忍者ブログ
日記と小説の合わせ技、ツンデレはあまり関係ない。 あと当ブログの作品の無断使用はお止めください
Admin / Write / Res
<< 04   2024/05   1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30  31     06 >>
[8]  [9]  [10]  [11]  [12]  [13]  [14]  [15]  [16]  [17
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


「誰にも等しくおとずれる事」

親父が死んだ
俺にとってはただただ憎かった親父が死んだ
いい加減な奴で働くこともせず好きなことばっかりやってそして
誰にも───
なにも───
言うこともなく死んだ
親父が生きていたときはうざったくてしょうがなかった
「早く死んでくれ・・・」
本気でそう思っていた、自分の人生を捨ててまで殺してやろうかと思ったこともある
親父が死んだ早朝、暗い自分の部屋で俺はただ事の成り行きを、早く終わってくれと祈っていた
現実逃避なのかブログになんて書こうなんて思って・・・そんなことで誤魔化そうとしていた
テレビでみたような茶色のコートを着た体格のいい警察官が家に入ってきてあれこれと指示するのを部屋の障子越しにただ見つめていた
しばらくして私の部屋の戸が叩かれる
死後いくらか経っていたせいか色々と事情聴取というんだろう、そのために色々と聞かれた
なんの話をしたかは全く覚えていない
ただ担架で運ばれていく親父に対して警察官が「顔、見なくていいのか?」って言われたのをただ私は首を横に振るしかできなかった

会社に親父が死んだことを告げ次の日、葬儀は行われた
親父の姉、生まれてこのかた初めて会った。
その姉の旦那が喪主となり簡素な葬儀は執り行われる
・・・小さい頃以来、久しぶりに妹と話をした
なにを話したかは覚えていない
母親はずっと泣き崩れていた、働かない親父にいつも文句を言ってたってのに

火葬場ってのは案外殺風景な感じの場所
先に火葬を行った家族、その中でも小さな男が泣きじゃくるのを見て
親父が死んでも涙一つ流れない私は人間じゃないのかとおもった位、それぐらいに涙は流れなかった
泣けばいいってもんじゃないが母親や妹のように泣き喚ければどんなに楽かとは思った
火葬が終わり、骨となった親父を見て・・・本当に親父が死んだことを理解した
骨壷に俺と親父の姉で一緒になって骨を入れる
小さな小さな骨壷に入った親父
自分の主張を力で押し通してきた親父も今となってはなんにもできないただの骨
「一度抱いてあげて」
親父の姉から骨壷を渡されただそれを静かに抱く
───なにを言えばいいんだ?
私は結局なにも言わずまま骨壷を返した
でもいまこれを書きながら私は涙を流している、人間は嫌いだがまだまだ私も人間だ

PR


「仮面の箱庭」


  気持ち悪い、とにかく気持ち悪かった
吐瀉物を口から零しながら自分の身体がどこかへと引きずられていくのだけを感じていた
朦朧とする意識、自分がなんでここに連れてこられたのかを考えるも
「俺は誰だ?」
自分の名前さえはっきりとしない
「・・・っ!!」
突然と身体が投げ出され激しく身体が叩き付けられる
「ようこそ“仮面の箱庭”へ新しいメンバー国枝実君」
しわがれた老人の声が静かに聞こえる。国枝実、多分それが俺の名前だろうか俺は苦しいながらも顔を上げる
そこに映っていた世界は───
真っ白、とにかく真っ白な部屋という印象
そしてそこにいるのはその印象的な白い部屋と同じ色をした仮面を被る人間
俺に話しかけた黒いスーツ姿の老人のほかにも
スカートを短くしたセーラー服を着た少女
青い美しいドレスを着た女性
様々な人間がそこにはいた、そして誰もが白き仮面を被りどんな顔をしているかはわからないがなんとなしにそいつらに見覚えがある気がする
「いやいやいや!凄い演技だったね国枝君!」
仮面を被った小太りの男がそう言いながら俺に近づいてくる
演技?なんだ俺は役を演じる男だったのか?
「あれミノリンじゃないの?やば!マジ本物!?サインください!!」
セーラー服を着た少女が俺に近づいてくる
「実、お前は私の誇りだ・・・」
スーツ姿の老人がそう言い近づいてくる
「・・・実さん、今日マスコミの方に『お子さんは何人欲しいですか?』なんて聞かれましたよ」
聞き覚えのある透き通った声で青いドレスの女性が言うとゆっくりと俺に近づいてくる
なにがどうなってやがる?

