉を救えるのはオレだけ・・・」
そうだ、天城さんが動けない今五葉を助けることができるのはオレだけなんだ
握り締める拳に力が入る。覚悟を決めるしかない、罠なのをわかっていてそこに行くってことに不安がないわけじゃない、ただ硬派な男として『カンツォーナ』へ乗り込み五葉を救うそれだけだ
「わかりました天城さん、オレが五葉を救ってきます!」
 


「流石にそろそろ限界だ、会計を頼む・・・」
少し朦朧とした意識でそう告げたときにはもう既に入店してから2時間経っていた。
そんなに飲むつもりはなかったんだがそれでも気が付いたら4、5杯は飲んでしまってそろそろ終いにしないと色んなものがリバースしそうだ。
「なぁにぉ言ってるんですか神楽坂殿ぉ!会計は私にお任せあれと言ったですぞぉ!」
「そうらしいですよぉ」
陸奥とミントは楽しそうに体を揺らしている、仲良いなこいつら
「いや流石に自分で飲んだ分は払うさ、頼む四葉」
「わかったわ、ちょっと待って」
そういうと四葉は手に持った梅酒のロックを一気飲みする。
「やっぱり美味しいっ、よし!それじゃ御主人様行きましょうか」
四葉はソファからぴょんと飛び立つと会計の伝票を持って歩き出す
こいつはこいつで一番飲んでいた癖に全くの素面で酔う気配が一切なかったな
「神楽坂殿ぉ~また飲みましょうですぞー♪」
「ばぁいばぁいですぅ」
「あ、ああ・・・お前らも飲みすぎるなよ、今更遅いとは思うが」
手を大振りする陸奥とミントに軽く手を上げて答えるとオレは四葉の後を追う
「ふぅ、やっと開放される」
「あら?後半は随分と楽しんでいるように私には見えましたけど?」
「そ、そうかぁ?」
ぶっちゃけると後半は記憶が曖昧なんだよな、でも確かに楽しかった気はする。
久しぶりにこうやって誰かと一緒に酒を飲んだってことが楽しかったのかそれとも───
「いい友達を持ったわね、大切にしなさいよ御主人様」
長いツインテールを揺らして振り向くと屈託のない笑顔を四葉は見せる、その言葉になにかが一瞬繋がったような気がしたが、すぐにわからなくなった。
友達・・・か、別に陸奥とは友達でもなんでもないんだがな
「どうしたの御主人様?」
「なんでもない、会計をしてくれ」
オレは少しぶっきらぼうに言葉を吐く。自分でもなんでこんな風に言ってしまったのかよくわからなかった。
「はいはい、少々お待ちくださいな御主人様」
四葉はとくに気にする様子もなくレジの前に立つ、来たときにいた石渡はその場にいなかった。
「ええっとぉ、指名料が2000円でしょ、スペシャルメニューが3000円にウーロンハイが4杯でぇ・・・」
結構取るんだなこの店、四葉が伝票を読み上げていく中財布の中身を見ながらしみじみと思う。大体なんだよ指名料って別に指名した覚えはないんだがかなり阿漕な商売しているなカンツォーナは
「お支払いはしめて9800円になりますね、御主人様」
「さようならだな諭吉さん」
天城さんからもらっている1万円を差し出す。
「はい、それじゃ200円のお釣りね。」
「どうも」
「今日は楽しかったわ、御主人様をいじると反応面白いしまた来てよね」
「まぁ、気が向いたらな」
一応返事だけはしておく、ぶっちゃけ二度と来ることはないだろうが社交辞令だな
こうして笑顔で手を振る四葉に見送られてオレはメイド喫茶『カンツォーナ』を後にした。

「もう夕方か・・・」
日も暮れてきた桜花町の通りを歩きながらオレは考える。
高い授業料を払って喫茶店『カンツォーナ』で様々なサービスを受けてきたわけだが『リチェルカーレ』が対抗できる部分ってのがない気がする。
まぁ天城さんのことだそこはなんか策を講じるだろうからオレが気にしなくてもいいかもしれないな
そんな風に考えながらちょうど大通りの交差点にさしかかったときだった。
ぶわっと強い風が吹きオレの目の前で大量の紙が舞う───
「な、なんだ?チラシ・・・か?」
まるで花吹雪の如く舞い落ちる紙の一枚を拾い上げる。
そこには・・・

『メイド喫茶リチェルカーレ 明日よりスペシャルメニュー『煉獄の炎に抱かれし天使』が登場します!!
煉獄のように真っ赤なイチゴソースのケーキです、とっても美味しいですよヽ(´ー`)ノウマーイ
更にこのメニューを注文するとなんと特別にメイドさんがおまじないしてくれますΣr(‘Д‘n)マァ
限定商品になりますので数がなくなり次第終了します(つд∩)ゴメンネ』