俺は──国枝実だ、記憶の奥底からその名前だけは導き出される
けど周りの人間は誰だ?こいつらは誰だ?
こいつらは俺の事を知っている、だが俺はこいつらの事を知らない
知らない?いや、違う・・・おそらく知っていた
「・・・近づくんじゃねぇ」
俺は白き仮面を被った人達に向って心の中から思った一番の気持ちを吐き出す
五月蝿い、黙れ、少しづつ鮮明になる意識の中胸糞が悪くなる
「いやぁ良かったよ、国枝くん!!さすが期待の新星って呼ばれてるだけあるね!」」
「黙れッ!」
近づいてくる小太りの男を殴り飛ばす、その身体は大きく地面を転がった後ゆっくりとただゆっくりと地面に吸い込まれるように沈んでいく

───親が偉いだけじゃないかお前なんて、大した演技もしないくせに偉そうに

仮面が外れ沈みゆく小太りの男が吐く恨みめいたものが俺の心を抉る
「マジで!?さすが芸能人っていうだけあるよね!!」
「くっ・・・五月蝿い!!」
近づくセーラー服の少女の腹に向って足蹴りを放つ

───私を殺したって私の子供、父親はあんたなんだ・・・その事実は消えないんだよ

こいつも地面を転がり静かに地面に沈んでいく、俺への───国枝実への恨みを呟きながら
「はは、そうゆうわけかよ・・・どいつもこいつも媚びるような事言いやがって」
俺は近づいてくるスーツ姿の男、そして青いドレスの女性を見据え睨みつける
「実、お前は母親がいないながらも一生懸命やってきたよ」
「親父・・・っ!」
白き仮面を被っていてもわかる、近づいてくるスーツ姿の男が親父だってことは
「お前は誇るべき私の息子だ、実」
「黙れよ、あんたはずっと俺のことが目障りだったくせに!」
そう言いスーツ姿の男を突き飛ばす、やはりこいつも地面を転がった後

───どんなにお前の悪行をもみ消してやったと思っているんだ

白き仮面が外れ恨み言のようにそう言うとゆっくりと地面に沈んでいった
そうだよ、最初からそう言えよ・・・どいつもこいつも!!
「実さん・・・」
「残るはお前だけか、高杉遼子」
白き仮面を被った青いドレスの女性を見据えて言い放つ、高杉遼子は俺の国枝実の婚約者だった女性。
ただこいつは俺の薦めた麻薬に異を唱えた結果、俺の薬仲間に薬漬けにされて輪姦・・・
その後薬の副作用のせいか突然発作を起こし死んじまった女
「ああ?お前もそうなんだろ俺に恨み言を吐いて死ね!」
高杉の首に手をかけ力任せに締め上げていく
「実さん・・・私は・・・」
しばらくして高杉は膝から崩れ落ちた、白き仮面が外れ高杉の頬に一筋の涙が伝う

───知っていました、知っていて好きになった。貴方の悲しみを私はよく知っているから

高杉はそれだけ言うと地面へと沈んでいく、彼女の最期の言葉は恨み言ではなかったが
他の誰よりも俺の心を不快にさせる
「だからなんだっていうんだ!」
白い仮面を踏み潰し吐き捨てる、その目の先では次々と白き仮面を被った人間達が───
エンドレス、そう本当にエンドレスだ