手のひらサイズのチラシには可愛らしい字でそう書かれていた。
「これ・・・『リチェルカーレ』のチラシか、五葉が作ったのか?」
手書き故、チラシとしてはあれだがそれでも五葉の一生懸命さが物凄く伝わってくる。
「あいつ、なんにもしてないように見えてしっかり店のこと考えているな」
思わず感心してしまう、だがそれと同時に疑問も沸いてくる。
「だけどなんでチラシがこんなところに?」
受け取った奴が捨てたっていうにはあまりにも枚数が多いし、近くにはチラシを入れるためのプラスチック製の小さな手提げカゴも転がっている。
なにか嫌な予感がする、オレの嫌な予感は本当に当たるから困る
大体チラシだけがここにあるってことが物凄く変だ、五葉が一生懸命つくった自分のチラシをこのままにして帰ったりするか?いやしないだろう
「タバコ屋のお婆さんに聞いてみるか」
交差点の角に昔からある対面販売のタバコ屋がある、もしかしたらそこのお婆さんが五葉を見ているかもしれない。
オレは焦る気持ちを抑えてタバコ屋へ向かう
「お婆さん、ちょっといい?」
「はいはい、おや恭治君じゃないかい久しぶりだねぇおつかいかい?」
ガラスの向こう側で赤いちゃんちゃんこを着た皺くちゃ顔のお婆さんが笑う。そう言えば小さい頃よく御使いでここに来てたっけ
「いや御使いじゃなくてちょっと聞きたいことがあるんだ」
「はいはい、セブンスター1カートンね」
「ちょっと待った!頼んでない、頼んでないよお婆さん!」
奥の棚を探しだそうとするお婆さんを呼び止める。思い出した、このお婆さんときどき耳が
遠いんだよ、しかも狙ったかのように肝心なことを聞き間違えたりする。
「買い物じゃないのかい?」
「そう、ちょうどそこの角でメイドさんがチラシ配ってなかったか聞きたいんだ」
「は?冥土にはまだまだ行く気はありませんよ、わしゃ」
「その冥土じゃなくて、あーメイドさんって言ってもわからないか。ええっとじゃ女中さん、なんかヒラヒラしたエプロンをした女の子いなかった?」
オレの言葉のなにかに反応したかのわからないがお婆さんの目がカッと見開く
「おおおっ!あのめんこい女の子ならさっき車が通りかかってそれに乗って行ってたよ」
「なっ・・・!」
オレの不安を煽るかのように更に風が吹く、オレの背後で五葉のチラシが舞い上がる。
「おやおや恭治君どうしたのかのぉ?」
既にお婆さんの言葉は耳に入っていなかった。車に乗っていった?五葉が本当に自
分から乗って行ったっていうんだったら大量のチラシがここに捨てられているのは何故だ?
そんなことテレビの名探偵じゃなくたってすぐわかることだった
「天城さんに知らせないと!!」
チラシを握り締め、なりふり構わずオレは走り出した。
一体なんでどうしてこんなことになってやがる・・・っ!
細い路地を一気に駆け抜けながら考えを巡らすが何一つ思い浮かぶ節がない
いや・・・思い浮かぶも何もオレは音瀬五葉のことを何一つ知りはしないじゃないか
本当に五葉との関係はあれでベストだったのだろうか?
「くそっ、考えても仕方ないっ!」
喫茶店『リチェルカーレ』が見えてくる、不安を振り払うように首を振ると息を切らしながらオレは茨のアーチを潜り店へと入る。
「天城さん、大変です!」
「あ?恭治か、どうした騒々しい」
カウンターの椅子に座っていた天城さんが怪訝そうに振り返る、オレはそんなことも気にせず駆け寄る。
「あ、あの大変なんですよ五葉が・・・っ!!」
「ああ・・・そうらしいな。だがお前はとりあえず落ち着け、後は奴等に聞いてみるさ」
オレの言葉を遮り天城さんはオレの肩にポンと手をやり立ち上がる。
奴等?奴等ってなんだ?
だがすぐその答えはわかった───
「久しぶりじゃないか、天城仁!」
「えっ?」
その言葉に思わず振り返る、いつの間にかそこには二人の男が立っていた。
「あ・・・あいつは確か『カンツォーナ』にいた石渡!」
「・・・・・・。」
一人はオレがさっきまで行ってたメイド喫茶『カンツォーナ』でレジに居た大男、石渡
オレの言葉にも石渡はじっと黙ったまま微動だにしない
そしてもう一人は言葉を発した本人、どこぞの世紀末を思わせるモヒカンな髪型と時代外れといわんばかりの特攻服を着たその男を前に天城さんはグラサンを外し眼光鋭く言い放った
「誰かと思ったら元総番の雛形先輩じゃあないですか、あいにくと今日は定休日でしてね、なんの御用ですかね?」

プロフィール
HN:
氷桜夕雅
性別:
非公開
職業:
昔は探偵やってました
趣味:
メイド考察
自己紹介:
ひおうゆうが と読むらしい

本名が妙に字画が悪いので字画の良い名前にしようとおもった結果がこのちょっと痛い名前だよ!!

名古屋市在住、どこにでもいるメイドスキー♪
ツクール更新メモ♪
http://xfs.jp/AStCz バージョン0.06
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