 

                                                                    ENDLESS

「ラブ@ポーション 碧色の瞳達」



人間ってさ、多分わかっててやってると思うんだよね・・・この嫌がらせ
だから人間は嫌い
丑三つ時を過ぎた真夜中、集中力も切れかけてきたのでそろそろ研究も一段落させてベットに入ろうかと思ったときだ。
ドンドンと激しく小屋の扉が叩かれた。・・・いつか壊れるわね、この扉
「・・・・・・またか」
一瞬失敗作のフラスコに手が伸びそうになったが思いとどまる。同じ失敗を繰り返さない、それをやるのは人間だけで充分だ
「相手するのも面倒だし寝よ・・・」
寝る前から欲望にまみれた人間の話なんて聞きたくもない、私は毛布を頭からすっぽりと被るとベットに横になった

───ニ時間後
「・・・・・・いい加減諦めなさいよ」
横たわったまま私は吐き捨てるように呟いた、ここまで諦めを知らない奴は初めてだわ
扉を叩く音は一向に止まらない、ただ叩くだけなら我慢できるんだけどときおり聞こえる声が睡眠を妨害する
「・・・ママ・・・マァマ?」
どう聞いても幼い声、それがこんな時間に森の中で聞こえるなんてどんなオカルトよ
「・・・人間でも幼い分穢れてないから、話を聞く価値はあるかな」
私はベットから起き上がると長く伸びた髪を乱暴に掻き毟りながら乱暴に小屋の扉を開ける
「ったく、なんなのよ常識のない人間ね」
小屋の前にいたのはこんな真夜中だってのに鮮やかに光り輝く長い碧色の髪の少女だった。いや少女というよりも幼女?それくらい小さい
「ママ?」
「私の名前はセルリアン、あんたのママじゃないわよ・・・」
ボロボロの布切れをまとったその子は私の問いに首を傾げると
「ママッ!」
思いっきり私の体に抱きついてきた
「ちょっと!だからママじゃないって言ってるでしょう」
いや・・・よく考えたらさっきからこの子「ママ」としか言ってない・・・ってことは依頼なんかではなくて
「あんたもしかして捨て子?」
そう言って抱きつく身体を引き離そうと少女に触れたとき、私はあることに気が付いた
「ママ、くすぐったい」
「気が付いたことがある、『ママ』以外の言葉も言えることと・・・そして」
顔、首元、手の平、背中・・・その他もろもろ触診してはっきりとわかった
「あんた人間じゃない、ホムンクルスね」
「ほむんくるすぅ?」
「そう、それも・・・」
そこまで言い掛けて私は言葉を止めた。違和感はもう一つあったけどそれを今のこの子に言っても理解なんてできないだろう
「ママ?」
「あーなんでもないわ、けど人間じゃないなら歓迎するわ・・・どうせ行くところないんでしょう」
少女の頭をわしゃわしゃと撫でてやる。
「と、なれば名前をつけてあげないとね。」
「なまえ?」
少女の碧色の髪と同じ、碧色の瞳が私をじっと見つめる。
「目が碧色してるからエメラルドでいいわ、名前ってのは適当につけたほうが後々愛着わくのよ」
「うん!」
意味がわかっているのかいないのかよくわからないがエメラルドは嬉しそうに頷いた。


───二週間後

「エメラルド、そこにある作品NO.24556895取ってもらえる?」
「ええっと、NO.24556895ですね」
私はエメラルドを助手として研究に手伝わせることにした。ホムンクルスの成長は早い、エメラルドの身長は出会ったときは私の膝くらいにしかなかったのに今は腰ぐらいにまで成長していた
「はい、どうぞセルリアン」
エメラルドからフラスコを受け取るとそれを火で炙る
「ありがと、後は私一人で充分だから貴女は好きなことしてていいわよ」
「本当!?それじゃ街に行ってきてもいい?」
「いいわよ、しかしまぁよくもあんなところに行く気になるわ」
フラスコの中の液体の変化を見ながら私は答える。どうもエメラルドは人間が沢山いる街がお気に入りのようだ、さっぱりと私には理解ができないがまぁ変なことをしない限り好きにやればいいと思う
「それじゃ行ってきますセルリアン!」
顔は見てないが多分エメラルドは満面の笑顔で出て行った・・・と思う

───更に二週間後

「ただいまセルリアン」
最近エメラルドは街に出かけると大抵、日が沈みかけた頃に帰ってくるようになった。
「おか・・・えりって、エメラルドその格好なに?」
私は扉の前に立つエメラルドの姿を見て驚いた。いつものボロボロの布切れではなくて小奇麗な洋服を着ていたからだ
「どう、ですかセルリアン似合ってますか?」
エメラルドはその場でクルリとターンしてみせる、フワリと碧色の髪と空色のスカートがはためく
エメラルドの背はもう私と同じくらいにまで成長していてその姿はとても美しく映った
「似合ってるわよ、けどそんないい服どこで手に入れたのよ?」
「街でお仕事してそのお金で買ったんです」
「はぁ・・・結構行動力あるのねあんた」
いずれ買うか作るかしてあげないといけないとは思っていたがまさか自分で手に入れるとはね
「それともう一つ報告があるんです。」
「へぇ、そうなの」
「好きな人ができたんです、それで来月海に行く約束をしたの」
エメラルドは少し照れたように頬を染め言う
だがその言葉に自分でも顔が険しくなっていくのがわかった。
「それは止めたほうがいいわね」
「どうして?セルリアンはいつも貴女の好きなようにしなさいって言ってたのに」
「言ってたけど、それとこれは別。わかったらさっさと休みなさい・・・私の食事はいらないから」
エメラルドの顔を見ることなく私は机に向う
「わかりました・・・おやすみなさいセルリアン」
寂しそうに言うエメラルドの声を背に私はただグッと拳に力を込めていた
その日、私は徹夜で研究を続けた。


───それから一ヵ月後

暑い日だった
静かで涼しい森の中も照らす日光が暑苦しいくらい
「・・・こうなること知っていたんですねセルリアン」
普段私が寝るベットでエメラルドが呟く
「まぁ、知ってたわ」
私は机に向かい試験管を振りながら答える
「こんな姿じゃ私だってわからないですもんね」
そう言って皺だらけになった自分の顔をエメラルドは優しく撫でる。ホムンクルスの成長は早い、けどエメラルドの成長はその中でも著しいものでもはやそれは成長ではなく老化となっていた
私は初めてエメラルドと会ったときに言うのを止めたあのことを口にすることにする
今の彼女ならそれの意味を理解できるだろうから
「貴女がはただのホムンクルスじゃない、金持ちの性処理用に造られた使い捨てのホムンクルスよ」
「───!!」
驚き声が出ないのも当然だろう、私はただ事実だけを淡々と伝える
「貴女がはじめてこの小屋に来たとき私が触診したの覚えてる?」
「いえ、覚えてません」
「ホムンクルスでもね、ある程度なら食事とかで魔力を補って身体を保つことができる。けど貴女にはその機能はなかった、貴女にあったのはロリな身体に似合わない女性的な部分だけよ」
「さ、触ったんですかセルリアン」
「覚えてないんだからいいでしょ」
私は立ち上がると戸棚からガラスの小瓶を取り出しベットに腰掛ける
「ところで・・・これ飲んでみるエメラルド?」
「これは・・・?」
エメラルドの瞳と同じ碧色をした液体の入った小瓶を彼女の前に差し出す
「魔力増幅剤、これを飲めばある程度・・・といっても一日くらいだけど昔の綺麗な貴女に戻ることができるわ。ただ生成に時間がかかりすぎて多分今の貴女の老化速度からいってこれが最後になるとおもうけど」
エメラルドは小瓶を受け取るとじっとそれを見つめる
「確か今日じゃなかった彼と海へ行くって話、それを飲んで行ってこれば?」
「いえ、やめておきます」
「そう・・・・・」
エメラルドは私に小瓶を返すとニッコリと微笑む
「会わないほうがいい会ったらつらくなってしまう・・・でも作ってくれてありがとうセルリアン」
「ま、飲むのも飲まないのも貴女の自由よエメラルド」
私はただじっと返された小瓶を見つめ答える
「ねぇ、最期に一つ聞いてもいい?セルリアンはなんで人間が嫌いなの?人間はいい人ばかりよ・・・特にセルリアン貴女は」
ベットから腰を上げ、私は吐き捨てるように言う
「教えないわよ。貴女は好きなまま終わりなさい」
「そっか、そうだよね・・・ありがとうママ」
その言葉を最期にざぁっとエメラルドの身体は乾いた土くれのように崩れ落ちた
残った鮮やかな碧色の髪だけが日光に当たりキラキラと輝いていた

「ラブ@ポーション」



私は人間が嫌いだ。
だから街から離れ一人森の中に小屋を建てて住んでいる。
私自身も人間だ、だから嫌いな人間から脱却するためにここでずっと魔術書を漁り人間じゃなくなる方法を探している。
そんなことをしている内に気が付いたら街の人間から「魔術師」呼ばわりされる始末
人間じゃなくなる方法を探している過程で確かに色々なモノを生み出したけど魔術師呼ばわりされるつもりはない
けど私の作った物を求めてときおり人間がやってくる、自分の都合のために・・・
これだから人間は嫌いだ

「すいませーん!魔術師様いらっしゃいますか!」
昼過ぎまで続くはずの私の有意義な睡眠時間が若い男の声と小屋の扉を激しくノックする音でぶち壊される
「いらっしゃいませんか!」
「・・・・・・なに、うざったい」
私は気だるくベットから身体を起す。夜遅くまで研究してて眠たいのと嫌いな人間の声に起されたことで私の機嫌は最悪だった。
「魔術師様!」
「五月蝿い!」
私は近くにあった失敗作NO.1414921256の三角フラスコを壁に投げつける。フラスコは扉に当たり辺りにガラス片が散らばる、がそれでも小屋の扉を叩く音は鳴り止まない・・・寧ろ自分がいるってことを知らせてしまい逆効果だった
「いらっしゃるのですね!私はキュアノスの貴族シンクと言います!、魔術師様にお願いがあってやってきました!」
「・・・・・・わかったからその扉を叩くのやめてもらえない?壊れてもらっても困るのよこの小屋」
本来なら嫌いな人間の相手なんてしたくない、けど“シンク”ってその名前に聞き覚えがあったから少しだけ相手をしてあげることにする。
ベットから降りてボロボロの小屋の扉を開けるといかにもな貴族の格好をした金髪の青年が立っていた。その幼く見えながらも精悍な顔立ち・・・間違いない、私がまだ街に住んでいたときによく目にしていた彼だ
「魔術師様!」
「その魔術師様ってのやめてもらえない?街の人間が何を思ってそう呼んでるのかはしらないけど私にはちゃんとセルリアンって名前があるんだから」
「も、もうしわけございませんセルリアン様」
私の不機嫌な態度に恐縮した様子で頭を下げるシンク。流石に私のことなんて覚えてないか、わかってはいたけどなんか少しイラっとした。
「お茶なんか出すつもりは無いけどとりあえず中に入れば?用事があるんでしょう」
「は、はい!失礼します」
辺りを挙動不審に見渡しながらシンクは小屋に入る。
「警戒しなくても取って食ったりはしないわよ」
「あ、いえ・・・そうゆうつもりは・・・すいませんセルリアン様」
馬鹿正直な男・・・昔から変わっていない。いちいち構ってやるのも面倒になったので無視してゴミの山から椅子を引っ張り出し軽く埃を払う。
「それで私になにか用?」
椅子を指差し「座れば」と合図して自分ももう一つの椅子に座る。
「そのことなんですがセルリアン様に作って欲しい薬がありまして・・・」
「なにかしら?毒薬とかならその辺に転がってるから適当に持って行っていいけど」
「いえ、毒薬ではないんです・・・私が欲しいのは───」
椅子に腰掛けるとシンクは一呼吸深呼吸をする、その顔は傍から見てもすぐわかるくらいに顔が赤くなっていた
「───惚れ薬を作ってもらいたいんです!」
「は・・・?今なんて言ったの?」
思わずシンクの言葉に私は呆気に取られ聞き返す。
「だからセルリアン様に惚れ薬を作ってもらいたいんです・・・」
よっぽど恥ずかしいのだろう言葉の最後が小さくて聞き取れないくらいだ
けどなんで?だって
「惚れ薬って、貴方の存在自体がまさにそれのようなものじゃない」
シンクは誰が見たって人が惚れる人間だ。見た目だけじゃない、私の知ってる限り性格やら家柄・・・ありとあらゆる部分で羨まれる人間だ。彼が声を掛ければ大抵の女性が簡単に靡くんじゃないかと、私は思う。
「あ、もしかしてあなたホモだとか?」
「ち、違います!茶化さないでください!」
シンクは真っ赤な顔を更に赤くして否定する。
「別に茶化したわけじゃないわ可能性の一つを提示しただけ、だって私が見るに貴方には惚れ薬なんて必要だとは思えないんだもの」
少し興味がわいた、この男がどんな理由で惚れ薬を欲するかというところに
「どうして必要なのか言いなさい、その理由を聞かせてくれれば貴方の求める惚れ薬用意しないこともないわ」
「わかりました・・・ですが今から私が言うことは他言無用でお願いできますか?」
「言わないわよ、言う相手もいないしね」
私は小さく頷くとシンクは神妙な面持ちで静かに語り始めた。
「私には心の底から愛する恋人がいます、その彼女に惚れ薬を使いたいのです」
「はい?言ってる意味が全然わからないわ、もう既に恋人なら必要ないじゃない惚れ薬なんて」
私の言葉にシンクはただ首を横に振った
「彼女は今彼女の父親が勝手に決めた許婚と結婚させられそうなのです、そして彼女はそれを無理矢理受け入れようとしている!」
「だから惚れ薬で彼女の気持ちを変えようと?」
「彼女はとても父親想いです、どんなに説得しても『父が望んだことだから』の一点張りで・・・ですがこのまま結婚を許してしまえば彼女は絶対に不幸になる!」
シンクの言葉に力が篭る、こんなにも真剣な表情を見るのはいつ以来だろうか?
「まぁ大体わかったわ、でも惚れ薬を使って貴方達が結ばれたとしてその後どうするの?」
「貴族の名を捨て、二人でこの街を出ようと思ってます。彼女には話していませんがわかってくれると思います」
どこまでも真っ直ぐな目でシンクは答える、正直私はそれを直視する気にもならなかった
・・・・・・これが駆け落ちってやつか。
全てを捨ててまで彼をそこまで駆り立てるものがその彼女にはあるんだろう
羨ましくもあり妬ましくもある、私は持っていないのだ少なくともそれを
どんなに望み、嘆願しようとも私の手からすり抜けるように落ちていく星の砂
けどそれを望まなくても自然と持ち合わせる人もいる
「思った以上につまらない話だったわ」
「えっ!?じゃあもしかして惚れ薬は・・・?」
「そんなに慌てなくてもちゃんと出すわよ、別に面白くなかったら出さないとか言ってないしね」
私は椅子から立ち上がると戸棚から小さなガラスの小瓶を取り出す、中には淡い青色をした液体が入っている
「この液体をまず貴方が半分飲んで、すぐに残りを彼女に飲ませなさい。その後しばらく見つめ合ってたら効果は自ずとでるはずよ」
小瓶をシンクの目の前に差し出す、受け取った彼の表情が明るくなる
「ありがとうございますセルリアン様!あの御代は・・・」
「そんなものいらない」
キッパリと断る。
本当話を聞くまではどれだけ吹っかけてやろうかと考えていたけどそんな気分じゃなくなった。
ただ───
「もし思った効果が現れなかったらもう一度私のところに来なさい」
「はい!本当にありがとうございますセルリアン様!」
深々と頭を下げるシンクを私は邪険に扱う
「用が済んだらさっさと出て行って。貴方もこんなところにいるところを誰かに見られたら困るでしょう」
「わかりました、それでは失礼します!本当にありがとうございました!」
シンクはもう一度深く頭を下げると踵を返し小屋を出て行く
「・・・・・・獣のように愛し合えばいいわ、文字通り獣のようにね」
馬に乗り勢いよく駆けていくシンクの後ろ姿を見送りながら私は小さく呟いた。
私は人間が嫌い、でも人間以下になるつもりも毛頭ないわ。

次の日、小屋の前には小さな小さなカスミソウの花が二つ添えられていた
別にそんなつもりじゃなかったのにな、カスミソウの花言葉は確か・・・

 

                                                      FIN
「おいしいらーめんのたべかた」



最初に言っておこう、これから語るのは俺の惚気話だ。
自慢じゃないといいつつ自慢するんだが俺の彼女は可愛い、そりゃもうテレビにでてくるアイドルなんか
全く目じゃないくらいにとにかく可愛いんだ。
腰まであるさらさらなロングヘアーを撫でたときの声、キスする前のちょっと照れた感じに上目使いする仕草、
ちょっかいかけた時の怒り顔、どれをとっても可愛い
しかもロリ顔の癖にプロポーション抜群の巨乳とかぶっちゃけありえないわ、完璧すぎる。
そしてなによりこの俺にベタ惚れってところがねー♪
半年前から同棲始めちゃいまして俺の大学生活薔薇色猫まっしぐらですよ・・・
───食生活以外はな

「ただいまぁ~ごめんね大地君、お待たせしちゃって」
「いやいや全然待ってないよ、ただ空ちゃんに会えなかった時間の悲しみは一日千秋の想いでした」
「あはは、なにそれ、なんか面白い」
そう言いながら空ちゃんはコンビニのビニール袋片手に玄関でブーツを脱いでいる。今日は黒のタートルネックに同じ色のチェックのスカートか、溜まりませんな
あ、そうそうこの惚気話語ってる俺の名前は『大地』、で俺の愛しの彼女が『空』・・・これ運命だろ名前からして愛称バッチリじゃん、アース・ウインド・アンドなんちゃらってバンドあったし・・・・あ、空はスカイかまぁどっちでもいいや
「今週、私がお食事当番だよね。すぐ用意するから」
「あ、うん」
隣にちょこんと座りコンビニの袋から空ちゃんはいつものアレを取り出す。
「『有名店の巨匠が絶賛する味塩ベーコンヌードル』、これ大地君の分。これがね、近くのコンビニになくて隣町の桜花町まで行っちゃった」
「へ、へぇ・・・そいつはすごいや」
そう言いながら俺はテーブルに置かれた味塩なんちゃら・・・ええい俗称『即席麺』を睨みつける。
───また新作かい!お前はどこまで空ちゃんを虜にするつもりだ!
そう、空ちゃんの欠点は極度のインスタントラーメン通ってところだ。ちなみにラーメン通ではないところがポイントだぞ、むしろ普通のラーメンはなぜか絶対に食べない。
友達が言うには以前からそうだったらしいが付き合い始めて、同棲し始めてから空ちゃんのインスタントラーメン狂いは度を増してきた気がする。同棲する前はちゃんとご飯一緒に食べたりしたんだけど最近は三食インスタントだ、これであのプロポーションが維持できるとかぶっちゃけありえない。
「あっ、お水もうすぐなくなりそうだね」
「それなら空ちゃんがコンビニ行ってる間に頼んでおいたよ、明日の朝には届くってさ」
「さすが大地君、頼りになるっ♪」
電動ケトルに水を入れてる姿も可愛いな空ちゃんは、でも・・・

───同棲にウォーターサーバーは本当に必要だったのだろうか?

俺の部屋の、真ん中にどっしりと陣取っているウォーターサーバーを見て思う。
これって普通オフィスとか病院とかにあるもんだぜ?でも同棲生活を始めるのに当たって最初に買ったのがこのウォーターサーバーだ、ついでにその次買ったのは今空ちゃんが今持っている電動ケトルだ

『インスタントラーメンって軟水よりも硬水を使ったほうが美味しくなるんだよ』
『俺は空ちゃんと水があれば生きていけるぜ!!』

・・・そういえばあのときそんなことを言ったなぁ、今でも空ちゃんと水があれば生きていく自信はあるが
インスタントラーメン、てめーはダメだ!次の俺の食事当番まで一週間ずっとインスタントラーメンを食べ続ける
なんて物凄い身体に荒行なんだからなっ!
「はぁーやくお湯が沸かないかな?」
電動ケトルのスイッチを入れ嬉しそうにインスタントラーメンのパッケージを眺めてる空ちゃん。
パッケージを恍惚の表情で見つめる空ちゃんのそんな様子を見ていたらもしかしたら案外俺と同棲し始めたのって単にインスタントラーメンが好きなだけ食べたいからじゃないかなんて思えてきた、だって俺を見るときはそんな表情しないじゃん!
「あれ?大地君もしかして「『有名店の巨匠が絶賛する味塩ベーコンヌードル』嫌だった?それじゃもう一つ別の買ってあるからそっちにする?『独占市場すいません、激ウマしょう油ラーメン』」
「あ、ごめん大丈夫だよ、こっちでいいよ」
空ちゃんの言葉にハッっとなって俺は首を横に振る。
うーむ、インスタントラーメンのことを考えるとどうも顔が険しくなってしまうようだ、大体なんだこの不安インスタントラーメンに嫉妬とかぶっちゃけありえない
「あ、でもこれ麺とスープ分かれてるタイプだから美味しく食べるのには別々にお湯を準備しないと」
「いや、そこはどうでもいいとおもうけど」
「だーめっ!麺が伸びちゃうしなにより・・・」
そう言い空ちゃんは軽く小首を傾げ
「大地君と一緒に食べるのが私にとって一番美味しいラーメンの食べ方だもん♪」
ニッコリと笑って見せた。
ああ───OK、全然OK。可愛すぎてもうどうでもいいや


                                                 おしまい
プロフィール
HN:
氷桜夕雅
性別:
非公開
職業:
昔は探偵やってました
趣味:
メイド考察
自己紹介:
ひおうゆうが と読むらしい

本名が妙に字画が悪いので字画の良い名前にしようとおもった結果がこのちょっと痛い名前だよ!!

名古屋市在住、どこにでもいるメイドスキー♪
ツクール更新メモ♪
http://xfs.jp/AStCz バージョン0.06
パスワードは[]
メイドさん
ブログパーツを無料で配布!スプレーアートに挑戦しよう
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最新コメント
[04/02 ひおうゆうが]
[04/01 ひおうゆうが]
[04/01 水曜日]
[04/01 水曜日]
[04/01 水曜日]
ブログ内検索
Copyright ©  べ、べつに好きで書いてるわけじゃないんだからね!! All Rights Reserved.
*Material by Pearl Box  * Template by tsukika
忍者ブログ [PR]